米国人はなんでもお金に換算する資本主義帝国であり、それにより予防のコストと治療のコストを比較することができる
昔、厚労省の医政局の研究開発振興課で一緒に働いたことのある職員と話しをしたことがあります。
父親が熊本県出身で、同じ九州の出身だということから、よく飲み会をしておりました。
厚労省を辞めた後は、育児関係のNPO法人に勤務しており、病児保育に力を入れたいと意気込みを語っておりました。
実は、私は母子保健課にいたときに病児保育を担当していたことがありました。
当時は、「病後児保育」と言っておりました。
当時、日本医師会の先生から「病気の児童を保育しては駄目だろう」とクレームがあったからだと聞いています。
今では、「病児保育」という言葉が普通に使われています。

児童家庭局内で、新エンゼルプランに、病後児保育を数万カ所つくることを載せると議論をしておりました。
人口5万人以上の大きな都市に住む子どものいる共働き夫婦は、たよりになるじじばばがいないので、絶対必要だと数値目標を設定しました。
じじばばは、遠くの田舎にいるので、病気のときに子どもを預けることができません。
病児保育は、保育所に併設するタイプ、診療所に併設するタイプ、病児宅に保育士(看護師)が出張するタイプの3つがありました。
問題はそのコストです。
さらにこうした病児保育サービスを提供する側から見れば、冬は病気になる子どもが多く繁盛しますが、夏はまったく閑古鳥が鳴く状態となります。
人件費がかかりますので、なかなか通年のサービス提供は困難なのです。
保育所併設の場合は、看護師の免許をもった資格者がいたり、医療機関と十分な連携があれば安心ですが、どのように関係性を構築するのか。
さらには、ワクチン接種をお願いできる医療機関が近くにあるといいのですが、見つけるのに困難な場合もあります。
まさに、地域における福祉と医療と労働の三位一体の連携が必要なサービスです。

自治体の担当者を集めた説明会が開催され、母子保健課からは当方が出席しました。
児童家庭局の各課の担当者は、新エンゼルプランの内容を資料に合わせて細かく説明しました。
私は、持ち時間の全部を病児保育にかけました。
「残りは資料を帰ってから読んで下さい」と言いました。
「新エンゼルプランはどうでもいいが、地域の夫婦げんかを無くするために、ぜひ病児保育をつくってください」
と説明しました。
これで、笑いをとりました。
子どもが病気になったときに、共働き夫婦はどちらが休むかで、喧嘩になります。
特に水ぼうそうは、鬼門です。
病気の時期が長く、10日間ほど続くので、地獄です。絶対に夫婦仲が悪くなります。
ワクチンをうっておくべきです。
ちなみに、水痘ワクチンは、日本が世界に先駆けて開発しました。
米国人はなんでもお金に換算する資本主義帝国です。
この頃、子どもが病気で親が仕事を休むコストが、年間4億4000ドルになると試算しておりました。
米国人の凄さは、このお金に換算するところだと思います。
日本でも台風の被害で、農作物の被害が○億円にも上るとか報道されますが、医療の場合は全くありません。
お金に換算することで、予防のコストと治療のコストを比較することができます。
資本主義的公衆衛生は、見習うと面白い気がします。

ただ、アメリカはこれをやりすぎて失敗した例もあります。
国防省が、ベトナム戦争でベトコンを一人殺すためのコストを割り出して議論をしていたら世間の批判を浴びて国防長官がクビになりました。
ほどほどがよろしいようです。
話が横道にそれましたが、新エンゼルプランの説明会の事後の感想を見たら、母子保健課の担当の話が一番わかりやすかったとありました。
保育課の補佐が「母子保健課に持って行かれた」と悔しがっておりました。
説明会では笑いを取ることが重要です。
しかし、すべってしまうと逆効果になるので、注意が必要です。

