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リアルな実態を踏まえた「保健医療福祉行政・財政の理念と仕組み②ー社会保障と国際協力」


社会保障の定義


これから社会保障についてお話をさせていただきます。

社会保障についてはですね、これが歴史的な定義で、社会保障制度審議会の勧告というのが1950年に出ています。

いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、排出、死亡、老齢、失業多種、その他の困窮の原因に対し、保険的方法または直接公の負担において経済保障の道を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もって、すべての国民が文化的社会の聖因たるに値する生活を営むことができるようにすることを言うのである。

有名な勧告で、かなり歴史的な文章ですけれども、これが今も続いています。

社会保障の概要

社会保障の概要です。

主な柱は社会保険と公的扶助と公衆衛生と社会福祉があるということです。

社会保険というのは、保険料を納めて、みんながリスクに関して補償する総合扶助の制度で共助であるということですね。

法律に基づく特別な法人によって運営して、原則強制加入であるということです。

例が医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険というのがあります。

全部「保険」がついているのが社会保険ですね。

保険料を出すということもポイントです。

みんなで集めたお金をプールして、リスクに備えて、みんなで助け合いましょうということであります。

公的扶助は、生活に困窮するすべての国民に対して国が最低限の生活保障、自立を助けようとする制度です。

生活保護が代表的な例です。

生活保護はですね、生活を保障するだけじゃないんですね。もう一つ、自立を助けるということで、ずっと公的扶助の対象にある人ではないんですよ。

いつか独り立ちしてくださいねと。学校にも行かせます。学校でスキルを磨いて、ぜひ頑張って自立してくださいという趣旨です。

今は働く場所がないかもしれませんけれども、将来的にはぜひ働いてくださいねと。

働くと生活保護がもらえなくなることになるからパチンコ屋に行くとかいう人もいるんですが、それは違います。

公衆衛生はもういいですね。

社会福祉はいろんなハンディキャップのある人に援助する仕組みがあります。

社会保障の財源


制度ごとに、使われるお金が違っています。

社会保険は、さきほど言った医療保険だとか年金だとか介護は保険料をみんなで集めて、貯めて支給することになっています。

唯一労災保険はですね、我々は納めなくていいんですね。

事業主が納めることになっています。
全額事業主負担で、労働者たる我々は納めなくていいということです。

けれども、それ以外の保険はみんなで納めたお金をプールして、国が作った法人などが管理して、そこから支給をするという方式です。

みんなで助け合う方式です。

一方、公的扶助、社会福祉、公衆衛生は税方式でやっています。

社会保険方式と税方式の違い

「なんで保険方式と税方式があるのか」とか、「全部税金に変えればいい」とかいう人がいるんですが、保険は保険のメリットがあるんですね。

また税金は税金のメリットがあるということですけれども、それを整理したのがこの表です。

まず税方式です。国や地方税、市町村と県が徴収する租税を財源として、支援の必要な人々に給付,お金をあげたりとか、サービスをしたりするという方式です。

国の責任的に言うと重いのですが、税金は何に使われるのか、あらかじめ決まってないんですね。

だから税収を、アリーナが必要だからアリーナ作るわとか言う人もいるでしょうし、日向坂46が好きだから宮崎に呼ぶのに使うとか、いろいろあるんですけれども、それをチェックするのは議会です。

税金というのは何に使われるか、あらかじめ決まってないので、国なり自治体の責任で決定をするものです。そのため税金をいっぱい負担したからといって給付に結びつくわけではないんですね。

いくら,税金取られても全然俺のところに来んぞという人もいっぱいいるわけですね。

税金を上げるとなるとですね、国民はみんな反対します。「はいはい、増税していいです」って言う人はなかなかいないでしょう。

誰も絶対うんと言いません。そのように税負担のアップってのは、なかなかできないんです。

消費税ではよくやったなぁという感じですね。最初ゼロだったのが、3%、5%、8%、10%ですけど、歴代の実行した内閣ってすごいなと思います。

それができるっていうのはものすごい基盤のある政権です。
普通はなかなかできません。

財政コントロールですけれども、国は財務省が使い道を見ますから、財政的コントロールは強いんですね。

これを伸ばそうとしてもなかなか伸びません。
ゼロシーリングとかあります。

県庁で言えば財政課ですね。「急激に増額するのは無理ですよ」となかなか「うん」とは言いません。

サービス供給は、要するになかなか変わらないんですね。

税金というのはこういう性質があるので、それを使っているのは北欧だとかイギリスとかの国です。

一方、社会保険方式ですけれども、これは人々が保険事故に、あらかじめ保険料を出し合って、それを財源として事故に遭った場合に保険給付をするわけですから、もともと何に使うかが,わかっている。

だから病気になった時に使うのよねとか、年取った時に年金にするのよねとかですね、そういうことがもうわかっています。

みんなで保険料を出しているので国の責任は間接的です。保険料の使い道は決まっているので、保険料の負担が給付と結びついています。

我々はこれだけ払ってるんだから、ちゃんと給付してくれというふうにいえる。

意外なことに、保険料のアップは容易なんですね。
毎年少しずつあげていくことが可能です。

医療費の伸びがあるので、なんとかそこをみんなで負担してくださいませんかって言ったら理解が得やすい。

保険料を少しアップしてもみんなしょうがないかと従います。
財務省の財政的なコントロールは弱いです。

特別会計なので、一般会計と違ってですね、自分たちで集めたお金を自分たちで使うので、財務省の指導は限定的です。

昔はなんとか保養センターとか、グリーンピアとか、保養施設をいっぱい作ったりした時期がありました。保険料が余るとですね、そういうふうに使っちゃった場合がありました。

また、サービスはどんどん拡大していきます。
代表的なのはフランス、ドイツ、日本などです。

社会保険方式はみんなで集めたお金で使うので、割と自由に使えて、保険料も割と上げやすいとかですね。そして、人々のニーズにうまくマッチしやすい。

税方式はなかなか、一旦固定したら、それを上げるっていうのはなかなか難しいです。例えばスウェーデンなどのような北欧は、税金がですね、例えば収入のかなりの部分を取られる。

そういう国はもう税金でやってもいいわというふうになりますが、日本のように、低額の国は、税金を増やすだけで怒りますし、なんて言いますか、高負担の国とは納税意識が違うんですね。

自分たちは根こそぎ税金を取られているけれども、国が、例えば学校のお金は全部タダとかですね、病院のお金は全部タダとか、そういう国と、いや学校も全部払わないかん、病院の自己負担も払わないといけないという国とは違います。

それぞれの国によって違うんですね。
社会保険方式と税方式の二つの方式を使ってマネジメントしている。

わが国は、医療保険については社会保険方式を使って、そして福祉や公衆衛生などは税方式を使ってやっていると、そういう組み合わせです。

社会保障の歴史


社会保障には長い歴史があります。
もともと社会保険を編み出したのはドイツです。

鉄血宰相といわれたビスマルクが編み出したんですが、疾病保険法をつくります。保険料を事業者と労働者が負担する今の健康保険がそうですね。

我々と、それから会社が半分ずつ負担する。そういうことで病気になったときは、集めた保険料から医療費を支給しよう。

労災は保険料全額事業主負担です。これは今の日本も同じです。
年金も作っています。

ビスマルクは社会保険三部作を作った人ということで有名です。

ルーズベルト大統領ですけれども、これは社会保障法という法律を作って、ニューディール政策で失業者だとか高齢者に所得補償を行っています。

世界で始めて「社会保障・ソーシャルセキュリティ」という名称をついた法律を作りました。

ルーズベルト大統領は、もともと金持ちのボンボンでしたけれども、ポリオに罹ってしまいます。大人になってからのことです。

それで初めて人生の挫折を味わうんですね。ポリオの療養とリハビリを一生懸命行います。

下半身が麻痺して車椅子となりましたが、逆にそういう療養生活を送ったので、自分と同じような人たちがいっぱいいるということで、医療や福祉大事だということで福祉政策の重要性を理解したのです。

これで大統領になったのです。
ニューディール政策といった福祉政策を推進します。

人間は,病気になったりすると、初めてそういう苦しさがわかって、人間がひと皮むけたりするんで、だから順風満帆の人は危ないですね。

「私失敗しませんので」という医者は危ないです。人は失敗から学ぶんのです。「失敗」と書いて「せいちょう」と読むと野村監督も言っています。

ポリオにかかったのは失敗というわけじゃないんですけれども、こうした一見、人生の挫折と思えるようなことを経験したことで、大統領になれたということです。

大統領になったルーズベルトは、人の話をよく聞いて、いろんな政策を行っています。アメリカの歴代の大統領で唯一3期やってますね。通常は2期しかやれないんですけども、日本との戦争中に再選しています。

チャーチルとの洋上会談で大西洋憲章という中で、社会保障をすべての人に保障するために協力するということで、ソーシャルセキュリティをみんなに広めるんだというのをうたっています。

チャーチルですけれども、自分の政権下で、ヴェバリッジ報告書というのを作らせます。ヴェバリッジさんという委員長が作った、これが社会保障の聖典と言われています。

「ゆりかごから墓ままで」という目指すべき福祉国家の姿を描いたもので、これははっきり言えば、当時にしてみれば荒唐無稽で、そんなものができるわけねえじゃないかと言って、チャーチルは報告書を捨てるんですね。

自分が命じたその委員長の報告書をこんなのはできんと蹴飛ばした。

ところが労働党のアトリーはチャーチルを倒して首相となり、「よっしゃ!と、これだ!」と、「ヴェバリッジ報告書を俺は実現させる!」と決めました。

ヘヴァンという保健大臣、炭鉱夫上がりの大臣ですけれども、この人に「お前やれ!」と言って、保健大臣に丸投げするんですね。

丸投げされた大臣は、英国の医師会と調整して、ナショナルヘルスサービスという国営の、要するに病院を全部国営にしちゃったというわけですね。

医療費はタダです。そういうのを作って、このヘヴァンの執念で実現をさせて、今もイギリスの医療は国営です。

日本は、岸信介総理です。安倍総理のおじいさんです。東條内閣の時の商工大臣で、戦犯にもなった人ですが、公職追放から復活して自民党総裁となり、総理になっています。

そしてやったのが国民年金法。それに国民健康保険法を改正して、1961年に国民皆保険皆年金を世界で4番目に実現しています。すごいです。

日米安保条約を結んで改正した,日米安保の張本人で、タカ派ということで有名ですが、安全保障でも有名ですけれども、社会保障では岸総理の時に実現したんですね。

ですから、大した人間でございます。多分この岸さんが総理でなければ実現できなかったかもしれない。奇跡と言われていますね。

1961年に国民皆保険皆年金が実現したというのは、ほんと国民が等しくまだ貧乏で、発展途上の段階で高度経済成長に入る前のことでした。

それと人口がどんどん増えていくと。要するに国として上り坂の時期で、まだ医学が発達してなかったんですね。大した医療技術はなく、まだ低かった。

そんな中で国民皆保険を実現したんで、みんなが望んでいたんですね。

命だけはみんな平等だと。椎葉村に生まれようが、東京に生まれようが、同じ医療を受けて、同じ値段でですよ。そういうのを実現しようじゃないかと言って本当に達成しました。

保険はできても、病院がないといけないということで、各市町村は国保病院というのを作るんですね。そして、そこに医者と看護師を確保して、実際に医療を提供するということで、本当に日本人っていうのはすごいなと思いますね。

こういうのを与野党問わずですね、実現したと。それだけ連帯があってですね、国民みんなで社会保険というのはそういうことですから、相互で助け合ったのです。

だから東京で治療しても、椎葉村で治療しても金額同じなんですね。普通は東京の方が高いやろうという感じですけど、いや、命や医療が平等ですと押し切った。

調子のいい方々がですね。「なんだよ、東京と宮崎でなぜ値段が一緒なのか。東京の方が高くて当然ではないかとかいう人がいます。

「君たち、この国民皆保険を実現した先輩たちの爪の中でも煎じて飲め」と言いたいです。歴史を知るとそういうことは言えないはずです。

本の値段もそうですよね、東京の値段と。宮崎の値段は同じですよね。これも等しく国民に本が同じ値段で供給されるようにしたんですね。

それで日本の文化を上げようという、そういう先人たちがやったことをぜひ学んでいただきたい。

ジョンソン大統領は、ルーズベルトと同じ民主党です。ルーズベルトの後を継いで社会保障法を改正します。

アメリカは公的保険がなかったんですね。それでなんとかして国民皆保険をやりたかったんですよ。

戦争に負けた日本が達成できて、なんで勝った国ができないのだろうということですよね。

アメリカも一生懸命作ろうとするんですが、国民皆保険を実現するためには強制加入させんとダメなんですよ。

みんな等しく同じようにするためには嫌な人でも全部入れと。そしてみんなでお金出し合うということが必要なんですが、アメリカ人っていうのは、要するに自由が好きなんですよ。

国に強制的にやられるのが一番嫌いなので、できませんでした。でも年寄りと障害者はいいわって、公的保険のメディケアとメディケートっていうのができるんですね。

障害者や高齢者、両方に共通するのは働けない人です。
働けないから保険を公的にしてもいいわと。

アメリカ人ってのは働かざる者、食うべかざる的な発想があって、子供に対しては優しいんですが、大人で働かない人には保険がなくて当然やろう、ちゃんと働いて保険に入れよと、こういう感じですね。

ですからアメリカの人口は3億4千万ですかね、それぐらい人口がありますが、4000万人ぐらいは保険に入っていません。

アメリカは自由の国ですけど、あまりにも自由すぎてですね、恐ろしい国ですよ。人生に勝った人はいいですが、負けた人は本当に惨めというかですね。

日本は本当に平等で、国民皆保険ですから等しく医療を3割払えば保険が払ってくれるという国であります。

ルーズルベルト大統領以来の民主党の悲願をこのジョンソン大統領が一部実現したんですが、その後、オバマ大統領が国民皆保険を目指したんですが、トランプ大統領になって蹴飛ばされたので、アメリカは未だ達成できない。

おそらく絶対できないですね。自由を何よりも重んじるアメリカ人のことを思えば。特に共和党は絶対反対です。

アメリカは、ほとんどの国がやっている銃規制ができない。日本は刀狩で、豊臣秀吉の時代に実現しているのですが、アメリカは銃を規制できないんですね。それはアメリカ人というのはもう自由が命なんです。

トレイントレインという、ブルーハーツの歌があります。「見えない自由が欲しくて見えない銃を打ちまくる」とかいう歌があるので、ぜひカラオケで歌うといいです。アメリカの共和党の気持ちがわかるかもしれません。

社会保障というのは、まあはっきり言えばですよ、こういう大物の政治家がやったものなんですよ。

「社会保障の抜本的改革」はなかなかできるものではありません。本当にビッグネームじゃないと社会保障なんて改革できません。

これまでやってきたことを変更するのですから、変更された人々はどうするのか、移行措置を考えないといけない。
考えることは山ほどあってですね、普通はもう怖くて口にできません。

「社会保障の抜本的開発改革」という言葉を軽々しく言える人は、おそらく歴史を知らない人です。勉強すると言えなくなります。それぐらい社会保障って深いです。

世界の医療制度


世界の制度ですけども、「よく外国の真似すりゃいいじゃん」とか平気で言う人がいますが、それぞれの国は、それぞれの国民に応じた制度を使うんですね。

例えば税金でやる国は公共型で、北欧だとかイギリス、イタリア、スペインです。国で普遍的な医療サービスで、コモンディジーズのプライマリーケアを優先して、比較的安価で普遍的な医療を国でやっているという感じです。

医療保険型は強制加入して公的な保険で医療を運用している。ドイツ、フランス、オランダ、日本などです。患者による医師の選択と開業医の維持を優先しており、公的でありながら自由に使わせています。

自由型というのは民間保険に委ねている国です。アメリカやラテンアメリカ諸国などは民間に任せています。市場が優先課題を決定するということです。

税金か、自由か、その真ん中かということです。
一番フレキシブルなのは、真ん中ですね。

イギリスは税金でやっており無料ですが、なかなかすぐには医療機関に診てもらえないという課題があります。

日本では診てもらいたけりゃすぐ医療機関に行けますよね。イギリスはそれぞれの地域で診る医者が決まっているので、受け付けてから診てもらうまでが間があきます。

その代わり、コロナの時とかにワクチン打つとかはきちんとやってるわけですね、医療機関が国営なので、国の意向でできます。

日本は民間病院が多いので、なかなか強制ができない。

アメリカは医療技術は世界一ですが、医療保険は発展途上国。医療はあるんですが使えない。医療費が高くて保険を持っていない人が多い、そういう国です。

日本は本当に恵まれている国です。アメリカで病気になった人がみんな言いますね。日本でよかったと。日本はそれぐらい人に優しい国です。

ベヴァリッジ報告


べヴァリッジ報告書の概要です。
サブタイトルは、ゆりかごから墓場まで。

医療は保険料の徴収ではなく、税金を財源にして一定の保険給付制度を設ける。これがナショナルヘルスサービスになるのです。発表したのは1942年で、戦時中なんですね。

この報告書ができたのは12月でしたが、多くのが報告書をもらいに来て、長い列ができたそうです。

イギリス政府は、これをですねビラにして戦争をしているドイツ軍兵士のいる陣地にばらまいたそうです。

ドイツの兵隊がそれを見て「イギリスは羨ましい国だ」と戦意が急速に低下したと言われています。

チャーチルは恐るべき男です。
ベヴァリッジ報告書をビラにして敵国の戦意を喪失させるため使いました。

しかし、この報告書を実現させる気は全くありませんでした。
次の政権の首相アトリーはこれを実現させようとしました。

保健大臣のヘヴァンに託しました。
オリンピックの開会式に、集団演技がありますね。

ロンドンオリンピックの時に、ナショナルヘルスサービス(NHS)の看護師のユニフォームを着た人たちがいっぱい出てきて、演技をしてNHSの絵文字を作りました。

イギリス人はNHSは国の誇りとして、世界で一番いい制度だと思ってるんですね。学校でも世界で一番いい制度だと教えている。

医療スタッフも世界で一番いい制度だ思っている。
ですからオリンピックの開会式にこういうのが出てくるんですね。

日本の国民皆保険は1961年にできました。世界で四番目ですけど、国の誇りとは誰も持っていない。むしろけなしてますよね。

「日本の保険ではこの薬が使えん」とか言っています。
「厚労省が悪いとか」言って、誰も感謝をしません。

もし日本の東京2020オリンピックで「国民皆保険1961」とやったら担当者はクビになるかもしれません。

ロンドンオリンピックの開会式をテレビで見た厚労省の局長は椅子から転げ落ちるくらいに驚いたと言っておりました。

イギリス人は凄いと思ったそうです。

我がイギリスのNHSは、世界で一番いい医療制度だと、国の誇りだと思っている。

一方、日本は文句しか言わない。
新聞を見たら国が悪い。テレビを見てたら国が悪い。

「一体何を考えてるんですかね、霞ヶ関の官僚は」とかです。

私も34年間厚労省に勤務して、なぜここまで嫌われないといけないのかと思いました。多分、よく知らないのです。日本の医療制度を他の国と比べたことがないので、よく判っていないのです。

日本の国民皆保険制度


日本の国民皆保険制度というのは、一日でできた訳ではありません。
100年前に、まず大正時代の1927年に職域保険というのができるんですよ。

企業から始まるんですよ。保険は同じ仲間で連帯をしないと成り立たないです。つながりがある同じような仲間から始まります。

職場で働いている人はその給料から一定のお金を集めます。事業主もお金を出しますということでできたのがこの職域保険です。

戦時中に職域保険ばっかりじゃダメだ。農業をやっている人とか自営業とかですね。地域に住んでいる人たちには、健康保険に入ってない人がいっぱいいる。

この人たちの医療をどけんかせんといかん。

いろいろと研究するんですね。日本人には地域の連帯がある。それで地域で保険を運営する仕組みを作ろう。

いろいろ研究して、戦時中に国民健康保険法を作るんですね。
国民皆保険は、国民皆兵から来ています。

ところが戦争中なので、なかなか薬が来ないとかですね、病院が空襲に遭って使えないとか、せっかく保険を作ったんですけれども、結局ワークせずに一旦滅びてしまいます。

それで1961年、岸総理大臣の時にですね、リベンジして国民健康保険法を全面改正して、新しい国民健康保険というのを作ったんです。

これが地域保険です。
これで全国民をカバーしました。

国民皆保険が実現しました。

そしてずっとこの状態でやってきたんですが、どうも国保にばかりお年寄りが集まる。職域保険の方は若い人ばっかりで、不公平ではないかいということで、高齢者だけ75歳以上の人は別にしましょうと。運営も市町村ではなく、広域連合を作って、そこでやりましょうというふうにしたのです。

今はこの三本柱です。

地域保険もこれまで市町村が運営主体でしたが、市町村にはものすごく格差があります。

人口で言えば、西米良村は千人を切りました。諸塚村も千人ぐらい。それと宮崎市はおよそ40万人。格差があるので、国保も県が運営に参加せよということになっています。

職域保険と地域保険と、それから広域連合の後期高齢者医療保険制度で運営しているとのです。

大正、昭和、平成で構築して、命だけは平等だということで、こういう制度ができたんですね。

公的保険制度は、本当に大事に使わないと、いつか崩壊します。

みんなで、大事にいたわりながら、足りないものもあるでしょう。抜けているものもあるでしょう。けれども、いい子、いい子って言って。

ここは足りないからここは補おうっていうように丁寧にやると成長しますし、ボロクソに言うと心がやんで壊れちゃったり、不良になったりするので、時々褒めて、時々ちょっと叱る的な。

励ますとかですね。頑張れよ、と時にはいたわって欲しいですね。
生き物なんですね。公的保険っていうのは。

自由診療と保険診療


自由診療、一番これが普通なんですね。
これは医師や医療機関の意向で治療内容や方針や金額を自由に設定できます。

医者と患者だけのモデルで、患者が医療機関に来たらサービスを提供してお金をもらうということで一番シンプルです。

ところがですね、いくらお金がかかるのか判らない。
料理屋に行って、ハマグリや伊勢海老を注文しますが、金額が表示されておらず「時価」とあったりします。

「時価」のものを食べますか? 
「時価」の伊勢海老を十尾とかいくらかかるか判らない。

一匹いくらと表示されているものなら注文できます。
これが普通の庶民であります。

患者も同じで、いくらかかるか判らない治療は受けない。
不安なので医療機関には行かないわけですね。

一方、医療機関側も、患者を診療したけどお金を払ってくれるのか不安なんですね。大根や野菜を持ってきても困るわけです。

医療費の代わりに野菜をもらっても、医療機関ではスタッフに給料を払わんといけないので、現物ではなく現金で払ってもらわないといけません。

ただで診療したら経営困難になります。

また、勤めている看護師が、この病院に勤めていても給料にジャガイモしか貰えなかったら、辞めて他の病院に行きますわね。

つまり、自由にまかせていると、医療機関の経営が困難になり、患者も病院に行かないので健康が悪化するわけですよね。お互いが不幸になる。

自由のように見えて、実は一番不幸になる。
アメリカはこれです。自由こそが,不自由になるわけです。

経済は自由でいいけれども、医療は自由ではいけないんじゃないか。

医療を通常の経済に任せてはいけないということで、一定の管理下においてやるべきだということでできたのは、「割り勘制度」です。


「保険診療」という壮大な割り勘制度が生まれました。

これはどういうことかと言いますと、先のスライドは医師と医療機関でした。

このスライドでは医師ではなくて「保険医」です。医療機関ではなくて「保険医療機関」。

たった二文字の「保険」が入っただけですが、あなた方は医者じゃありませんよ。「保険医」ですよ。

あなた方は医療機関じゃなくて「保険医療機関」ですよということで、保険診療をするんですよ、と医療機関側を変えました。

一方、患者側です。これまでは患者だけだったのですが、患者だけじゃないんですよ。病気ではない「被保険者」という方々が加わります。

被保険者は保険に強制加入してもらいますよ。そして被保険者からは、給料から一定額の保険料を毎月払ってもらいます。企業も同じ額を払ってください。

そして「保険者」というのを作りまして、ここに保険料を集めてプールさせて、ここから保険医療機関に支払うようにします。ということです。

保険者が、保険医療機関が保険診療をしたら患者にかわって医療費を支払いします。

その結果、病院は、この患者を治療してもですね、患者はお金を払わなくても保険者が必ず払ってくれるので安心なんですね。

7割は保険者からきます。
ということで食いっぱぐれがない。安心して経営ができます。

患者もですね、病院の窓口で払うのは3割でいいんですと。
残りは保険者が払います。

また高額療養費制度っていうのもありまして、ものすごく高かったらその分は保険でみますというものがあります。

そのため本当に患者は安心して医療を受けられるし、病院は安心して患者を診れるということで、お互いハッピーであります。

被保険者は保険料を必ず毎月払ってくださいよということですね。

厚労省が、みんなで割り勘にしました。
割り勘にしましたが、ルールを設けました。

医師は療養担当規則を守ってください。これは厚労大臣が決めますから。料金も国が決めますので、この料金でやってください。

宮崎であろうが東京であろう同じです。そういう価格を決めますので、これでやってください。値引きはダメ絶対です。

医療機関側は、わかりました。ルールを守りますし、料金も国の言うとおりに価格を設定します。安売りはしませんと約束します。

国は、指導監督をしますよ。定期的に病院を見回りますからね。診療報酬の不正したら容赦しませんよ。保険医を取り消しますよ。保険に取り消されたら保険診療ができませんよ。

というふうに厚労省がちゃんと指導監督をしているのです。

患者は病気ですけど、被保険者は健康ですから、この健康な人が払ってくれるという、みんなで助け合いましょうということで回っているわけですね。

患者が病院をたくさん受診して、毎日行くとかですね、そういうのはよくないわけですね。やっぱり節度なんですね。

医療機関も毎日来いとか言って、過剰な診療をしたり、不正をしたりとかですね、患者が来てないのに、来たように見せて、保険者に請求するとかですね、不正が起きたりとかするわけです。

それに対しては、きちんと指導監督しますということで、ええ、やるわけです。

この指導監督しているのは厚生局と言われる役所で、九州だと九州厚生局、福岡にあります。

それで事務所が都道府県に一つありまして、宮崎事務所があって医療機関の指導監督をしております。

私は厚生局長だったので、こういう不正をした保険医の取り消しをしておりました。

保険診療は壮大な割り勘です。
ルールを守りましょう!

一人だけ飲みすぎてはいけません。「お前ばっかり食って」って言って、もう出ていけって言いたいですよね。でも出ていけないんですね。

もう入ったらどんな人でも,みんなで支え合う制度です。ですから患者としての倫理、医療機関としての倫理、保険医としての倫理を守ってきちんとやっていく必要があります。

持続可能性が大事です。
そのために規則や倫理を守る必要があります。

医療保険制度は、複雑だという人がいるんですが、大まかな形は割とシンプルであります。

保険医と患者の間で、保険者が入るということが重要です。

自由診療と保険診療の違い

自由診療と保険診療の違いです。

治療の方針や内容、治療費は医師の裁量でどうとでもできるのが自由診療です。全額患者負担。

だから金持ちだったら別にいいんですね。
時価の伊勢海老10尾でも注文できます。

保険診療では、治療方針は厚労省令の療養担当規則に従う、医療の中身は大臣の告示の診療報酬の点数表で示します。

料金の設定は国が決めますので、患者さんは一部自己負担し、残りは保険者が負担するというわけです。

指導監督は自由診療にはありません。保険診療には地方厚生局宮崎地方事務所が指導監督を行います。

日本の国民皆保険の特徴ですけれども、国民全員が公的な医療保険で保障されています。

患者は医療機関を自由に選べます。フリーアクセスと言われてまして、東大の付属病院であろうが、クリニックであろうが、どっちにも行ける。

他の国で無理です。プライマリーケアを診療所で受けて、診療所から紹介されて病院に行くというのが世界のルールですけど、日本では病院に行こうが、診療所に行こうが全くの自由です。

医療機関、医師、歯科医師、薬剤師、自由に保険医療機関や保険医などになれます。
割と安い医療費で、高度、広範囲内医療を提供しています。

社会保険方式で、保険料でやるんですけれども、国民皆保険を維持するために税金も導入しています。

これで財務省が出てきます。
財務省から厚労省にいろいろと指導が入ります。

保険料だけだったら財務省は言ってきませんが、税金が入っているのでチクリチクリと言われます。

診療報酬もなかなか上げられません。
官邸からも指導が入ります。厚労省は叱られてばかりです。

しかし言い訳するようですが、人口高齢化が進むと、お年寄りが増えて、お年寄りはいっぱい病気を持っているので、医療機関にかかることが多く、お金もかかるんです。

「自然増」と言ってますけれども、高齢化が進むと医療費が高くなります。全世界共通の課題です。若い人ばっかりだったら医療費かからないですね。

日本が高度経済成長に突入した1961年は、まさに若い人が多くて、高齢者人口はほとんど少なかった。

だから、こういう国民皆保険が割と自由にできた。しかし、それを維持するのは大変なことです。そういうことで税金も入っているというわけですね。

税金が入っている以上、財務省もいろいろ言って来ます。
それは当然です。

日本の国民皆保険の特徴


この本は本当によくできた本で、筆者の香取さんという人は、なんか顔はいかにもなんか霞ヶ関官僚っぽいんですけれども、ものすごくわかりやすく書かれていて、パッと読めるので、これは本当に教養として、これは知っておいておくといいと思います。

この本が出てからは、社会保障トンデモ本がなくなりました。年金は崩壊するとか、もうありとあらゆる本がありましたけれども、これが出てきたら一切淘汰されました。

これはぜひ読んでください。

衛生行政

行政ですけれども,公衆衛生行政は厚労省があって、県は衛生主管部局、宮崎県で言えば福祉保健部です。県立の保健所が8つあります。

中核市である宮崎市は、主管衛生部局があって、宮崎市保健所があるわけですね。

市町村には市は部だったり、町村は課です。住民課とかですね、名前はいろいろあります。市町村保健センターなどがあったりします。

国は厚労省だけで、都道府県と市町村と言った地方自治体になっています。

面白いのは労働衛生行政ですね、国は厚労省の労働基準局があり、県単位には労働局という組織があります。

宮崎県には宮崎労働局があります。その下に延岡労働基準監督署とか宮崎労働基準監督署があります。

労働基準局、労働局、監督署まで全部国です。国の直轄です。

他は地方自治体が関与しますけれども、労働衛生は全部国です。
労働基準監督官という特別な職種の役人がおります。


労働基準監督官が企業に行っては、指導したり、監督したりするわけです。
労働基準法を作った時にですね、労働基準法の執行機関については、県に任せるか、直轄で国でやるかということで議論がありました。

労働基準法を作った寺本耕作という課長がですね、直轄にしました。県が執行すると、県が恣意的に労働基準を緩めたりするのではないか、国として全国一律の基準でやるべきだと思ったのですね。

当時の局長や大臣の意向に従いませんでした。GHQの労働担当のコーエンという課長も同じ考えで、大臣が来たのにダメだと津突っぱねたのです。だから、労働衛生行政だけは違うということです。

労働基準監督官という職種がいることを覚えておいてください。
皆さん方も労働基準監督官になれるんですよ。

監督官の国家試験を受けないといけませんけども、なれますし、それから企業に入ると衛生管理者という,職種がありまして、これも国家資格ですけれども、保健師は労働基準監督署に届け出するだけでなれます。

産業保健で働く場合はですね、監督官にもなれるし、もしくは企業でですね、衛生管理者として働くこともできるというわけです。

環境行政です。環境省があり、県に環境主管部局があります。宮崎県の場合は、環境森林部というのがありまして、林業と環境を所管している面白い部局です。

環境関係の仕事は保健所に降りています。例えばゴミだとかですね、廃棄物の処理だとか、PFASの汚染ですね。新田原基地の近くの井戸水に高濃度のPFASが検出されたということで、井戸水の採水や住民の飲水指導を行ったのは高鍋保健所です。

保健所の中で衛生を担当しているる薬剤師さん、獣医師さん、化学職の方がやります。保健所の保健師は健康をやって、薬剤師、獣医師、化学職の方が環境衛生業務を担当します。

学校ですけれども、学校は国に文部科学省があり、都道府県教育委員会があって、市町村教育委員会があります。例えば保健所で何かやろうとした時に、学校保健と連携しようと思っても、学校だけでなく、教育委員会にも調整する必要があります。

こういう衛生行政の仕組みをよく知ってやると、誰に言えば動くのかとかですね。教育委員会の中で教育をやっているところのトップは教育長ですから、教育長さんを動かすとか、教育委員会の衛生担当の課長を動かすとかですね、いろいろそれぞれ調整するところが違います。

市町村で多いのは、学校と市町村の教育委員会との連携です。

労働基準監督官


これは労働基準監督官が主人公の小説ですね。ディーセントワークガーディアン。ディーセントワークというのは、SDGsの中に出てくる用語です。

人間らしく働くという意味ですね。私の知り合いの奥さんが書いた小説なんですが、これはまたいい小説で、絶対ベストゼラーになると思ったら、ならなかった。

こっちは漫画「ダンダリン101」。これも労働基準監督官が主人公の物語です。これも人気が出ずに一巻で終わりました。

ただ、これを読んだテレビ局が、「ダンダリン」というドラマを作って放映しました。人気があり、この時は労働基準監督官を目指す人が増えました。

厚労省も労働基準監督官の募集にですね、ダンダリンのポスターをつくってPRしました。厚労大臣がかなりドラマを褒めてましたね。「いやー、こういうドラマがあるといいよな」っておっしゃっておられました。

私もこの時に密かに思ったのが、保健所やら保健師を,舞台にした漫画ができないかということです。

ついにできましたね。漫画「保健師がきた」。皆さん読みましたか?

読んでない? それはもういけない。学校の図書館に101冊ぐらい置いてほしいです。

冗談ですけど、ダンダリン101の101っていうのは意味がありまして、労働基準法の第101条が労働基準監督官の規定なんですね。

労働基準監督官はなかなかクビにできないんですね。それぐらい地位が守られているです。そういう面白い条文があるわけですね。

「医師である労働基準監督官」というのも、実は条文にあります。日本に2人しかいなかった。そのときに私がその一人だった。

「俺の条文?」と思ったときがあります。私が安全衛生部長と労働衛生課長の時は、医師である労働基準監督官でした。

大臣からいただいた辞令は、労働基準監督官を命ずです。
自分のためだけの条文があるっていうのも大変レアなことでした。

治療と仕事の両立支援


これはですね、治療と仕事の両立支援ということで。漫画「社長島耕作」を使ったポスターです。

治療と仕事の両立支援をやろうということで、私が労働衛生課長の時に始めました。後任の人たちがこういう良いポスターを作ってくださいました。

がんになってもですね、働き続ける。治療と仕事を両立して、例えば不妊治療もそうでしょうし、乳がんの治療とか、いろんな病気になった時、治療のために仕事を辞める場合があるんですね。

そうせずに、両立をしてもらいたい。会社もそういう職員を支援してもらいたいとかですね、そのような社会をつくっていこうと始めました。

労災病院というのがありますけど、これまで労災病院の役割ってなんだと言われていました。労災患者の治療だけではありません。

しばらく「勤労者医療」とか言ってましたけれども、しっくりこなかった。

治療と仕事の両立支援を先んじてやる病院だということで労災病院のトップから褒められました。

ようやく我々のキーワードが見つかりました。課長のおかげですと言われました。

高木兼寛の「病気を診ずに病人を診よ」ということですよね。病気になっても働く人を支援していくことです。年をとったときも、同じですよね。

治療と農作業だとか、いろんなことを両立させる。そのために地域や職場に保健師がいるわけでございまして、そうでなければ、病院の看護師だけでいいです。

なぜ地域や職場に保健師がいるのかっていうと、そういう人を支えるために、そういう仕組みを作るためにいるわけです。

ちりょうさ

産業保健ではこういうこともやっているし、こういうポスターも作ったんですね。イメージキャラクターは「ちりょうさ」です。

治療と仕事の両立支援のうさぎです。これは公募で作ったんですね。
「ちりょうさ」を知ってました? 

誰も知らない。ここで覚えてください。「ちりょうさ」です。

生稲晃子さん、元おニャン子クラブのメンバーで、我々世代はよく知っているアイドルです。女優と歌手をやってたんですが、いつの間にか国会議員になってしまいました。その結果、このポスターは破棄されました。

生稲さんは、乳がんになって、治療と仕事の両立に悩んだことがあり、本人と医師と会社の「トライアングル型の支援があるといいのにな」ということを会議で言って、それを当時の安倍総理が、なかなかいいこと言いますねって、国会議員になりませんかって、自民党から出ませんかって議員になったという人なんですね。

それでもう我々は、ポスターが使えなくなったブーブー言っていました。
幻のポスターとなってしまったというわけです。

国際保健


これから皆さん方、世界に行きたい人いますか?
世界に羽ばたく。英語を勉強して、せっかくなら世界に行ってほしいなと。

宮崎から世界へ。特にこの宮崎看護大から保健師の資格を取って、修士終わって、ハーバードかジョンズポプキンスのスクールオブパブリックヘルスで学んで、世界に羽ばたいてもらえれば。

でも、その前にですね、やっぱり日本のある市町村で、特にちっちゃい町村がいいですね。

そこに勤務して、学んで、お金を貯めて、ハーバードなりジョンズポプキンスの公衆衛生大学院に行って、いろいろ学んで、そして国際機関に行くとかですね、そういうのも面白い取り組みかな、ということで聞いてください。


国際協力

国際協力というのは大体2つありまして、まずはA国と交流をする、仲良くしようということで、これは普通にあることです。

発展途上国から、「すみません日本さん。なんかあの、ちょっと日本の母子手帳いいって聞いたっちゃけど、どげなもんか教えてくれんとかですね?」と協力要請が来たら、「わかりました、いいですよ!」と答える。

「じゃあ、母子手帳の専門家を派遣しますから」とかですね。
「本物を持っていきますから」とか。「お国の言葉で作った母子手帳を持ってきますから、これ使ってください」とか言って、二国間協力は進んでいきます。

二国間でやる場合は「バイ」と言います。

国際協力の場合は、必ず「バイ」なのか「マルチ」なのかと聞いてきます。

「バイ」とか「マルチ」という言葉を使って試すんですね。国際協力を知ってるか、どうかを。

バイやマルチを知っていたら、こいつは国際協力を知ってると判断されます。知らなかったら、「ドメな人」と言われます。

ドメスティック、つまり国内しか通用せん人という意味です。
「ダメな人」ではありません。

国際派は英語を話すいじわるな奴らですので、そういう仕打ちに打ち勝つための知識を身につけましょう。

バイというのは二国間である協力で、マルチというのは多国間で、二国以上でやる場合はマルチという、まあ単純な話ですよね。

多国間の場合は国際機関があります。
日本政府は、国際機関に拠出金を払っています。

我が国はWHOに金払えって言われて出してるんですけど、トランプ大統領はですね、蹴飛ばしたんですね。

WHOは中国の味方しかしないので拠出しないと通告したんですね。一年以内に発効するって言ってるんで、もう今WHOは大変です。リストラの嵐です。

アメリカが一番最大の拠出国でした。トランプ大統領、まさかをする人ですから、今WHOはもう史上最大の危機です。

国際機関を通じて、その発展途上から協力要請があって、協力を実施するという流れもあります。

発展途上国は、日本の周りには東南アジアとかですね、いっぱいありますので、いろいろ日本の役割は大きいところがあるわけであります。

国際協力機構(JICA)

この二国間の場合はですね、なかなかそれぞれやるのはめんどくさいので、もうそれを特別にやる組織を作ります。それがJICAです。

JICAって聞いたことあるでしょう。
JICAの正式名称は国際協力機構です。2国間協力はJICAを通じて行われます。

2国間協力の専門組織ですね。外務省が所管している独立行政法人で、発展途上国の経済とか社会の発展に寄与することを目的としております。  

JICAに行ってフランスに行きたいって言ったら、「お前は馬鹿か。フランスは発展途上国ではない」と怒られます。

JICAというのはあくまでも発展途上国のための経済や社会の発展に寄与することを目的としたものであります。

JICAの行う二国間協力には、技術援助や無償資金協力があります。

無償資金協力は、贈与です。「持ってけ、泥棒」って言ったら悪いですね。どうぞお使いくださいというものです。

有償資金協力、これは貸し付けです。「金貸しますけど期限がきたら必ず返してね」というやつです。

その他に国際緊急援助、ボランティア派遣というのがあります。

国際緊急援助というのは、例えばエボラが発生して、発生国から専門家派遣の要請があるので、アフリカに専門家連れて行こうとかですね。

スマトラで地震があり、大きな被害を受けたので被災国から支援要請があり、日本からも送ろうということです。

そういうところにいくなら機動力を持つ自衛隊を送ろうということになります。自衛隊の護衛艦で行って、それに専門家やらが乗り込んでいくというのが国際緊急援助です。

ボランティア派遣はよく知っている青年海外協力隊とかですね、そういう人たちです。

看護職の人たちはこのボランティア派遣で、JICAの派遣で行ったっていう人、結構いますね。わりと身近にいます。

昔、JICAで宮崎市に母子手帳を学びに来たことも、ありましたね。

JICAの研修生受け入れは、宮崎大学でもやられています。ゴミの焼却施設を学びにきたバングラデシュの研修生を受け入れていました。宮崎市のごみ処理施設の視察などをアテンドしていました。

そういうことをJICAがやってるんで、おそらく一番馴染みが今後生じるかなという感じです。JICAのことも知っておくといいと思います。

JICAの活動


技術協力には、専門家の派遣、研修員の受け入れ、機材の供与などがあります。相手国の自主性を尊重して行います。

例えば、日本の母子健康手帳が学びたいという研修員を受け入れて、宮崎市の母子健康手帳を使う現場に連れて行って、妊娠届をした時にこうやって渡してるんですよとか、こういう指導してますよと説明をしたりします。

手帳の中には予防接種を書く欄とかがあるとか、こういうことが書いてあって、これをみんな大事にしてるんですよと。母子健康手帳を宝物のように扱っているお母さんもいて、日本の母子保健の象徴になっています。

戦時中は母子手帳を持っている人に優先して米を支給してたらしいんですね。そのため母子手帳は大事にされた。

配給の時に母子手帳を持っている人を優先した市町村があり、それで普及したとかですね。

無償援助は相手に義務を重ねる資金供与、贈与ですね。

例えば、途上国の中でも所得水準の低い国を中心に、病院とか橋の建設とかですね、経済の基盤づくり、経営、教育、健康環境などの計画にですね、資機材や設備を調達する資金を贈与する。

実は昔、JICAはですね、これを中国やら韓国にやってたんですね。

モンゴルは、この施設は日本のODAによって建てられましたと書いてあるんです。感謝しています。

ところが中国、韓国は一切しません。自力でやったと言っています。

国によって全然違うんですね。モンゴルとかは凄く感謝しています。ベトナムもすごくあの感謝する国ですね。

有償資金援助は貸し付けることで、円借款とも言います。
これは返済が必要なために途上国には効率的な資金利用と適切な事業管理が求められます。

要するに、返さないといけないので、きちんと管理してくださいよと言えます。日本にとっては財政負担が少ないので、持続性があります。

気前よく無償で贈与する国と、日本のようになんだかんだ言って貸し付ける国と、どっちがいいでしょうか。

贈与は一発で終わっちゃうんですね。例えば、病院を作っても電気がなかったので、使われてなかったってことは結構あるんです。

貸付なら、病院作るんだったら、ちゃんとメンテナンスしてくださいよと、こうしてくださいよと、いろいろとアドバイスができるんですね。

国際緊急援助は、紛争を除く大規模災害時の時に、被災国からの要請に応じて派遣されるものですね。スマトラ地震とかの例があります。

ボランティアは海外青年協力隊が有名ですね。

国際協力の経済的側面


海外国際協力の経済的側面です。

政府が援助するODAは、二国間でJICAを通じてやる援助と、多国間で国際機関に拠出するものがあります。

日本の中には国際協力をしている企業や団体もいっぱいあります。
NPOもいます。

例えば最大の海外援助団体は笹川財団です。今は日本財団となっています。競輪や競艇で得られたお金をですね、全世界のハンセン病の施設の整備だとか人材育成に当てており、すごく感謝されているんですね。

日本は、政府だけじゃなくて、例えば創価学会などもすごく外国に資金援助しています。日本では全然知られてない団体や人物が外国では有名だということもあります。

笹川さんはWHOに日本庭園をプレゼントしています。世界中の人がWHOに行って、日本庭園を見て、ああ、いいですねってと言うのですね。WHOには笹川さんの銅像もあります。 

世界にもいっぱいあります。
ビルゲイツ財団ってものすごいですね。世界の顧みられない熱帯病を研究する基金があります。

ロックフェラー財団とかも有名です。
外国では儲けたお金を世界に還元するということが盛んです。

皆さんも儲けたら。是非ともこういうこともやるのもいいですし、自ら世界に挑戦するのもいいです。

国際機関


国連です。国連の中にはユニセフだとかいろんなものがあります。これは国連の中にある機関です。国連から独立したWHO、ILO、ユネスコとかの独立機関があります。


ここでもそういう医療職、ナースの資格を持った公衆衛生大好き系な人が、特にWHOいっぱい集まってます。

ILOにもいます。ユニセフとかにもいいます。ということで、そういう国際機関も一つの皆さんの将来の職場の一つです。

宮崎からハーバード大学かジョンズポプキンス大学の公衆衛生大学院に留学して、ぜひチャレンジしてみてください。

WHOの活動


WHOは、ポリオ対策だとかやってきました。

エイズ対策はですね、実は国連に乗っ取られまして、国連国際共同エイズ計画が中抜きしています。

WHOはその代わり国連にかわってタバコ対策を徹底的にやっています。

それから国際的な危機管理をやっており、IHR(国際保健規則)が新型コロナウイルス感染症のパンデミックの時に機能しなかったですね。それで強化をしようということで、いろんな取り組みがなされたりしております。


アルマアタ宣言はWHOとユニセフの共同宣言です。

これからプライマリ・ヘルスケアが始まります。日本ではアルマアタ宣言を踏まえて、地域保健の主役が保健所から市町村へと方向転換したんですね。


アルマアタ宣言という国際機関が作った宣言が日本に来て影響を受けて、保健所ではなく市町村へと変更したということで、大きなうねりを与えられたと言えます。

国連SDGs


今のSDGsです。これは鹿児島県の出水市にあったものです。国連が作ったものですけれども、SDGsは日本でも広まっています。


公衆衛生関係は、飢餓をゼロになどがあります。17個の目標がありますので、そのうちの3つ目の目標すべての人に健康と福祉をということで、ユニバーサルヘルスカバレッジとかいろいろあります。

その他、水やらトイレ、働きがい、ここでディーセントワーク、人間らしい働き方という言葉が出てきます。

その結果、「保健師がきた」という漫画もできたんですね。
SDGsのおかげです。

「誰一人取りこぼさない」という言葉は、「誰一人取り残さない」を参考にしています。

SDGsは日本に保健師マンガを誕生させたのです。現在2巻まで出ていますね。ぜひ読んでください。市町村保健師です。

ILO


当時のGHQの労働課長でコーエンという人が書いたものです。

日本の労働基準法は戦前に特高警察の課長だった人物が中心になってつくった日本製の法律だと言っています。

同法はILOの規約をモデルにしたもので、アメリカの慣習を取り入れたものではなかったと言っています。

ILOは世界各国の労働基準を一緒にしようということで、条約を作ります。「ILO条約」といいます。

国によって労働基準が違うことをなくしましょうという、そういうことをやってるんですね。

日本の労働基準法は、寺本耕作課長がつくりました。
後に熊本県知事もしています。

労働基準法を作るときに、労働基準をどうするかと考えたときに、日本は批准をしていませんでしたがILO条約があったので、それ使おうとしたのですね。

事情を知らない人は、アメリカの労働基準法の猿真似だとか、アメリカから来たGHQのスタンダー女史がつくらせたのだと書いてます。

私も信じていましたら、事実はILO条約から取ったということです。
コーエン課長も、アメリカの慣習を取り入れたものではないと明確に否定しています。


産業保健師をもし目指すなら、これは暗記してもらいたいですね。1950年のILOとWHOが合同会議で定義した産業保健の目的です。

あらゆる職業に充実する人の肉体的・精神的および社会的福祉を最高度に増進・維持させること、作業条件に基づく疾病の予防、健康にみな諸条件から雇用労働者を保護すること、作業者の生理的・心理的特性に適用する作業環境に沿う作業者を配置することで、要約すると、人に対し作業を適用されるようにすること。各人をして、各自の仕事に対して適用されるようにすること。

あくまでも人が最初で、人間ファーストです。仕事に人を合わせるのではないということです。

飛行士を宇宙という環境に連れて行けることは産業保健の塊です。便所やら衣服から何から何まで、凄すぎです。

「アポロ13」という映画を見たら泣きます。「産業保健アメリカすげー!」って思います。

人間が宇宙空間で生きているためには何が必要かと徹底して研究して、月に到達したのです。

単なるロケットの物語ではなく、産業保健の物語だと感じました。産業保健師を目指す方は、ぜひご覧ください。


おわりに

公衆衛生映画が来たので、ぜひ皆さん見てください。
フロントラインです。

窪塚さんのモデルはDMAT事務局の先生です。
しょっちゅう宮崎に来て、明け方までニシタチを荒らし回ります。そのうち被害者の会ができるのかもしれません。

松阪桃李さんは厚労省の医系技官を演じています。モデルがおり、顔意外はそっくりです。

私の講義より、これを見た方がよっぽどいいです。
公衆衛生がわかる、本当に素晴らしい映画です。

ハベレオ通信もぜひフォローしてみてください。
ということで終わります。


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