棚作りの楽しみ方
はじめに
置きたい場所の横幅を測り、紙へ小さな長方形を描く。
市販の棚では数センチだけ大きかった場所にも、自分で寸法を決めれば、すっと収まる形を考えられます。板を重ね、ねじを締め、少し離れて眺めると、ただの木材だったものが、暮らしの中で使える棚へ変わっています。
「木材をまっすぐ切れなくても作れるのかな」
「電動工具を一式そろえないと始められないのだろうか」
「完成しても、重い物を載せて壊れないか心配」
棚作りは、置きたい物と場所を測り、それに合う板を組み合わせて収納や飾る場所を作るDIYです。大きな本棚や壁一面の収納だけでなく、机の上へ置く小棚、調味料を並べる棚、植物や雑貨を飾る一段の台も棚作りに含まれます。
最初から木材を自分で切る必要はありません。ホームセンターなどの加工サービスで寸法どおりに切ってもらい、自宅では角を整えて組み立てる方法なら、工具、騒音、木くずを抑えられます。
棚作りの基本情報
一回の標準実施時間 約135分
短く取り組む場合 約45分
準備や片付けを含む総所要時間 約165分
想定頻度 月2回程度
主な場所 自宅の作業スペース、ベランダ、利用可能な工作室
初心者の始めやすさ 木材のカットを依頼し、小さな置き型棚から始めれば取り組みやすい
施設への依存 低いものの、木材の切断や工具レンタルに店舗サービスを利用できる
天候の影響 室内作業なら受けにくいが、屋外での研磨や塗装は雨、風、気温の影響を受ける
135分あれば、加工済みの板を確認し、下穴を開け、ねじで組み立て、ぐらつきを調整するところまで進められます。塗装や接着を行う場合は乾燥時間が必要になるため、一日で完成させようとせず、組み立てる日と仕上げる日を分けます。
45分ほどの日は、置き場所を測る、設計図を描く、板の角を研磨する、金具の位置を決めるといった一工程に向いています。月2回の作業でも、一つの棚を数回に分けて完成させられます。
棚作りの費用
初期費用 0円〜約90,000円
標準的な初期費用 約15,000円
一回の費用 0円〜約4,000円
標準的な一回の費用 約600円
年間費用 約19,500円
標準的な初期費用には、小さな棚に使う木材、ねじ、紙やすり、メジャー、直角定規、ドライバーまたは小型の電動ドライバー、保護眼鏡、床の養生用品などを含めています。のこぎり、クランプ、電動ドリルなどを新しくそろえると、初期費用は大きくなります。
一回600円は、毎回新しい棚を作る費用ではありません。寸法を考える日、研磨だけを行う日、手持ちの端材で小さな部品を作る日も含めた平均です。棚を一台作る回には、板の種類や大きさによって数千円から、それ以上の材料費がかかることがあります。
費用を抑えるなら、最初は木材のカットを店舗へ依頼し、自宅では手工具と小型の電動ドライバーを使います。必要な工具だけを購入し、使用頻度の低い工具はレンタルや工作室で試してから検討します。
材料を買う前には、完成寸法だけでなく、必要な板の枚数、厚み、ねじ、金具まで書き出します。測り直しや買い忘れを減らすことが、最も確実な節約につながります。
3つのおすすめ
1.置きたい場所に合わせて、数センチまで決められる
棚作りの分かりやすい魅力は、自宅の空いている場所へ合わせて寸法を決められることです。
机と壁の間にある細い空間。洗面台の横に残った小さな幅。窓枠の下へ収まる高さ。既製品では少し合わなかった場所にも、必要な横幅、奥行き、高さを測って形を考えられます。
ただ空間を埋めるのではなく、何を置き、どの方向から取り出すかまで考えます。本を置く棚なら本の高さと奥行き、調味料棚なら容器の幅と手を伸ばす方向、飾り棚なら正面から見た余白が大切です。
完成した棚が予定した場所へぴたりと収まったとき、寸法を考えた時間と実際の暮らしがつながります。
2.線を引き、穴を開ける位置で仕上がりが変わる
棚作りは、板をねじで留めれば終わるように見えます。しかし、同じ材料でも、線の引き方や穴の位置によって、組み上がったときの整い方が変わります。
板の端から同じ距離へ印を付ける。直角を確かめる。ねじを入れる前に細い下穴を開ける。小さな準備を重ねることで、板の割れや大きなずれを防ぎやすくなります。
一度組み立てて少し傾いた場合も、すぐ失敗になるわけではありません。ねじを軽く緩め、直角を確認しながら締め直すと、形が整うことがあります。
完成品だけでは見えない「どこを測り、どの順番で固定したか」が仕上がりへ表れるところに、手仕事ならではの面白さがあります。
3.完成したあと、部屋の使い方まで変わる
棚が完成すると、作品として眺めるだけでなく、その日から物を置いて使えます。
机へ積んでいた本が一段へ収まる。床へ置いていた箱が、手の届く高さへ移る。植物や写真のための場所ができる。棚そのものより、散らばっていた物が整うことで、部屋の動きが変わります。
使い始めてから、「もう少し奥行きが浅くてもよかった」「下段へ重い物を置くと使いやすい」と気づくこともあります。その気づきは失敗ではなく、次に作る棚の寸法へつながります。
作って終わりではなく、使いながら形を見直せることが、棚作りを続けたくなる理由になります。
最初の作業場所では、切る場所と組み立てる場所を分ける
自宅で作業する場合は、通路や人が頻繁に通る場所を避け、板を水平に置ける作業面を確保します。床や机には養生シートや厚手の段ボールを敷き、木くずや工具の傷を防ぎます。
木材を切る、削る、研磨する作業では、粉じんと音が出ます。集合住宅では作業時間と周囲への影響を考え、切断は店舗へ依頼し、自宅では細かな研磨と組み立てだけにする方法もあります。
電動工具を使う場合は、材料を手で押さえたまま作業せず、安定した台とクランプで固定します。電源コード、充電池、工具の刃やビットに異常がないかを、作業前に確認します。
塗料や接着剤を使う場合は、製品表示に従って換気します。作業場所と食事をする場所を分け、子どもやペットが乾燥前の棚や工具へ触れないようにします。
最初の棚は、高さより完成しやすさで選ぶ
初めての棚には、机や床へ置く低い一段棚か、二段ほどの小棚が向いています。背が低く、軽い物を載せる形なら、組み立て後のぐらつきを確認しやすく、壁へ取り付ける作業も必要ありません。
最初は避けたいのが、天井近くまである大型棚、重い本を大量に載せる棚、扉や引き出しの付いた収納、壁から浮かせる棚です。必要な強度や固定方法が複雑になり、誤った取り付けは転倒や落下につながります。
板の厚みと大きさは、見た目だけでなく、載せる物の重さを考えて選びます。長い棚板は中央がたわみやすいため、支える位置や板の厚みについて店舗で相談します。
初心者向けの木工キットを使う方法もあります。必要な板と金具がそろい、穴の位置が決められているものなら、最初の一台で組み立ての流れを知ることに集中できます。
初めての一日は、小さな置き型棚を完成させる
最初に、棚を置く場所と、載せる物の大きさを測ります。横幅だけでなく、奥行き、高さ、コンセントや扉との距離、手を伸ばす方向も確認します。
紙へ正面と横から見た形を描き、必要な板の寸法を書き込みます。最初は、側板2枚と棚板1〜2枚で作れる単純な形にします。
木材は寸法どおりに切ってもらい、自宅へ持ち帰ったら、欠け、反り、大きな傷がないかを確認します。組み立てる前に板を並べ、表へ見せたい面と内側へ向ける面を決めます。
ねじの位置へ印を付け、必要に応じて下穴を開けます。板を直角に合わせ、クランプなどで固定してから、ねじを一度に強く締めず、全体を少しずつ組み上げます。
組み立て後は、平らな場所へ置き、ぐらつきや大きな傾きがないかを確かめます。角や表面を紙やすりで整え、木くずを取り除いて完成です。
初日は、塗装や装飾まで詰め込まなくても構いません。予定した物が収まり、安定して置ける一台を作ることを目標にします。
最初に必要なもの
最低限必要なもの
木材、ねじ、メジャー、鉛筆、直角を確認できる定規、ドライバー、紙やすり、保護眼鏡が基本です。木材の切断を依頼すれば、大型の切断工具を購入せずに始められます。
あると便利なもの
小型の電動ドライバー、下穴用のドリルビット、クランプ、水平器、木工用接着剤、掃除用のブラシや掃除機があると、板を固定しながら作業しやすくなります。
続けるなら用意したいもの
作業台、複数のクランプ、用途に合う電動ドリル、のこぎり、サンダーなどです。工具は、作りたい棚に必要だと分かってから一つずつ増やします。
後回しにできるもの
丸のこ、トリマー、卓上切断機、大型サンダーなどの電動工具は、使用場所、安全設備、騒音、粉じん対策を整えてから検討します。初心者が最初の一台のために購入する必要はありません。
安全に楽しむために
切断、穴開け、研磨では、木片や木くずが飛ぶことがあります。作業内容に合う保護眼鏡を着け、必要に応じて防じん対策を行います。厚生労働省の木工機械に関する安全資料でも、木くずが目へ入る事故への対策として保護眼鏡の使用が挙げられています。
電動工具は、取扱説明書を読み、材料を固定して両手で安定して扱います。刃やビットを交換するとき、詰まった木くずを取るとき、点検するときは、スイッチを切るだけでなく電源プラグや充電池を外します。
回転する刃の近くでは、だぶついた手袋、長い袖、ひも、アクセサリーなどが巻き込まれることがあります。NITEも、繊維状でだぶつきのある手袋は、作動中の刃へ巻き込まれるおそれがあると注意を促しています。
工具を高い場所から使うために脚立へ乗る場合は、設置面と開き止めを確認し、天板へ乗ったり身体を大きく乗り出したりしません。高い壁付け棚の施工に脚立作業や重量物の保持が必要なら、一人で行わず、施工業者への依頼も検討します。
壁へ棚や転倒防止金具を取り付ける場合は、石膏ボードの表面だけへねじを入れず、壁の下地と使用する金具の条件を確認します。東京消防庁も、家具をねじで固定する場合は、柱や間柱などの壁下地へ取り付けることを基本としています。
壁の内部には電気配線や配管が通っていることがあります。位置を判断できない場所へ自己流で穴を開けず、住宅の図面、管理会社、専門業者へ確認します。賃貸住宅では、穴開けの可否も契約書や管理者へ事前に確認します。
背の高い棚は、完成後の転倒対策まで考えます。東京消防庁は、家具の転倒防止ではL型金具などによるねじ固定が効果的であり、収容物の落下対策も必要だと案内しています。
棚へ物を載せるときは、最初から限界まで置きません。軽い物から試し、棚板のたわみ、ねじの緩み、ぐらつきを確認します。重い物は低い段へ置き、子どもが棚へ登ったり、引っ張ったりしない配置にします。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
1.小さな置き型棚を完成させる
加工済みの木材を使い、測る、合わせる、ねじで留めるという基本を経験します。予定した場所へ収まり、物を一つ置ければ最初の完成です。
2.同じ形を安定して作る
下穴、直角、ねじの位置を確認しながら、ぐらつきの少ない形を目指します。前回時間がかかった工程を、次は落ち着いて再現できるようになります。
3.使い方に合わせて寸法を選ぶ
本、食器、工具、植物など、載せる物に合わせて奥行きや段の高さを変えます。見た目だけでなく、取り出しやすさや掃除のしやすさも形へ反映します。
4.素材と仕上げを深める
木の種類、板の厚み、塗料、金具を変え、部屋に合う表情を考えます。同じ設計でも、素材と色によって完成後の印象が変わります。
5.暮らしに合わせて作り直す
使いにくくなった棚へ一段加える、表面を塗り直す、別の部屋で使える形へ直すなど、完成品との付き合いが続きます。販売や大作を目指さず、自宅の小さな不便を一つずつ整えることも、棚作りの深まり方です。
五つは、難しい工具へ進むための順位ではありません。加工サービスを使い続ける、手工具だけで作る、同じ小棚を何度も作ることも自然な楽しみ方です。
あわせて楽しみたい関連する趣味
DIY
DIYでは、棚作りだけでなく、小さな修理、塗装、収納の改善など、暮らしの不便に合わせた作業を楽しめます。棚を一台完成させたあと、ほかにも整えたい場所が見つかったときにつながります。
部屋作り・模様替え
部屋作り・模様替えでは、家具の配置、動線、色、照明を見直しながら、過ごしやすい空間を考えます。棚を作る前に、本当に必要な位置や大きさを確かめたいときにも役立ちます。
流木アート
流木アートは、木がもともと持っている曲がりや質感を生かして、飾りや小物を作る趣味です。規格材を正確に組み立てる棚作りとは違う、木の形を眺めながら作る時間を楽しめます。
空いていた場所へ、自分で決めた一段が収まる
最後のねじを締め、棚を予定していた場所へ運ぶ。
横幅は壁との間へ収まり、上へ置こうと思っていた箱にも手が届く。少し残った木の香りと、紙やすりで整えた角を指先で確かめると、紙へ描いていた線が暮らしの一部へ変わったことが分かります。
最初の一歩は、大きな本棚の設計ではありません。
置き場所の横幅と、そこへ置きたい物を一つ測る。次に、切断済みの板で作れる低い一段棚を考える。その小さな寸法から、部屋にちょうどよい場所を自分の手で作る休日が始まります。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
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