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大清水トンネル事故を知っている建設業者は、火事を起こさない

安全衛生部長をしていたので、いろいろな過去の事故を勉強しました。

安全の歴史の中でも、特に有名な事故があります。

1979(昭和54)年3月20日に、上越新幹線の大清水トンネルの工事で起こった坑内火災です。

谷川岳の真下を通るトンネルで、全長22キロメートルもあり、当時の山岳トンネルとしては世界最長でした。

その2か月前の1月25日に、貫通式が行われました。

これまでの掘削工事で活躍してきたジャンボ掘削機はもう使わなくなったので、坑内で解体することになりました。

アセチレン切断機を使って解体を始めたところ、金属を切断する際に生じた火花が、地面にあるおかくずなどの可燃物に燃え移って火災となったのです。

おかくずには油がしみこんでおり、いっきに燃え移ってしまいました。

消火器で火を消そうとしたら、現場に6本あった消火器は使い古しで、レバーを押しても消火粉末が出ないものでした。

消火器の点検は、全くなされていませんでした。

火災の連絡を受けて、救出のために地上から職員が空気呼吸器を装着して入坑しました。

しかし、この空気呼吸器は30分しかもたないものだったのです。

誰も空気呼吸器の確認をしていませんでした。

「制限時間」に気がついたときには、もう手遅れでした。

この火災事故で、16人が亡くなっています。

2年前に、同じ上越新幹線の湯沢トンネルの工事で、溶接作業で生じた火花が足場の板や塩化ビニール管に引火して火災が発生しました。

37人がトンネル内に閉じ込められました。

幸いなことに、圧縮空気が坑外から送られており、この空気を吸って生き延びることができました。

火災から31時間後に、全員が救出されています。

同じ新幹線のトンネル工事の現場であっても、火災事故が教訓にならないのは、全く不思議なことです。

「他山の石」という言葉は、建設業界にはない?

事故の教訓は、経験した人以外には、すぐに忘れ去られます。

私が安全衛生部長のときに、東京の多摩で、データセンターの建設工事で5人が亡くなる火災事故が発生しました。

工事はほぼ完成に近づき、地下三階にある鉄骨をアセチレンバーナーで切断する作業を始めました。

鉄骨の切断作業で生じた火花が、近くにあるウレタン断熱材に引火したのです。

この話を聞いたときに、「金属を切断すれば火花が飛び散ることは誰でも知っていることではないか!」と怒り心頭でした。

現場の責任者が、大清水トンネルの火災事故のことを知っていたら、いろんな注意事項が浮かんできたと思います。

地下工事は、トンネル作業と変わりません。

可燃物の除去は?
消火設備は?
空気呼吸器は?
見張り役は?
地上との連絡体制は?
救助体制は?

大清水トンネルの上にそびえる谷川岳は、山岳遭難で800人以上の死亡事故が起きています。

世界の山の「ワースト記録」としてギネス世界記録に記載されています。

きりたった岸壁は、まさに魔の山です。

魔の山の下にある大清水トンネルの火災事故は、建設業界での安全教育で真っ先に教えるべきものだと思います。

この事故を知るだけで、応用が利きます。

金属をバーナーで切断するときは、くれぐれも火花による火災に注意して下さい。

「愛と誠」の岩清水弘と同様に、大清水トンネルのことは忘れてはいけません。

皆さま、どうかご安全に。

中尾政之先生の「失敗百選」が参考になります。

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