和食の楽しみ方
炊きたてのご飯に、湯気の立つ味噌汁。
そこへ焼いた魚や煮物、季節の野菜を使った小さなおかずが加わると、いつもの食卓が少しだけ丁寧に整います。
和食を作るというと、だしを一から取り、何品もの料理を同時に仕上げなければならないように感じるかもしれません。切り方や盛りつけにも細かな決まりがあり、初心者には難しそうな印象もあります。
けれど、自宅で楽しむ和食は、もっと気軽に始められます。
ご飯を炊き、味噌汁を作り、旬の野菜を一品添える。いつもの料理にだしを使ってみる。買ってきた魚を焼き、大根おろしを添えてみる。
それだけでも、十分に和食を作る時間になります。
和食の魅力は、決まった料理名を正確に再現することだけではありません。身近な食材の味を生かし、季節や食べる人に合わせて、煮る、焼く、蒸す、和えるといった調理法を組み合わせることにあります。
同じ大根でも、冬は温かい煮物にし、暑い季節にはおろして冷たい料理へ添える。少し残った野菜を味噌汁へ入れ、翌日はごま和えにする。
食材を使い切りながら、今日の暮らしに合う献立を考える。
そんな日々の工夫まで含めて楽しめることが、和食のおもしろさです。
今回は、自宅で月2回ほど、普段より少し丁寧に和食を作る場合を中心に、基本情報、費用、おすすめする理由、最初の献立、だしと調味料、調理の流れ、安全面、続けるうちに変わっていく楽しさを紹介します。
和食の基本情報
主な楽しみ方 ご飯、汁物、主菜、副菜を組み合わせ、季節の食材やだしを生かした料理を作る
おすすめの頻度 月2回前後
1回の調理時間 約90分
短時間で楽しむ場合 約30分から
買い物や片付けを含む総所要時間 約120分
主な場所 自宅のキッチン
最初に必要なもの 包丁、まな板、鍋、フライパン、菜箸、計量用品、食材、基本調味料
始めやすさ 家庭にある調理器具を使え、身近な料理一品から始められる
天候の影響 ほとんど受けず、自分の予定に合わせて取り組める
難しく感じやすいところ 複数の料理を同じ時刻に仕上げる段取りと、味つけの加減
農林水産省では、和食の特徴として、多様な食材と持ち味の尊重、食事の組み合わせ、季節の表現、年中行事との関わりなどを挙げています。つまり和食は、寿司や天ぷらといった個別の料理だけではなく、食材の選び方や食卓の整え方まで含んだ食文化です。
家庭で作るときに、毎回本格的な会席料理を目指す必要はありません。
和食の基本形としてよく知られているのが、ご飯、汁物、主菜一品、副菜二品を組み合わせる「一汁三菜」です。ただし、これは必ず守らなければならない決まりではなく、献立を考えるときのひとつの目安です。
忙しい日は、ご飯、具だくさんの味噌汁、魚や豆腐のおかずだけでもかまいません。
反対に、時間のある休日には副菜を二つ作り、器や盛りつけまで考えてみる。自分の時間と体調に合わせて品数を変えられることも、家庭の和食のよいところです。
最初から何品も同時に作ろうとすると、切る、加熱する、味をつけるという作業が重なり、慌ただしくなります。初心者は、まず主菜か汁物を一つ丁寧に作り、慣れてから組み合わせを増やすほうが続けやすいでしょう。
和食にかかる費用
自宅に一般的な調理器具がそろっていれば、和食を始めるための初期費用はほとんどかかりません。
包丁、まな板、鍋、フライパン、ボウル、菜箸があれば、多くの家庭料理を作れます。和食専用の道具を最初から買いそろえる必要はありません。
手持ちの調理器具を使う場合 0円
不足している基本用品をそろえる場合 約3,000〜6,000円
包丁や鍋、計量用品を一通り買い足す場合 約6,000〜15,000円
品質のよい包丁や複数の鍋までそろえる場合 約15,000〜36,000円
入力データにある初期費用6,000円は、計量カップや計量スプーン、小鍋、保存容器など、不足しているものを補う場合の目安として考えられます。
ただし、包丁や鍋を新しく買う前に、まず自宅にあるものを確認しましょう。
専用の卵焼き器がなくても、普通のフライパンで卵料理は作れます。落としぶたは、鍋に合うふたや加熱に対応した紙で代用できます。すり鉢や蒸し器も、作りたい料理が増えてから検討すれば十分です。
1回の食材費は献立によって大きく変わる
和食の食材費は、作る品数と使う食材によって変わります。
ご飯、豆腐とわかめの味噌汁、季節野菜のおひたしなど、家にある調味料を使った簡単な献立なら、2人分で600〜1,000円ほどに収められることがあります。
魚や肉を主菜にし、副菜を二品作る場合は、2人分で1,000〜2,000円ほどが目安です。刺身、旬の魚、牛肉、品質のよい乾物などを使えば、2,500円を超えることもあります。
簡単な一汁一菜・2人分 約600〜1,000円
主菜と副菜を組み合わせる・2人分 約1,000〜2,000円
旬の魚や複数の料理を楽しむ・2人分 約1,500〜2,500円以上
入力データにある1回400円という金額は、普段の食事へ追加する食材費や、調味料の消費分だけを数える場合には考えられます。しかし、料理に使う食材を一から購入する費用としては、少し低めです。
和食は生活のための食事でもあるため、趣味としての費用をどこまで数えるかで年間額が変わります。
普段の夕食を和食へ置き換えるだけなら、その食費をすべて趣味費として数える必要はありません。いつもより少しよい魚を選ぶ、旬の食材を一品加える、新しい調味料を試すといった追加分を趣味費として考えると、家計との区別がしやすくなります。
月2回、追加費用を抑えて楽しむ場合 年間約10,000〜15,000円
食材を一からそろえて作る場合 年間約24,000〜48,000円
季節の魚や特別な献立を楽しむ場合 年間約50,000円以上になることもある
入力データの年間約11,500円は、家にある米や調味料を使い、普段の食事へ少し食材を足す場合の目安として扱うのが自然です。
調味料は少しずつそろえる
和食を始めるために、多くの調味料を一度に買う必要はありません。
最初は、しょうゆ、味噌、砂糖、塩、酢があれば、基本的な煮物、汁物、和え物を作れます。料理酒やみりんを加えると、味に丸みや香りをつけやすくなります。
最初に用意したいもの しょうゆ、味噌、砂糖、塩、酢
料理の幅を広げるもの みりん、料理酒、だし素材、ごま油、ごま
後から試したいもの 白だし、薄口しょうゆ、地域の味噌、さまざまな酢
大きな容器のほうが割安に見えても、使い切れなければ風味が落ちたり、保管場所を取ったりします。最初は小さめのものを選び、自分がよく使う調味料が分かってから容量を増やしましょう。
和食をおすすめする3つの理由
1.身近な食材から、季節を感じられる
和食では、同じ料理を一年中まったく同じ食材で作る必要はありません。
春には菜の花や新玉ねぎ、夏にはなすやきゅうり、秋にはきのこやさつまいも、冬には大根や白菜。店頭へ並ぶ食材の変化を献立へ取り入れるだけで、食卓に季節が生まれます。
旬の食材を使うと、特別な盛りつけをしなくても、その時期らしい一皿になります。
春の青菜をさっとゆでて、だししょうゆで和える。夏の冷ややっこへ薬味を添える。秋のきのこをご飯と一緒に炊く。冬の根菜を時間をかけて煮る。
難しい料理名を覚えなくても、季節の食材へ合う調理法を考えることが、和食を楽しむ入口になります。
同じ野菜でも、切り方や火の入れ方で印象が変わります。
大根を薄く切れば短時間で味が入り、厚く切ってゆっくり煮れば、やわらかな食感を楽しめます。きゅうりも、生のまま食べる、塩もみにする、酢の物にするというように、少しの手間で表情が変わります。
買い物をするときに、安いものだけではなく、「今は何がおいしそうか」と見るようになる。
その小さな変化が、毎日の食材選びを楽しくしてくれます。
2.だしと組み合わせで、味を自分らしく整えられる
和食の味は、しょうゆや味噌を濃く使うだけで決まるものではありません。
昆布、かつお節、煮干し、干ししいたけなどから取るだしや、食材そのものから出るうま味を使うことで、塩味だけに頼らず、まとまりのある味をつくれます。
最初から毎回、一からだしを取らなくてもかまいません。
だしパックや顆粒だしを使い、味噌汁や煮物の作り方へ慣れる。時間のある日に昆布とかつお節から取って、普段使っているものとの違いを確かめる。
手軽な方法と丁寧な方法を使い分ければ、無理なく続けられます。
調味料の組み合わせを覚えると、レシピを見なくても料理を考えやすくなります。
しょうゆ、みりん、酒、砂糖を使った甘辛い煮物。酢、砂糖、塩を使った酢の物。だしと薄いしょうゆ味で作るおひたし。
最初はレシピどおりに量り、慣れてきたら甘さや塩味を少し変えてみます。
甘めの煮物が好きなのか、だしを強く感じる味が好きなのか。味噌汁は具を多くするのか、汁をゆっくり味わいたいのか。
何度か作るうちに、自分や家族が食べやすい加減が分かってきます。
正解をひとつ覚えるのではなく、食べる人に合わせて味を整えられるようになることが、家庭で和食を続ける楽しさです。
3.一品の練習が、毎日の献立へつながる
和食は、趣味として練習したことを、普段の食事へ取り入れやすい料理です。
休日に覚えた味噌汁を、平日の朝に作る。丁寧に作った煮物を、翌日のおかずにする。魚の焼き方を覚えたら、旬の魚を見つけた日に試す。
一度作って終わるのではなく、覚えた手順が日々の食卓へ戻ってきます。
料理の練習では、うまくいかなかった理由も次に生かしやすいものです。
煮物の味が濃ければ、次は煮詰める時間を短くする。魚が焼きすぎたなら、厚みと火加減を見直す。おひたしが水っぽければ、野菜の水気を丁寧に絞る。
失敗が、次回の具体的な改善点になります。
和食は、ひとつの献立の中で複数の調理法を練習できることも特徴です。
ご飯を炊く。
汁物を煮る。
魚を焼く。
野菜をゆでて和える。
品数を増やすほど難しくはなりますが、一つずつ覚えた技術が組み合わさることで、食卓全体を自分で整えられるようになります。
作品を飾る趣味とは違い、完成した料理はその日のうちに食べてなくなります。
それでも、作り方や味の感覚は手元に残り、次の食事へつながります。暮らしの中で繰り返し役立つことが、和食を趣味にする大きな魅力です。
最初は一汁三菜ではなく、一汁一菜から
初めて和食を作る日に、主菜と副菜をいくつも用意しようとすると、作業の順番が分からなくなりやすくなります。
最初は、ご飯、具だくさんの汁物、簡単なおかずを組み合わせる「一汁一菜」くらいから始めましょう。
たとえば、次のような献立です。
ご飯
豆腐とわかめの味噌汁
鮭の塩焼き、または冷ややっこ
これなら、炊飯器でご飯を炊いている間に味噌汁を作り、最後に主菜を仕上げられます。
少し余裕があれば、ほうれん草のおひたし、きゅうりの酢の物、納豆、漬物などを一品加えます。副菜は必ず火を使って作る必要はなく、切る、和える、盛るだけのものを組み合わせてもかまいません。
一汁三菜は、ご飯と汁物に、主菜一品、副菜二品を合わせる献立の形です。食材や調理法を組み合わせる目安として便利ですが、品数をそろえることだけに追われると、調理も食事も疲れてしまいます。
まずは一品をおいしく完成させる。
慣れた料理を一つ残し、新しい料理を一つだけ加える。
この進め方なら、毎回すべてを初めから覚えなくて済みます。
最初に覚えたい5つの料理
ご飯
和食の土台になるのが、ご飯です。
米を量り、洗い、水加減を整え、吸水させてから炊く。炊き上がったら全体をほぐし、余分な水分を逃がします。
炊飯器を使えば難しい作業ではありませんが、米の種類、水温、浸水時間によって食感が変わります。同じ米を何度か炊き、自分の好みの水加減を知るだけでも、食事全体の満足感が変わります。
味噌汁
味噌汁は、だし、味噌、具材の組み合わせを練習できる料理です。
最初は、豆腐とわかめ、油揚げとねぎ、玉ねぎとじゃがいもなど、二種類ほどの具から始めます。火の通りにくいものを先に煮て、豆腐やわかめは後から加えます。
味噌を入れたあとに強く煮立て続けると、香りが弱くなりやすいため、最後に溶き入れて火を止めます。
具材から味が出るため、毎回同じ味噌を使っても、組み合わせによって印象が変わります。
焼き魚
焼き魚は、味つけがシンプルなぶん、火の入れ方が仕上がりを左右します。
最初は、切り身になった鮭、さば、ぶりなどが扱いやすいでしょう。魚焼きグリルがなくても、フライパン用のシートやふたを使って焼ける場合があります。
魚の厚みを見て火加減を調整し、表面だけ焦がさず中心まで加熱します。
大根おろしやすだち、レモンなどを添えると、同じ魚でも食べ方を変えられます。
煮物
煮物は、食材へ味を染み込ませる料理と思われがちですが、長く煮ればよいとは限りません。
食材の大きさをそろえ、火の通りにくいものから鍋へ入れる。煮汁の量と火加減を見ながら、煮崩れさせずに仕上げます。
筑前煮のように多くの材料を使う料理は、下処理も多くなります。最初は、かぼちゃの煮物、里芋の煮物、大根と鶏肉の煮物など、材料を絞ったものがおすすめです。
おひたし・和え物
副菜として覚えやすいのが、おひたしや和え物です。
青菜やいんげんをゆで、水気を切り、だししょうゆやごま衣で和えます。作業は短いものの、ゆですぎないこと、水気を丁寧に切ることが味を左右します。
野菜を変えれば応用しやすく、献立へ一品加えたいときに役立ちます。
最初に用意したい道具
家庭に一般的な調理器具があれば、特別な和食道具は必要ありません。
包丁 手に合い、ぐらつきや刃こぼれがないもの
まな板 安定して置け、十分な広さがあるもの
鍋 味噌汁や煮物に使えるふた付きのもの
フライパン 焼き物、炒め物、蒸し焼きに使えるもの
ボウルとざる 野菜を洗う、和える、水気を切る
菜箸・木べら 加熱中の食材を扱う
計量カップ・計量スプーン 味を安定させる
キッチンタイマー 加熱時間と同時調理を管理する
保存容器 作り置きや余った食材を保存する
最初は目分量ではなく、調味料を量ることをおすすめします。
しょうゆ大さじ一杯と、容器から感覚で注いだ量には、思っている以上の差が出ることがあります。一度レシピどおりに作り、その味を基準にしてから調整すると、失敗の理由を見つけやすくなります。
包丁も、高価な和包丁である必要はありません。
普段の野菜、肉、魚の切り身を扱える三徳包丁が一本あれば、多くの家庭料理を作れます。刺身包丁や出刃包丁は、魚を一尾からさばきたいと思った段階で検討すれば十分です。
90分で献立を仕上げる流れ
複数の料理を作るときは、料理ごとに完成させるのではなく、待ち時間を使って並行すると効率よく進みます。
ただし、初心者が最初から多くの作業を重ねると、火を止め忘れたり、調味料を入れ忘れたりします。慣れないうちは、二つの加熱を同時に進めすぎないようにしましょう。
1.献立と手順を確認する
調理を始める前に、使う食材と調味料を出します。
ご飯を最初に炊くのか、煮物を早めに火へかけるのか、冷めてもよい副菜を先に作るのかを決めます。
献立を一度紙へ書くと、作り忘れも減ります。
2.米を炊き、だしや煮物から始める
炊飯と煮物は待ち時間が長いため、最初に取りかかります。
米を炊飯器へ入れ、煮物を火へかけたら、その間に野菜を切ったり、副菜の準備をしたりします。
3.冷めてもよい副菜を作る
おひたしや酢の物など、少し冷めてもおいしい料理を先に仕上げます。
完成したら調理台を片付け、使い終わったボウルや包丁を洗います。作業の途中で一度整理すると、後半に使える場所が増えます。
4.汁物を進める
味噌汁は、具材を煮たところまで準備し、味噌を入れるのは食べる少し前にします。
すまし汁の場合も、香りを生かしたい食材は最後に加えます。
5.主菜を最後に仕上げる
焼き魚、照り焼き、揚げ物などは、食べる直前に完成するようにします。
主菜を加熱している間に、ご飯をよそい、副菜を盛り、汁物を仕上げます。
6.盛りつけと片付けを少しだけ進める
料理がすべてできてから洗い物を始めると、食後の負担が大きくなります。
煮込みや焼き上がりを待つ間に、調理器具を洗い、食材を冷蔵庫へ戻します。食べ始めるときに調理台がある程度片付いているだけでも、気持ちよく食卓へ移れます。
だしは、無理なく使い分ける
だしを一から取らなければ、本当の和食ではないと考える必要はありません。
普段は顆粒だしやだしパックを使い、休日に昆布とかつお節から取ってみる。料理によって、煮干しや干ししいたけを使う。
自分の時間に合わせて選べます。
昆布とかつお節の合わせだしは、味噌汁、すまし汁、煮物など幅広く使えます。昆布は水へ浸してからゆっくり温め、沸騰する前に取り出します。その後、かつお節を加え、香りとうま味を移します。
だしを取ったあとの昆布やかつお節も、細かく刻んで佃煮やふりかけにすることがあります。
すべて使い切らなければならないと負担に感じる必要はありませんが、余裕のあるときに試すと、食材を最後まで使う楽しさが生まれます。
市販のだしを選ぶ場合は、食塩が含まれているかを確認しましょう。
塩分のあるだしを使い、さらにレシピどおりのしょうゆや味噌を入れると、味が濃くなる場合があります。味見をしながら、最後の調味料を少しずつ加えます。
食材を買いすぎない献立の考え方
和食は品数を増やしやすい一方で、食材も余りやすくなります。
一回の献立だけを見るのではなく、残った食材を次にどう使うかまで考えて買い物をすると、費用と食品ロスを抑えられます。
たとえば、大根を買った場合は、次のように分けられます。
上の部分 大根おろしやサラダにする
中央部分 煮物やふろふき大根にする
下の部分 味噌汁や漬物に使う
葉が付いている場合 細かく刻んで炒め物やふりかけにする
同じ食材を使っても、調理法を変えれば続けて食べやすくなります。
ほうれん草を一度にゆで、初日はおひたし、翌日は味噌汁やごま和えに使う。きのこを数種類まとめて切り、炊き込みご飯と汁物に分ける。
一つの食材から複数の料理を考えることも、和食を続ける楽しさです。
買い物前には冷蔵庫を確認し、使いかけの野菜や調味料を一つでも献立へ入れましょう。
新しい食材だけで完璧な一汁三菜を作るより、家にあるものを無理なく使い切るほうが、家庭料理としては長く続けやすくなります。
安全に作るために大切なこと
和食には、刺身や冷ややっこなど、加熱せず食べる料理があります。一方で、煮物や汁物は一度に多く作り、翌日以降へ保存することもあります。
そのため、手洗い、食材の分離、加熱、冷却、保存を丁寧に行う必要があります。
生の肉や魚と、加熱後の料理を分ける
生の肉や魚を切った包丁やまな板で、そのままサラダや薬味を切らないようにします。
先に野菜を切り、最後に肉や魚を扱う。途中で包丁とまな板を洗う。器や菜箸も、生の食材用と盛りつけ用を分ける。
少しの順番で、交差汚染を防ぎやすくなります。
生の肉や魚へ触れたあとは、石けんで手を洗います。ふきんやタオルも濡れたまま長時間使い続けず、清潔なものへ交換しましょう。
加熱する料理は中心まで火を通す
肉、魚、卵などは、表面の色だけで判断せず、中心まで加熱します。
家庭での食中毒予防では、加熱が必要な食品について、中心部を75℃で1分間以上加熱することが一つの目安とされています。生の肉や魚の汁を、加熱後の食品や生で食べる野菜へ付けないことも重要です。
魚や肉の厚みがある場合は、火を弱めてふたをし、中まで熱を通します。電子レンジで再加熱するときは、途中で位置を変えたり、混ぜたりして、温度のむらを減らします。
作り置きは早く冷ます
煮物や炊き込みご飯を鍋のまま室温へ長時間置かないようにします。
保存する場合は、清潔な容器へ小分けし、粗熱が取れたら冷蔵庫へ入れます。食べるときは必要な量だけ取り出し、料理に合った方法で十分に再加熱します。
見た目やにおいに違和感があるものは、無理に食べないことも大切です。
包丁と火を使う場所を整える
調理台へ食材や器を広げすぎると、包丁を置く場所がなくなり、鍋の柄へ身体が当たりやすくなります。
使わないものは片付け、包丁は刃を内側へ向けて安定した場所へ置きます。鍋やフライパンの柄は通路側へ出さず、加熱中はその場を離れすぎないようにしましょう。
ぬれた床は転倒につながるため、こぼした水や油はすぐに拭きます。
季節と行事から献立を選ぶ
何を作るか迷ったときは、季節や年中行事から考える方法があります。
春は、たけのこご飯、菜の花のおひたし、豆ご飯。夏は、冷ややっこ、そうめん、焼きなす。秋は、きのこご飯、さつまいもの煮物、秋魚の焼き物。冬は、おでん、鍋物、根菜の煮物。
季節の定番料理を一つ覚えると、翌年も同じ時期に作りたくなります。
正月のお雑煮、節分の料理、桃の節句のちらし寿司、端午の節句、土用、十五夜など、行事と結びついた料理もあります。
すべてを昔ながらの方法で用意する必要はありません。
その年は一品だけ作る。地域による違いを調べる。家族が食べやすい材料へ変える。
毎年少しずつ試すことで、自分の暮らしに合った季節の習慣になっていきます。
和食の楽しみが深まる5段階
和食の上達は、品数の多い献立を作れるようになることだけではありません。
一品を完成させ、味を安定させ、食材を組み合わせ、自分の定番を育てる。続けるほど、料理の楽しさは少しずつ変わっていきます。
ここで紹介する5段階は、料理の優劣を決めるものではありません。
毎日の食事を楽にしたい人もいれば、季節の料理を深めたい人、郷土料理を調べたい人、料理を人へ伝えたい人もいます。自分に合う段階を行き来しながら楽しめます。
第1段階 一品を最後まで作る
最初は、味噌汁、煮物、焼き魚など、ひとつの料理を完成させます。
材料を洗う、切る、加熱する、味をつける、盛りつける、片付ける。最初から品数を増やさず、一連の流れへ慣れることを優先します。
少し味が濃くても、形が崩れてもかまいません。
自分で作った料理を食卓へ出せたことが、最初の手応えになります。
第2段階 同じ味を繰り返せるようになる
何度か作ると、前回より甘い、薄い、煮すぎたといった違いが分かるようになります。
調味料を量り、火加減と時間を記録することで、好みの味を再現しやすくなります。味見をする時刻や、火を止めたあとに味が変わることにも気づきます。
家族から「前の味が好きだった」と言われたときに、作り方を振り返れるようになる。
それが、この段階の上達です。
第3段階 献立を自分で組み立てる
基本の料理がいくつかできるようになると、主菜と副菜の組み合わせを考えられます。
主菜が甘辛い煮物なら、副菜は酸味のある酢の物にする。揚げ物の日は、汁物を軽くする。野菜が少なければ、味噌汁の具を増やす。
味、色、食感、調理法が重なりすぎないように整えます。
冷蔵庫にある食材から献立を決められるようになると、レシピを探す時間も短くなります。自分の判断で食卓をつくれることが、大きな楽しさになります。
第4段階 だし、旬、郷土料理を深める
家庭料理に慣れたら、特定のテーマを決めて掘り下げます。
昆布やかつお節の違いを比べる。地域ごとの味噌を試す。旬の魚を季節ごとに料理する。自分の出身地や旅行先の郷土料理を調べて作る。
同じ「和食」という言葉の中にも、地域や家庭による違いがあります。
雑煮の餅の形、汁の味、具材も地域によって異なります。煮物の甘さや、使うしょうゆの種類にも違いがあります。
一つの正解を探すのではなく、背景にある土地や暮らしを知ることで、料理の見え方が深まります。
第5段階 記録し、人へ伝える
作った料理を記録すると、自分の変化が見えるようになります。
献立の写真を残す。調味料の分量を書く。旬の食材を使った時期を記録する。家族に好評だった料理へ印を付ける。
記録が増えると、自分だけの献立集になります。
さらに、料理を家族や友人へ振る舞う、レシピを共有する、地域の料理を学ぶ会へ参加するなど、人との関わりへ広げられます。
経験を積めば、料理教室、レシピ制作、写真や動画での発信、食品に関わる仕事へつながる可能性もあります。
ただし、自宅で作った食品を販売したり、料金を受け取って飲食を提供したりする場合は、家庭内の趣味とは異なる衛生管理や手続きが必要になります。食品を事業として扱う段階では、扱う料理や営業方法に応じて保健所などへ確認し、安全管理を最優先にします。食品事業者には、工程ごとの危害要因を管理する衛生管理の考え方も求められています。
最初から仕事にすることを急がず、まずは自分が繰り返し作りたい料理と、人へ安心して出せる手順を育てることが大切です。
いつもの食卓を、少しずつ自分の味にする
和食は、特別な日にだけ作る難しい料理ではありません。
ご飯を炊く。
味噌汁を作る。
季節の野菜を一品添える。
そんな小さな献立から始められます。
初めから何品も同時に仕上げようとしなくてもかまいません。まずは味噌汁を一つ作り、次は焼き魚を加える。その次に、冷蔵庫にある野菜で副菜を作ってみる。
一品ずつできることが増えると、いつの間にか食卓全体を組み立てられるようになります。
和食のおもしろさは、同じ料理を何度作っても、まったく同じにならないところにもあります。
季節によって食材が変わり、味噌やしょうゆによって味が変わる。食べる人の体調や、その日の気分によっても、ちょうどよい味は違います。
レシピを正確に再現することから始まり、少しずつ自分の味へ調整していく。
その積み重ねが、家庭で和食を作る楽しさです。
次の休日は、ご飯と味噌汁に、気になる一品を加えるところから始めてみてください。
豪華な献立でなくても、旬の食材をひとつ選び、いつもより丁寧に切り、味を確かめながら作る。その時間が、普段の食事を少し楽しみに変えてくれます。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、暮らしの中で少しずつ深められるものまで、さまざまな趣味の楽しみ方を紹介しています。
次の休日に取り入れたい楽しみを探している方は、ぜひフォローして、これからの記事ものぞいてみてください。
