我が家の救急箱
おかげさまで結婚以来、夫婦揃って滅多に病院のお世話にならない。出産の時と、あとは私が定期的に歯医者と眼医者に通っているくらいだ。
会社の健康診断は一応、義務なので受けている。その結果も青ざめるようなことは一度もなく、まあ年相応なんじゃね、と諦めがつくレベルである。夫婦仲良く『ちょいワル』といった感じだ。
ありがたいことである。
だから我が家は常備薬というものにほぼ用がない。
家にある薬らしい薬といえば、時折耐えきれなくなって使う頭痛薬や、花粉症の折りに差す目薬くらいのものだ。
虫刺されの時に塗るキンカンを薬だというなら、それはある。
一応、それなりの備えは要るのかしら、と思って用意する気になり、購入することもある。だが箱にしまい込めばそれっきりで、封を切らないまま、大抵存在を忘れてしまう。
なので時折思い付いて救急箱の中を整理すると、目を覆わんばかりの体たらくとなる。
先日手を少し切ったので傷薬を塗ろうと、久しぶりに救急箱を開けてみた。
以前、買っておいたのを思い出したのである。
件の傷薬の使用期限は2022年。ん?今何年やったっけ?と指を折る。
ここで『ギャー、古い!』となるか、『なんや、三年しか過ぎてへんやん。いけるいける』となるかは、大いに個人の感覚の違いが出るところだろう。
因みに、夫は『やめとけ』派、私は『いける』派である。
何事もアバウトで、こういうことには一見寛容そうな夫が
「変質してるかもしれへんぞ」
といって必死に使用をやめさせようとし、腐ってるかどうかやや怪しい食べ物を、夫の反対を振り切って容赦なく捨てる私が
「何言うてんの、こんなもん変質せえへん」
と何の根拠もないのに豪語して平気で使用する。普段とはあべこべである。
夫は仕事上、多少化学の知識があるからそういう風に言うのだろうし、私は『高いのにこのまま捨てるのもったいない』というさもしい主婦根性が顔を出すのだろう。
我ながらなんだか面白い。
時折使用しようかと考え付く傷薬ですらそんな有様だから、飲み薬になるともっと酷い。
ついでだし、と他の薬の使用期限も見てみる。
〇オフェルミンが2019年。下痢止めが2018年。多分、どちらも息子用に用意したものだと思う。
大事な試験の度に下痢気味になる息子に、「もし電車の中で辛いことになったら、水なしでも飲めるし」といって持たせたものだろう。
封は切ってあるが、使用した形跡はない。〇オフェルミンなどは、瓶の中で一体化してしまっている。
今や、その息子も社会人。時の流れは早いものだ。
こんな調子で出るわ出るわ、使用期限の切れた薬が山ほど出てきた。
なんてもったいない。
けれど現在はどこも悪くないし、服用する必要があったとしても、これらを使用する気にはちょっとなれない・・・。
随分昔に、子供の目薬を使う必要があった。
家にある目薬は冷蔵庫で保管はしていたものの、期限は三ヶ月ほど切れていた。
迷った挙句、薬剤師をしているママ友に訊いてみたところ、
「薬剤師としては、使用をお勧めしない。母親としては使う」
という絶妙な答えが返ってきて、なるほどと思わず膝を打った。
結果的に使用したけれど、何事も起きなかった。でも確かに、薬剤師さんなら推奨は出来ないだろうと思う。
『まだいけるやろう』と思って置いておいたら、今度はもっとびっくりするようなものになるに違いないので、思い切って古いものは全部捨てた。
すると救急箱はすっからかんになってしまった。
あるのは包帯と絆創膏、喉の薬、消毒用アルコールくらい。これでは何も『常備』出来ていない。
災害などに備えるためにも、やっぱりあった方がいいんだろうか。でも決して安くはない薬を毎回こうやってガバガバ捨てるのは、とても後ろめたい。
昔、祖父母宅によく来ていた『富山の薬売り』の復活を望む私は、時代遅れな人間なのか、単に自堕落なだけなのか。
今度の薬の補充は、ちょっと迷っている。
いいなと思ったら応援しよう!
山崎豊子さんが目標です。資料の購入や、取材の為の移動費に使わせて頂きます。