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新型コロナウイルス陽性者の唾液を保存していたのは、自衛隊中央病院だけだった

クルーズ船での新型コロナウイルス感染症対策は、ダイヤモンド・プリンセス号が有名ですが、それだけではありません。

長崎で係留中に、乗員約600人から148人の陽性患者が出たクルーズ船「コスタ・アトランティカ号」もあったのです。

長崎県知事からの要請で、令和2年5月2日から14日まで、自衛隊は災害派遣を実施しました。

派遣での活動は、PCR検査に必要な検体の採取と乗客に対する医療支援を行うとともに、静岡県の陸上自衛隊富士病院にあるCT車を派遣しました。

ダイヤモンド・プリンセス号での検体採取や医療支援、自衛隊中央病院での患者受け入れの経験があったので、スムーズな対応ができました。

PCR検査の結果、陽性者は船の個室で隔離し、症状のある者は船の横に構えたCT車で検査し、肺炎所見のある者を長崎大学付属病院に搬送しました。

このCT車の派遣は、長崎県からのたっての要請でした。

自衛隊のCT車

まだ新型コロナウイルスが何者か全く情報が無かったときに、自衛隊中央病院ではダイヤモンド・プリンセス号の陽性者100人以上を受け入れました。

その六割は外国人でした。

入院者には全員、CTを撮影しました。

普通の胸部レントゲン写真ではなく、胸部CTを撮ったのは意図はありませんでした。

胸部レントゲン写真を撮る場所が一カ所しかなく、一般患者と感染者の導線を分けることができなかったのです。

CT撮影では導線を分けることができたので、CTを撮ることにしました。

症状のない陽性者も一律にCTを撮ったことから、新たな事実が判明しました。

症状が無くても、CTの画像に両側のすりガラス状の陰影のある人がかなりいたのです。

自衛隊中央病院では、「サイレント肺炎」と命名しました。

入院者には、全員にパルスオキシメーターを装着し、血液中の酸素濃度をモニタリングして経過を見ました。

サイレント肺炎の人は、次第に病状が進行して身体を動かすと息切れがしたり、呼吸数が増える
ことが確認できました。

こうした患者には酸素吸入を徹底的に行って、症状の回復を待ちました。

自衛隊中央病院で得られた医学的知見は、病院のホームページで広く医療関係者に公開するとともに、国際的な医学雑誌にも投稿し掲載されました。

これまで「自衛隊病院は、医官も看護官も注射が下手で、風邪と水虫しか診れない。自衛隊員も怖くて自衛隊病院にはかからない」と揶揄されていましたが、そういう長年の悪意あるうわさが払拭されました。

自衛隊中央病院では、陽性の入院者からは唾液を採取して、その検体を凍結保存していました。

検体をつかった研究や第三者提供に係る本人同意も取っていました。

この検体を使って厚労省研究班で調べたところ、咽頭のぬぐい液でも唾液でもPCR検査の結果は一致することが判明しました。

こうして採取者に感染のリスクの高い咽頭ぬぐい液ではなく、安全に採取できる唾液で検査ができるようになったのです。

厚労省では、陽性者の唾液を一定数保存している全国の病院を探していたのですが、見つかりませんでした。

そんな中で、自衛隊中央病院が88人分を保存していることがわかり、厚労大臣が大変評価しました。

自衛隊は、新型コロナウイルス対策でさまざまな貢献をしました。

しかし、その活躍を知っている人は少なく、自衛隊の医官も看護官も薬剤官も宣伝をしません。

自衛隊中央病院の病院長に聞いたところ、「我々は命令を遂行しただけです」と言っていました。

いや、いや、いや、誰も命令などしていないでしょう。

もし、ごく早期の時点で、感染症の専門の学会から緊急時の勧告が出ていれば、コロナ患者を治療した全国の主要な病院で、唾液が保存されていたはずです。

自衛隊中央病院は、CT画像でのサイレント肺炎の存在を指摘するとともに、唾液が診断に使えるきっかけをつくった、二つの大きな功績があります。

新型コロナウイルス感染症が我が国に侵入したときの、自衛隊中央病院長の専門が呼吸器内科だったことは、神の采配ではなかったかと思っています。

自衛隊中央病院。表紙の写真は屋上で、双発ヘリが離発着できます


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