副業で5年間7,200万円稼いで税務調査が来た話|650万円の追徴課税を経験してわかったこと
「また知らない番号からだ。」
2023年7月、スマートフォンに知らない番号から着信があった。
出られずそのまま放置していたら、今度は自宅の固定電話に留守電が入っていた。
再生してみると、税務署からの伝言だった。
「折り返しのご連絡をお願いします。」
この一言が、その後の数ヶ月間を大きく変えることになるとは、その時点ではまだわかっていなかった。
この記事では、会社員として働きながら副業で5年間に7,200万円を売り上げ、税務調査を受け、最終的に650万円の追徴課税を支払うことになったリアルな経験を、できる限り詳細にお伝えします。
「副業で稼いでいるけど、ちゃんと申告できているか不安」という方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
突然の税務署からの電話|最初に何が起きたか
税務調査は、多くの人にとって「自分には関係のない話」に聞こえます。
しかし実際には、副業で一定の収入を得ている人であれば、誰にでも来る可能性があります。
知らない番号→留守電→税務調査の通知
最初の着信を放置したのは、怪しい勧誘電話だと思ったからです。
しかし、自宅の固定電話に届いた留守電の内容は「税務署の〇〇と申します。ご連絡いただけますでしょうか」というものでした。
折り返してみると、担当の職員から「税務調査をさせていただきたい」という説明がありました。
会社員だったため、すぐに休みを取ることはできません。
「お盆休みならば対応できます」と伝えると、その場で日時と時間が決まりました。
その後、もう一度連絡があり、「2名で伺います」「帳簿は5年分ご用意ください」という内容が追加で伝えられました。
税務調査は突然来るものではありません。
事前に通知があり、日程を調整した上で行われるのが通常の流れです。
ただし、「通知があった=すぐに動かなければならない」ということも、この経験を通じて強く感じました。
税務調査とは何か・なぜ来るのか
税務調査とは、納税者が提出した申告内容が正確かどうかを税務署が確認する手続きです。
任意調査と強制調査の2種類がありますが、一般的な個人・法人に来るのはほとんどが任意調査です。
任意調査とはいえ、正当な理由なく拒否することは実質的に困難であり、誠実に対応することが求められます。
では、なぜ私のところに税務調査が来たのか。
明確な理由は教えてもらえませんでしたが、心当たりがないわけではありませんでした。
副業での売上が毎年一定額を超えていたこと。
申告内容にグレーゾーンの経費計上があったこと。
振込での売上だったため、金融機関からのデータが税務署に把握されやすい環境にあったこと。
これらが複合的に重なっていたのだと、後から振り返ると理解できます。
税務調査の前にやったこと|修正申告という選択
税務調査の通知を受けてから、お盆休みまでに約半月の猶予がありました。
この半月の使い方が、その後の結果を大きく左右しました。
税務調査に強い税理士を探した理由
最初に考えたのは「一人では対応できない」ということです。
自分は個人事業主として弥生会計を使って確定申告はしていましたが、税務調査の対応に関しては完全に素人でした。
グレーゾーンの経費が複数あることもわかっていたため、専門家に相談することを最優先にしました。
税理士を探したのは、主にWebサイトとYouTubeです。
「税務調査 税理士」という検索で複数のサービスを比較し、税務調査対応の実績が豊富な税理士事務所を選びました。
県外の事務所でしたが、相談料を支払って相談を行いました。
帳簿をざっと確認してもらった結果、「このまま調査に臨んだ場合、最大でおよそ800万円程度の追徴課税になる可能性がある」という試算が出ました。
800万円という数字を聞いたときの感覚は、正直「頭が真っ白になる」というものでした。
税理士からのアドバイスは明確でした。
「グレーゾーンの経費はすべて取り除いて、税務調査の前に自分で修正申告を出した方がいい。自分でここまで弥生会計でできているなら、十分対応できるはずだ。」
この言葉が、その後の行動の指針になりました。
5期分の帳簿見直しと修正申告の実態
税理士のアドバイスに従い、お盆休みまでの間、週末のたびに領収書と帳簿の見直しを続けました。
5年分の帳簿を一から見直すというのは、想像以上に時間と精神力を要する作業です。
「この交際費は経費として認められるか」「この外注費の証明書類は揃っているか」という確認を、5年分の全取引に対して行いました。
グレーゾーンと判断したものはすべて経費から外し、その上で5期分の修正申告を作成して税務署に提出しました。
修正申告とは、一度提出した確定申告に誤りや不足があった場合に、自分から訂正した申告書を提出する手続きです。
参考:国税庁 – 修正申告
修正申告は、税務調査が来る前に自発的に提出することで、重加算税(悪質な隠蔽があった場合に課される重い加算税)のリスクを下げられるという点で、重要な意味を持ちます。
また、この期間中にYouTubeで税務調査に関する動画を可能な限り視聴し、当日に聞かれること・言ってはいけないことなどを独学で学びました。
「税務調査で聞かれることに準備しておく」という姿勢は、結果的に当日の落ち着いた対応につながりました。
税務調査当日の流れ|10時から15時の一日で何が起きたか
準備を終え、税務調査の当日を迎えました。
当日の雰囲気と調査官とのやりとり
事前の連絡では「2名で伺います」と言われていましたが、実際に来たのは1名でした。
調査は自宅で行われ、10時から始まり15時には終わりました。
調査官の対応は、想像していたような圧迫的なものではなく、淡々と確認を進めていく、という印象でした。
帳簿・領収書・通帳・弥生会計のデータなどを提示しながら、質問に答えていく形式です。
事前に税務調査の流れを学んでいたことで、「答える範囲」と「答えを控えるべき範囲」についての判断がある程度できていたことは、精神的な余裕につながりました。
修正申告済みの場合の調査の進み方
調査の前に、事前に修正申告を提出していることを伝えると、調査官は「それは存じていませんでした」という反応でした。
その場で税務署に電話をかけて確認をとっていました。
修正申告を既に提出していたことは、調査の流れに影響を与えました。
「修正申告の内容は確認しますが、その税額はもう支払いましたか?」と聞かれ、「まだ支払っていません」と答えると、「延滞税が発生しますので、速やかに納付してください」という説明がありました。
修正申告をしたからといって、税金の納付を後回しにすることはできません。
延滞税は、納付期限を過ぎた日数に応じて日割りで加算されていきます。
当日の調査は予定通り15時前に終わり、弥生会計のデータなどを持ち帰り再計算するということになりました。
一日で終わった、という意味では「最悪の事態は避けられた」という感覚はありました。
ただし、「終わった」ではなく「ここからが本番」だったことは、その後すぐにわかりました。
追徴課税の全容|最終的にいくら払ったのか
税務調査が終わった後、最終的な追徴額が確定するまでにはまだ時間がかかりました。
当日の雰囲気と調査官とのやりとり
調査から一ヶ月後、帳簿などを取りに税務署へ行きました。
再計算した結果として提示された追加の税額は、次の通りでした。
修正申告で計上した税金:約500万円。
税務署の再計算による追加の所得税:約80万円。
消費税の追加:約70万円。
これらに加えて、約1ヶ月後に市県民税の追加・事業税の追加という通知が届きました。
5年分の税負担650万円の内訳
すべてを合計した最終的な追徴課税の総額は、約650万円です。
内訳を整理すると次のようになります。
修正申告による所得税の追加分:約500万円。
税務署再計算による所得税の追加分:約80万円。
消費税の追加分:約10万円。
市県民税・事業税の追加分:約60万円。
延滞税(納付が遅れた期間分):別途発生。
5年間の副業売上は約7,200万円でした。
5年間でこれだけの売上があったことを、修正申告の計算の時に改めて、「副業でよく稼いだな」という感覚と「それだけ税金が発生して当然だ」という冷静な認識が同時に来ました。
ただ、「稼いだ金額」と「手元に残る金額」の差がここまで大きくなることを、副業を始めた当初は十分に理解していませんでした。
この認識の不足が、今回の税務調査の遠因になったとも言えます。
ネット副業が税務署に狙われやすい理由
今回の経験を通じて、「ネット系の副業は税務署に狙われやすい」という話を税理士や税務調査官から聞きました。
なぜそうなのか、具体的に整理します。
売上がほぼ利益になる構造的な問題
実店舗を持つビジネスや製造業と違い、ネット系の副業は「売上に占める経費の割合」が非常に低い傾向があります。
仕入れコストがない。
家賃・光熱費が個人住居と混在していることが多く、按分が難しい。
人件費がかからないケースが多い。
その結果、売上のほぼ全部が課税対象の利益になります。
今回の5年間でも、広告費として約1,200万円、外注費として一定額を支払っていましたが、それ以外の経費はほとんどありませんでした。

売上7,200万円に対して経費が限られているため、課税される所得額が大きくなります。
課税所得が大きければ大きいほど、累進課税制度によって税率も高くなります。
参考:国税庁 – 所得税の税率
「ネット副業は経費がほとんど落とせない」という認識を最初から持っておくことが、税負担の現実を理解する上で重要です。
交際費・経費の落とし方の注意点
今回の調査で特に影響が大きかったのが「交際費」の扱いでした。
交際費とは、事業に関連した取引先や顧客との飲食・接待・贈答などにかかる費用のことです。
実店舗ビジネスや対面型のサービス業では、特定の顧客・取引先との交際費を経費として計上することができます。
しかし、ネット系の副業の場合、顧客が不特定多数であることが多く、「この費用がこの取引先との関係で発生した」という証明が難しくなります。
不特定多数を対象としたビジネスの交際費は、税務上の経費として認められにくいという判断があります。
「飲食費だから接待交際費として落とせる」という判断は、ネット系ビジネスでは通用しないケースがあるということです。
今回のグレーゾーン経費の多くが、この交際費の取り扱いに関するものでした。
さらに妻も手伝っていたので外注費という形で支払っていたのですが、税務署へ事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しないとダメだということもわかりました。
実際に働いてもらい給料で払っていたので経費として認められないと結構いたいです。
「ネットビジネスの場合、交際費は極めて認められにくい」という認識を持っておくことが、正確な申告への第一歩です。
会社員×副業の税負担の現実
今回の税務調査を通じて、会社員として本業を持ちながら副業で稼ぐ場合の税負担の現実を、改めて直視することになりました。
年収800万×副業300万以上の税率の壁
会社員としての年収と副業の所得は、合算して所得税が計算されます。
日本の所得税は累進課税制度を採用しています。
所得が増えるほど、適用される税率が高くなります。
たとえば会社員としての年収が800万円あれば、そこに副業の所得が加わる部分には、最低でも33〜40%程度の所得税率が適用されます。
副業で300万円の売上があっても、経費がほとんどなければ、所得税・住民税・事業税を合算した税負担率は40〜50%を超えることもあります。
「副業で300万円稼いだ」という数字が、実際の手取りとしては150万円前後になるケースもあるということです。
「稼いだ金額」と「手元に残る金額」の差をあらかじめ把握した上で副業に取り組むことが、後からの税負担ショックを防ぐための重要な認識です。
特にSNSやネットで「月〇〇万円稼ぎました」と発信している情報を参考にするとき、「その金額は税引き前なのか税引き後なのか」を常に意識することが大切です。
表面的な売上や収入の数字は、手取りとは大きく異なります。
法人化を検討すべきタイミングとは
今回の経験を経て、「法人化した方がよかったのではないか」という考えが浮かびました。
法人化(個人事業から法人格を取ること)には、税務上のメリットがいくつかあります。
役員報酬として自分への給与を設定することで、給与所得控除を使えます。
法人としての経費計上の範囲が広がります。
個人の所得税との分離によって、実効税率を下げられるケースがあります。
ただし、法人化にはデメリットもあります。
法人設立・維持にかかるコスト(登記費用・社会保険料・税理士費用など)が発生します。
赤字でも法人住民税の均等割(一定額)が課税されます。
事務処理の複雑さが増します。
一般的に「副業の年間売上が500万〜1,000万円を超えてきたタイミング」が法人化を検討する一つの目安とされています。
参考:freee – 個人事業主と法人の違いと法人化を検討する売上基準
ただし、法人化の判断は個人の状況(本業の年収・副業の業種・今後の成長見込みなど)によって大きく変わります。
税理士との相談を通じて、自分の状況に合ったタイミングで判断することが重要です。
今から振り返ると、副業の売上が年間1,000万円を超えた時点で法人化を検討するか、少なくとも税理士に相談すべきでした。
この経験から伝えたいこと|副業をやるなら税の知識は必須
650万円の追徴課税というリアルな数字を経験した上で、同じような状況にある方に伝えたいことを整理します。
SNSで「稼いだ」と発信することのリスク
XでもThreadsでもnoteでも、「副業で〇〇万円稼ぎました」という発信は日常的に見かけます。
もし本当にその金額を稼いでいるなら、正しく申告できているかを真剣に確認してほしいです。
「SNSで稼いだ額を発信している」ことが、税務署の調査対象を選定する際の一つの情報源になっている可能性は否定できません。
税務署はデジタル上の情報収集にも力を入れており、ネット副業の収益は把握されやすい環境が整っています。
「振込だから証拠が残る」という点でも、ネット系副業の売上は現金ビジネスより税務署から把握されやすい構造があります。
「現金商売の方がバレにくい」というのは現実として存在する認識かもしれませんが、その発想で申告を怠ることは、より大きなリスクを生みます。
正しく申告することが、長期的に最も合理的な選択です。
今からでも遅くない、正しい申告へのステップ
もし今の時点で「確定申告が正確にできていないかもしれない」という不安がある方は、次のステップを検討してください。
まず自分の過去の申告内容を確認します。
弥生会計・freee・マネーフォワードなどの会計ソフトを使っている場合は、過去の申告データを振り返ります。
次に、不安な点がある場合は税理士に相談します。
「税務調査に強い税理士」という観点でWebやYouTubeで探し、初回相談を活用します。
相談料がかかっても、後から何百万円もの追徴課税を受けるリスクを考えれば、事前の相談は圧倒的にコストパフォーマンスが高い投資です。
そして、修正が必要と判断した場合は、税務調査が来る前に自発的に修正申告を提出することを検討します。
自発的な修正申告は、税務署から指摘を受けた後に修正するより、加算税の軽減につながる可能性があります。
参考:国税庁 – 加算税の概要
副業で稼いでいることは決して悪いことではありません。
ただ、稼いだお金に応じた税金を正しく申告・納付することは、社会の一員としての義務です。
「知らなかった」では済まない部分が、税務の世界には多くあります。
今年の2024年分については、所得税60万円・消費税9万円に加えて、市県民税28万円・事業税2万円、さらに予定納税の通知として40万円を収めることになりました。
合計139万円が税金として消えていく感覚は、決して軽いものではありませんでした。
それでも、「正しく申告して正しく納付する」というサイクルを維持することが、長期的に副業を続けるための最も堅実な基盤だと、この経験を通じて確信しています。
まとめ|副業で稼ぐなら「税の現実」を直視することが第一歩
この記事では、副業で5年間7,200万円を売り上げた会社員が税務調査を受け、650万円の追徴課税を経験したリアルな経緯をお伝えしました。
この経験から得た教訓を最後に整理します。
税務調査は、副業で一定の売上がある個人のところにも来ます。通知があってから慌てるのではなく、日頃から正確な申告を心がけることが重要です。
ネット系副業は経費が少ないため、売上のほぼ全部が課税対象になります。「稼いだ金額」と「手取り」の差を正確に把握した上で副業に取り組むことが必要です。
グレーゾーンの経費は、税務調査が来る前に自分で整理しておくことが重要です。税務調査の前に修正申告を提出することで、最悪のケースを回避できる可能性があります。
会社員の年収と副業所得が合算されることで、税率が想像より高くなる場合があります。
年間500万〜1,000万円以上の副業売上がある場合は、法人化の検討も視野に入れましょう。
早めに税理士に相談することが、長期的に最もコストパフォーマンスの高い選択です。
「副業でしっかり稼ぐこと」と「税金をきちんと理解・納付すること」は、セットで考えるべきことです。
SNSで「稼いだ」と発信している方も、その裏側にある税負担の現実を知った上で、正しい申告を続けてほしいと思います。
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