パリトキシン様毒による横紋筋融解症は、救急医療に携わる医師にもまだよく知られていない
厚労省の国立保健医療科学院が運用している健康危機管理支援ライブラリーのデータベース「H・CRISIS」には、いろんな健康危機管理の事例が載せられています。
最近宮崎県で、ハタ科の魚を食べてパリトキシン様中毒を起こした症例があったので、調べてみました。
参考になる過去の事例が掲載されており、このDB(データベース)を調べる癖をつけると公衆衛生的にも武器になると感じました。
運営している国立保健医療科学院は、埼玉県和光市にあり、保健所長の養成を行う研修などをやっている公衆衛生の殿堂です。
前身は国立公衆衛生院で、米国のロックフェラー財団からの全額寄付により建設されました。

DBの分野名は、自然毒等による食中毒。
兵庫県立健康科学研究所からの報告でした。
事例発生日と終息日は、2020年11月24日~25日。
発生地域は、兵庫県赤穂市です。
患者被害報告数は、14人。死亡者はいませんでした。
原因物質としては、パリトキシン様毒(推定)とありました。
キーワード:
ハタ科魚類、紋クエ、パリトキシン様毒、横紋筋融解症

概要:
飲食店において、客及び従業員がハタ科魚類(魚種不明)を使用した「紋クエ料理」を喫食し、全身の筋肉痛、ミオグロビン尿症、歩行困難等の症状を呈し、横紋筋融解症を発症した。
背景:
厚生労働省によると、1953年から2020年にかけて、日本において少なくとも46件(本事例を含む)のパリトキシン様毒による中毒の記録があり、そのほとんどがアオブダイ(30件)及びハコフグ類(12件)によるもので、ハタ科魚類を原因とするものは3件である。
地方衛生研究所・保健所の対応:
喫食残品である当該魚筋肉中のパリトキシンをLC-MS/ MSを用いて分析を行ったが、検出されなかった。
また、生体試料(血清及び尿)にういては、分析法の検討を行い、作成した分析法による添加回収率は良好であった。本分析法を用いて患者血清及び尿中の分析を行った結果、パリトキシンは検出されなかった。
赤穂健康福祉事務所(保健所)は、同飲食店が提供した食事を原因とする食中毒と断定し、同事務所及び兵庫県健康福祉部健康局生活衛生課が記者発表を行った。
原因究明:
後日確認の目的で、喫食残品、患者血清(8名分、発症日当日から3日後採取)及び患者尿(8名分、発症日から2~6日後採取)中の「パリトキシン」のLC-MS/ MSによる分析を行った。
また遺伝子解析法による魚種の鑑定が行われ、ヤイトハタとチャイロマルハタの交雑種と推定された。
診断:
高いCK(クレアチンキナーゼ)値や全身の筋肉痛、ミオグロビン尿症等の臨床症状から、多くの患者が横紋筋融解症と診断された。
地方衛生研究所間の連携:
パリトキシンの分析において、過去に食中毒検体の分析経験のある宮崎県衛生環境研究所に問い合わせ、食品中の分析法に関する助言を得た。
生体試料中のパリトキシン分析法について、国立医薬品食品衛視枝研究所に問い合わせ、参考文献の紹介を受けた。
現在の状況:パリトキシンに関しては機器分析が可能な体制になっている。パリトキシン様毒の科学構造が明らかにされておらず、毒成分の解明が今後の課題である。
関連資料:
吉岡直樹、菅原一隆、風見眞紀子:LC-MS/ MSを用いた食肉、ヒト血清及び尿中のパリトキシン分析法の検討、兵庫県立健康科学研究所研究報告、4,10-14(2022)

まさか、宮崎県の衛生環境研究所が登場してくるとは思いませんでした。
宮崎県で発症した事例は、大物のハタを釣り、釣り仲間で食べた翌日に筋肉痛が起こり、同じ医療機関を受診したところ、受診した全員が血液検査でCK値が高値だったことから判明しました。
パリトキシンの分析を衛生環境研究所で実施しましたが、兵庫県の事例と同じくパリトキシンは検出されませんでした。
データベースがあると便利ですね。前例を探るうえにも訳にたちます。
パリトキシン様毒による横紋筋融解症は、救急医療に携わる医師にもまだよく知られていないそうです。
大物のハタを釣った場合は、こうしたリスクがあるので、釣り人は要注意です。また臨床医も要チェックです。
医師国家試験に出せば嫌でも覚えます……。
パリトキシン様毒による横紋筋融解症は出題してもいいかも。
国試委員の先生方は、よろしくご検討いただければ幸いです。特に、中毒学、救急医療では必須の知識だと思います。
もし、すでに出題されていたらすいません。
