見出し画像

弓道の楽しみ方

弓道場へ入ると、話し声より先に、弦が空気を切る短い音が聞こえてきます。

射手が静かに弓を開き、矢を放つ。少し遅れて的から乾いた音が返り、そのあとには、もう一度静けさが残ります。

「腕の力が弱くても弓を引けるのかな」
「最初から弓や矢、袴をそろえる必要があるのだろうか」
「的へ当てられない間も、楽しめるのかな」

弓道は、矢を的へ当てることだけを競うものではありません。足を置き、姿勢を整え、弓を開き、矢を放ったあとまで、複数の動作を一つの流れとしてつないでいきます。

最初の稽古では、矢を放たないこともあります。礼の仕方、道場での動き方、ゴム弓を使った形の練習から始め、安全に弓を扱える準備を少しずつ整えます。


弓道の基本情報

一回の標準実施時間 約80分

短い講習や体験 約55分から

着替えや移動を含む総所要時間 約155分

想定頻度 週1回前後

主な場所 弓道場、体育館内の弓道施設、地域の弓道教室

一人での実施 経験を積んだ後は可能だが、初心者は必ず指導者の管理下で学ぶ

複数人での実施 同じ射場で順番と安全確認を共有しながら稽古する

施設への依存 非常に高く、自宅や一般の屋外で矢を放つことはできない

天候の影響 屋根のある道場が多いが、寒暖差や風の影響を受ける施設もある

80分ほどの稽古では、準備、礼法、基本動作、ゴム弓や巻藁での練習、的前での行射、片づけなどを行います。初心者教室では参加者が順番に練習するため、自分が弓を引く時間だけでなく、ほかの人の射を見て学ぶ時間も含まれます。

道場までの移動、受付、着替え、清掃まで考えると、休日には二時間半ほど見ておくと落ち着いて参加できます。週1回の稽古を中心にしながら、自宅ではゴム弓や姿勢の確認だけを短く行う形が現実的です。

弓道の費用

見学 無料の場合が多い

体験・初心者教室 無料〜約1万円

道場備品を借りる期間の初期費用 0円〜約2万7,000円

弓道衣・弽・矢などを購入する場合 約4万〜6万円

弓まで含めて一式を購入する場合 約8万〜15万円

週1回程度続ける年間費用 約3万〜15万円

個別指導や大会参加を多く含む場合 年間30万円を超えることもある

初心者向けの体験や地域教室では、弓、矢、弽などを借りられることがあります。最初はジャージーなどの動きやすい服と靴下を用意し、教室で指定されたものだけを少しずつ購入します。

初期費用約2万7,000円は、教室で弓具を借りながら、ゴム弓、足袋、胸当て、小物、簡単な稽古着などを用意する場合の目安です。弓道衣、袴、帯、弽、矢まで購入すると、数万円の予算が必要になります。

弓は、身体の大きさだけでなく、引く長さと現在の力に合うものを選びます。初心者が強い弓を自己判断で購入しても、安全に開けないことがあるため、長く続けられると分かってから指導者と相談します。

入力上の年間約30万2,000円は、毎回8,000円ほどの個別指導を年間36回受け、弓具や交通費も加える場合に近い金額です。地域の初心者教室や連盟の稽古を利用し、備品を借りる場合は、もっと低い費用から続けられます。

費用を抑えるうえで大切なのは、安価な中古品を急いで買うことではありません。弽は手に合うか、矢は必要な長さがあるか、弓は現在の力で扱えるかを確認し、購入時期を指導者に相談します。

3つのおすすめ

1.一本の矢に、八つの動作がつながります

弓道には、射法八節と呼ばれる基本の流れがあります。

足を定める「足踏み」、身体を整える「胴造り」、弓矢を構える「弓構え」、弓を上げる「打起し」、左右へ開く「引分け」、力が満ち合う「会」、矢を放つ「離れ」、放った後の姿勢を保つ「残心」です。

初心者のうちは、足へ意識を向けると手の位置を忘れ、弓を開こうとすると肩が上がります。一つずつ教わった動きを順番につなげても、最初はどこかで流れが止まります。

それでも繰り返すうちに、足元から整えた姿勢が腕へつながり、呼吸と動作が少しずつ同じ流れへ収まっていきます。的へ当たったかどうかだけでなく、前回より落ち着いて八つの動作を終えられたことにも、はっきりした手応えがあります。

2.矢の行き先から、自分の動きを振り返れます

矢が的の右へ外れたとき、単に狙いが右だったとは限りません。身体が傾いた、弓を握り込んだ、離れの瞬間に腕が動いたなど、それまでの動作が結果へ表れていることがあります。

そのため弓道では、外れた矢をすぐ失敗と決めつけません。指導者に姿勢を見てもらい、足の位置、肩の高さ、弓の開き方を一つずつ確かめます。

反対に、形が崩れたまま偶然的へ入ることもあります。的中はうれしいものですが、同じ射をもう一度再現できるとは限りません。

一本の結果に気持ちを揺らしすぎず、次の射で一つだけ整える。その積み重ねによって、的を見ることと、自分の身体を観察することが同じ練習になっていきます。

3.矢を放たない時間にも、学べることがあります

弓道場では、自分の順番を待つ時間があります。その間も、ただ休んでいるわけではありません。

経験者が道場へ入る動き、弓を持つ手、足を置く位置、矢を放った後の姿勢を見ると、説明だけでは分かりにくかった流れが少しずつ見えてきます。同じ動作でも、射手によって速さや呼吸の置き方には違いがあります。

複数人で射場へ入る場合は、前後の人と動きを合わせます。自分だけ早く進まず、前の射手の状況と周囲の安全を見ながら動くことも稽古の一部です。

静かに待ち、ほかの人の射を見て、自分の一射へ向かう。身体を動かしていない時間まで含めて集中が続くところに、弓道ならではの奥行きがあります。

初めての道場では、初心者向けの指導時間を確認する

弓道場が近くにあっても、いつでも未経験者が利用できるとは限りません。個人利用には一定の経験や認定が必要で、初心者は定期教室や地域連盟の講習から始める施設が多くあります。

問い合わせるときは、未経験であること、年代、参加できる曜日を伝えます。見学だけできるか、初心者教室の募集時期、必要な持ち物、弓具の貸出範囲を確認します。

特に見ておきたいのは、次の項目です。

大人の未経験者を受け入れているか

教室の回数と欠席時の扱い

弓、矢、弽、ゴム弓を借りられるか

服装、靴下、髪型の決まり

入会金、受講料、保険料

教室終了後も稽古を続けられるか

弓具を購入する時期

見学では、矢が飛ぶ方向へ近づかず、案内された場所で静かに見ます。道場ごとに入退場、履物、撮影、会話の決まりがあるため、初回は周囲をまねる前に担当者の説明を聞きます。

最初の弓具は、価格より身体と段階に合わせて選ぶ

弓道では、道具を一式まとめて買うより、練習段階に合わせてそろえます。

最初はゴム弓を使い、弓を開く方向と射法八節の形を覚えます。その後、矢をつがえずに弓を引く素引き、近い距離の巻藁、的へ向かう的前というように、指導者の判断で進みます。

弓は、強いほど上級者らしいわけではありません。今の身体で無理なく開け、姿勢を崩さず練習できる強さを選びます。

矢は、身長だけでなく実際に弓を引く長さに合わせる必要があります。短すぎる矢は危険につながるため、採寸を受ける前に購入しません。

弽は右手へ直接付け、弦を取りかける大切な道具です。指の長さや手の形に合わないものを価格だけで選ばず、試着して指導者や弓具店に確認してもらいます。

弓道衣と袴も、入会直後から必要とは限りません。教室中は運動着で参加し、射場での動きに慣れてから指定の服装をそろえる場合があります。

初めての一日は、矢を放つ前の動きから

初日の目標は、的へ矢を当てることではありません。道場の決まりを知り、安全な姿勢で基本動作を一つ経験することです。

見学と説明

受付を済ませ、履物を替え、道場内の区域について説明を受けます。射場、矢が飛ぶ矢道、的のある的場には、それぞれ安全上の役割があります。

弓や矢へ自由に触れず、担当者から渡されたものだけを扱います。

礼と姿勢

立った姿勢、座り方、礼の仕方、道場内での歩き方を教わります。弓道では、射る動作だけでなく、射場へ入る前後の動きも大切です。

ゴム弓で基本動作を行う

ゴム弓を使い、足踏みから残心までの流れを確かめます。最初は弓を大きく開こうとせず、肩を上げずに左右へ力を広げる感覚を探します。

弓を持つ

指導者の許可が出たら、弱い弓を使って持ち方や素引きを行います。初回に矢を放たなくても遅れているわけではありません。

最後に使用した道具を戻し、道場を清掃し、礼をして終えます。稽古の始まりから片づけまでを一度経験できれば、次回から自分の動きに少し余裕が生まれます。

最初に必要なもの

最低限必要なもの

動きやすい服、靴下、飲み物、タオルが基本です。前ボタン、胸ポケット、ひも、装飾などが弦へ触れそうな服は避けます。

あると便利なもの

髪をまとめる用品、小さな着替え袋、筆記用具があると、説明された射法や道場の決まりを記録できます。

続けるなら用意したいもの

指導者と相談しながら、弽、胸当て、足袋、弓道衣、袴、帯、矢をそろえます。購入する順番は教室や道場によって異なります。

後回しにできるもの

自分専用の弓、高価な矢、竹弓、大型の弓具ケース、大会用の用品は、最初から必要ありません。現在の射法と身体に合う仕様が分かってから選びます。

入力に含まれていた競技用シューズ、換気・防じん用品、化学防護用品は、一般的な弓道の入門用品ではありません。道場内では足袋や靴下を使うことが多く、必要な服装は施設の案内に従います。

安全に楽しむために

弓道では、矢を放つ方向と周囲の確認が最優先です。指導者の合図がない状態で矢をつがえたり、弓を引いたりしません。的場へ人が入っている間は、射る準備も止めます。

弓、弦、矢には、割れ、曲がり、傷、緩みがないかを確認します。異常を見つけた場合は自己判断で使わず、指導者へ渡します。

矢をつがえずに弦だけを放つ行為は、弓へ強い負担をかけるため行いません。自宅や公園で実際の弓矢を使った練習をせず、自宅では許可されたゴム弓や姿勢確認にとどめます。

髪が長い場合はまとめ、腕時計、長いアクセサリー、弦へ触れそうな衣類は外します。胸当てなどの使用は、体格や服装、道場の指示に合わせます。

弓を開く際に肩、肘、手首へ痛みがある場合は、強い弓で繰り返しません。違和感を指導者へ伝え、弓の強さと姿勢を見直します。鋭い痛みやしびれが続く場合は稽古を休み、必要に応じて医療機関などへ相談します。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

1.礼とゴム弓から始める

道場の決まりを覚え、射法八節をゴム弓でたどります。矢を放つ前に、安全な動作と姿勢を身に付けます。

2.巻藁で一射の流れを整える

近い距離の巻藁へ向かい、狙いより動作へ意識を置きます。同じ姿勢で弓を開き、離れのあとまで形を保ちます。

3.的前で自分の射を確かめる

的へ向かって矢を放ちます。的中だけを追わず、矢の行き先と指導者の助言から、次に整える部分を一つ選びます。

4.体配と射を一つへつなげる

射場への入退場、複数人での動き、間合い、礼法まで含めて一つの行射を整えます。審査や射会への参加も選択肢になります。

5.稽古の場を支える

初心者の安全を見守る、道場の準備や清掃を行う、地域の射会を手伝うなど、射ること以外の役割にも関わります。段位や大会を目指さず、同じ道場で長く稽古を続ける形もあります。

五つは優劣を示す段階ではありません。巻藁へ戻ることも、基本動作を繰り返すことも、射を整えるための自然な流れです。

あわせて楽しみたい関連する趣味

アーチェリー

アーチェリーも、弓で矢を放ち、的を狙う競技です。洋弓の照準器や用具、得点競技としての性格など、弓道とは異なる仕組みがあり、二つを比べると姿勢や狙い方の違いが見えてきます。

剣道

剣道は、礼、構え、間合い、残心を大切にしながら、竹刀で相手と向き合う武道です。道具と動作は異なりますが、技の前後まで含めて一つの稽古と考える点に、弓道と通じるものがあります。


書道

書道では、筆を紙へ置く前の姿勢から、一画を書き終えたあとの余白までを味わいます。一本の線へ力と速さが表れる感覚は、一射の流れを静かに整える弓道ともよくなじみます。

弓を開き、矢を放つ。

的へ届いた音が静かな道場へ返ってきても、射手はすぐに姿勢を崩しません。矢が手を離れたあとまで、先ほどの一射は続いています。

今日できる最初の一歩は、弓具を探すことではなく、近くの弓道場で見学や初心者教室を受け付けているか調べることです。

射場の外から一本の矢を見送り、その前後にある静かな動きまで目に入ったとき、弓道は的へ当てる競技だけではなく、一射へ向かう時間を整える趣味として見え始めます。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

ほかの趣味やレジャーも探してみたい方は、こちらの一覧から気になるものを覗いてみてください。

この記事作成に使用している元情報や、データの整理方針についてはこちらで紹介しています。


いいなと思ったら応援しよう!