耳掻き指は、輝く剣
小指。
フランス語でl'auriculaire(耳掻き指)とも呼ばれる。
私の左の耳掻き指は、かくどころじゃない。
怪我じゃない時は無かった。
teruki1様、画像お借りします。
始まりは帰宅部の車窓から
電車で帰宅する。何もやりたくないから。
本屋だけが当時の楽しみだった。
学校の図書館より生々しいと当時感じていた。
古本屋の匂いが好きになるにはまだ若過ぎた。
B00K0FFは物の価値がおかしい店だと今でも思う。
実家を出た後で、食費をあの店で捻出出来ていた時期があった。
中古屋や古本屋と、ブックオフを往復すると食っていけた。
せどり?そんな言い方しても格好良くない。
何だあれ。屑だよ。
…少し時間を巻き戻して高校時代。
帰りの電車の窓からいつも同じボクシングジムが見えた。
窓が曇ってる。ストーブ炊いてる。夏なのに?何やってんだ?
特別なきっかけはないが、身近な人が通ってたので安心して通ってみた。
いつもそう。誰かがやってるから。自分にも出来そうだから。
そんな根性無しの延長で始めたに過ぎない。
しかも、親が出してくれた金で。
有難い環境だったが、こんなに格好悪い事もなかなかない。
で。
生まれて初めて、本当のパンチを教わった。
そう、始まりっていつも、そんなに劇的ではない。文字にしてしまうと。 話を盛っても仕方ない。
あの時のショックを恐らく一生言葉に出来ない。
普通の人はあんな技術知らない。
アンパンチ?北斗何とか?ペガサス何とか?ゴムゴム?違う。
貴方は、何かをぶった事はあるでしょう。でも
パンチを打った事はないですね?
水鉄砲と電車位の違いがあります。腕力関係ない。
効率的に左拳を前に出す。こんな芸術があったんだ。
以下は芸術の話である。
Arte. 貴方は自分の体を芸術的に使った事がありますか?
体重以上の重さを、自らつくれますか?
1.2.
蓮っ葉に構えていたし、真面目に将来の事何か考えてなかった。
バブル終わって酷い事になってたなんてどうでも良かった。
初日から、辞める日まで1日たりとも欠かさなかった。拳を振るう事を。
不安やなんやかんやを吹き飛ばしたかった所もあるだろう。
嫌な奴の顔を思い浮かべサンドバッグを殴ったりもしてた。
盆暮正月は休みでしたけど、皆がやってる走り込みには参加した事もないです。煙草吸ってたからです。1ラウンド3分ならスタミナ保つからやらんでいーと思ってました。間違いなく皆にバレていたでしょう。
少年ジャンプだとろくブルの頃です。
恋も進学も犠牲にする気なかったです。あの治安の頃の渋谷を、女の子と歩いてて怖くなかったのは、間違いない。実際の出来事には触れない。
鉄パイプ振り回す奴が居ても、どうしよっか冷静に見れてた。
今でもですね。技術や知識は役に立たない。
人生の壁の高さは年齢や環境で変りゃしない。変わるのはいつでも自分だ。ハードルを上げているのが自分であれば、辛くない。
そうじゃない時にはアンタ壊れちゃうよ?
あの日々、一番の敵は鏡にうつる自分だった。
少しでも動きが教わった通りでないなら修正する。
綺麗に動けたなら反復する。ただ、左手のストレートだけを。
ジャブだけを。他のパンチは要らない。
ただそれが正しい動きなのかだけ考える生き物であれと
そう念じていた。
ほんでも流石に三月目で飽きました。「あぁもう飽きた」の日。
次の人参がブラ下がってきた。
そのタイミングで習ったのが右ストレート。
良く言う、ワンツーです。
左手から撃って、その反動を使って右ストレート。
アブラハムには七人の子の歌通り。
ん?
あの歌のほんとの意味知らない貴方は普通です、普通教わらないんでね。
そして拳が血と共に悲鳴をあげはじめた。
III.
1、2と来たら3。
3は左フックです。高河ゆん先生で有名な左フックです。
左手で今度は横から殴る訳です。ブーメランGO🪃です!そして
〝どんなに鍛えてもジョー(顎の事)を引っ掛けられたら倒れる〟というのをまに受けたのか、凄くギリギリの所でパンチを当てる練習をし始めました。おかげで
血塗れの薬指と小指が更に潰れた。
真っ平に。そしていつも血塗れ。
美大目指して毎日真面目に絵を描いてるのに?
空手じゃないのに真っ平。
物凄く綺麗な彼女とちゃんと毎晩バイバイして
ジムに通うのか?あたおかかよ?
鏡の前のダンスから、徐々にサンドバック打ちを許されたり、トレーナーにミット持って貰える様になって来る。
生まれて始めて、本当の力をこめて殴った事。
物凄く気分が良くて、暴力に酔いそうだった。
一方で、怖くて、絶対に人には使いたくないとも思った。
殴った事があるならあなたは加害者。
ネガティブな事自体は悪くない。不安や疑念がなければ、一方的にやられてしまう。そもそも生き物はそうして生き延びて来たのだ。
でも、この箱の中では、その本来の自分を遠ざけようと思った。
真一文字に這い寄って構わない。
何、相手の拳の重さは自分と変わらないのだ。
こっちもやるからそっちもどうぞと、
ガードだけはガッチリして、真一文字に相対するスタイルになった。
全然上手くもなきゃスタミナもない自分の唯一の武器が左フックだった。
これだけなら2回級上相手でもやれる自信があった。やってた。
さて、皆、何かに悩んでいますよね。
私もです。
ではしつもーん。
家族や子供や恋人をぶった事あんの?あんの?
あらま
どんな理由であろうが最低ですね。性別不問ですよ。
やり返されろ。
わしの人生は高跳びと左フックと絵とエレキベース。
今でもこの四天王が私を鎮護して下さっている。
モテるとか幸せとかあんま気にしなさんなよ。
君は選ばれし主人公なのかぃ?違うでしょう。
ザクは辛い思いしながら爆発しなよ。
皆そんなもんだ。
ただ何か一個、綺麗な想いをしなよ。
人生なんて、それだけでいい。
それだけで良いから
一つ何か抱け。
俺は左拳を抱いて死ねる。
君は何を抱く?
Claimh Solais。この滑らかな剣。他に特に何も要らない。
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Petite et dabitur vobis.