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キューリー夫人は、自分が発見したポロニウムが殺人兵器として使われるとは予想していなかった

朱戸アオさんの「リューを待ちながら」(全3巻)は、外国から持ち込まれた感染症が蔓延するという漫画です。

主人公は静岡県の医療機関に勤務する女性医師で、その他に陸上自衛隊の医官、厚生労働省国立感染症研究所の研究者が登場します。

タイトルの「リュー」は、フランスのノーベル賞作家カミュの「ペスト」に出てくる主人公の名前です。

陸上自衛隊の富士総合火力演習が行われる市が舞台になっています。

自衛隊が海外派遣で行った国で、ある感染症に感染して、帰国後にそれが国内に広まるという話です。

新型コロナウイルス感染症が登場する前に描かれた漫画ですが、まるでそのことを予見していたかのようです。

めったに人を褒めないホリエモンこと堀江貴文さんも「この漫画を読め」と言っております。

私が、この漫画を見たのは、防衛省にいて、ちょうど富士総合火力演習を見学した後だったので、リアルに感じてしましました。

主人公と対立する自衛隊の医官が、当時の陸上自衛隊の衛生部長(防衛医大卒の医官)とそっくりでした。

防衛医大の学長をされていた四ノ宮成祥先生が編集をされた「すぐに分かるCBRN事態対処Q&A](イカロス出版)という本があります。

生物化学兵器などの大量破壊兵器について書かれた本で、この分野において最もわかりやすい本です。

ちなみに、Cは化学、Bは生物、Rは放射性物質、Nは核の頭文字です。

もともと研究班で作られた報告書でしたが、読みたいという人が続出して、市販化されました。

この本の表紙と中のイラストは、朱戸アオさんの絵が使われています。
四ノ宮先生に、聞いたところ「ダメもとで頼んだところ、快く引き受けていただいた」とのこと。

この本には、ノビチョクやポロニウムという最新の兵器も掲載されています。

ノビチョクは、サリン以上の毒性を持った神経剤です。
ロシア語で「新参者」を意味します。

初めて使用されたのはイギリスです。
高級ブランドの香水のビンに入れられていました。

暗殺のために使用されましたが、公園に落ちていた香水ビンを、拾って使用した一般市民の女性も亡くなっています。

一方、ポロニウムは、α線を出す放射性物質で、体内に摂取されたら内部被曝を起こします。

最初に発見したのは、キューリー夫人です。
祖国のポーランドから名前をつけました。

キューリー夫人は、まさか、殺人兵器として使われるとは予想していなかったでしょう。

ロンドンのホテルのバーで過ごして、その後、寿司バーに行った白人の44歳の男性がいました。

寿司を食べて数時間後に上腹部痛と嘔吐があり、2日後にロンドン市内の総合病院に入院しました。

6日後に、大学病院に転院します。
22日後には死亡しました。

症状は、口内炎、骨髄抑制、脱毛などの放射線大量被曝の際に見られるものでした。
当初タリウム中毒が疑われましたが、原因が判明したのは、死亡した翌日のことでした。

亡くなった男性は、ロシア政府に批判的な活動を行っていた元KGBの将校でした。
ポロニウムは、ロンドンのホテルのバーと寿司バーで検出されています。

ノビチョクもポロニウムも、イギリスで使われました。

どうも、ロシア人は、新しい兵器を試すのはイギリスだと決めているようです。

クリミア戦争のときから、ヨーロッパにおけるロシアの最大のライバルは英国でした。

幕末から明治にかけて、対馬と北海道の領有をめぐって、ロシアとイギリスが火花を散らしています。

朝鮮半島の領有を争った日露戦争のときは、英国は日本と軍事同盟を結んで、日本を応援しました。

ロシアは、英国の力をそぐために、植民地であるインドを独立させようと工作員を送り込みます。
英露のインテリジェンスの戦いは、半端ないです。

ノビチョクやポロニウムがもし、日本で使われたら、英国のように原因をきちんと同定できるでしょうか。

2番目の寿司バーの事例は食中毒に該当し、最初に保健所が調査をすることになりますが……。

国際社会では、何が起こるか分かりません。
VUCAの時代、同盟国間で公衆衛生情報を交換する「ヘルス・セキュリティ」は大変重要です。

くれぐれも皆さん、公園で香水のビンが落ちていたら、いかに高級ブランドであっても拾わないでくださいね

落ちている風船も危険です。どこの国から来たのか、何が入っているか分かりません。

カラスがたくさん死んでいたら、それはウエストナイルウイルスが日本に上陸した証かもしれません。

公衆衛生人がぼーっとしていたら、永遠の5歳のチコちゃんに叱られますよ。

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