産業革命の英国のスラム街で飲まれたジンは、母親を破滅させた
原料を醸造してつくる酒は醸造酒、蒸留してつくる酒は蒸留酒です。
例えば、
ぶどうを醸造してできるのがワインで、
蒸留するとブランデーとなります。
小麦を醸造したのがビール、
蒸留するとウイスキー。
米を醸造したのが日本酒、
蒸留すると焼酎、
という関係です。
醸造酒は、アルコールの濃度は低く、糖分が多いという特徴があります。
一方、蒸留酒は、アルコールの濃度が高く、糖分は少なくなります。
アルコールには社会性があります。
英国は世界で初めて産業革命が起こった国です。
田舎から多くの人が工場のある都市に集まって、低賃金で長時間労働に従事しました。
スラム街が形成され、そこではアルコールを飲むことでしか、うっぷん晴らしができない人が大勢いました。
スラム街で飲まれたのは、ジンでした。
蒸留酒のジンは、アルコール濃度が高く、すぐ酔えました。
酔っ払って暴れるなど職場や家庭で様々な問題を引き起こしました。
両親ともアルコール中毒となって子どもの養育もままならなくなったことから、国会で問題となりました。
赤ちゃんを静かにさせるために、ジンを飲ませる母親もいました。
ジンは、mother`s ruin(母親の破滅)という俗名がつけられます。
議会で審議された結果、ジンの製造・販売が規制されることになりました。
裕福な家では、ビールが飲まれていました。
現代の感覚からは、ビールの方が安く、ジンの方が高いので、逆のような気がします。
ちなみに、宮崎はジンの名産地と言っても過言ではありません。
代表的なものをあげると次のとおりです。
あくまでも個人の感想です。
HINATA ひなたジン(京屋酒造):日本経済新聞が選んだベスト10に入っていました。
油津吟(京屋酒造): 斬新なデザインに圧倒されます。ゆずと日南市の油津をかけているところが憎い。
OSUZU JIN 尾鈴ジン(尾鈴山蒸留所): とにかくボトルがかっこよくて、美味しい
以前、東京新宿の伊勢丹デパートの地下のお酒売り場でジンを見たら、国産のジンは3種類あり、うち2種類がなんと宮崎産でした。
これまで宮崎にジンがあることなぞ、聞いたことがありませんでしたので、びっくりしました。
これ以降、ジンを飲むようになりました。
産業革命のイギリスのように、仕事のうっぷん晴らしではありません。
「公衆衛生押し」の人は、ジンが一押しです。
英国では、母親の破滅から守るために、
たびたび製造・販売禁止になったアルコール飲料で、熱帯では、キニーネ入りのジンは、マラリアの予防にもなりました。
このように極めて公衆衛生的な存在で、
ジンという響きが、医は仁術の「仁」に繋がるのもまた心地いい。
公衆衛生を考えて 飲みはじめたる 一杯二杯のジンの 秋の夕暮れ
宮崎県出身の歌人若山牧水の短歌
かんがへて 飲みはじめたる 一合の二合の酒の 夏のゆふぐれ
を、公衆衛生風にアレンジしてみました。
意外にいいような気が……。

