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タルト作りの楽しみ方

はじめに

型から外したタルトを皿へ移すと、こんがり焼けた縁の中にクリームや果物が収まり、それまで別々だった生地とフィリングが一つのお菓子としてまとまります。生地を伸ばしている途中は少しくらい不格好でも、焼き上がった一台には手作りらしい表情が残ります。

タルト作りというと、「生地をきれいに型へ敷くのが難しそう」「クリームまで作ると大変そう」と感じるかもしれません。実際には、最初から華やかなフルーツタルトを目指す必要はなく、生地とアーモンドクリームを一緒に焼くシンプルな一台なら、工程を順番に追いながら家庭でも楽しめます。

一度基本を覚えると、りんごや洋梨を焼き込んだり、カスタードと季節の果物を合わせたり、チョコレートやチーズを主役にしたりと、一つの型からさまざまなお菓子へ広げられます。今回は、初めての一台から少しずつ楽しみを広げていけるよう、材料、費用、道具、生地の扱い方、仕上げ方までまとめました。


タルト作りとは

タルトは、型へ敷いた生地を器のように使い、その中へクリームや果物、チョコレート、チーズなどを組み合わせて仕上げるお菓子です。

家庭で作りやすいものには、アーモンドクリームと果物を一緒に焼く焼き込みタルト、焼いたタルト台へカスタードと生の果物を載せるフルーツタルト、チョコレートやチーズを詰めるタイプなどがあります。同じタルトでも、フィリングによって必要な工程や保存方法が変わります。

初めて作る日は、完成写真だけでなく「生地を先に焼くのか」「フィリングと一緒に焼くのか」「冷やしてから仕上げるのか」までレシピを確認しておくと、全体の流れをつかみやすくなります。

主な楽しみ方 タルト生地を作り、クリームや果物を組み合わせて一台のお菓子に仕上げる

おすすめの頻度 月2回前後から。季節の果物に合わせて楽しむのもおすすめ

手を動かす時間 1時間〜1時間30分ほど

全体の所要時間 生地を休ませる時間や焼成、冷却を含めて2〜4時間ほど

短時間で楽しむ場合 市販のタルト台を使えば30〜60分ほどから

主な場所 家庭のキッチン

作業時間と所要時間に差があるのは、生地を冷やしたり、焼いた台を冷ましたりする待ち時間があるためです。その時間に洗い物やフィリングの準備を進められるので、休日の午後をずっと作業へ使うというより、家で過ごす時間の中へお菓子作りを組み込みやすい趣味です。

タルト作りにかかる費用

タルトは、薄力粉、バター、砂糖、卵といった基本材料だけでなく、アーモンドプードルや乳製品、果物などを使うことがあります。そのため、一台400円ほどと固定するより、作る種類に合わせて考えるほうが現実的です。

18cm前後のタルトを家庭で作る場合、アーモンドクリームを使ったシンプルな焼き込みタイプなら600〜1,200円ほどが一つの目安です。りんごや洋梨などの果物を加えると800〜1,500円ほど、いちごや複数の果物、生クリーム、カスタードなどを使う華やかなタルトでは1,000〜2,500円ほどになることもあります。

基本の焼き込みタルト1台 600〜1,200円ほど

果物を加える場合 800〜1,500円ほどから

生クリームや複数の果物を使う場合 1,000〜2,500円ほど

道具を買い足す場合 2,000〜6,000円ほどから

すでにボウル、泡立て器、ゴムべら、めん棒、キッチンスケール、オーブンがあれば、新しく必要になるのはタルト型くらいという場合もあります。最初から高価なミキサーや製菓道具一式をそろえず、何度か作ってから必要なものを増やすほうが無駄がありません。

果物は季節によって価格差が出やすいため、費用を抑えたい日は旬のものを一種類だけ使うのもおすすめです。りんご、バナナ、さつまいも、かぼちゃなどを主役にすれば、たくさんの果物を買わなくても十分にタルトらしい一台を作れます。

タルト作りをおすすめする3つの理由

1.いくつもの工程が一台のお菓子へまとまる

タルトでは、生地を作り、冷やし、伸ばして型へ敷き、フィリングを入れて焼くという工程を順番に進めます。フルーツタルトなら、さらにクリームや果物の仕上げが加わります。

それぞれの作業は別々ですが、最後にはすべてが一つの円形へ収まります。型から外した瞬間に、それまでボウルや作業台へ分かれていた材料が一台のお菓子として現れるところは、タルト作りならではの楽しさです。

2.季節の食材を主役にできる

タルトは、果物や野菜の季節と相性のよいお菓子です。春はいちご、夏は桃やブルーベリー、秋はぶどう、いちじく、りんご、栗など、その時期に食べたいものから作る一台を考えられます。

果物は生で飾るだけでなく、アーモンドクリームと一緒に焼いたり、コンポートにして使ったりできます。同じ食材でも仕上げ方を変えられるため、季節が一巡したあとにもう一度違うタルトを作る楽しみも残ります。

3.覚えた技術がほかのお菓子にもつながる

タルト生地を作ると、材料を正確に量ること、バターの温度、生地を休ませる意味、めん棒で均一に伸ばす感覚など、製菓の基本に自然と触れます。

カスタードを覚えればシュークリームやクリーム系のお菓子へ、アーモンドクリームなら焼き込み菓子へと応用できます。一つのタルトだけを深めてもよく、気になった工程から別のお菓子へ広げてもよい自由があります。

最初の一台は焼き込みタルトから

初めてなら、焼いた台へカスタードと生の果物を飾るフルーツタルトより、生地とアーモンドクリームを一緒に焼くタイプから始めると流れをつかみやすくなります。

フルーツタルトは見た目が華やかですが、タルト台を焼いて冷ます、クリームを作る、果物を切って飾ると工程が増えます。まずはタルト生地を型へ敷き、アーモンドクリームを入れて焼く一台を経験すると、生地作りと焼成に集中できます。

りんごや洋梨を薄く切って少量載せれば、それだけでも季節感のあるタルトになります。最初からデコレーションの完成度まで求めず、「生地を作ってきれいに焼く」ところを一つの目標にすると取り組みやすくなります。

最初に用意したい材料と道具

基本的なタルト生地では、薄力粉、バター、砂糖、卵などを使います。アーモンドクリームを作るならアーモンドプードルを加え、果物を使う場合は作りたい一台に合わせて必要な量だけ用意します。

最初からバニラビーンズ、洋酒、ナパージュ、ピスタチオなどまでそろえる必要はありません。風味や見た目を広げる材料は、基本の一台が作れるようになってからでも十分です。

道具も、家庭にあるものを中心に始められます。

タルト型
初めて一つ選ぶなら、18cm前後の丸型が扱いやすい大きさです。底が外れるタイプは焼き上がったタルトを取り出しやすくなります。

キッチンスケール
粉、バター、砂糖、卵などを重さで量ります。お菓子作りでは材料の割合が仕上がりへ影響しやすいため、あると便利です。

ボウル、ゴムべら、泡立て器
生地やクリームを作る基本の道具です。

めん棒
冷やした生地を型より少し大きく伸ばすために使います。

続けるなら、カードやスケッパー、刷毛、パレットナイフなどを買い足すと作業がしやすくなります。空焼きをするタルトを作るようになったら、タルトストーンも検討できます。

フードプロセッサーやスタンドミキサー、複数サイズのタルトリングなどは、最初から必要ありません。「ここが毎回大変」と感じる工程が出てきてから、その作業を助ける道具を選ぶくらいで十分です。

タルト生地は冷たさと扱いすぎないことが大切

甘いタルトでは、バター、砂糖、卵、薄力粉などを合わせた生地がよく使われます。パンとは違い、粉を加えたあとに長くこね続けるのではなく、必要以上に練らずまとめるのが基本です。

出来上がった生地は、レシピに従って冷蔵庫で休ませます。冷やすことでバターが再び締まり、生地も伸ばしやすくなります。

休ませた生地は、軽く打ち粉をした台で中心から外側へ少しずつ伸ばします。一方向だけへ強く押すより、生地の向きを変えながら厚みを整えるほうが扱いやすくなります。

冷えすぎて割れるときは少し室温へ置き、反対に柔らかくべたついてきたら一度冷蔵庫へ戻します。「とにかく冷やす」のではなく、割れず、だれず、めん棒で伸ばせる硬さを見つけることが大切です。

型より少し大きく伸ばしたら、めん棒へ軽く巻き付けるようにして移し、底と側面の角へそっと沿わせます。無理に引っ張って伸ばすと焼いたときに縮みやすくなるため、押し広げるより自然に沿わせる感覚で整えます。

途中で小さく破れても、余った生地で補修できます。初回から完璧な円形にこだわるより、底や側面に大きな隙間がない状態を目指せば十分です。

空焼きと焼き込みを使い分ける

レシピによっては、フィリングを入れる前にタルト台だけを焼く「空焼き」を行います。カスタードやチョコレートクリームなど、後から詰めるものを使うタルトでよく見られる方法です。

空焼きでは、底が大きく膨らむのを防ぐため、フォークで穴を開けたり、オーブンシートと重石を載せたりする場合があります。

一方、アーモンドクリームなど加熱するフィリングを生地へ詰め、そのまま一緒に焼くタルトもあります。初めて作るときは「タルトは必ず空焼きする」と覚えるのではなく、そのレシピで何を入れ、何回焼くのかを先に確認すると迷いません。

アーモンドクリームから広がる焼き込みタルト

アーモンドクリームは、バター、砂糖、卵、アーモンドプードルなどを合わせて作ります。タルト生地へ詰めて焼くだけでも香ばしく、りんご、洋梨、いちじくなど多くの果物と組み合わせられます。

最初は一種類の果物だけを載せると、作業も味の組み合わせも分かりやすくなります。りんごなら薄切りにして並べる、洋梨なら大きめに切って配置するなど、材料によって表情が変わります。

何度か作ると、果物を増やすだけでなく、ナッツを散らしたり、クリームの量を変えたりと、自分の好みに合わせた調整もできるようになります。

フルーツタルトでは仕上げそのものを楽しむ

基本の焼き込みタルトに慣れたら、焼いたタルト台へカスタードなどを詰め、生の果物を飾るフルーツタルトにも挑戦できます。

果物は何種類も用意しなくても、一種類をきれいに並べれば十分です。いちごを円形に並べる、桃を薄く切って重ねるなど、色や形をそろえるだけでもまとまりが出ます。

複数の果物を使うなら、まず大きなものの位置を決め、あとから小さな果物で隙間を整えると全体をまとめやすくなります。お店のように隙間なく盛り付けることより、自分が食べたい量とバランスで仕上げるほうが家庭のお菓子作りには向いています。

うまくいかなかったときは一つずつ見直す

タルト作りで起こりやすい失敗には、生地が縮む、伸ばす途中で割れる、べたつく、底が湿ったようになるといったものがあります。

生地が縮んだときは、型へ敷くときに引っ張りすぎなかったか、休ませる時間が足りなかったか、生地を扱いすぎなかったかを振り返ります。割れた場合は冷えすぎ、べたついた場合は生地が温まりすぎている可能性があります。

底が湿ったように感じたときは、焼き不足だけでなく、フィリングや果物の水分も確認します。一度に全部を変えるのではなく、次回は冷やす時間だけ、焼き時間だけというように一項目ずつ調整すると違いが分かりやすくなります。

簡単な記録も役立ちます。「18cm型でちょうどよかった」「前回より10分長く焼いた」「りんごはもう少し薄いほうが好み」といった一言と写真を残すだけでも、二回目のレシピが自分専用のものになっていきます。

衛生と保存で気を付けたいこと

タルト作りに特別な安全装備は必要ありませんが、卵や乳製品を扱うため、調理前の手洗いと清潔な器具を使うことが基本です。生の卵を触った手や器具で、完成後に載せる果物や食器へそのまま触れないようにします。

オーブンから出した直後のタルト型は、縁も底もかなり熱くなっています。底取れ型は下から押すと突然外れることがあるため、安定した場所で十分に冷ましてから型を外します。

保存方法はフィリングによって変わります。アーモンドクリームと果物をしっかり焼き込んだものと、生クリームやカスタード、生の果物を使ったものでは扱いが違うため、使ったレシピに合った保存方法を確認します。

特にクリームや生の果物を使ったタルトは、完成後も長時間室温へ置かず冷蔵します。焼き込みタイプは冷凍できるものもあるので、一台をすぐ食べ切れない場合は切り分けて保存すると続けやすくなります。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 一台を最後まで完成させる

最初は形が少しくらい不揃いでも、生地を作り、伸ばし、型へ敷き、フィリングを入れて焼くところまで進めてみます。一度最後まで経験すると、次に時間がかかりそうな工程や自分が難しく感じる部分が見えてきます。

第2段階 生地の扱いやすい状態が分かる

何度か作るうちに、冷えすぎた生地と柔らかくなりすぎた生地の違いが少しずつ分かります。粉を増やす前に冷やす、型へ引っ張らず沿わせるといった扱い方も自然になり、タルト台の仕上がりが安定してきます。

第3段階 フィリングを変えて楽しむ

同じタルト生地でも、アーモンドクリーム、カスタード、チョコレート、チーズなど、中身を変えれば違うお菓子になります。生地を一から変えなくても組み合わせだけで幅が広がるため、自分の好きな味を探しやすくなります。

第4段階 季節から作る一台を決める

レシピ一覧から選ぶだけでなく、店頭に並ぶ果物を見て「今度はこれを使おう」と考えるようになります。甘みの強い果物ならクリームを少し控えるなど、一台全体のバランスを考える楽しみも増えていきます。

第5段階 自分の定番を育てる

続けていると、好きな生地の厚さや焼き色、甘さ、果物の量が見えてきます。春はいちご、秋はりんご、冬はチョコレートというように、季節や行事ごとの定番を持つのも家庭で続けるタルト作りの楽しみです。

あわせて楽しみたい関連する趣味

菓子作り

タルトで覚える計量、材料の温度、クリーム作り、オーブンの使い方は、さまざまなお菓子へつながります。タルトの中で特に好きだった工程から、焼き菓子やケーキへ広げていくのもおすすめです。


クッキー作り

クッキーも、バター、砂糖、薄力粉などを使った生地を扱うお菓子です。タルトより工程が少なく、型抜き、絞り、アイスボックスなど作り方による食感の違いを気軽に楽しめます。

タルト生地を伸ばす作業が好きだった人なら、生地そのものを主役にできるクッキー作りにも入りやすいでしょう。

ジャム作り

タルトを作るうちに季節の果物そのものへ興味が出てきたら、ジャム作りも相性のよい趣味です。生の果物とは違い、砂糖と一緒に煮ることで甘さや香りを長く楽しめます。

自家製ジャムをタルト台へ薄く塗ったり、クリームと組み合わせたりすれば、二つの趣味を一つのお菓子へつなげることもできます。

何もなかった型の中に、季節の一台ができていく

タルト作りの始まりは、薄力粉やバター、卵といった身近な材料です。そこから生地を丸く伸ばし、型へ沿わせ、クリームや果物を加えていくと、少しずつその日に作る一台の姿が見えてきます。

一度目は型へ生地を敷くだけで精いっぱいでも、二度目には焼き色を見る余裕ができ、三度目には季節の果物を選んでみたくなるかもしれません。すべての工程を一度に上達させるのではなく、一台ごとに分かることが増えていくのがタルト作りです。

次の休日なら、まず18cmほどの型とシンプルな焼き込みタルトのレシピを一つ選んでみてください。豪華な飾りがなくても、焼き上がった縁に香ばしい色が付き、切ったときに生地とクリームの層が見えれば、それだけで十分に自分で作った一台です。


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