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日本には医療のリーダシップを学べる大学院はないが、入門書で医療のリーダーシップ養成の旅のハイウエイに乗り出そう

昨年出席した富山県で開催された地域医療学会では、会場に医学書を販売する本屋が出店しておりました。

そこで面白い本を見つけました。

「医療者のためのリーダーシップ30の極意」という本です。

筆者は、ミシガン大学医学部内科教授のサンジェイ・セイント先生と、コロラド大学医学部教授のヴィニート・チョプラ先生。

お二人は、日本に何度も来たことがあり、またチョプラ先生は日本に数年間住んでいたと、日本語版のあいさつに書いてありました。

日本のカラオケが大好きで、ビックエコーにも何度か足を運んだそうです。

私の中の好感度がアップしました。

原著は2019年に出版され、日本語訳の出版は2022年です。

カイ書林というさいたま市にある出版社から出されております。

翻訳を手がけたのは和足孝之先生で、日本語訳を出版した当時の肩書きは、島根大学附属病院総合診療医センター准教授です。

現在は、京都大学医学部附属病院総合臨床教育・研修センター准教授で、島根大学の客員教授となっております。

ちなみに、島根県は総合診療の専攻医の割合が日本で一番多いそうです。

全国平均は3%程度で、宮崎大学医学部の卒業生も毎年3人ほどが総合診療医を目指します。

しかし島根県は15%。つまり100人中15人が総合臨床医を目指します。

その人気の火付け役になったのは、島根大学附属病院の総合診療医センターにいた和足孝之先生なのだそうです。

こ、これは買うしかない。

2750円(税込み)でしたが、学会記念に購入しました。

群生沖縄臨床研修センターの徳田安春先生が、推薦のことばを書かれていました。

「リーダーシップ養成の旅のハイウエイに乗り出そう!」というタイトルに驚かされました。

こ、これは医学書のノリではない。

医療機関のリーダーを養成するためには、医学部の卒前学習、臨床系学会での勉強だけでは不十分で、対応を誤るとリーダーとしての資質が問われ、特に説明責任と透明性が欠如したリーダは危険であり、有名病院がある不祥事で一気に名声を落とすこともある、と指摘されていました。

欧米の病院での院長クラスは、マネージメント・スキルを持つことが当然視されています。

その中でも重視されているのが、リーダーシップ・スキルです。

このために、例えば米国では、学会の認定資格があり、公衆衛生大学院や経営学大学院でマネジメントが学べる修士課程が用意されています。

高額な学費を払ってでも学習する理由は、医療リーダーでこれらのスキルが重要になっているからです。

日本にはまだそういうソースが少ない中で、この本が登場しました。

リーダーシップが学べる入門書をつかって、医療のリーダーシップ養成の旅のハイウエイに乗り出そう、とうたっております。

こ、これは旅に出るしかない。

人が成長するには、「人、旅、本」の3つだと別府にある立命館アジア太平洋大学の学長だった出口治明先生はおっしゃっておられました。

医療現場におけるリーダーシップの本質について書かれた本はほとんどありません。

その理由は、医療従事者も、ビジネスリーダー向けの本を読めばうまくいくだろう、と安易に考えられていたのです。

また、リーダーシップは、自然に身につくものだ、とも考えられていました。

「しかーし、全く違う!」と、
聖闘士星矢ではない、
セイント先生は断言しておられます。

ビジネス界のゴールは
「投資した資金あたりいくら利益をあげて稼ぐことができるか」
です。

医療を含めた社会事業のゴールは、
限りある資源を用いて、いかに効果的に使命を果たし、優れたインパクトを与えることができるか」
が重要な問題となります。

企業の経営者であれば、自分の決断が実行され、その結果が収益にプラスになれば、正しかったと自信を持つことができます。

医療機関のリーダーは、大学の教授たち、病院医局の医師、看護部、事務部、他の医療従事者など、それぞれ独立した部門とそれぞれの持つ権力的な力に対して、ころあいの良くとれた「舵取り」をする必要があります。

医療界の人間は、人から命令されることを好まず、会社とは違って社長への報告義務なども元々持ってないこともあります。

多くのビジネスリーダーに見られる
指揮命令型のリーダーシップは、
医療現場では通用しない
のです。

医療界のリーダーは、
コミュニケーション能力、
周囲への影響力や説得力という
医学以外のスキルを身につける必要があります。

部下や後輩や、周囲のスタッフを、
やる気にさせて
自主的に動くようにしなければなりません。

この本には、そのための「30の極意」が簡潔にまとめられております。

ページ数は100ページほどの薄い本ですが、内容は濃くて、底なしの沼のようなもの。

こ、これは、沼にはまって抜け出せない。

一番目の格言は、「安易に人を雇わない」です。
その理由を3つ挙げています。

①医療の現場ではパフォーマンスの低いスタッフをクビにすることは極めて困難であること。

②医療者は自分自身が大きな犠牲を払いながら働かないスタッフの仕事の分もなんとか補おうとするものであること。

③人材を採用することが成功の鍵であること。


人事に厳しくなれば、長い目で見れば必ずうまく運営ができるようになります。

助っ人を雇ったつもりが、多くの手助けが必要な人で、上司や周囲が代わりにやってあげる方が早いことが頻繁に起こり、こうした状況が続けば、すぐに組織をダメにします。

し、辛抱強く待つしかない

一番面白い格言は、「組織を停滞させる人への対応」です。

「組織を停滞させて便秘にするクセ者」のことを、組織コンスティペーター(Organization Constipator:OC)と名前を付けています。

Constipation は「便秘」ですので、
直訳すると、
便秘人、
便秘的人間、
便秘野郎、
糞詰まりのももんがあ。

恐縮です。

だんだん汚くなって人格が疑われるので、英語でかっこよく「コンスティペーター」と言う方が適切かもしれません。

「あなたって組織のコンスティペーターね」
というと、
「イノベーター(革新者)」
と言われて褒められたと勘違いして
喜ばれるかもしれません。

しかし、組織コンスティペーター(OC)とは、たとえどんなに斬新で良い介入でも全力で抵抗してくる抵抗者です。

新しいプログラムに対しては特に悪意はないのですが、むしろ自分たちの習慣的な古いやり方を守るために良い提案すらも台無しにしてしまう傾向があります。

リーダーはこのような厄介者のOCをいち早く発見し、彼らが放つ悪い影響をなくすために行動することが必要です。

OCは、川の中の石のようなもので、
1つしかなければ、
川の水はその周囲を流れるので
問題はないのですが、
OC的な石が多すぎれば、
川の流れをせき止めてしまいます。

か、川の流れのように、と美空ひばりさんが歌っています。

このようなOCには、2つのタイプがあります。

①権力や権限を行使することを楽しむタイプ
②逆に何もしないことが障害となるタイプ。


私の経験から思い当たるのは、
①のタイプの常套句は、「聞いてない」
②のタイプの常套句は、「知らなかった」
です。

OCはスタッフのモラルを損なうことが多く、業務上の人間関係もどんどん悪くすることが多いので、そのようなOCがいたら、行動を起こす必要があります。

上司にOCがいたら、OCを飛び越えてさらに偉い管理者に相談・報告する戦略です。

このスキップする方法は短期的には有効ですが、OCがそのことを知ったら、面倒くさいトラブルに発展する可能性があります。

OCの職務内容を変えてしまう方法があります。
肩書きや役職、給料はそのままに、できるだけ周囲に損害を与えないようにその職責や仕事内容を変える方法です。

究極の方法は、OCが退職するまでじっと待つという持久戦です。

島津久光の処遇を思いだしました。

明治政府の初期に、薩摩藩の島津久光は左大臣として政府の中枢にいましたが、次第に仕事が停滞することが多くなり、意思決定から外されました。

その後、久光は鹿児島に帰り、隠居生活を送りました。

島津家に伝わる史書の収集編纂をしています。生涯、髷を切らずに帯刀をしていたそうです。

組織の便秘、つまり停滞している組織を上手に解消するための方法は、柔道のようにマネジメントの柔と剛を使い分けることだと二人の教授が言っておりました。

最後に日本の柔道が登場することも、面白いと思いました。

OB、OLはたくさん使用されて日本語になりましたが、OCは日本語になる可能性はあるのでしょうか。

「便秘」の英語が難しいので、普及しない可能性が高いです。

しかし、組織を停滞させる人が多発したら、日本語になっていくかも。

さ、最初から組織を便秘状態にさせる人はいない。


つまり、予防が大事です。

恐縮です。
公衆衛生が一番大事という結論となりました。

か、川の流れを、我田引水したような気がします。

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