アクアビクスの楽しみ方
屋内プールへ入ると、水の音に混じって、少し明るい音楽が聞こえてきます。
プールサイドではインストラクターが大きく腕を動かし、水の中では参加者がその動きをまねている。歩いたり、膝を上げたり、左右へステップしたり。泳いでいる人はいないのに、みんな気持ちよさそうに全身を動かしています。
アクアビクスは、音楽に合わせて水の中で体を動かすエクササイズです。
名前は知っていても、実際に参加するとなると、少し気になることがあります。
「泳げなくても大丈夫?」
「振り付けについていけなかったら恥ずかしい?」
「久しぶりに水着を着るのが落ち着かない」
「プールへ行くなら、何を持っていけばいい?」
けれど、初心者向けのクラスなら、足が底につく深さで行われることが多く、泳ぐ技術を使わない内容もあります。陸上のダンスのように振り付けをきれいに見せるより、水の抵抗を感じながら自分のペースで動くことが中心です。
今回は、アクアビクスの基本情報や費用、教室の選び方、必要な持ち物、初めて参加する日の流れ、安全に楽しむためのポイントまでまとめます。
アクアビクスとは
アクアビクスは、水を意味する「アクア」と、有酸素運動を意味する「エアロビクス」を組み合わせた言葉です。アクアダンスや水中エクササイズと呼ばれることもあります。
インストラクターがプールサイドで動きを見せ、参加者は水の中からそれを見ながら、音楽に合わせて歩く、腕を動かす、膝を上げる、軽く跳ぶといった運動を行います。
水中ウォーキングとの違いは、音楽と動きの組み合わせが多いことです。ただ前へ歩くだけでなく、横歩き、キック、腕の押し引きなどをつなげていくため、全身を使う感覚があります。
水泳のように速さや距離を競うものではありません。足を底につけたまま参加できるクラスも多く、顔を水につけない内容なら、泳ぎに自信がない人でも始めやすくなります。
ただし、水深や参加条件は施設によって違います。「泳げなくても参加可」「初心者向け」「足が底につく」と案内されているクラスを選ぶことが大切です。
まず知っておきたい基本情報
運動時間:一回30〜60分ほど。着替えやシャワーを含め、全体で90分〜2時間を見ておくと安心です。
楽しめる場所:公共の温水プール、フィットネスクラブ、スイミングスクール、スポーツセンターなど。
泳力:初心者向けでは泳力を問わない教室もあります。水深や対象者は事前に確認します。
人数:十人前後の小さな教室から、数十人で参加するプログラムまでさまざまです。
予約:当日参加できる教室もあれば、事前予約や数回分の一括申込が必要な教室もあります。
運動の強さ:やさしい水中体操から、テンポの速いアクアダンスまで幅があります。
季節:屋内温水プールなら一年を通して楽しめます。雨や暑さで屋外運動を休みたい日にも向いています。
初めてなら、30〜45分ほどの初心者向けクラスが無理のないところです。最初から運動量の多いクラスを選ばず、水に慣れながら基本動作を試せる内容を探します。
費用はどのくらいかかる?
アクアビクスにかかる費用は、公共プールの教室へ通うか、フィットネスクラブへ入会するかで大きく変わります。
まず一度体験する場合
公共プールの当日参加型プログラムなら、施設使用料と参加料を合わせて500〜1,500円ほどがひとつの目安です。自治体の連続教室には、受講料が無料で、毎回数百円の入館料だけ必要なものもあります。
フィットネスクラブの体験利用は、無料キャンペーンから3,000円ほどまでさまざまです。キャンペーンだけで決めず、通常料金、退会条件、体験できるプログラムの時間まで確認します。
最初にそろえるもの
水着は3,000〜8,000円ほど、スイムキャップは500〜1,500円ほどが目安です。タオル、防水用の袋、洗面用品を手持ちで用意できれば、初期費用は4,000〜10,000円ほどに収められます。
ゴーグルは、顔を水につけないクラスなら必須ではありません。水中用シューズや専用グローブも、施設で使用できるか確認してから考えます。
水着を選ぶときは、見た目より動きやすさを優先します。肩や股関節を動かしたときに食い込みにくく、ずれにくいフィットネス用の水着が使いやすいでしょう。
一回と一年の目安
公共施設へ週一回通う場合、交通費を除いた年間費用は30,000〜80,000円ほどが目安です。教室の受講料、施設使用料、開催回数によって変わります。
総合フィットネスクラブの月会費は、利用回数や施設によって月7,000〜19,000円ほど。年間では90,000〜230,000円ほどになりますが、ジム、スタジオ、通常のプール利用、風呂やサウナなどが含まれることもあります。
アクアビクスだけを楽しみたいなら、まず公共施設の一回参加か短期教室を試すほうが負担を抑えられます。週に何度も通いたくなってから、月会費制と比較すると無駄がありません。
アクアビクスが楽しい三つの理由
1.水そのものが、ほどよい相手になる
水の中で腕を前へ押すと、陸上よりゆっくり進みます。横へ広げても、後ろへ引いても抵抗があり、特別な重りを持たなくても全身を動かせます。
動きを速くしたり、手のひらを大きく広げたりすると抵抗が増え、ゆっくり小さく動かすと控えめになります。同じ振り付けの中でも、自分で運動の強さを調整しやすいところがあります。
一方で、水の浮力があるため、陸上とは体の重さの感じ方が変わります。軽く跳んだときのふわっとした感覚や、足を下ろしたときに水に受け止められる感覚は、水中運動ならではです。
2.振り付けを完璧に覚えなくても楽しい
アクアビクスでは、音楽に合わせて動きをつなげますが、ダンスの発表会ではありません。隣の人と同じ角度まで腕を上げたり、すべてのステップを正確に覚えたりしなくても大丈夫です。
水面から下の動きは周囲から細かく見えにくく、少し遅れても目立ちません。分からなくなったらその場で歩き、次の分かる動きから戻れば十分です。
一曲が終わるころには、難しい振り付けを覚えたというより、音楽と水に合わせて自然に動けた感覚が残ります。運動が得意ではない日でも、参加しやすい気楽さがあります。
3.一人で参加しても、教室のリズムに乗れる
グループレッスンですが、参加者同士で会話を続ける必要はありません。インストラクターを見ながら動くため、一人で申し込んでも過ごし方に迷いにくくなります。
同じ音楽に合わせて何人かで動くと、自宅で一人きりで運動するときとは違う一体感があります。それでいて、競争や勝敗はなく、自分の範囲で動けます。
終わったあとにシャワーを浴び、髪を乾かして外へ出るころには、休日にひとつ予定を終えたような、すっきりした区切りが生まれます。
初めての教室は、ここを見て選ぶ
教室名に「アクアビクス」とあっても、内容や運動の強さは同じではありません。音楽に合わせてしっかり動くクラスもあれば、水中ウォーキングとストレッチを中心にした穏やかなクラスもあります。
初めて探すときは、次の点を確認します。
初心者や初参加者を対象にしているか
泳げなくても参加できるか
プールの水深と、身長に関する条件
一回の時間と、運動強度の表示
予約制か、当日参加できるか
水着、キャップ、シューズなどの持ち物
更衣室、シャワー、ドライヤー、ロッカーの有無
化粧、アクセサリー、飲み物に関する施設ルール
「脂肪燃焼」「パワー」「ハイインパクト」といった名前のクラスは、テンポが速く、ジャンプや大きな動きが多い場合があります。最初は「入門」「やさしい」「ベーシック」「水中体操」などの表記があるものを選ぶと安心です。
見学できる施設なら、参加する前にプールサイドの様子を見ておくのもよい方法です。音楽の大きさ、参加者の人数、動きの速さが分かると、当日の緊張が少し減ります。
最初に覚えたい基本の動き
アクアビクスの動きは、難しい技というより、歩く動作を少しずつ変えたものが中心です。
マーチ
その場で足踏みをします。背中を丸めず、足の裏をプールの底へ置きながら、腕も前後へ動かします。分からない振り付けが出たときに戻れる、基本の動きです。
サイドステップ
右、左へ横歩きします。足を大きく開きすぎず、隣の人との間隔を見ながら動きます。腕を水の中で横へ押すと、上半身も使えます。
ニーアップ
片方の膝を前へ持ち上げ、左右を交互に繰り返します。高く上げることより、体が後ろへ反りすぎないことを意識します。
キックとカール
足を前へ軽く伸ばすキックや、かかとを後ろへ近づけるカールを行います。水の勢いに任せて大きく振りすぎず、自分で止められる範囲にします。
腕の押し引き
手のひらや腕で、水を前、横、下へ押します。手を開くと抵抗を感じやすく、手を細くすると軽くなります。肩がつらいときは、腕を水面より高く上げず、小さく動かします。
すべての動きを覚える必要はありません。最初はマーチ、サイドステップ、腕の押し引きの三つが分かれば、途中で迷っても戻れます。
運動の強さは、自分で小さく調整できる
インストラクターと同じ速さで動くことが、よい参加の仕方とは限りません。水の中では、動きの大きさ、速さ、手の向きによって負荷が変わります。
疲れてきたら、足を上げる高さを下げる、腕の動きを小さくする、ジャンプを足踏みに変える、手のひらを進行方向へ向けない、といった調整ができます。
反対に、慣れてきたら、姿勢を保ったまま少し大きく動く、腕を水中へしっかり沈める、動きを最後まで止めるといった方法で水の抵抗を感じやすくなります。
速い動きへ無理についていくより、自分で始めて、自分で止められる範囲が目安です。一拍遅れても、音楽から外れても、運動の意味はなくなりません。
必要な持ち物と、最初は買わなくていいもの
最低限必要なもの
動きやすいフィットネス用水着
スイムキャップ
バスタオルと体を拭くタオル
ふた付きで割れない飲料ボトル
水着を入れる防水袋
シャンプーなどの洗面用品
ロッカー用の小銭や指定カード
髪が長い人は、飾りのないヘアゴムも用意します。金属のついた髪飾りやピンは、プール内へ持ち込めない場合があります。
続けたくなったらそろえるもの
ゴーグル、吸水性の高い小さなタオル、曇り止め、プール用のスキンケア用品があると、前後の支度が楽になります。
水中用シューズは、足裏を保護し、底を捉えやすくするために使うクラスもあります。ただし、一般遊泳では禁止している施設もあるため、教室から案内があった場合だけ用意します。
最初はなくても困らないもの
アクアミット、水中ダンベル、細長い浮き具などは、道具を使うクラスで施設側が用意することがあります。自分で買う前に、持込みが可能か確認します。
競泳用の水着、フィン、パドル、防水イヤホンも、初心者向けアクアビクスには必要ありません。スマートウォッチは使用できない施設や、保護カバーが必要な施設があるため、普段使っていても勝手に持ち込みません。
初めて参加する日の流れ
前日までに、開始時刻、予約、持ち物、施設への行き方を確認します。体験利用の場合は、受付に必要な身分証明書や支払い方法も見ておきます。
当日は、開始の20〜30分前に到着すると落ち着いて準備できます。受付を済ませたら、アクセサリーや時計を外し、化粧や整髪料を落として水着へ着替えます。
シャワーを浴びてプールサイドへ入り、インストラクターへ初参加であることを伝えます。水深や出入りに不安がある場合も、このときに相談します。
プールへは階段やはしごからゆっくり入り、足が底につくことを確認します。初回はインストラクターが見やすく、壁や手すりへ移動しやすい位置を選ぶと安心です。
クラスは、準備運動、その場歩き、ステップやキックを組み合わせた運動、ゆっくりした整理運動という流れが一般的です。分からない動きが出たら足踏みに戻り、周囲との距離を保ちます。
終了後は急いでプールから上がらず、手すりを使ってゆっくり移動します。シャワーで体と髪を流し、水分を取り、少し休んでから着替えます。
初日は最後まで大きく動くことより、施設の使い方を知り、一曲分だけ気持ちよく動けたら十分です。
安全とプールのマナーは、ここだけ押さえておく
体調を確認する:発熱、強いだるさ、吐き気、めまい、胸の痛み、二日酔い、睡眠不足などがある日は参加を見送ります。持病がある人、妊娠中の人、医師から運動について指示を受けている人は、参加前に医療専門職と施設へ相談します。
無理に動き続けない:胸の痛み、動悸、冷や汗、強い息苦しさ、ふらつき、関節や筋肉の強い痛みが出たら、すぐに動きを止めてインストラクターや監視員へ伝えます。寒気や震えを感じたときも水から上がります。
水分を忘れない:水の中でも運動中は水分が必要です。施設で許可された、ふた付きで割れない容器を用意し、開始前後や休憩時に少しずつ飲みます。
転倒と接触を避ける:プールサイドを走らず、入退水には階段や手すりを使います。前後左右の人と距離を取り、速いキックやジャンプを無理に大きくしません。
施設のルールを優先する:スイムキャップを着用し、化粧や整髪料を落とし、アクセサリー類を外します。飲み物、撮影機器、スマートウォッチ、水中シューズの扱いは施設ごとに異なるため、案内に従います。
水の中では、汗や運動の強さに気づきにくいことがあります。「まだ動ける」と感じても、初回は少し余裕を残して終えるくらいがちょうどよいでしょう。
続けると、楽しみは五段階で広がる
水に慣れる:初心者向けの短いクラスで、足踏みと腕の動きを試します。
基本動作を覚える:マーチ、サイドステップ、ニーアップへ迷わず戻れるようになります。
抵抗を調整する:動く速さ、幅、手の向きを変え、自分に合う強さを探します。
週一回の習慣にする:同じ教室へ通い、音楽や流れに慣れていきます。
別の水中運動へ広げる:アクアウォーキング、アクアジョギング、道具を使うクラスなどを試します。
振り付けをたくさん覚えることだけが上達ではありません。水の抵抗を感じながら姿勢を保てること、疲れたときに自分で動きを小さくできることも、続けるほど身につく大切な感覚です。
こんな人、こんな休日に向いている
アクアビクスは、音楽に合わせて体を動かしたいけれど、陸上のダンスには少し気後れする人に向いています。泳ぐ距離や速さを目標にせず、プールを運動の場所として楽しみたい人にも合います。
一人で参加できるグループ運動を探している人、天候に左右されにくい趣味が欲しい人、いつものウォーキングとは違う感覚で全身を動かしたい人にも選びやすいでしょう。
雨で外へ出にくい日、暑さを避けて運動したい日、午前中に体を動かして午後はのんびり過ごしたい休日にも取り入れられます。
一方で、水着への着替えや、化粧を落として髪を乾かす支度には時間がかかります。短時間だけ運動したい日より、前後を含めて二時間ほど取れる日に向いています。
アクアビクスから広がる関連趣味
もっと穏やかに水へ慣れたいなら、水中ウォーキングが次の候補です。音楽や振り付けを減らし、歩幅や姿勢へ意識を向けられます。
自分のペースで長く動きたくなったら水泳、陸上でも音楽に合わせたいならエアロビクスやダンスフィットネスへつながります。
運動後の体をゆっくり整えたい人には、ストレッチやヨガもよく合います。水中運動の日と陸上で整える日を分けると、休日の過ごし方に変化をつけられます。
まとめ|最初は、一曲分だけ水に合わせて動く
アクアビクスは、音楽に合わせながら、水の抵抗や浮く感覚を楽しむエクササイズです。
泳ぎに自信がなくても、足が底につく初心者向けクラスなら、歩く、膝を上げる、腕で水を押すところから始められます。振り付けを間違えても、足踏みに戻れば大丈夫です。
最初から最後まで大きく動く必要はありません。音楽一曲分だけ、自分のペースで水に合わせて動けたら、それが十分な最初の一歩になります。
次の休日は、近くの公共プールやスポーツセンターで「初心者向け」「泳げなくても参加可」と書かれた教室を一つ探してみませんか。まずは一回体験し、水の中で体を動かす気持ちよさを確かめてみてください。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて育てていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
