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筆ペンの楽しみ方

はじめに

白い紙へ筆先を置き、少し力を加えながら横へ動かす。

書き始めは細かった線が、押したところでふっくらと太くなり、力を抜くと再び細く整います。いつもと同じ「ありがとう」という言葉でも、筆ペンで書くと、一画ごとの速さや迷いまで文字の表情として残ります。

筆ペンは、墨を磨ったり筆を洗ったりせず、キャップを外せばすぐに筆文字を書ける道具です。宛名やのし袋を書くための実用品という印象がありますが、短い言葉をカードへ書いたり、季節の挨拶に小さな絵を添えたりと、趣味の表現にも広げられます。

「筆文字は形を整えるのが難しそう」「手本どおりに書けなければ楽しめないのでは」と感じる人もいるかもしれません。けれど、最初から達筆な文章を書く必要はなく、線の太さを変える練習や、好きな一文字を書くところから始められます。

筆ペンには、本物の筆に近い毛筆タイプと、少し硬めで扱いやすい筆文字サインペンタイプがあります。初めてなら、穂先が短く安定したものや、筆圧をかけすぎても線がつぶれにくいものを選ぶと、普段のペンに近い感覚で試せます。

今回は、自宅で月2回ほど筆ペンを楽しむ場合を中心に、費用、穂先とインクの選び方、最初にそろえる道具、基本の線と文字の練習、作品への広げ方、手や机を汚さず続ける工夫まで紹介します。


筆ペンの基本情報

主な楽しみ方 筆圧による線の変化を使い、文字や短い言葉を紙の上へ表現する

おすすめの頻度 月2回前後

1回の練習時間 約45分〜90分

短時間で楽しむ場合 約15分〜30分から

作品づくりを含む場合 準備と片付けを合わせて約90分〜120分

主な制作場所 自宅の机、書道教室、文具店や文化施設の講座

最初に取り組みやすいもの 基本線、ひらがな、自分の名前、季節の一文字、短い挨拶

必要な広さ A4用紙、筆ペン、手本を並べられる机の一角

一人で楽しめるか 手本を見ながら自分のペースで続けられる

天候の影響 ほとんど受けない

筆ペンは、軸の中にインクを入れ、筆のような穂先から少しずつ流して使います。墨液、硯、水入れを用意しなくてもよく、使い終わったら穂先を整えてキャップを閉めるだけなので、書道より小さな準備で始められます。

文字をきれいに整える練習だけでなく、線の太さや余白を生かして言葉を作品にする楽しみもあります。同じ文字を小さく端正に書くことも、大きく勢いを残して書くこともでき、目的に応じて表現を変えられます。

一回110分という横持ちデータは、筆ペンを持ち続ける時間としては長めです。実際には、手本を見る時間、練習、清書、乾燥、片付けを含めて考え、20分から30分ほど書いたら一度手を休ませるほうが無理なく続けられます。

筆ペンにかかる費用

筆ペンは、手持ちの紙を使えば数百円から始められます。横持ちデータでは初期費用約1万円、年間消耗品費約1万2,000円となっていますが、一般的な自宅練習にはそれほど大きな費用は必要ありません。

筆文字サインペンタイプ 約150円〜500円

毛筆タイプの筆ペン 約400円〜1,500円

練習帳や手本 約500円〜1,500円

練習用紙や便箋、カード 約300円〜1,500円

下敷きや机の保護用品 約300円〜1,000円

最初にそろえる費用 約1,000円〜3,000円

月2回、年間24回続ける場合 約2,000円〜8,000円前後

最初の一本は、黒の中字または細字が使いやすいでしょう。名前やはがき、短い言葉まで幅広く使え、筆圧による太細も確認できます。

筆文字サインペンタイプは、穂先がゴムや繊維で作られており、普通のペンに近い安定した感覚で書けます。線の強弱は毛筆タイプより穏やかですが、筆先が大きく開きにくいため、筆ペンに苦手意識がある人にも扱いやすい種類です。

毛筆タイプは、細い毛が束になった穂先を持ち、押し方や傾きによって線の幅が大きく変わります。最初は思った場所へ線を運びにくいものの、慣れると「はらい」や「はね」、やわらかな曲線を自然に表せます。

使い切りタイプは、インクがなくなったら本体ごと交換します。カートリッジ式はインクだけを補充でき、気に入った一本を長く使いやすい反面、本体と合う専用カートリッジを確認する必要があります。

練習用紙は、コピー用紙や不要な紙の裏面でも構いません。ただし、表面が滑りすぎる紙では穂先が止まりにくく、吸い込みの強い紙では線がにじむため、慣れてきたら筆ペン用の練習帳や、はがきに近い紙も試します。

費用を抑えるなら、黒の中字を一本、A4の練習用紙、手本を一つだけ用意します。複数の太さやカラーセットは、基本の線を書いてから、作りたい作品に必要な色だけ買い足します。

筆ペンをおすすめする3つの理由

1.一本の線に、力の変化がそのまま表れる

一般的なボールペンでは、筆圧を変えても線の太さは大きく変わりません。筆ペンでは、穂先を紙へ軽く触れさせれば細い線になり、少し押すと太く広がります。

たとえば、横線の始まりを少し押してから力を抜き、最後にもう一度止めると、一本の中に太さの変化が生まれます。ひらがなの丸みでは筆を軽く運び、漢字の力強い縦線では少し重さを加えるなど、文字の形に合わせて動きを選べます。

うまく書けなかった一画にも、速く動かしすぎたのか、力を入れたまま進んだのかという理由があります。同じ線を何度か書くと、力を抜く位置や筆先の戻り方が少しずつ分かってきます。

文字の形を写すだけでなく、手の動きまで紙へ残ることが、筆ペンの大きな魅力です。

2.墨や硯を出さず、短い時間でも一文字を書ける

書道では、筆、墨、硯、半紙などを並べ、使い終わった筆を洗う必要があります。筆ペンなら、机へ紙を一枚置き、キャップを外すだけで始められます。

休日にゆっくり取り組むこともできますが、平日の夜に自分の名前だけ練習する、季節の言葉を一つ書くといった短い楽しみ方もできます。道具を洗う必要がないため、書き終えたあとに大きな片付けも残りません。

しばらく間が空いても再開しやすく、旅行や帰省へ一本持っていくこともできます。年賀状や贈り物のカードを書く必要ができたときだけでなく、書きたい言葉が浮かんだ日にすぐ使える道具です。

準備の小ささによって、筆文字を日常へ取り入れやすいことが、筆ペンならではの始めやすさにつながります。

3.練習した文字を、そのまま暮らしの中で使える

筆ペンで書いた文字は、練習帳の中だけで終わりません。封筒の宛名、のし袋、年賀状、一筆箋、贈り物へ添えるカードなど、暮らしの中で使える場面があります。

「ありがとう」「おめでとう」「おつかれさま」といった短い言葉を小さなカードへ書くだけでも、印刷された文字とは違う温かさが残ります。字形が完璧でなくても、相手を思いながら書いた時間は自然に伝わります。

実用的な文字に慣れたら、好きな言葉を額へ入れたり、季節の色を使ってはがきを作ったりできます。黒一色の端正な文字から、カラー筆ペンを使ったやわらかな作品まで、同じ道具から表現を広げられます。

練習の成果を日常で使い、誰かへ手渡せることが、続ける理由にもなっていきます。

最初の一本は、穂先の硬さと用途で選ぶ

筆ペンを選ぶときは、「初心者用」という表示だけでなく、穂先の種類と書きたい文字の大きさを見ます。

硬めの筆文字サインペン

穂先が短く、普通のペンに近い感覚で扱えます。力を入れすぎても穂先が大きく広がりにくく、名前、宛名、小さなカードなどに向いています。

筆圧による太細は控えめですが、文字の形を整えることへ集中しやすいため、最初の一本として選びやすい種類です。

やわらかな毛筆タイプ

細い毛の束で作られており、線の太さを大きく変えられます。漢字の「はらい」や、ひらがなの流れる曲線を表現しやすく、本格的な筆文字に近い書き心地を楽しめます。

最初は穂先が開いたり、線が急に太くなったりすることがあります。小さな文字から始めるより、A4用紙へ大きな線を書き、穂先の動きを確かめてから文字へ進むと扱いやすくなります。

細字、中字、太字

細字は、名前、住所、小さなメッセージに向いています。ただし、穂先のわずかな動きが文字へ表れやすく、初心者にはかえって難しい場合もあります。

中字は、はがきからA4の練習まで幅広く使えます。最初に一本だけ選ぶなら、中字または細めの中字が無理のない選択です。

太字は、大きな一文字、見出し、作品づくりに向いています。日常の宛名書きには太すぎるため、作品を作りたくなってから加えます。

インクは染料と顔料の違いも確認する

筆ペンのインクには、水性染料と水性顔料があります。

染料インクは、穂先へなじみやすく、滑らかに書ける製品が多くあります。紙によっては水へ濡れるとにじみやすいため、水彩や雨に触れる郵便物へ使う場合は注意します。

顔料インクは、乾いたあとに水へ流れにくく、耐光性を持つ製品もあります。宛名、保存したいカード、水彩を重ねる作品などに向いていますが、商品ごとの表示を確認します。

どちらのインクでも、紙との相性によって乾く時間は変わります。はがき、光沢のある紙、表面加工されたカードへ書く前には、同じ紙の端や不要な一枚で試します。

墨色だけでなく、弔事用の薄墨、赤や青などのカラー筆ペン、金銀の筆ペンもあります。最初から多色をそろえず、黒で線の動きを覚えたあと、季節のカードやイラストに必要な色を加えます。

最初に用意したい道具

黒の筆ペン 硬めまたは短めの中字を一本

練習用紙 A4のコピー用紙、筆ペン練習帳、半紙など

手本 楷書を中心に、線順と文字の中心が分かるもの

下敷き 紙の滑りと机へのインク移りを防ぐもの

鉛筆と定規 中心線や文字を置く位置の目安を作る

ティッシュや不要な紙 インク量の確認や穂先の調整に使う

クリアファイル 練習した紙や完成作品を保管する

最初から必要ないものは、多数のカラー筆ペン、高価な万年毛筆、複数冊の練習帳、専用の収納箱です。黒の一本で基本の線と短い言葉を練習すれば、自分に必要な穂先の硬さや太さが分かります。

机には下敷きか不要な紙を敷きます。筆ペンのインクは薄い紙を通して机へ移ることがあり、衣服へ付くと落ちにくい場合もあるため、汚れても困らない服装で始めると安心です。

筆ペンを持つ前に、紙と姿勢を整える

筆ペンを強く握ると、手首が動かず、線の太さも変えにくくなります。親指、人差し指、中指で軽く支え、普通のペンより少し立てて持ちます。

毛筆タイプでは、軸を傾けすぎると穂先の側面が広く当たり、線が急に太くなります。最初は紙に対してやや立て、手首だけで動かさず、腕全体を小さく運びます。

椅子へ深く座り、両足が床へ着く高さにします。紙を身体の正面へ置き、書く場所に合わせて少しずつ動かします。紙の端へ書くたびに身体をねじるより、紙そのものを移動させるほうが姿勢を保ちやすくなります。

筆先へ顔を近づけすぎると、文字全体のバランスが見えません。少し離れて紙全体を眺め、文字の中心と余白を確認します。

最初の35分は、文字より線から始める

初回から自分の名前を何度も清書するより、筆先がどのように動くかを知る練習から始めます。

1.筆先とインクを確認する

キャップを外し、不要な紙へ短い線を書きます。インクがすぐ出ない場合は、製品の説明に従って軸やカートリッジを準備します。

穂先を机へ強く押しつけたり、振ってインクを出そうとしたりしません。インクが多すぎるときも、ティッシュで強くつままず、不要な紙へ軽く線を書いて調整します。

2.細い線と太い線を書く

筆を軽く触れさせ、細い横線を五本ほど書きます。次に少し力を加え、太い横線を書きます。

太くしようとして筆を寝かせるのではなく、同じ角度を保ちながら紙へ加える力を変えます。線の途中で細くしたり太くしたりして、筆圧の変化も確かめます。

3.縦線と止めを練習する

上から下へゆっくり縦線を引き、最後に一度止まります。終点で押しつぶすのではなく、線を受け止めてから筆先を静かに離します。

縦線が左右へ曲がる場合は、手首だけでなく腕を一緒に下へ動かします。

4.点、はらい、はねを書く

軽く押してから離す点、左下へ力を抜きながら進むはらい、線の終わりで方向を変えるはねを練習します。

大きく書けば、穂先がどこで開き、どの位置で戻ったかを確認しやすくなります。一つの動きを数回ずつ行えば十分です。

5.ひらがなを二文字選ぶ

「あ」「の」「し」「つ」など、曲線や筆圧の変化を含む文字を選びます。小さく整えるより、手のひらほどの大きさで書きます。

ひらがなは一画の流れが長いため、途中で筆を止めすぎず、太くする場所と細くする場所を考えます。

6.漢字を一文字書く

「春」「花」「月」「心」など、好きな一文字を選びます。手本を見ながら、文字の中心、横線の長さ、余白を確認します。

一枚目と二枚目を比べ、直すところを一つだけ決めます。すべてを同時に整えようとせず、「次は一画目を短くする」というように具体的に考えます。

文字を整えるときは、線より先に余白を見る

筆文字をきれいにしようとすると、一画ずつ手本へ近づけることばかり考えがちです。けれど、文字の印象は線だけでなく、線と線の間に残る白い部分によっても決まります。

漢字では、左右の幅、上と下の大きさ、囲まれた部分の空間を見ます。中心へ線が集まりすぎると窮屈に見え、すべてを広くすると文字がまとまりません。

ひらがなは、丸みの内側にある空間と、次の線へ向かう流れを見ます。一画を正確に写すだけでなく、文字全体がどちらへ傾いているかを確認します。

手本の上へ薄い紙を重ねてなぞる練習もできますが、なぞったあとには手本を横へ置き、自分だけで一度書きます。なぞり書きだけでは、文字を紙のどこへ置くかを自分で判断する練習になりにくいためです。

自分の名前は、大きく分けて練習する

自分の名前は、実際に使う機会が多い一方、複数の文字を一度に整えようとすると難しく感じます。

最初は名字と名前を分け、一文字ずつ大きく練習します。次に二文字を縦へ並べ、文字の中心と間隔を確かめます。

画数の多い文字は少し大きく、画数の少ない文字は広がりすぎないようにします。すべてを同じ正方形へ詰めるのではなく、文字ごとの形を残しながら全体の幅をそろえます。

のし袋や封筒へ書く前には、同じ大きさの紙へ配置を試します。いきなり本番の紙へ書かず、中心線と書き始めの位置を確認してから清書します。

失敗できない場面で初めて筆ペンを持つのではなく、普段から自分の名前だけでも繰り返しておくと、必要なときに落ち着いて書けます。

短い言葉を一枚の作品にする

基本の線に慣れたら、好きな言葉を一枚へ書きます。

「ありがとう」「おつかれさま」「春の風」「よい一日を」のように、二文字から七文字ほどの言葉が始めやすいでしょう。長い文章より、文字の大きさと余白へ気持ちを向けられます。

最初に、紙のどこへ文字を置くかを鉛筆で薄く示します。中央へ大きく書く、右下へ小さくまとめる、縦書きにして左側へ広い余白を残すなど、同じ言葉でも配置によって印象は変わります。

清書前には、別の紙へ三つほど配置案を書きます。文字そのものを変えなくても、間隔や大きさを変えるだけで、穏やかにも力強くも見えます。

墨色だけで仕上げる方法もあれば、乾いたあとに色鉛筆や水彩で小さな模様を添える方法もあります。最初は文字を主役にし、飾りは一か所だけにするとまとまりやすくなります。

はがきやカードへ書くときの工夫

はがきやカードは、練習用紙より小さく、表面の質もさまざまです。書きたい筆ペンが紙へ合うか、不要な一枚で試してから清書します。

にじみやすい紙では、筆を止めた場所にインクが広がります。素早く書こうとするより、筆圧を強くしすぎず、一画ごとに必要な位置だけで止めます。

表面加工された紙では、乾くまで時間がかかることがあります。書いた直後に重ねたり、手で触れたりせず、平らな場所へ置いて十分に乾かします。

カードへ短い言葉を書く場合は、端まで文字を詰めません。上下左右に余白を取り、文字の外側へ紙の色が見えるようにします。

季節のカードなら、春は淡い桃色、夏は青、秋は茶や橙、冬は銀など、カラー筆ペンを一色だけ加える方法もあります。複数の色を均等に使うより、黒い文字の一部や小さな模様だけに色を置くと落ち着きます。

筆ペンで小さな絵も描ける

筆ペンは文字だけでなく、線の強弱を生かした簡単な絵にも使えます。葉、枝、花、猫、魚、山など、輪郭を少ない線で表せる題材が向いています。

葉を描く場合は、穂先を軽く置き、途中で少し押し、最後に力を抜きます。一筆の中に太い中央部と細い先端ができ、短い線だけでも葉らしい形になります。

濃い黒だけでなく、水筆や水を含ませた筆で乾く前の線を少し広げれば、淡い墨のような表現を作れる製品もあります。ただし、耐水性の顔料インクでは乾いたあとに広がりにくいため、使っているインクの性質を確認します。

文字の横へ小さな枝や花を添えるだけでも、一枚のカードに季節感が生まれます。絵を細かく描き込むより、文字と同じ線の勢いを残すと自然になじみます。

うまく書けないときは、穂先より手の力を確かめる

線が急に太くなったり、穂先が割れたりすると、筆ペンそのものが使いにくいと感じることがあります。けれど、強く握りすぎていることや、紙へ押しつけたまま動かしていることが原因の場合もあります。

書く前に肩を下げ、指を軽く開閉します。軸を支える力を少し抜き、筆先が紙の上を動ける余裕を作ります。

穂先が二つに割れた場合は、不要な紙へ数本線を書きながら整えます。指やティッシュで強く挟むと毛を傷めたり、インクが広がったりするため、製品の案内に従います。

線がかすれる場合は、書く速度が速すぎる、紙が粗い、インクが少ないといった原因が考えられます。かすれを失敗と決めず、力強い作品の表情として残せることもあります。

毎回完璧な線を目指すより、同じ一文字を日付と一緒に残します。数か月後に比べると、筆の止まり方や文字の間隔が自然に変わっていることへ気づけます。

筆ペンを長く使うための扱い方

使用後は、穂先の向きを整えてからキャップを確実に閉めます。キャップが緩いままだと穂先が乾き、インクが出にくくなることがあります。

激しく振ったり、強い衝撃を加えたりすると、インクが漏れたり吹き出したりする場合があります。インクが出にくいときは、製品ごとに指定された方法を確認します。

カートリッジ式では、対応するインクを使います。形が似ていても別製品のカートリッジは装着できないことがあるため、筆ペン本体の品番を残しておくと買い足しやすくなります。

筆先へ紙の繊維が付いた場合は、無理に引っ張らず、不要な紙へやさしく線を書いて取り除きます。水で洗えると明記されていない筆ペンを、一般的な毛筆のように水洗いしません。

保管するときは、高温や直射日光を避けます。製品によって横置きや穂先を上にした保管が案内される場合があるため、包装や説明書を確認します。

自宅で安全に楽しむために

筆ペンは特別な保護具を必要とする画材ではありませんが、インクは衣服や家具へ付くと落ちにくいことがあります。机へ下敷きや保護紙を敷き、書いている途中に紙から穂先を大きく振り上げないようにします。

飲み物は筆ペンと反対側へ置き、筆記中は飲食を控えます。インクが手へ付いた場合は、広げる前に紙や布で拭き、製品の案内に従って洗います。

幼い子どもやペットのいる家庭では、筆ペンと交換カートリッジを手の届かない場所へ保管します。筆記や描画以外には使わず、口へ入れたり皮膚へ塗ったりしません。

長時間同じ姿勢で書き続けると、指、手首、肩、首に負担がかかります。20分から30分ほどで一度筆を置き、指を開閉し、肩を回して姿勢を変えます。

手首や指に痛みやしびれがあるときは、力を入れて練習を続けません。書く文字を大きくし、筆を握る力を減らしても違和感が続く場合は、その日の練習を終えます。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 太い線と細い線を一本ずつ書く

最初は文字を書かず、横線、縦線、点、曲線を大きく練習します。軽く触れる線と、少し押した線を比べ、筆圧によってどの程度太さが変わるかを確かめます。

線が曲がったり、終わりが太くなりすぎたりしても構いません。筆先の動きを目で追い、自分の手と線の関係を知る段階です。

第2段階 名前や短い言葉を安定して書く

基本線を文字へ組み合わせ、自分の名前、挨拶、季節の言葉を練習します。手本を見ながら、文字の中心と線の間に残る余白を整えます。

同じ言葉を一日に何十枚も書くより、三枚ほど書いて比べ、次に直すことを一つ決めます。少ない回数でも、目的を持って書くことで変化が見えやすくなります。

第3段階 紙と穂先を使い分ける

はがきには細めの筆ペン、大きな一文字にはやわらかな中字というように、用途へ合う道具を選びます。紙によるにじみや、染料インクと顔料インクの違いも分かってきます。

黒だけでなく、薄墨やカラー筆ペンを作品へ取り入れます。道具を増やすことより、どの線をどの筆ペンで書くかを考える楽しさが中心になります。

第4段階 言葉と余白を一枚の作品へまとめる

短い詩、好きな言葉、季節の挨拶などを選び、紙の大きさと文字の配置を考えます。すべてを同じ大きさで書かず、見せたい一文字を大きくし、周囲へ余白を残します。

小さな絵や色を添える場合も、文字が埋もれないよう全体を整えます。練習した字を書くことから、言葉をどのように見せるかを選ぶ制作へ広がります。

第5段階 暮らしの中で書き、人へ届ける

一筆箋、手紙、年賀状、贈り物のカードなど、実際に人へ渡す物へ筆文字を使います。上手さだけでなく、相手や場面に合う言葉、文字の大きさ、墨色を考えます。

自宅へ季節の一文字を飾る、作品を小さな冊子へまとめる、教室や地域の展示へ参加するなど、自分に合った形で筆文字を共有できます。販売や資格を目標にしなくても、言葉を丁寧に書いて届けることが、筆ペンの豊かな続け方になります。

五つの段階は、技術の優劣を示す順番ではありません。基本線へ戻る日も、名前だけを書く日も、そのときの生活に合った筆ペンの楽しみ方です。

あわせて楽しみたい関連する趣味

書道

書道は、筆、墨、紙を使い、文字の形だけでなく、墨の濃淡や筆を運ぶ速度まで表現する趣味です。筆ペンで線の太さや「止め・はね・はらい」に慣れたあと、本物の毛筆と墨の感触を試したい人に向いています。

墨を磨り、筆へ含ませ、半紙へ一文字を書く時間には、筆ペンとは違う準備と余韻があります。


カリグラフィー

カリグラフィーは、平らなペン先やブラッシュペンを使い、アルファベットの線と配置を整える趣味です。筆ペンで身につけた筆圧の変化や、短い言葉を一枚へ配置する感覚を、英字のカードやレタリングへ広げられます。

日本語とアルファベットでは文字の構造が異なるため、同じ筆記具でも新しいリズムを楽しめます。


手紙を書く

手紙を書く趣味では、便箋やカードへ近況や感謝を記し、誰かへ届けるまでの時間を楽しみます。筆ペンで宛名や一言を書けば、練習した文字を実際の暮らしの中で使えます。

長い文章をすべて筆ペンで書かず、題名、相手の名前、最後の一言だけに使う方法もあり、普段のペンとの組み合わせも楽しめます。


一本の線から、言葉の表情が生まれる

最初の一日は、整った文章を書き上げなくても構いません。紙の上へ細い線を一本、太い線を一本書き、次に好きな一文字を大きく置いてみます。

少し押したところでは線が太くなり、力を抜いた先には細い余韻が残ります。同じ字をもう一度書いても、筆を置く位置や動かす速さが変われば、最初とは違う表情になります。

筆ペンは、字の上手な人だけが使う道具ではありません。普段使っている言葉を少しゆっくり書き、線の太さや余白を眺め直すための、小さな表現の道具です。

次の休日には、黒の中字を一本と、何枚かの練習用紙を用意してみてください。「春」「月」「ありがとう」など、今書きたい言葉を一つ選び、三枚だけ書き比べます。

最後の一枚が一番整っていなくても、その日の手の動きや選んだ言葉が残ります。一本の筆ペンから始まった線は、やがて自分の名前や短い挨拶となり、誰かへ渡せる一枚へ育っていきます。


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