編み物の楽しみ方
毛糸を指へかけ、編み針でひとつの輪をつくる。
その輪へ次の糸を通し、同じ動きを繰り返していくと、細い一本の毛糸が少しずつ面へ変わっていきます。最初は手元ばかりを見ていても、何段か編める頃には、糸だったものが小さな布になっていることに気づきます。
編み物というと、セーターや大きなマフラーを何週間もかけて作る趣味を思い浮かべるかもしれません。編み図に並ぶ記号や、棒針、かぎ針、毛糸の太さといった言葉を見て、始める前から難しく感じる人もいるでしょう。
けれど、最初から身につけるものを作る必要はありません。
一玉の毛糸で、小さなコースターや四角いマットを編む。基本の動きを繰り返し、少しくらい形がゆがんでも、最後まで仕上げてみる。
それだけでも、編み物らしい楽しさを十分に味わえます。
編み目を間違えたときも、糸を少し戻せばやり直せます。うまくいかない部分をほどき、もう一度編み直す時間も、作品を完成へ近づける工程のひとつです。
急いで完成させるのではなく、今日は数段だけ、次の休日に続きを編む。
そうして少しずつ手の中へ形が増えていくことが、編み物の魅力です。
今回は、自宅で月2回ほど編み物に取り組む場合を中心に、基本情報、費用、おすすめする理由、棒針編みとかぎ針編みの違い、最初の作品、毛糸と道具の選び方、編み間違いへの対応、身体へ負担をかけにくい続け方まで紹介します。
編み物の基本情報
主な楽しみ方 毛糸と編み針を使い、小物、マフラー、バッグ、あみぐるみ、衣類などを作る
おすすめの頻度 月2回前後
1回の制作時間 約110分
短時間で楽しむ場合 約35分から
準備と片付けを含む総所要時間 約130分
主な場所 自宅の机、ソファ、作業スペース
代表的な方法 かぎ針編み、棒針編み
最初に必要なもの 作りたい作品に合う毛糸、対応する編み針、はさみ、とじ針
始めやすさ 少ない道具で自宅から始められ、資格や専用施設も必要ない
天候の影響 ほとんどなく、季節や時間を問わず取り組める
難しく感じやすいところ 糸を引く力をそろえること、編み目を数えること、編み図の記号を読むこと
編み物は、毛糸と一本または二本の編み針があれば始められる趣味です。大きな作業台や専用の機械は必要なく、道具を小さな袋へまとめておけば、空いた時間に取り出して続きを編めます。
一つの作品を、一回の作業で完成させる必要もありません。月2回、1回110分ほどの時間を取るだけでも、小さな作品なら少しずつ形にできます。平日には15分だけ編み、休日にまとめて続きを進めるような楽しみ方もできます。
始めるまでの負担は小さい一方、完成するまでの時間は作品によって大きく異なります。コースターなら一日で完成することがありますが、マフラーやバッグには数回、セーターには数週間から数か月かかることもあります。
編み物では、この時間の長さも魅力になります。
一段ずつ積み重ねた跡が、そのまま作品へ残る。以前は難しかった編み方が、作品の後半では自然にできるようになっている。
完成したものだけでなく、編んできた時間まで手元へ残る趣味です。
編み物にかかる費用
編み物は、最初の作品を小さくすれば、比較的少ない費用で始められます。
自宅にはさみがあり、かぎ針または棒針を一本だけ購入するなら、必要になるのは毛糸と編み針、とじ針などです。初めから多くの号数をそろえたり、大きな収納用品を買ったりする必要はありません。
小さな作品を一つ試す場合 約1,000〜3,000円
基本の道具をそろえる場合 約3,000〜6,000円
毛糸や複数の針、収納用品までそろえる場合 約6,000〜10,000円
編み針セットや上質な毛糸を選ぶ場合 約10,000〜30,000円
多くの針や大型作品の材料まで含める場合 約30,000〜60,000円
入力データにある標準初期費用1万円は、複数の編み針、毛糸数玉、はさみ、とじ針、メジャー、マーカー、収納用品などをまとめてそろえる場合の目安です。最初の一作品だけなら、ここまで用意しなくても始められます。
一作品にかかる材料費
編み物では、一回の作業ごとに新しい材料を買うわけではありません。
一玉の毛糸を数回に分けて使うこともあれば、セーターのように何玉もの毛糸が必要な作品もあります。そのため、1回400円という入力値は、作品代ではなく、一つの作品を何回かに分けて編んだ場合の作業一回あたりの換算額として考えると分かりやすくなります。
コースターや小さなマット 約500〜1,500円
小さなポーチやあみぐるみ 約1,000〜3,000円
帽子やネックウォーマー 約1,500〜4,000円
マフラーや小さなバッグ 約2,000〜6,000円
ベストやセーター 約5,000〜20,000円以上
価格は毛糸の素材、太さ、一玉の長さ、必要な玉数によって変わります。アクリルや綿を中心にした手頃な糸もあれば、ウール、アルパカ、カシミヤなどを使った高価な糸もあります。
同じ大きさの作品でも、太い毛糸なら少ない編み目で進み、細い毛糸なら多くの編み目が必要になります。ただし、太ければ必ず材料費が安くなるわけではなく、一玉あたりの長さや作品に必要な量まで確認する必要があります。
年間費用は作る作品で変わる
月2回、年間24回ほど編み、コースター、帽子、マフラーなどを少しずつ作る場合は、年間1万〜2万円ほどがひとつの目安です。
入力データにある年間約1万3,000円は、小物を中心にし、一つの作品を複数回に分けて完成させる場合には現実的な金額です。毎回新しい毛糸を購入するのではなく、前回の続きを編み、余った糸も次の作品へ使うことを前提にしています。
一方、上質な毛糸でセーターを何着も編む場合や、さまざまな色を集める場合は、年間数万円以上になることがあります。編み物を続けると、使う予定のない毛糸まで欲しくなることもあるため、作品を決めてから必要量を買うことが費用を抑えるコツです。
最初はセットより、作品に必要なものだけを買う
編み針のセットは便利ですが、最初の作品では使わない太さの針も多く含まれています。
まず作りたいものを一つ決め、レシピや毛糸のラベルに指定された号数の針だけを購入します。続けるうちに別の太さが必要になったら、その都度買い足すほうが無駄になりません。
毛糸も、好きな色だけで選ぶのではなく、作品に必要な玉数を確認します。
同じ商品、同じ色番号でも、製造時期によってわずかに色が異なることがあります。大きな作品を作る場合は、途中で買い足して色が合わなくなることを避けるため、必要量をまとめて用意すると安心です。
編み物をおすすめする3つの理由
1.同じ動きの繰り返しが、少しずつ形になっていく
編み物では、ひとつの小さな輪から作品が始まります。
かぎ針編みなら、くさり編みや細編みなどの動きを繰り返し、棒針編みなら、作り目から表編みや裏編みを重ねていきます。最初は数センチしかなかった編み地が、少しずつ長く、広くなっていきます。
一回の動きだけを見れば、とても小さな作業です。
糸を針へかける。
編み目から引き出す。
針にある目を次へ送る。
けれど、その動きを何十回、何百回と重ねることで、身につけたり使ったりできるものへ変わります。
完成までの距離が、目に見えて少しずつ短くなることも、編み物の楽しさです。前回は糸玉のままだったものが、次に取り出したときには、もう帽子やマフラーの一部になっています。
作業を中断しても、そこまで編んだ形は残ります。
今日は十段だけ。
次は模様が一つ終わるところまで。
疲れている日は、一段だけ編んで片付ける。
その日の時間と気分に合わせて進められます。
同じ動きを静かに繰り返していると、目の前の編み目へ意識が集まり、ほかのことを考える時間が少し減ることもあります。急いで結果を出すのではなく、手を動かした分だけ確実に形が増えていくことが、編み物ならではの満足につながります。
2.間違えても、ほどいてやり直せる
編み物を始めたばかりの頃は、編み目が増えたり、反対に減ったりすることがあります。
端の目を二回編んでしまう。針を入れる場所を間違える。途中で糸を引きすぎ、そこだけ編み目が小さくなる。しばらく進んでから、模様がずれていることに気づくこともあります。
けれど、編み物の間違いの多くは、糸をほどけばやり直せます。
編み進めた時間がすべて失われたように感じるかもしれませんが、ほどいている間にも、どこで間違えたのかを確認できます。同じ場所をもう一度編むと、前より手順が分かりやすくなることもあります。
手芸の中には、一度切った材料を元へ戻しにくいものもあります。編み物では、糸を切る前であれば、かなり前まで戻って編み直せることがあります。
もちろん、すべての小さな違いを直す必要はありません。
少し目の大きさが違う。
端がわずかにゆがんでいる。
色を替える場所が一目ずれた。
使ううえで問題がなく、自分が気にならないなら、そのまま作品の個性として残してもかまいません。
直すのか、そのまま進むのかを自分で選べることも、手作りのよさです。
間違えないことだけが上達ではなく、間違いに気づき、戻り方を覚え、完成まで進められるようになる。ほどく時間まで含めて、少しずつ作れる人になっていきます。
3.色、素材、形を自分で選べる
編み物では、同じ編み図を使っても、毛糸を替えるだけで作品の印象が変わります。
明るい色なら軽やかに見え、落ち着いた色なら日常で使いやすくなる。単色で編めば編み目がよく見え、段染めの毛糸を使えば、同じ編み方でも自然に色が変化します。
素材によって、触り心地や使う季節も変わります。
ウールは温かい小物や衣類に向き、綿は春夏のバッグや小物にも使いやすい素材です。アクリルは色数が多く、あみぐるみや生活用品などに使われます。混紡糸には、複数の素材の特徴を組み合わせたものがあります。
色だけでなく、大きさも調整できます。
マフラーを少し短くする。
バッグの持ち手を長くする。
帽子を自分の頭に合うように調整する。
既製品では見つけにくい色やサイズでも、自分で作れば好みに近づけられます。
最初はレシピどおりに作ることから始まります。
何作品か完成すると、別の色でも編んでみたい、縁だけ違う模様にしたい、余った糸を組み合わせたいという気持ちが出てきます。その選択が少しずつ増え、自分らしい作品へ変わっていきます。
完成品を自分で使えることも、編み物の大きな喜びです。
自分で編んだものを身につける。
家の中で使う。
家族や友人へ贈る。
作っていた時間を知っているからこそ、使うたびに特別な愛着が生まれます。
かぎ針編みと棒針編み、最初はどちらを選ぶ?
編み物を始めるときに迷いやすいのが、かぎ針編みと棒針編みの違いです。
どちらが初心者向きかは一概には決められません。作りたいものと、自分が扱いやすいと感じる方法から選ぶことが大切です。
小物や立体的な形を作りたいなら、かぎ針編み
かぎ針編みは、先端がかぎ状になった一本の針を使います。
基本的には、針にかかっている一つの輪を使って次の目を作るため、作業を止めるときも目がほどけにくく、道具を片付けやすいことが特徴です。
コースター、マット、バッグ、帽子、あみぐるみ、モチーフなど、形のはっきりした小物を作るのに向いています。円形や四角形を中心から広げたり、小さな部品を作ってつないだりすることもできます。
最初に覚える代表的な動きは、くさり編み、細編み、長編みなどです。
一つの編み方だけでも、小さなマットやコースターを作れます。比較的短い時間で完成する作品を選びやすいため、まず一つ形にしたい人にも向いています。
やわらかな編み地や衣類を作りたいなら、棒針編み
棒針編みでは、二本の針や、左右の針がコードでつながった輪針を使います。
針の上に複数の編み目を並べ、右の針へ一目ずつ移しながら編んでいきます。表編みと裏編みを組み合わせることで、さまざまな模様や伸縮性のある編み地を作れます。
マフラー、帽子、靴下、ベスト、セーターなど、身につけるものへ広げやすい方法です。かぎ針編みと比べ、やわらかく伸びる編み地を作りやすい傾向があります。
ただし、針から目が落ちると、下の段までほどけることがあります。
最初は多くの目を作らず、小さな四角形や短めのネックウォーマーなど、編み目の数を確認しやすい作品を選ぶと安心です。
作りたいものから決めればよい
あみぐるみやモチーフを作りたいなら、かぎ針編み。
マフラーやセーターを作りたいなら、棒針編み。
このように、最初に完成させたいものから決めると、必要な道具も選びやすくなります。
両方を同時に覚える必要はありません。一つの方法で基本を身につけ、別の作品を作りたくなったときに、もう一方へ挑戦すれば十分です。
最初の作品は、小さくて平らなものを選ぶ
編み物を始めた勢いでセーターや大きなマフラーを選ぶと、完成までの長さに疲れてしまうことがあります。
マフラーは形が単純で初心者向きに見えますが、同じ幅を保ちながら長く編み続ける必要があります。編み目の力加減が安定する前は、途中で幅が変わることもあります。
最初は、短時間で全体を見渡せる小さな作品がおすすめです。
四角いコースター
小さな鍋敷き
カップ用のマット
簡単なヘアバンド
一玉で作れる小さな巾着
基本の編み方だけで作るミニマフラー
平らで四角い作品なら、編み目が増えていないか、端がまっすぐになっているかを確認しやすくなります。完成後に多少ゆがんでいても、実用品として使えます。
最初の目的は、きれいな作品を作ることだけではありません。
糸の持ち方を知る。
編み針を動かす。
編み目を数える。
糸始末をして、完成と決める。
準備から仕上げまで、一度通して経験することが大切です。
小さな作品を一つ完成させると、次に必要なものが具体的に見えてきます。もっと太い糸を使いたい、別の形を作りたい、同じ編み方をもう一度試したいという気持ちが、次の作品につながります。
最初に用意したい道具
編み物では、作品ごとに必要な毛糸と針が異なります。
先に道具を買い集めるのではなく、作りたい作品のレシピを決め、そこに指定されている材料を確認しましょう。
毛糸 作品に合う素材、太さ、必要量を選ぶ
かぎ針または棒針 毛糸やレシピで指定された号数を選ぶ
はさみ 毛糸を切りやすいもの
とじ針 糸端の始末や、編み地同士をつなぐために使う
メジャー 作品の幅や長さを測る
段数マーカー 編み始めや模様の位置へ印を付ける
段数カウンター 何段編んだかを記録する
編み物用のメモ 編んだ段数や変更点を残す
収納袋 作品と使用中の毛糸、針を一緒に保管する
最初に欠かせないのは、毛糸、編み針、はさみ、とじ針です。メジャーやマーカーは、家にあるものや糸の切れ端で代用できることもあります。
毛糸のラベルを見る
毛糸のラベルには、素材、重さ、長さ、推奨される針の号数、標準的な編み目の密度、洗濯方法などが表示されています。
同じ「一玉」でも、糸の太さによって長さが違います。見た目の大きさだけで必要量を判断せず、レシピで指定された長さや玉数を確認します。
初心者には、毛足が長すぎず、太さが比較的一定で、編み目を見つけやすい毛糸が扱いやすいでしょう。ふわふわした糸や、途中で太さが大きく変わる糸は魅力的ですが、針を入れる場所が見えにくくなることがあります。
濃い黒や紺色も、編み目の影が見えにくくなる場合があります。
最初は、明るめの単色で、糸の一本一本が見分けやすいものを選ぶと、間違いに気づきやすくなります。
針は毛糸の太さへ合わせる
編み針が細すぎると編み地が詰まり、針を入れにくくなります。反対に太すぎると、編み目がゆるくなり、形が崩れやすくなります。
毛糸のラベルや作品レシピには、目安となる針の号数が書かれています。最初はその指定に合わせて選び、自分の編み方が強すぎる、ゆるすぎると分かった段階で調整します。
持ち手の太いかぎ針や、軽い素材の棒針など、握りやすさを考えた製品もあります。
最初から高価なセットを選ばず、一本使ってみて、手に合う形を確かめましょう。
1回の編み物はどのように進む?
月2回、1回110分ほど編む場合でも、すべての時間を針の動きだけに使うわけではありません。
作り方を確認し、毛糸を準備し、途中で段数を数え、最後に進んだ位置を記録します。この前後の時間を含めておくと、慌てずに楽しめます。
道具とレシピの確認 5〜10分
前回までの段数や状態の確認 5〜10分
編む時間 60〜90分
編み目と大きさの確認 5〜10分
記録と片付け 5〜10分
久しぶりに続きを編むときは、すぐに針を動かさず、前回の最後を確認します。
表側と裏側はどちらか。
次は何段目か。
増やし目や減らし目を行う場所ではないか。
糸端の近くへメモやマーカーを付けておくと、再開しやすくなります。
編み始めてからも、ときどき手を止めます。
端の形を見る。
目数を数える。
幅を測る。
編み間違いは、早く気づくほど戻る段数が少なくなります。
長時間進めてからすべて確認するより、模様の一区切りや十段ごとなど、自分で確認する場所を決めておきましょう。
作業を終えるときは、編み針から目が外れないようにします。棒針にはストッパーを付け、かぎ針編みでは最後の輪を少し大きくしておくと、次回までほどけにくくなります。
編んだ段数と次に行うことを短くメモし、作品、残りの毛糸、使っている針を同じ袋へまとめます。次に始めるまでの準備が小さいほど、続きへ戻りやすくなります。
編み目をそろえるには、糸を強く引きすぎない
初心者が悩みやすいのが、編み目の大きさがそろわないことです。
編み始めは大きかった目が、途中から小さくなる。力を入れすぎて針が動かなくなる。反対に、糸がゆるく、編み地に大きな隙間ができることもあります。
きれいにしようとして糸を強く引くほど、次の目へ針を入れにくくなります。
毛糸を締め上げるのではなく、針の太さに沿って輪を作る感覚で編みます。手や肩へ力が入っているときは、一度針を置き、指を開いてから再開しましょう。
最初の作品では、編み目が完全にそろわなくてもかまいません。
同じ姿勢と糸の持ち方を繰り返していると、少しずつ力加減が安定します。完成した作品を見ると、編み始めと終わりで編み目が変わり、その一枚の中にも上達が表れていることがあります。
編み目の数をこまめに確認する
四角いものを編んでいるのに、少しずつ三角形のようになる場合は、端で編み目が増減している可能性があります。
毎段すべてを数えるのが大変なら、数段ごとに目数を確認します。最初の目や最後の目へマーカーを付けると、端を見失いにくくなります。
模様編みでは、一定の目数を一つのまとまりとして繰り返すことがあります。
一段の終わりに余りが出た場合は、その段のどこかで目を飛ばしたり、同じ場所へ二回入れたりしている可能性があります。無理に最後だけ合わせず、間違った位置を探します。
間違えたときは、全部をほどく前に確認する
編み間違いを見つけたとき、すぐ作品全体をほどく必要はありません。
まず、どのような違いが起きているかを確認します。
目数が一つ多い。
一段だけ編み方が違う。
模様の位置がずれている。
棒針から一目落ちている。
問題によって、直し方は変わります。
かぎ針編みなら、間違えた場所まで一目ずつ糸を引いて戻れます。棒針編みでは、一段全体を戻す方法のほか、落ちた目をかぎ針で拾い直せる場合もあります。
初心者だけで直すことが難しいときは、無理に引っ張らず、現在の状態を写真へ残します。手芸店の講習、編み物教室、経験者へ相談するときに、どこから違ったのかを説明しやすくなります。
直さない選択もあります。
少しのゆがみや、一目だけ違う模様が、使用時にほとんど分からないこともあります。自分用の最初の作品なら、完璧さより完成まで進むことを優先してもよいでしょう。
大切なのは、間違えたから作品全体が失敗になったと考えないことです。
直せるなら直す。
気にならないなら残す。
難しければ、そこで一度休む。
選びながら最後まで進められることも、編み物の技術です。
編み図は、最初からすべて読めなくてよい
編み物のレシピには、文章で手順を書いたものと、記号を使った編み図があります。
編み図を初めて見ると、丸や線、記号が並び、何から読めばよいのか分からないかもしれません。けれど、最初の作品で使う記号は、多くても数種類です。
かぎ針編みなら、くさり編み、細編み、長編みなど。
棒針編みなら、表編み、裏編み、増し目、減らし目など。
その作品に出てくるものだけを確認すれば十分です。
動画は針の動きを確認しやすく、編み図は全体の構造と目数を把握しやすいという違いがあります。動画だけでは次にどこを編むか分からなくなることがあり、編み図だけでは手の動きを想像しにくい場合があります。
二つを組み合わせると、理解しやすくなります。
最初は一段ごとに動画を止め、編み図の同じ場所へ印を付ける。慣れてきたら、編み図だけで数段進めてみる。
少しずつ記号へ慣れると、作れる作品の選択肢が広がります。
毛糸は素材と手入れ方法まで確認する
毛糸を選ぶときは、色や触り心地だけでなく、完成後にどのように使い、洗うのかも考えます。
毎日使う小物なら、手入れしやすい素材が向いています。肌へ直接触れるものは、店頭で毛糸を首元や手首へ軽く当て、刺激を感じないか確かめると安心です。
ウール
温かさと弾力があり、秋冬の帽子、マフラー、衣類などに使われます。
水や摩擦によって縮みやすいものもあるため、洗濯表示を確認します。防縮加工され、家庭で洗いやすい製品もあります。
アクリル
色の種類が多く、比較的手頃な製品も見つけやすい素材です。
あみぐるみ、バッグ、生活小物など幅広く使われます。製品によって柔らかさや毛羽立ちが異なるため、用途に合わせて選びます。
綿
さらりとした感触があり、春夏の小物、バッグ、帽子などにも使えます。
ウールほど伸縮しない糸もあり、編み続けると手へ負担を感じることがあります。最初は太すぎず細すぎない糸を選ぶと扱いやすくなります。
混紡糸
ウールとアクリル、綿とポリエステルなど、複数の素材を組み合わせた糸です。
温かさ、丈夫さ、洗いやすさなどを調整した製品があります。素材名だけで判断せず、ラベルの特徴と手入れ方法を確認します。
完成した作品を洗うときは、毛糸のラベルに従います。
高温の湯や強い摩擦によって縮むことがあるため、自己流で洗濯機へ入れないようにしましょう。贈り物にする場合は、使用した毛糸のラベルや洗い方のメモを一緒に渡すと親切です。
余った毛糸も次の作品に使える
作品を完成させると、少しだけ毛糸が余ることがあります。
短い糸をすぐに捨てず、色や素材ごとに分けて保管すると、小さな作品や飾りに使えます。モチーフ、花、タッセル、ポンポン、あみぐるみの一部分など、少量の糸で作れるものがあります。
ただし、使い道を決めないまま毛糸を増やしすぎると、収納が負担になります。
余り糸には、商品名、色番号、素材が分かるラベルを一緒に付けます。ラベルがないと、似た色でも太さや洗い方が分からなくなることがあります。
小さすぎる糸端まで、すべて残す必要はありません。
次の作品で使える長さか。
同じ素材と合わせられるか。
使いたい色か。
定期的に見直し、自分が管理できる量へ整えます。
毛糸を保管するときは、湿気と虫にも注意します。清潔で乾いた状態にし、ふたのある容器や袋へ入れます。完成途中の作品も、食べ物や飲み物の近くへ置かず、子どもやペットが糸を引き出さない場所へ保管しましょう。
肩、首、手首へ負担をためない
編み物は激しい運動ではありませんが、同じ姿勢と細かな手の動きを長く続けます。
作品へ集中していると、首を下へ向けたままになり、肩や手へ力が入りやすくなります。区切りのよい場所まで進めたくても、痛みやしびれが出る前に休憩しましょう。
30〜40分ほど編んだら、一度針を置きます。
指をゆっくり開く。
肩を回す。
立ち上がって姿勢を変える。
少し遠くを見る。
数分休むだけでも、身体の緊張を切り替えられます。
編み地を膝の上だけで支えると、顔が下を向きやすくなります。クッションなどで手元を少し高くし、背もたれへ寄りかかれる姿勢をつくると楽になることがあります。
机で編む場合も、肩が持ち上がらない高さへ調整します。
編み針は強く握り込まず、必要以上に糸を引っ張りません。手の中で針が動かないほど力が入っている場合は、編み目も固くなりやすいため、一度手を緩めます。
鋭い痛み、しびれ、指の動かしにくさなどが続く場合は、無理に編み続けません。休んでも改善しないときは、医療の専門家へ相談しましょう。
手元を明るくする
暗い色の毛糸や細い糸では、編み目を見つけるために顔が手元へ近づきやすくなります。
部屋全体を適度に明るくし、必要なら手元用の照明を加えます。針の影で編み目が見えにくくならない位置から照らすと、目を細めず作業しやすくなります。
夜に編む場合も、画面や手元だけを明るくするのではなく、周囲へ穏やかな明かりを残します。目が疲れたときは無理に段数を進めず、片付けることも大切です。
針とはさみを安全に保管する
編み針やとじ針、はさみは、ソファや床へ置いたままにしません。
作業を止めるときはケースや袋へ戻し、棒針にはストッパーを付けます。とじ針は小さいため、磁石付きのケースやふたの閉まる容器があると紛失しにくくなります。
小さな子どもやペットがいる家庭では、毛糸にも注意が必要です。
長い糸へ絡まる、毛糸や小さな道具を口へ入れる可能性があります。作業を離れるときは、作品ごと手の届かない場所へ片付けましょう。
入力データにある保護眼鏡、作業用手袋、大がかりな作業面保護用品などは、一般的な手編みには必要ありません。明るい作業環境、安定した姿勢、針とはさみの保管、定期的な休憩が主な対策になります。
季節によって毛糸と作品を変える
編み物は冬の趣味という印象がありますが、素材と作品を変えれば一年を通して楽しめます。
秋から冬は、ウールや混紡糸を使い、帽子、マフラー、手袋、セーターなど、温かさを楽しむ作品に向いています。編んでいる途中の毛糸が膝へ触れることも、寒い季節には心地よく感じられます。
春から夏は、綿、麻、和紙を使った糸などで、バッグ、帽子、コースター、ボトルカバーといった小物を作れます。細い糸でレース編みへ挑戦する方法もあります。
ただし、素材が変わると編み心地も変わります。
冬のやわらかい毛糸では編みやすかった人も、伸びにくい綿糸では手へ力が入りやすくなることがあります。最初から大きな作品を選ばず、小さなものを一つ編んで感触を確かめましょう。
季節を少し先取りして作品を決めることも、編み物の楽しみです。
秋に使う帽子を夏の終わりから編む。
冬の贈り物を少しずつ準備する。
春のバッグを寒い時期から作り始める。
完成させたい日から逆算すると、ゆっくり編む時間にも目的が生まれます。
編み物の楽しみが深まる5段階
編み物の上達は、難しい模様や大きな作品を作れることだけではありません。
小さな作品を完成させ、編み目を安定させ、素材や色を選び、自分のサイズに調整する。続けるほど、楽しさの中心は少しずつ変わっていきます。
ここで紹介する5段階は、作品や技術の優劣を決めるものではありません。
小物を長く楽しむ人もいれば、衣類を作る人、あみぐるみを深める人、作品を販売する人もいます。作りたいものに合わせて、段階を行き来しながら続けられます。
第1段階 小さな作品を一つ完成させる
最初は、基本の編み方だけで作れる小さな作品を選びます。
毛糸を針へかける。
一目ずつ編む。
段数を確認する。
最後に糸を切り、とじ針で始末する。
編み目がそろっていなくても、形が少しゆがんでいても、完成まで進むことを大切にします。
一枚のコースターでも、自分で作ったものを実際に使えると、次は色を変えたい、もう少し大きくしたいという気持ちが生まれます。糸と針が作品へ変わる一連の流れを知ることが、この段階の喜びです。
第2段階 編み目と大きさを安定させる
何作品か作ると、自分の編み目が強いのか、ゆるいのかが分かってきます。
編み目を強く締めすぎない。
端の目を忘れない。
数段ごとに目数を確認する。
同じ姿勢と糸の持ち方を意識する。
基本を繰り返すことで、作品の幅や形が安定します。
編み図に書かれた大きさと、自分の作品が違う場合は、針の太さや力加減を見直します。小さな試し編みを作り、一定の幅の中に何目、何段入るかを確認する「ゲージ」も、この頃から役立ちます。
同じレシピを色違いでもう一度作ると、前回より迷わず進められる部分が増え、上達を実感できます。
第3段階 素材、色、形を自分で選ぶ
基本へ慣れると、レシピをそのまま作るだけでなく、自分の好みに合わせた変更を考えられます。
毛糸の色を変える。
縁へ別の色を加える。
バッグの持ち手を長くする。
マフラーの幅を少し細くする。
小さな変更から、自分で選ぶ楽しさが生まれます。
素材にも目が向くようになります。
同じ形をウールで編んだ場合と、綿で編んだ場合では、手触りや重さ、形の出方が変わります。使う季節や洗い方まで考えて毛糸を選ぶと、作品が暮らしへなじみやすくなります。
最初は失敗に見えた色の組み合わせや、予定と違う形が、新しい作品のきっかけになることもあります。決められた手順を覚える段階から、自分の選択を加える段階へ進みます。
第4段階 模様や衣類、自分のテーマを深める
さらに続けると、模様編み、編み込み、レース、あみぐるみ、ウェアなど、興味のある分野を深めたくなります。
同じ形のあみぐるみを、色や表情を変えて作る。
季節ごとに帽子を編む。
好きな模様を使い、バッグやクッションをそろえる。
自分の身体に合うセーターを作る。
一つのテーマを繰り返すと、作品ごとの違いがよく見えるようになります。
衣類では、全体の大きさだけでなく、肩幅、袖丈、首まわりなどを考える必要があります。小さな試し編みを作り、自分の編み目の大きさから必要な目数を計算することも増えます。
時間はかかりますが、自分が選んだ毛糸で、自分に合う一着を作れることには、小物とは違う達成感があります。
第5段階 作品を共有し、販売や指導へ広げる
作品が増えると、自分で使うだけでなく、誰かへ見せたり贈ったりする楽しみが生まれます。
制作記録を写真に残す。
家族や友人へ贈る。
地域の作品展へ出す。
編み物会へ参加する。
同じ趣味を持つ人と、毛糸や作品について話す。
人の作品を見ることで、自分にはなかった色の組み合わせや仕上げ方にも出会えます。
経験を積めば、完成品の販売、オリジナル編み図の制作、ワークショップ、初心者への指導などへ広げる道もあります。ただし、材料費だけで価格を決めるのではなく、制作時間、梱包、販売手数料、送料なども考える必要があります。
市販の編み図や本を使って作った作品を販売する場合は、そのレシピの利用条件を確認します。完成品の販売が認められていても、編み図そのものの複製や配布が禁止されていることがあります。
最初から売れる作品を作ろうと急ぐより、自分が繰り返し作りたいものと、無理なく完成できる手順を見つけることが先です。
編む時間そのものを楽しめることが、人へ届けるようになったあとも続けるための土台になります。
一本の糸を、少しずつ暮らしの形へ変える
編み物は、始めたその日に大きな成果が出る趣味ではありません。
最初は、糸の持ち方が分からず、針から目が外れることもあります。十目作ったつもりなのに、次の段では十一目になっていることもあります。
それでも、一目ずつ編んだものは、確かに手元へ残ります。
編み目がそろわなかった最初の数段。
力が抜け、少し編みやすくなった途中の部分。
迷わず針を動かせるようになった最後の段。
一つの作品の中にも、編んでいる間の変化が重なっています。
初めてなら、好きな色の毛糸を一玉と、それに合う編み針を用意し、小さな四角形から始めてみてください。
最初から毎回二時間取れなくてもかまいません。
今日はくさり編みだけ。
次は一段だけ。
休日には少し長く続きを編む。
短い時間を積み重ねても、作品は少しずつ大きくなります。
間違えたら、ほどいて戻ることもできます。少しゆがんだところを残し、そのまま完成させてもかまいません。
自分の手で選びながら、一本の糸を使える形へ変えていく。
そのゆっくりした時間が、自宅で編み物を続ける楽しさです。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、作品を少しずつ育てていくものまで、さまざまな趣味の楽しみ方を紹介しています。
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