涙が止まらなかった日— 支援級の紹介プリントを見た放課後 (第29話)
ある日の放課後。
担任の先生から
「学年で行く校外学習はどうされますか?」
と聞かれた。
私は
「クラスにも行けていませんし、人酔いもひどい状態なので難しいと思います。す」
と答えた。
すると先生は
「わかりました。支援級でも校外学習を考えているので、それに行ければOKということで」
と続けた。
「それも厳しいと思います。人酔いもありますし、音にも敏感になっていて、バスやJRも、私たちと一緒でも乗れないので」
そう伝えると、先生は
「大丈夫ですよ。JRもバスも何本も出ているので、途中で降りることもできますよ」
と言った。
――降りるとかじゃなくて、“乗れない”んですけど。
言葉には出さなかったけれど、心の中でそう呟いていた。
「まぁ行く日が近づいてきたら……」
と、話を終わらせるしかなかった。
(ダメだ。まったく理解してもらえていない。
きっと、わからないんだろうな)
そう思って落胆していたとき、隣にいた指導員の先生が申し訳なさそうな表情をされていた。
その表情を見て、この会話のズレに気づいてくれている人がいる――それだけが救いだった。
そして先生は続けて言った。
「10月の終わりに全学年で人権学習の時間を取っています。そこで支援級の子どもたちを理解してもらうための紹介案を作ったので見てもらえますか?足してほしい言葉などがあれば言ってください」
そう言って見せられたのは、7枚ほどのプリントだった。
そこには
(男の子)(女の子)と分けられ、
得意なこと、苦手なこと、
理解するのに時間がかかることがあります――
そして最後には
「私たちは障害者です」
と、全学年に向けて伝える内容が書かれていた。
「少し時間をください」
そう言ってその日の懇談を終えた。
帰り道、涙をこらえることができなかった。
息子は確かに今、生きにくさを抱えている。
でも、それがひとつの“障害”なのだろうか。
たとえそうだったとしても、
それを全学年に伝えることで、息子が得るものは何なのだろう。
同情。
そして
「あの子は障害がある子」
という認識だけが残るのではないか。
その思いを主人に伝え、もう一度、恩師に相談してみることにした。
✳︎第30話は6月27日に続きます。
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