赤地に黒縁のランドセルの思い出
小学校のときの私のランドセルは、赤地に黒縁取りがされたものだった。買ってくれた東京に住む祖父母によると「とてもおしゃれ」なものだったらしい。
たしかに、現代であればおしゃれで、かわいい。
いまのランドセルは多種多様で、男の子だから◯色、女の子は◯色なんてことはなく、ほぼ同じ選択肢が与えられている。
素材もいろいろ。いい時代だと思う。
でも当時の田舎では、女子は赤、男子は黒と相場が決まっていた。
真っ赤でないことが(さらに、つやつやではなかったことが)気に入らなくて、入学式の前に、私はランドセルの表面にバリバリと爪を立てて、母にひどく叱られた。
祖父母の気持ち、叱られた私の気持ち、いろいろないまぜになって、しばらく大泣きした。
学校では「男女(おとこおんな)」と言われた。
同じ方面に帰る子が男女6人くらいいて、楽しく帰っていた。
と思っていたのだけど。
1年生のある日、鼻血を口に入れてふざけて見せるようなわんぱく男子が、私のランドセルを道路の端にあったガードレールの向こうの川に、落とした。
なぜ。
そうなった前後は全く覚えていない。
泣きながらランドセルを拾い、帰宅してから濡れた教科書を惨めな思いで母と取り出したのを覚えている。
いまだにあれはなんだったのだろうと思うけど、全くわからないままだ。母がその後相手のところに文句を言ったかさえ覚えていない。
ただ、ランドセルが落とされた。
自分で傷つけて、「男女」と揶揄された、祖父母にもらった特別なランドセルが。
それでも徐々に愛着は増して、高学年のときは油を染み込ませた布でせっせと磨いた。
赤いペンで傷をふさごうとしたりしてみたけれど、入学式の前につけた傷は、ひとつもなくならなかった。
3年生頃に「さっちゃんのランドセル」という物語を書いた。
さっちゃんのランドセルは、赤と黒。
最後はお友達を呼んで誕生会を開くところで終わっていた。けど、どんな内容だったのやら。
この因縁のランドセルを物語にしようとしたのはどうしてだったのか。
これを書くことで、何かが昇華されたのだろうか??
1年生の時よりさらにボロボロになったランドセルで、私は小学校を卒業した。
赤地に黒い縁のランドセルは、私の小学校の思い出そのものであった。
年を経て。
中2の次女はランドセルの色に黒を選び、小2の三男は、どうしても赤いランドセルがいいというので、黒のラインが入った赤いランドセルを買ってあげた。
時代が変わったものだなぁとしみじみと感じたランドセルのお話でした。
ちなみにあのランドセル落とし男子を含む男女6人組は、なんだかんだと高学年になるまで一緒に帰っていた。
