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食パン作りの楽しみ方

はじめに

発酵を終えた生地を、そっと食パン型へ入れる。

型の底ではまだ小さく見えていた生地が、時間とともにゆっくり持ち上がり、やがて縁の近くまで届いてきます。オーブンへ入れると、その表面がさらにふくらみ、台所へ小麦とバターの香りが広がっていきます。

食パン作りというと、長い時間こね続けなければならない、発酵の見極めが難しい、専用の機械が必要なのではないかと感じるかもしれません。

けれど、最初から店のように四角く整った一斤を目指す必要はありません。家庭用オーブンと食パン型、ボウル、はかりがあれば、材料を混ぜ、生地を休ませ、型へ入れて焼くところから始められます。

少し片側だけ高くなっても、きめが不ぞろいでも、焼きたてを切ったときに現れる内側は、自分がこね、待ち、形を整えた時間の結果です。

パン作り全般の中でも、食パンは同じ型を繰り返し使うため、前回との違いが分かりやすい種類です。生地のふくらみ、山の高さ、断面のきめ、耳の厚さを比べながら、自分の朝食に合う一斤を少しずつ育てていけます。


食パン作りは、決まった型の中で変化を比べる趣味

食パンは、型を使って焼くパンです。ふたをせずに焼き、上部が山のようにふくらむものは「山形食パン」、ふたを閉めて四角く焼くものは「角形食パン」などと呼ばれます。

同じ材料を使っても、生地のこね方、発酵の進み方、型へ入れる向き、焼成温度によって姿が変わります。毎回同じ大きさの型へ入れるからこそ、生地の違いが形へ表れやすくなります。

前回は型の中央が低かった。

今回は三つの山がそろった。

焼き色は濃くなったけれど、内側は少し軽くなった。

こうした変化を一斤ずつ比べられることが、食パン作りならではの面白さです。

味のアレンジもできますが、最初は何種類もの材料を加えるより、基本の一斤を繰り返すほうが、生地の状態をつかみやすくなります。プレーンな食パンが安定してくると、牛乳、バター、全粒粉、はちみつなどを少しずつ加え、違いを確かめられます。

食パン作りの基本情報

主な楽しみ方 小麦粉、水分、酵母、塩などから生地を作り、発酵、成形、型入れ、焼成までを自宅で行う

おすすめの頻度 月2回前後

手を動かす時間 約60〜100分。計量、こね、成形、片付けを含む

発酵と焼成を含む総所要時間 約3〜4時間。当日仕込みの一般的な食パンを作る場合の目安

短時間で楽しむ場合 約35分から。ホームベーカリーへ材料を入れる、市販のパン生地を型へ入れて焼くなど、工程の一部を機器や市販品に任せる

主な場所 自宅の台所

始めやすさ 家庭用オーブンと食パン型があれば始められ、こね機や専用発酵器は必須ではない

最初に迷いやすい点 生地のべたつき、こね上がり、発酵の進み方、型へ入れる生地量、焼き上がりの見極め

入力上の標準時間は100分ですが、生地から作る場合は発酵と焼成を含めて半日ほど見ておくと落ち着いて取り組めます。ただし、その間ずっと作業を続けるわけではありません。

発酵中には道具を洗い、朝食の準備をし、本を読みながら生地の変化を待てます。手を動かす時間と、静かに待つ時間が交互に訪れることも、食パン作りの心地よさです。

食パン作りの費用

普段の朝食として食べる食パンの材料費と、趣味として新しい型や粉を試す費用は、分けて考えると分かりやすくなります。

家庭にオーブン、ボウル、はかりがあり、食パン型も持っているなら、初期費用はほとんどかかりません。型やデジタルスケールを新しく購入する場合は、数千円ほどから始められます。

初期費用の目安 0円〜約6,500円

一斤分の基本材料費 約200〜500円前後

バターや牛乳を多く使う配合 約300〜700円前後

ナッツ、ドライフルーツ、高価な小麦粉を使う場合 約500〜1,200円前後

月2回、年間24回作る場合 材料と小さな道具の追加を含め、年間約8,000〜18,000円。標準的な目安は約14,000円

基本的な食パンに使うのは、強力粉、水または牛乳、ドライイースト、塩、砂糖、油脂などです。塩やイーストは一斤ごとの使用量が少なく、一袋を何度にも分けて使えます。

費用が変わりやすいのは、小麦粉と油脂です。一般的な強力粉と油で作る配合なら抑えやすく、国産小麦、発酵バター、生クリームなどを選ぶと一斤当たりの費用が上がります。

最初から粉を何種類も買う必要はありません。使い切れる大きさの強力粉を一袋選び、同じ粉で二回、三回と作るほうが、発酵や食感の変化を比べやすくなります。

食パン型も、複数の大きさをそろえず、最初は一斤用を一つ選びます。型の容量とレシピの生地量が合わないと、ふくらみが足りなかったり、型からあふれたりするため、使用する型に対応したレシピを選びます。

ホームベーカリーやこね機は便利ですが、食パン作りを始める条件ではありません。手ごねを何度か試し、こねる時間を短くしたい、定期的に朝食用を焼きたいと感じてから検討できます。

食パン作りをおすすめする3つの理由

1.生地が型いっぱいへ育っていく様子を見られる

食パン作りでは、最初は手のひらに収まるほどだった生地が、発酵によって少しずつ大きくなります。

一次発酵では、丸めた生地全体がふくらみます。成形して型へ入れたあとの二次発酵では、生地が型の底から上へ伸び、焼く準備が整っていきます。

発酵は、急に大きくなる派手な変化ではありません。30分前には見えていた型の底が隠れ、丸めた生地同士の隙間が少しずつ狭くなる。その静かな変化を見守ります。

時間だけを見ていると待ち時間に感じますが、生地の表面、位置、弾力へ目を向けると、発酵そのものが一つの楽しみになります。

焼成が始まると、生地はさらに持ち上がります。オーブンの窓越しに山が高くなり、白かった表面へ焼き色が付く時間は、食パン作りの中でも特に印象的な瞬間です。

2.同じ一斤の中で、食感を細かく変えられる

食パンは見た目が似ていても、配合や工程によって食感が変わります。

水分を調整すれば、口当たりや生地の扱いやすさが変わります。砂糖や油脂の量を変えれば、甘さだけでなく、耳の食感や内側のやわらかさにも違いが生まれます。

成形の仕方も断面へ影響します。生地をどのくらい広げ、どの方向へ巻き、型へどう並べたかによって、きめの流れや山の形が変わります。

一度にすべてを変える必要はありません。

次は水を少しだけ増やす。

前回より巻きをゆるくする。

焼成時間を数分だけ調整する。

同じ一斤を基準に一つずつ変えると、自分が好きな「ふんわり」「しっとり」「もっちり」の中身が少しずつ見えてきます。

3.焼いた日だけでなく、翌日の朝まで楽しみが続く

焼きたての食パンは、小麦とバターの香りが強く、耳には香ばしさがあります。けれど、食パンの楽しみは焼き上がった瞬間だけではありません。

十分に冷ましたあとで切ると、断面のきめや、生地がどの方向へ伸びたかが見えます。翌朝にトーストすれば、表面は軽く香ばしくなり、内側には別の食感が残ります。

厚切りでトーストする。

薄く切ってサンドイッチにする。

端の部分をスープへ添える。

少し乾いたら、フレンチトーストやパン粉へ使う。

一斤を何日かに分け、自分の食べ方へつなげられます。作る趣味と、朝食を整える楽しみが自然に重なるところも、食パン作りの魅力です。

最初の一斤は、ふたを使わない山形食パンから

初めて食パン型を使うなら、ふたを閉めずに焼く山形食パンから始めると、生地のふくらみを目で確認しやすくなります。

角形食パンは四角く整った姿が魅力ですが、ふたを閉める時刻と生地の高さを見極める必要があります。発酵が足りなければ角まで届かず、進みすぎればふたへ強く押し付けられることがあります。

山形食パンなら、二次発酵で生地が型のどこまで上がったかを見て、そのまま焼成へ進めます。焼いている途中のふくらみも確認できます。

初回は、一斤型に対応した基本の配合を一つ選びます。強力粉、水または牛乳、ドライイースト、塩、砂糖、バターまたは油を使う、一般的な食パンが取り組みやすい形です。

卵、生クリーム、はちみつ、全粒粉などの追加は、基本の一斤を経験してからでも遅くありません。材料が少ないほど、こね方や発酵の違いを振り返りやすくなります。

材料は、最初にすべて正確に量る

パン作りでは、料理のように途中で味見をしながら調味料を足すことができません。混ぜ始める前の計量が、仕上がりを整える大切な工程になります。

強力粉、水分、砂糖、塩、酵母、油脂を、それぞれ小さな器へ量ります。特に塩とドライイーストは少量なので、目分量にせず、1グラム単位で量れるデジタルスケールを使います。

水分は、計量カップの目盛りだけでなく、重さで量ると毎回の条件をそろえやすくなります。ボウルをスケールへ載せ、表示をゼロへ戻してから加える方法も便利です。

材料を量り終えたら、冷蔵庫へ戻すものと、作業台へ残すものを分けます。バターの温度や、水分の温度について指定がある場合は、選んだレシピを優先します。

ドライイーストには、粉へ直接混ぜられるものと、使い方が異なる製品があります。種類を自己判断で置き換えず、パッケージの使用方法を確認します。

小麦粉も、強力粉ならすべて同じ扱いになるとは限りません。粉によって水を吸う量や生地の強さが異なるため、最初はレシピで想定された種類に近いものを使います。

こねる時間は、生地を引っ張るだけの作業ではない

材料を混ぜ始めた直後は、生地が手やボウルへ付き、まとまりにくく感じることがあります。

そこで扱いにくいからと粉を何度も足すと、予定より水分が少なくなり、重い食感になることがあります。最初はカードやへらも使い、粉気がなくなるまで一つへまとめます。

台へ出したら、生地を押し伸ばし、折り戻す動きを繰り返します。強くたたき続ける方法だけが正解ではありません。生地を伸ばす、折る、休ませるという動きでも、少しずつつながりが生まれます。

こね上がりの目安として、表面が初めより滑らかになり、生地の一部を薄く伸ばせる状態が挙げられます。ただし、最初から透明な膜を完璧に作ろうとして長くこねすぎる必要はありません。

手ごねでは、自分の体温や室温、生地量によっても状態が変わります。前回より柔らかい、少し手離れが早いといった感触を記録しておくと、次回の比較に役立ちます。

油脂を後から加える配合では、一度まとまった生地が再び滑り、ばらばらになったように見えることがあります。慌てて粉を足さず、レシピの順番どおりになじませます。

一次発酵では、時間と生地の両方を見る

こね上がった生地を丸め、表面を整えてボウルや発酵容器へ入れます。乾燥しないように覆い、レシピに示された温度と時間を基準に発酵させます。

暖かい日と寒い日では、同じ時間でもふくらみ方が変わります。オーブンの発酵機能があれば温度を保ちやすくなりますが、機種によって設定できる温度や使い方が異なります。

一次発酵では、発酵前より大きくなったか、表面が乾いていないか、生地に弾力が残っているかを見ます。

時間どおりでも生地があまり変わっていない場合は、室温や酵母の状態が影響している可能性があります。反対に、予定より早く大きくなった場合は、そのまま長く置かず、次の工程へ進みます。

発酵の進みすぎは、長く待てば待つほど柔らかくなるというものではありません。生地の力が弱まり、成形しにくくなったり、焼いたときにふくらみにくくなったりすることがあります。

初回は細かな見極めだけへ頼らず、レシピの温度と時間を守りながら、開始時と終了時の写真を残す方法もあります。型やボウルの同じ位置から撮ると、大きさの変化を比べやすくなります。

分割と休ませる時間が、成形をしやすくする

一次発酵を終えた生地は、レシピに合わせて二つまたは三つに分けます。はかりで重さを量り、できるだけ近い大きさにすると、山の高さもそろいやすくなります。

分けた直後の生地は、切り口が乱れ、力がかかった状態です。軽く丸め、乾燥を防いで休ませる時間を取ります。

この短い休憩は「ベンチタイム」と呼ばれます。生地を台の上へ置くだけの時間に見えますが、成形時に伸ばしやすくする役割があります。

休ませずにすぐ広げようとすると、生地が縮んで元へ戻ることがあります。力で無理に引っ張るより、数分休ませたほうが、少ない力で形を整えられます。

ただし、長く放置すると表面が乾いたり、発酵が進みすぎたりします。時間を忘れないよう、タイマーを使います。

成形では、気泡を消し切らず、形をそろえる

食パンの成形では、生地を広げ、巻き、型へ入れます。

一次発酵で生まれた大きな気泡を軽く整えるため、生地を手のひらや麺棒で広げます。ただし、すべての空気を完全に押し出そうと強くつぶし続ける必要はありません。

長方形や楕円に近い形へ広げたら、左右を折る、手前から巻くなど、選んだレシピの成形へ進みます。巻き始めはゆるすぎず、最後は生地を引っ張りすぎないようにします。

巻き終わりの部分は、生地の下側へ置きます。閉じ目が上へ来ていると、二次発酵や焼成中に開くことがあります。

二つまたは三つの生地を型へ入れる場合は、巻きの向きもそろえます。向きがばらばらだと、山が外側へ開いたり、中央だけ低くなったりすることがあります。

初回から美しい三つ山を作る必要はありません。生地の重さと向きをそろえ、型の中へ均等に置くことを目標にします。

二次発酵は、型の高さを目印にする

成形した生地を型へ入れたら、もう一度発酵させます。これが二次発酵です。

時間だけでなく、生地が型のどこまで上がったかを確認します。山形食パンなら、レシピに示された型の縁との位置を目安にして焼成へ進みます。

角形食パンでは、ふたを閉める時刻が重要になります。生地が低すぎる状態で閉めると角まで届かず、高くなりすぎるとふたへ付き、取り外しにくくなることがあります。

型の形や容量によって目安は異なるため、「一斤」と書かれているだけで別のレシピをそのまま使わないようにします。同じ一斤型でも、内寸や容量に差がある場合があります。

二次発酵の途中でオーブンの予熱を始めます。生地が焼き頃になってから予熱を始めると、その間にも発酵が進み続けます。

予熱に必要な時間は機種によって違います。自宅のオーブンが設定温度へ達するまでの時間を一度記録しておくと、次回から発酵とのタイミングを合わせやすくなります。

焼成は、色だけでなく型から外した姿まで確認する

十分に予熱したオーブンへ型を入れ、レシピの温度と時間で焼きます。

食パンは背が高いため、オーブンの上部へ近すぎると、天面だけが早く濃くなることがあります。使用する段と型の高さを、オーブンの説明書やレシピで確認します。

焼成中に表面だけ濃くなりすぎる場合は、機器の特性に合った方法で調整します。途中で扉を何度も開けると温度が下がるため、必要以上に確認しません。

焼き上がったら、乾いた耐熱ミトンを使って型を取り出します。型を安定した耐熱台へ置き、レシピに従って早めにパンを外します。

焼き上がった食パンを型へ長く入れたままにすると、内部の蒸気がこもり、側面が湿ることがあります。型から外したあとは、網などへ置いて空気を通します。

焼けているか不安だからと、熱い食パンをすぐ切って断面を確認するのは避けます。焼きたての内部はまだ落ち着いておらず、切るとつぶれたり、刃へ生地が付いたりします。

切るのは、十分に冷めてから

オーブンから出した直後の食パンには、内部へ多くの熱と蒸気が残っています。外側が触れられる温度になっても、中心はまだ温かいことがあります。

網の上で十分に冷まし、底や側面からも熱を逃がします。香りに誘われてすぐ切りたくなりますが、断面をきれいに見たい場合は、中心まで落ち着くのを待ちます。

パン切り包丁を使うときは、上から強く押しつぶさず、刃を前後へゆっくり動かします。厚さを完全にそろえなくても、食べ方に合わせて変えられます。

厚めに切れば、トーストしたときに内側のやわらかさを残しやすくなります。薄く切れば、サンドイッチや軽い朝食へ使いやすくなります。

最初の一斤では、中央の断面を一枚だけ写真に残しておくと、次回の比較に役立ちます。穴の大きさ、きめの流れ、底の詰まりなどを見ます。

うまくいかなかったときに見直したいこと

生地がほとんどふくらまない

酵母の期限や保存状態、水分の温度、発酵場所の温度、塩と酵母の量などを確認します。

時間だけを延ばしても変化がない場合は、酵母が十分に働いていない可能性があります。使用した材料と温度を記録し、次回は新しい酵母と正確な計量から始めます。

生地がべたついてまとまらない

水分量が多い、粉の性質が違う、こね始めでまだ生地がつながっていない可能性があります。

すぐに大量の粉を加えず、カードを使う、短く休ませる、レシピで示されたこね方を続けるなどの方法を試します。手へ付かない生地が、必ずよい食パンになるわけではありません。

焼き上がりの高さが出ない

一次発酵または二次発酵が足りなかった、反対に進みすぎた、成形で生地を傷めた、型と生地量が合っていなかった可能性があります。

一度にすべてを変えず、次回は二次発酵終了時の高さを記録します。発酵前後の写真があると比べやすくなります。

山の高さがそろわない

分割した生地の重さが違った、巻き方や向きがそろっていなかった、型の中で位置が偏ったことなどが考えられます。

味や安全に問題がなければ、形が不ぞろいでも失敗ではありません。次回は分割後に重さを量り、巻き終わりと向きだけをそろえます。

内側に大きな空洞ができる

成形時に大きな気泡が残った、巻き方がゆるかった、生地の間へ粉や油が多く入った可能性があります。

気泡をすべて消すのではなく、目立つ大きなものだけを整えます。巻くときは層の間に大きな隙間を作らないようにします。

底の部分が詰まって重い

発酵不足、こね不足、成形時の強い力、焼成不足など、複数の原因が考えられます。

まず、二次発酵の高さと焼成時間を確認します。生地配合を変えるのは、基本の工程をもう一度試してからでも構いません。

天面だけ濃く、側面が白い

オーブンの上火が強い、型を置く段が高い、型の色や材質によって熱の伝わり方が違う可能性があります。

次回は置く段を見直し、同じ温度で焼成時間を調整します。型の材質を変える前に、自宅のオーブンの特徴をつかみます。

最初に必要な道具

最初に必要なもの

1グラム単位で量れるデジタルスケール、ボウル、食パン型、オーブン、計量用の小さな器、ゴムべらまたは木べら、パンを冷ます網が基本です。

手ごねをする場合は、清潔で安定した作業台も必要です。食卓を使うなら、作業前に物を片付け、洗浄してから始めます。

食パン型は、レシピと同じ容量に近いものを選びます。ふた付きの型なら、山形食パンと角形食パンの両方へ使える場合があります。

続けるなら用意したいもの

生地を切り分けるカード、パン切り包丁、透明な発酵容器、調理用温度計、タイマー、ふた付きの保存容器などが役立ちます。

生地用カードは、べたつく生地を台から集め、分割する作業にも使えます。透明な発酵容器は、生地がどのくらい大きくなったかを横から確認しやすい道具です。

パン作りを定期的に続けるなら、こね機能のあるホームベーカリーやスタンドミキサーも候補になります。購入前に、生地量、収納場所、音、手入れ、焼成まで任せたいかを考えます。

最初は買わなくてよいもの

専用発酵器、大型のこね機、複数の食パン型、業務用オーブン、高価な小麦粉の買い置きは、最初の一斤には必要ありません。

型を一つ使い、家庭用オーブンで二回、三回と焼くと、自分が不便に感じる工程が分かります。道具は、その不便を減らすために選ぶほうが長く使えます。

焼いた食パンを保存し、最後まで楽しむ

食パンは、十分に冷めてから保存します。温かいまま袋へ入れると、内部の蒸気が水滴になり、表面が湿りやすくなります。

翌日までに食べる分は、家庭の室温や季節、使用した材料を考え、清潔な袋や容器へ入れます。高温多湿の時期や、乳製品・卵などを多く使う配合では、レシピの保存方法を優先します。

数日で食べ切れない分は、好みの厚さへ切ってから一枚ずつ包み、冷凍すると使いやすくなります。朝は必要な枚数だけ取り出し、トースターなどで温めます。

冷凍前に切っておけば、凍った一斤へ包丁を入れる必要がありません。作った日と種類を書いておくと、別の配合を作ったときにも区別できます。

少し乾いた食パンも、すぐ捨てる必要はありません。フレンチトースト、パンプディング、クルトン、パン粉などへ使えます。

耳を切り落とした場合も、油や砂糖を加えて焼く、スープへ添えるなどの使い道があります。ただし、カビ、異臭、強い変色などがあるものは、加熱して食べようとせず処分します。

安全に、気持ちよく作るために

パン生地を扱う前には手を洗い、作業台、ボウル、道具を清潔にします。指輪や腕時計は外し、長い髪や衣服の袖が生地へ触れないように整えます。

小麦粉や生地は、生の状態で味見しません。焼く前の生地に卵や乳製品を使う場合もあり、完成品として十分に焼き上げることを前提に扱います。

作業を途中で中断するときは、生地や材料を室温へ長く放置しません。冷蔵が必要な場合は、使用するレシピの方法に従います。

小麦、乳、卵などは、食物アレルギーに関わります。人へ渡す場合は、使用した材料だけでなく、スキムミルク、バター、はちみつ、ナッツなどの副材料も伝えます。

オーブン、天板、食パン型は高温になります。乾いた耐熱ミトンを使い、焼き上がった型を置く場所を予熱中に確保しておきます。

濡れた布巾で熱い型を持つと、熱が伝わりやすくなることがあります。型を取り出すときは両手で安定して持ち、周囲に子どもやペットが近づかないようにします。

型から外すときに強く振り回さず、耐熱台の上で安全に作業します。熱いパンを直接手でつかまず、必要に応じてミトンや清潔な道具を使います。

パン切り包丁は刃が長く、細かな歯が付いています。十分に冷めた食パンを安定したまな板へ置き、空中で持ったまま切らないようにします。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 型から一斤を取り出す

最初は、材料を量り、生地をこね、発酵させ、型へ入れて焼くところまで進みます。

山の高さが不ぞろいでも、側面の焼き色が薄くても構いません。型から取り出した一斤を冷まし、自分で切って食べることが最初の大きな楽しみです。

工程を最後まで経験すると、次はどこを変えたいのかが具体的に見えてきます。

第2段階 同じ配合を安定して焼く

同じ小麦粉、同じ型、同じ配合を使い、計量、発酵、成形を繰り返します。

一次発酵の大きさ、型へ入れた向き、二次発酵終了時の高さを記録すると、焼き上がりとのつながりが見えてきます。

前回より山がそろった、底の詰まりが減ったという小さな変化が、次の手応えになります。

第3段階 自分の朝食に合う食感を選ぶ

水分、砂糖、油脂、牛乳などを一つずつ調整し、好みの食感を探します。

そのまま食べるなら、やわらかさや香りを残したい。トーストが中心なら、焼いたときの耳と内側の違いを楽しみたい。サンドイッチへ使うなら、薄く切っても崩れにくいものが使いやすい。

自分の食べ方から逆算して一斤を作るようになります。

第4段階 山形、角形、粉の違いへ広げる

山形食パンが安定してきたら、ふたを使った角形食パンへ進めます。発酵終了時の高さと、ふたを閉める時刻を比べます。

国産小麦、全粒粉、米粉を含む配合など、粉の違いを試す方法もあります。ただし、粉を変えれば必要な水分やこね方も変わるため、専用のレシピを使います。

同じ食パンという形の中に、異なる香りやきめがあることが見えてきます。

第5段階 暮らしに合う一斤を定番へ育てる

何度も焼くうちに、自宅のオーブンで扱いやすい配合、発酵時間、焼き色が定まります。

休日に焼いて平日の朝へつなげる。家族が好きな厚さへ切って冷凍する。季節によって水分や発酵時間を少し調整する。食パン作りが、特別な一回から暮らしの小さな習慣へ変わっていきます。

誰かへ渡す場合は、材料と保存方法を伝え、相手が無理なく食べ切れる大きさにします。焼きたてを一緒に切り分けることも、続けた先にある豊かな楽しみです。

あわせて楽しみたい関連する趣味

パン作り

パン作りでは、食パンだけでなく、丸パン、ロールパン、総菜パンなど、型を使わないさまざまな形へ進めます。食パンで覚えた計量、こね方、発酵の見方を使いながら、生地を分け、包み、形を作る楽しみへ広げられます。


ジャム作り

ジャム作りは、果物と砂糖を小さな鍋で煮て、朝食へ添える一瓶を作る趣味です。自分で焼いた食パンへ季節のジャムをのせると、パンを作る日と果物を煮る日が、同じ朝の食卓へつながります。


コーヒー

コーヒーは、豆や挽き方、湯の温度、抽出方法による違いを楽しむ趣味です。厚めに切ったトーストを焼き、その日のパンに合う一杯を選ぶと、朝食の短い時間にも新しい組み合わせが生まれます。


型の中で育った生地が、明日の朝食になる

型へ入れたばかりの生地は、底のほうで小さくまとまっています。

それが時間とともに持ち上がり、焼成が始まると、型の縁を越えるように山がふくらんでいく。焼き上がった一斤を網へ置くと、台所に残る香りの中で、表面から少しずつ熱が抜けていきます。

食パン作りを始めるために、大きなこね機や専門店のようなオーブンは必要ありません。次の休日には、手持ちのボウルとはかりを出し、一斤型に合う基本のレシピを一つ選んでみてください。

最初の一斤は、少し低くても、きめが不ぞろいでも構いません。十分に冷ましてから中央を一枚切り、内側へ残った気泡や、生地の流れを眺めてみます。

次は山をそろえたい。もう少し厚く切ってトーストしたい。そんな小さな考えが浮かんだなら、その一斤はもう、レシピを一度再現しただけのパンではありません。


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