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フランスの自由・平等・博愛は、宮崎にも届いていることを感じた

フランスの偉大な軍医に、ドミニク・ラレー男爵(一七六六~一八四二年)がいます。

ナポレオン戦争に従軍し、救急車を開発した外科医です。

当時の戦争では、救急隊は銃後に置かれ、負傷者は戦闘が終わるまで戦場に放置されていました。

ラレーは、馬車による快速救急車で戦場に駆け付け、後方に運びました。

救急車には、担架を備え、副木、包帯、薬物、食料、水を積んでいました。

ラレーは、厳しい寒さには化膿の抑制効果と麻酔効果があることに気付きました。

苦痛を弱めるために雪を用いました。

ロシアとの戦いでは、二四時間に三〇〇例の手足切断手術を行ったと言われています。

顔面創傷以外では縫合を行わずに、絆創膏を包帯で創縁を寄せる方法を好みました。

創傷治療では、壊死部分をすべて切除し、異物と骨片を除去しました。

術後は最小限のことしか行わず、安静の重要性を理解していました。

「外科の歴史ー近代外科の生い立ち」W・J・ビショップ著、川満富裕訳(時空出版)では、ラレーの功績に多くを割いています。

元通産省の事務次官だった両角良彦氏の「一八一二年の雪ーモスクワからの敗走」は、ナポレオンのモスクワ進撃を扱ったもので、全編を通じて悲惨な記述しかありませんが、唯一、ラレー軍医の記述だけは美しいものになっています。

ワーテルローの戦いにおいて、英国のウェリントン将軍が望遠鏡で観察していると、一人の男が危険な戦場をしきりと往復している姿を見ます。

「あの男は何者か」と幕僚に聞きます。

「フランス軍のラレー軍医という者であります」
「あの男の方角には砲撃は控えよ。余はかの軍医の名誉と忠誠に対して敬意を表したい」

この戦いの敗戦で、ラレーは捕虜となって、銃殺に処されるところを、執行の直前にベルリン大学で彼の講義を聞いた英国軍の軍医に助けられます。

竹下さんは、フランスの医療や軍隊の特殊性について書いています。

フランスは、革命以来の教育社会主義ともいえる国で、医学部、歯学部、薬学部は国立大学内にしかない。

決められたカリキュラムで学び、一年目の多肢選択式テストで進級できた一割ほどの学生が、大学病院などの看護研修や各分野の研修を経て5年後の記述と口述の国家試験を受ける。

成績順に振り分けられる専門分野の研修先で、さらに4年の研修を経て博士号取得というシステムだ。

今は医師不足のために難易度が緩和されている。

学費はほぼかからない上に各研修では対価が支払われるから親の経済力とは関係なく学べる。

別に軍隊に属する医学部もある。

一般と同じ国家試験を受けなくてはならないが、(中略)在学中は軍事訓練も受け、医師として卒業した後も一定期間は軍医として働く義務が課せられる。

日本の防衛医科大学校と同じようなシステムです。
しかし、全く違っているものもあります。

フランス軍には、陸海空をまたぐ特殊作戦部隊があり、そこにも必ず医師や看護師が配属されて特殊訓練を受ける。

重荷を担いだ行軍や、最大4メートルの高さから飛び降りる訓練などがある。

特殊作戦部隊には30頭の犬も配属されている。

特殊作戦の現場では、医師や看護師も命令に従う。負傷者が出た時には、仲間や被害者だけはなく、敵でもテロリストでも犬でも、作戦の遂行に支障がない限りは全員を区別なく救助したり手当したりする任務を負っている。

内部に医療者をかかえるというのはフランスの特殊部隊の特徴で、軍隊のようないわば「国家権力による暴力装置」のようなところに、「倫理」や「道徳」が組み込まれているのは、フランスの長い戦争の歴史から得られた教訓と、死に際して従軍司祭を必要としてきたカトリック文化に由来するものだろうと、竹内さんは述べています。

フランスから発生した国際医療人道援助団体に「国境なき医師団」があります。

1971年にフランス人の医師とジャーナリストによって設立されました。医療の届かない紛争地や、自然災害、疫病の流行地域などで緊急医療活動を展開しており、1999年にはその功績が認められノーベル平和賞を受賞しました。

国境なき医師団の特徴として、次の3つの原則と方針があります。

独立・中立・公平の原則

人種、宗教、性別、政治的見解に関わらず、医療を必要としている人々に援助を届けます。

政治や経済、宗教的な権力からの独立を保つため、活動資金の約9割を民間からの寄付で賄っているのが特徴です。

証言活動(ボランティア・マニア)

医療活動を行うだけでなく、現場で目撃した人道危機、人権侵害、医療へのアクセス阻害といった事実を国際社会に広く「証言(発信)」し、世論を動かすことも重要な使命としています。

多様な専門家によるチーム

医師や看護師などの医療従事者だけでなく、ロジスティシャン(物資調達・施設管理の専門家)や財務・人事などの非医療スタッフ(アドミニストレーター)が密接に連携して現場を支えています。

国境なき医師団は、昨年6月に宮崎県と大規模災害時の支援に関する協定を結んでいます。

宮崎県内で南海トラフ巨大地震などの大規模な自然災害が発生した際、県の要請に基づいて医療チームの派遣、公衆衛生対策、避難所支援などの緊急支援が行われる体制を整えています。

フランスの自由・平等・博愛は、宮崎にも届いていることを感じました。



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