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労働基準監督官から、徒然草には安全教育に使われる話が二つあると聞いたことがある

きらびやかな平安の女流作家に比べると、
吉田兼好の徒然草は「おじさんの話を聞け!」的な話がてんこ盛りです。

そのため徒然草は、恋愛には役に立ちませんが、大人の仕事にはなかなか参考になります。

「徒然草のおかげで、出会いがあって結婚ができた」と言う人は聞いたことはありません。

ビジネスパーソンは、現代語訳や、わかりやすい解説書、徒然草をネタにしたビジネス書を読んでみることをおすすめします。

仕事を進める際のヒントになると思います。

故きを温ねて新しきを知る。
温故知新です。

そもそも「古典」は、高校のときは
なんでこげんな昔のものを
勉強せんといかんとか、

と負担に思っていました。

桃木先生すいません。

しかし、古典がある国や民族は珍しいのです。

アメリカ人には古典はありません。

古典だらけの中国人と対峙するときに、引け目になります。

米軍の幹部は、ベトナム戦争に敗北してはじめて「孫子の兵法」を勉強するようになりました。

日本は、日本の古典と中国の古典が読める超珍しい国です。

実は、日本人は、世界一、「孫子の兵法」が好きな国民です。

関連する書籍は、山のごとくにあり、その読者はビジネスパーソンです。

古典を利用しないともったいない。

還暦を過ぎてからそう思うようになりました。

ちなみに、世界で最も有名な古典は「イソップ物語」です。

「北風と太陽」など、さまざまな政治の寓話として用いられます。

厚労省の安全衛生部にいたときに労働基準監督官から、徒然草には安全教育に使われる話が二つあると聞きました。

監督官が、安全講話をするときによく使うそうです。

一つ目は、109段の「高名の木登り」です。

木登り名人の話です。

名人は言います。

高いところに登って危ない場所は、自然に自分自身が怖がって気をつけているので、特に注意する必要はない。

しかし、失敗は、安全な場所に降りてきて、気が緩んだときにほとんど必ず起こる。

あやまちは、やすき所になりて、
必ず仕(つかまつ)る事に候


労働者健康福祉機構の安全衛生研究所が、
労働災害の脊髄損傷患者の原因を調べた
ことがあります。

その多くは、
1~2メートル程度の低い場所からの転落
でした。

とりわけ危ないのが「脚立」です。

背中から後ろに倒れた場合は脊髄損傷で下半身麻痺となることがあり、安全の盲点となっているそうです。

ユニクロでは、
高いところに服を展示するなど
脚立を使った作業をする場合は、
事前に徹底的な安全教育を行っています。

トップの柳井正社長は、
徒然草を当然に読んでいると推定されます。

徒然草の「高名の木登り」の話は、
安全教育や心理学の分野においては、
「常識」になっています。

さて、残る、もう一つの話とは……。
ヒントは、下の写真です。

写真は、椎葉村にある駄賃付け道路跡です。

昔の椎葉村では、山で獲れた産物を馬の背に載せて、峠を越えて馬見原まで運んで行って売り、生活に必要なものを買って帰ることをしていました。

答えは、第186段の「吉田と申す馬乗り」です。

吉田さんという馬乗りの名人がいて、
馬に乗る秘訣を語りました。

馬は、どんな馬でも手強くて、
人の力は、馬にはかなわないこと
を知っておくべきである。

最初に、乗る馬をよく見て、
その馬の長所と短所を知らなければならない。

次に、
くつわや鞍などの馬具に
危険はないかをよく調べて、
気になるところがあれば、
馬を走らせるべきではない。

こうした事前の準備を忘れない者のことを、
真の馬乗りというのだ。

これが馬に乗る秘訣である。

現代で言えば、
車や自転車に乗る前にきちんと点検しておくことを言っています。

昔、「あいつに恋して」という映画がありました。

主演は、風見しんごさんで、
ヒロインは歌手で熊本出身の森高千里さん。

他に、フォークの泉谷しげるさんや、ツイストの世良公則さんが出ておりました。

この映画は、北海道から鹿児島まで日本列島を馬と一緒に歩いて縦断する物語です。

椎葉村で、ロケが行われました。

映画では、遙か向こうに見える上椎葉ダムを背景に、風見しんごさんが馬を連れて歩くシーンがあります。

ロケは私の母の実家の近くにある通称「ツチノコ峠」で行われ、風見しんごさんは馬に蹴られて前歯を折りました。

村内では、噂になっておりました。

馬は、後ろに立つと蹴りを入れる習性があります。

そのため、「馬の後ろに立つと危険」と注意されております。

さいとうたかおの漫画「ゴルゴ13」の主人公、デューク・東鄕の決め台詞「俺の後ろに立つな」と同じです。

風見しんごさんは、「徒然草」か「ゴルゴ13」を読んでおれば、馬に蹴られることは無かった。

つまり文学や漫画の「古典」を読むことは、命や健康を守ることにつながります。

皆さまどうかご安全に。

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