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借金7,000万を抱えた39歳が、ハローワークに通い続けた冬の話

20分で終わった債権者集会の、妙な静けさ

2010年の冬。

破産債権者集会は、20分ほどで終わった。

長テーブルを挟んで、何人かの債権者が座っていた。

書類が読み上げられ、確認が取られ、静かに散会した。

7,000万円という数字を背負って迎えた日にしては、拍子抜けするほど短い時間だった。

正直なところ、あまり覚えていない。

頭の中がどこか遠い場所にあるような、現実から半歩ずれた感覚で、その場に座っていた。

集会が終わった後、外に出ると冷たい空気だけがはっきりしていた。

それだけは覚えている。

個人再生には、まず「会社員」が必要だった

倒産の手続きが一段落したあと、次のステップとして個人再生を選んだ。

ただ、個人再生には条件がある。

継続した収入があること、つまり会社員として働いていることが前提になる。

借金を返すためには就職が必要で、就職するためには借金の整理が必要で。

その順番を一つひとつ解きほぐしていくしかなかった。

返済のことを考えると、稼げる仕事でないと意味がない。

ルート営業では、インセンティブが乗りにくい。

新規開拓型の営業、それしか選択肢がなかった。

年齢は39歳。

あと数ヶ月で40歳になるところだった。

書類選考で落とされた数と、過ぎていった時間

ハローワークに通い始めた。

窓口でもらった求人票を手に取り、条件を確認し、書類を送った。

戻ってくるのは「お見送り」の通知だった。

面接にたどり着けない。

書類の段階で止まる。

年齢の欄に「39」と書く度に、ここで終わるのかもしれないという感覚が積み重なっていった。

運よく面接まで進んでも、今度は条件が合わない。

インセンティブがなかったり、基本給が低すぎたり。

返済を前提に計算すると、どうしても合わない数字ばかりだった。

時間だけが、静かに過ぎていった。

営業の経験は、起業してから積んだ

起業する前の僕に、営業の経験は一切なかった。

会社を立ち上げて、初めて「売る」ということを覚えた。

社長だから、自分で仕事を取ってくるしかない。

断られても、また次を当たる。

それを繰り返しながら、体で営業を覚えた。

有限会社を株式会社にしたくて、株主を自分で探したこともある。

300万円の投資を引き出した経験は、今でも自分の中の財産だと思っている。

だから、「営業で負けるとは思わない」という感覚だけは消えなかった。

問題は、その自信を証明する場所が見つからないことだった。

一本の電話が、全部を動かした

就職先が見つからないまま、何ヶ月かが過ぎた頃だった。

起業した当時に知り合った会社から、連絡が来た。

「ホームページの制作を手伝ってもらえませんか」

話を聞いてみると、自分の経験が使えそうな仕事だった。

制作だけでなく、営業の部分も任せたいという話だった。

「営業として、まずアルバイトで入らせてください」 そう申し出た。

条件は明快だった。

お客さんを取ってこられれば正社員にする、それだけだった。

昔からの関係をたどり始めた。

10年以上前にやり取りのあった人、一度仕事を一緒にしたことのある人、名刺を交換したまま連絡が途絶えていた人。

一人ひとりに連絡を取り、話を聞いてもらい、紹介をお願いした。

正社員の辞令が出た日のこと

アルバイトを始めて数ヶ月後、大きな取引がまとまった。

相手は昔から知っている会社だった。

僕のことを知っていてくれたから、話を聞いてくれた。

辞令が出た日のことは、あまり大げさに覚えていない。

ただ、書類に押された「正社員」という文字をしばらく見ていた気がする。

個人再生の手続きが、正式に動き出したのはその後だった。

あの冬の椅子を、今はどこから見ているか

あれから16年が経った。

今の僕は55歳で、営業の管理職をしている。

月に3回は全国のどこかに出張し、年に2回は海外にも行く。

ハローワークのプラスチック椅子に座って求人票を眺めていた39歳の自分は、こういう未来を想像していなかったと思う。

あの頃に連絡をくれた会社がなければ、最初の取引を繋いでくれた人がいなければ、今の生活はなかった。

一人の力でどうにかしようとしていた時間は、正直なところあまり機能しなかった。

動き始めたのは、誰かを頼ることを決めた瞬間からだった。

人脈という言葉は少し軽い気がして、うまく言い換えられないでいる。

ただ、「関係を切らなかった人たち」が、あの冬を越えさせてくれたことだけは確かだ。

今も名刺入れの奥に、あの頃もらった名刺が何枚か残っている。

捨てられないまま、ずっとそこにある。

・・・

倒産から16年。

今ではお金に困らない生活をさせてもらっている


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