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理系の稲森和夫は数式を使って「生き方」を解説している(前編)

ハベレオ通信で、京セラの稲森和夫さんのことを書きましたら、大きな反響がありました。

正月の京都特集のNHKテレビの番組を見て、京都に来る外国人の中には、稲盛ライブラリーを訪れる人が多いことを知りました。

世界中に稲森ファンがおり、本拠地である京都の稲森ライブラリーに訪問して、稲森さんのパネルと一緒に写真を撮っていました。

稲森さんは企業の経営者を越えて、「生き方」を広める伝道者という感じになっていますね。

さて、稲森さんは、鹿児島大学工学部を卒業されており、基本的には理系だと思います。

数式を使って、「生き方」を解説されています。

例えば、世界的ベストセラー「生き方」では、次の方程式が示されています。

人格 = 性格 + 哲学

人格は、人間が生まれながらに持っている性格と、その後の人生を歩む過程で学び身につけていく哲学の両方から成り立つということです。

性格は先天性、哲学は後天性のものです。

どのような哲学に基づいて人生を歩んでいくかによって、その人の人格が決まってきます。

稲森さんは、「哲学という根っこをしっかりと張らなければ、人格という木の幹を太く、まっすぐに成長させることはできない」とおっしゃっています。

どのような哲学が必要なのでしょうか?

それは、「人間として正しいかどうか」ということだと、稲森さんは断言しています。

親から子へと語り継がれてきたようなシンプルでプリミティブな教え、人類が古来培ってきた「倫理・道徳」ということになります。

京セラという会社を興したのは、稲森さんが27歳のときです。

若い経営の素人で、経営の知識も経験もありませんでした。

どうすれば経営がうまくいくのか、皆目見当がつきません。

とにかく人間として正しいことを正しいままに貫いていこう、と心に決めました。

嘘をついてはいけない。

人に迷惑をかけてはいけない。

正直であれ。

欲張ってはならない。

自分のことばかり考えてはいけない。

誰もが子どものころに、親や先生から教わった、そして大人になるにつれて忘れてしまう、そんな単純な規範です。

それを、そのまま経営の指針に据え、守るべき判断基準としました。

とてもシンプルな基準でしたがそれゆえ筋の通った原理であり、それに沿って経営をしていこうと心をきめました。

才能は不足していましたが、人間として間違っていないか、倫理や道徳に反していないか、このことを人生を通じて必死に守ろうと努めてきました。

「このことが自分が成功した理由である」と稲森さんは指摘しています。

バブルの時代は、多くの企業がわれ先にと不動産の投機に血道を上げました。

土地を所有し転売するだけで、その資産価値がどんどん上がっていく。

その値上がりを見込んで銀行から巨額のお金を借り、それをまた不動産投資につぎ込む。

こういうことを多くの企業がやっていました。

稲森さんのところには、「京セラがこれまで蓄積してきた現預金を不動産投資に回さないか」という誘いがたくさんありました。

稲森さんがその「うまみ」を理解していないかのように思ったのか、儲けの仕組みを親切ていねいに教えてくれた銀行員もいました。

稲森さんは、「土地を右から左に動かすだけで多大な利益が発生する、そんなうまい話があるはずがない、あるとすればそれはあぶく銭であり、浮利に過ぎない、簡単に手に入るお金は簡単に逃げていくものだ」、そう思っておりました。

「欲張ってはならない」

投資の話はみんな断りました。

バブルがはじけ、価値を生むはずだった資産は一転して負の財産に変わり、多くの企業が不良債権を抱えることになりました。

シンプルな「基準」に基づき行動した京セラでは、そのような事態を避けることができました。

今の日本で倫理や道徳などというと、時代遅れのさびついた考え方だという印象を抱く人が多いかもしれません。

戦後の日本は、戦前に道徳が思想教育として誤って使われていたという反省と反動から、これらをほぼタブー視してきました。

「生活の中から編み出された数々の叡智を古くさいという理由で排除し、便利さを追うあまり、なくてはならなぬ多くのものを失ってきた。倫理や道徳はその一つだ」と、稲森さんは厳しく問いかけております。

産業医大の初代学長の土屋健三郎先生は、「哲学する医師を目指せ」と、ずっと言い続けておりました。

私は6年間ずっと、哲学の重要性を耳にタコができるほど聞かされておりました。

40年以上前の医学生のときに、稲森さんの方程式(人格=性格+哲学)があれば、理解できたかもしれません。

「哲学が大事」だと哲学的に繰り返し言われても、凡人で飢えた椎葉村出身の若者の心には悲しいかな、響きませんでした。

還暦プラス2の今でしたら、医師の人格は、生まれながらの性格と、これまで培ってきた哲学から形成されるものだと理解できます。

そういえば椎葉中学校の校歌の1番の歌詞に、「叡智の谷は深くして 真理の嶺はいや高し」とありました!

大事なことは、子どもの頃から親や先生から教わっているものですね。大人になると見事に忘れてしまいます。

実は、稲森さんは、「生き方」の中でもう一つ数式を示しています。

その数式は、CMのあと、いや次回に続きます。


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