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蒸し料理の楽しみ方

はじめに

ふたを少し持ち上げると、白い湯気がふわりと立ち上がる。

中には、鮮やかさを残したブロッコリー、角がやわらかくなったかぼちゃ、つやの出た豚肉が並んでいます。水の中で煮ているわけでも、油の上で焼いているわけでもないのに、食材の中心まで静かに熱が届いています。

蒸し料理というと、温野菜や健康を意識した食事を思い浮かべるかもしれません。けれど、蒸すことで楽しめるのは、油を控えた軽い料理だけではありません。

野菜のみずみずしさ、魚のふっくらとした身、卵料理のなめらかさ、肉まんや蒸しパンのやわらかな生地。食材を湯へ沈めず、強い焼き色も付けず、蒸気で包むからこそ残る食感があります。

どの食材を下へ置くか。どのくらい隙間を空けるか。途中から何を加えるか。蒸し器の中は見えにくいぶん、並べ方や時間の使い方が、そのまま仕上がりへ表れます。

この記事では、せいろを持っていない人でも始められる方法から、蒸気の通り道、食材を入れる順番、水滴への対処、たれの組み立て方まで、蒸し料理ならではの楽しみをまとめます。

蒸し料理は、湯ではなく蒸気で食材を温める料理

蒸し料理は、沸かした湯から立ち上る蒸気を使って、食材へ間接的に熱を加える調理法です。食材を湯へ直接入れないため、煮る料理とは水分の入り方が異なります。

フライパンへ少量の水を入れてふたをする「蒸し焼き」では、食材の一部が鍋肌へ触れます。焼き色と蒸気の両方を使える方法ですが、蒸し器やせいろで行う蒸し料理は、食材を湯や鍋底から離し、蒸気を全体へ巡らせることが中心になります。

蒸し料理では、食材の表面へ強い焼き色が付きにくい一方、水分を急に奪いすぎずに加熱できます。ふっくら仕上げたい魚、形を残したい野菜、すが入りやすい卵料理などにも向いています。

ただし、蒸せば何でも自動的にやわらかく、おいしくなるわけではありません。食材の厚さ、蒸気の強さ、並べる量、加熱時間によっては、中心へ火が通る前に表面が水っぽくなったり、逆に蒸しすぎて食感を失ったりします。

見えない蒸気を、食材へどう通すか。

それを考えるところに、蒸し料理の奥行きがあります。

蒸し料理の基本情報

主な楽しみ方 野菜、肉、魚、卵、生地などを蒸気で加熱し、食材ごとの水分や食感を生かした一皿へ仕上げる

おすすめの頻度 月2回前後。普段の夕食や朝食へ取り入れる場合は、さらに短い間隔で楽しめる

1回の調理時間 約100分。複数の料理を作る場合や、せいろの準備と片付けを丁寧に行う場合の目安

準備と片付けを含む時間 約130分

短時間で楽しむ場合 約35分から。野菜と薄切り肉を一段で蒸す、購入した肉まんを温め直すなど、工程の少ない内容を選ぶ

主な場所 自宅の台所

始めやすさ ふた付きの鍋と蒸し台があれば始められ、専用のせいろは続けたくなってから用意できる

天候の影響 ほとんど受けない。湯気の立つ料理は寒い季節に特に心地よいが、夏は短時間の加熱や冷たい麺の具にも使える

最初に迷いやすい点 水の量、蒸気が上がってからの時間、食材を置く間隔、ふたを開ける向き

月2回なら、休日に少し丁寧な蒸し料理を作り、気に入った食材だけ普段の食事へ残す形が続けやすくなります。毎回せいろいっぱいの料理を作らず、かぼちゃだけ、魚一切れだけという小さな使い方でも構いません。

蒸し料理の費用

蒸し料理は、家庭にある鍋と道具を活用すれば、追加の初期費用をほとんどかけずに始められます。ふた付きの鍋へ、サイズの合う金属製の蒸し台や蒸しかごを入れる方法なら、普段の調理器具をそのまま使えます。

初期費用の目安 0円〜約6,500円

手持ちの鍋へ加える蒸し台 約1,000〜3,000円前後

小型のせいろ、ふた、受け台をそろえる場合 約3,000〜6,500円前後

2人分を一度作る食材費 約500〜1,500円前後

趣味として加わる1回の差額 約300〜800円

月2回、年間24回楽しむ場合 普段の食費を除いた追加費用は、年間約10,000〜20,000円。標準的な目安は約14,000円

野菜、豚肉、鶏肉、豆腐など、普段から使う材料であれば、食材費の大部分は日常の食費と重なります。珍しい点心材料、魚介、香辛料、専用のたれを追加した部分だけを趣味費として考えると、実際の負担が見えやすくなります。

せいろは、本体だけでは使えない製品もあります。ふた、鍋との間に置く受け台、食材の張り付きを防ぐ敷き物が別売りの場合があるため、購入前に必要な一式を確認します。

高価なせいろほど、初めてでも上手に蒸せるとは限りません。家庭の鍋へ安定して置けるか、人数に合う量が入るか、使用後に乾かす場所があるかのほうが大切です。

電気蒸し器、スチーム機能付きオーブン、本格的な多段蒸し器まで広げると数万円になることもありますが、最初から必要なものではありません。手持ちの鍋で何度か作り、もっと一度に蒸したい、火加減を任せたいと感じてから検討します。

蒸し料理をおすすめする3つの理由

1.食材の水分を残しながら、やわらかさを引き出せる

ブロッコリーを湯の中で長くゆでると、やわらかくなる一方で、房の中へ水を含みやすくなります。蒸した場合は、食材を湯へ沈めずに加熱できるため、表面が水っぽくなりにくく、噛んだときの密度を残しやすくなります。

かぼちゃやさつまいもは、中心へゆっくり熱が入ると、形を保ちながらほくほくとした食感になります。葉物は短く蒸せば、しんなりさせながら茎の歯触りを残せます。

魚は、焼くと表面へ香ばしさが生まれますが、火を入れすぎると身の水分が抜けやすくなります。蒸し料理では、ふっくらした身と、魚から出た汁を一緒に味わえます。

どの調理法が優れているかではなく、今日は焼き色を楽しむのか、やわらかな水分を残すのかを選べるようになる。蒸す方法が加わると、同じ食材の表情が増えていきます。

2.一つの蒸し器の中で、時間差を組み立てられる

蒸し器の中へ、かぼちゃ、きのこ、葉物、薄切り肉を一緒に入れると、必要な加熱時間はそれぞれ異なります。

火の通りにくいかぼちゃを先に入れ、数分後に肉ときのこを加え、最後に葉物を重ねる。すべてを同時に始めるのではなく、蒸し上がってほしい時間から逆に順番を考えます。

多段のせいろなら、主菜と副菜を分けることもできます。下の段では豚肉と白菜を蒸し、上の段では野菜や肉まんを温めるなど、一つの熱源から複数の料理を作れます。

ただし、たくさん詰めれば効率がよいとは限りません。食材が重なりすぎると蒸気が通りにくくなり、場所によって加熱むらが生まれます。

隙間、厚さ、入れる時間。

一つの蒸し器を小さな台所のように使い、料理の順番を組み立てることが、蒸し料理ならではの楽しみです。

3.蒸し上がったあと、たれと香りで印象を変えられる

蒸したばかりの食材は、強い焼き色や濃い煮汁をまとっていません。そのぶん、仕上げに添えるたれや薬味によって、料理の方向を大きく変えられます。

蒸し鶏へ、しょうゆ、酢、ごま油を合わせたたれをかける。蒸し野菜へ、みそとすりごまを合わせる。白身魚へ、ねぎ、しょうが、かんきつ類を添える。同じ蒸し方でも、最後の香りによって和風、中華風、洋風へ広がります。

たれを全体へかけず、小さな器へ数種類用意する方法もあります。一口目は塩、次は酸味のあるたれ、その次は香辛料というように、同じ食材を少しずつ違う味で楽しめます。

食材を蒸す工程は穏やかに整え、食卓で味を完成させる。作る人だけでなく、食べる人も最後の選択へ加われることが、蒸し料理の豊かさです。

最初の一皿は、豚肉と野菜の重ね蒸し

初めての蒸し料理には、薄切りの豚肉、白菜またはキャベツ、きのこ、にんじんを使った重ね蒸しが向いています。火の通り方を目で確かめやすく、蒸し上がったあとに好みのたれで食べられます。

2人分なら、豚薄切り肉150〜200グラム、白菜またはキャベツを数枚、きのこ1袋、にんじん3分の1本ほどが一つの目安です。たれには、しょうゆ、酢、ごま油、好みでねぎやしょうがを用意します。

白菜やキャベツは大きめに切り、にんじんは薄く切ります。蒸し台へ置ける耐熱皿に野菜を広げ、その上へ豚肉が大きく重ならないように並べます。

鍋へ水を入れ、蒸し台を置いたときに水面が食材へ触れないことを確認します。湯が沸き、十分に蒸気が上がってから皿を置き、ふたをして加熱します。

途中で何度もふたを開けると、鍋の温度が下がり、蒸し時間が延びます。初回はレシピの時間を一つの目安にし、終了時に最も厚い肉の中心まで火が通っているかを確認します。

食べながら残したいのは、長い反省ではありません。

にんじんをもう少し薄くする。

白菜を少し大きく切る。

しょうがを増やす。

次に変えたいことを一つだけ決めます。同じ一皿をもう一度作ると、蒸し時間と自分の好みが少しずつ近づいてきます。

専用のせいろがなくても始められる

手持ちの鍋と蒸し台を使う

最も始めやすいのは、ふた付きの鍋と、鍋の内側へ入る金属製の蒸し台や蒸しかごを使う方法です。

鍋の底へ水を入れ、蒸し台の上へ耐熱皿や食材を置きます。水面が蒸し台より高いと、食材が湯へ触れて煮る状態になるため、水量を確認します。

金属製の道具は洗いやすく、手持ちの鍋へ合わせられる製品もあります。収納場所を増やしたくない人や、まず数回試してみたい人に向いています。

竹や木のせいろを使う

せいろは、竹や木で作られた蒸し器です。蒸気を通しながら、ふたの内側へ付く水分の一部を素材が受け止めるため、料理へ大きな水滴が落ちにくい特徴があります。

食材を並べた姿のまま食卓へ出しやすく、ふたを開けた瞬間の湯気も楽しめます。段を重ねれば、異なる料理を一度に蒸すこともできます。

一方で、鍋との大きさを合わせる必要があり、使用後は十分に乾かさなければなりません。収納場所が湿っていると傷みやすいため、使う回数だけでなく、乾燥と保管まで想像して選びます。

深型フライパンと専用の蒸しプレートを使う

深型フライパンへ対応する蒸しプレートを入れ、ふたをして蒸す方法もあります。口が広いため食材を並べやすく、普段使っているフライパンを活用できます。

ただし、プレートが不安定な状態で代用品を重ねるのは避けます。容器が傾くと熱湯や食材がこぼれるため、鍋やフライパンの大きさに適合した製品を使います。

電子レンジ用の蒸し容器を使う

短時間で一人分を作りたい日は、電子レンジ対応の蒸し容器も便利です。少量の野菜、魚の切り身、鶏肉などを、器の中で発生する蒸気によって加熱します。

加熱むらが起こりやすい食材もあるため、容器と電子レンジの説明書を確認し、途中で位置を変える、加熱後に少し置いて熱をなじませるなど、指定された使い方を守ります。

金属製の蒸し台、せいろ、アルミホイルなどを電子レンジへ入れられるとは限りません。直火用と電子レンジ用の道具を混同しないことが大切です。

蒸し器は、料理の量より台所との相性で選ぶ

蒸し器を選ぶ前に、現在使っている鍋の直径、こんろの広さ、収納場所を確認します。

大きなせいろなら多くの食材を並べられますが、鍋や受け台も大きくなります。洗ったあとに広げて乾かす場所が必要になり、棚へ収まらないこともあります。

小さなせいろは扱いやすい一方、食材を重ねやすくなります。一人分の朝食や小さな副菜には便利ですが、家族分の主菜を一度に作りたい場合は、段を増やすか、少し大きなものを選びます。

確認したいのは、次のような点です。

鍋へ安定して置けるか

本体とふたが別売りではないか

受け台が必要か

食材を入れた耐熱皿が収まる高さか

使用後に十分乾かせるか

対応する熱源と手入れ方法

見た目だけで選ばず、普段の料理量と片付けまで考えると、出番の多い道具になります。

蒸気の通り道を空けて並べる

蒸し料理では、食材の周りを蒸気が通れることが大切です。

野菜や肉を隙間なく敷き詰めると、表面には蒸気が当たっても、重なった中央へ熱が届きにくくなります。食材同士を少し離し、厚い部分が一か所へ集まらないように並べます。

肉や魚から出る汁を料理へ生かしたい場合は、縁のある耐熱皿へ置きます。多段のせいろを使うときも、生の肉や魚の汁が別の段の料理へ落ちないよう、皿や適切な敷き物を使います。

せいろへ直接置く場合は、穴をすべてふさがない敷き方にします。専用の穴あきシート、蒸し布、キャベツや白菜の葉などを使い、蒸気が上がる場所を残します。

肉まんやシュウマイは、加熱中に少し膨らんだり、皮がやわらかくなったりします。隣同士へ密着させず、取り出すときに崩れない間隔を取ります。

食材ごとの時間差を小さくする

一緒に蒸す食材は、同じ時間で食べ頃になるよう、切り方と加える順番を調整します。

かぼちゃ、さつまいも、にんじん、大根などは、厚いままだと時間がかかります。葉物やきのこと一緒に蒸すなら、少し薄く切るか、先に蒸し始めます。

ブロッコリーや葉物は、長く蒸し続けるとやわらかくなりすぎます。主菜が完成する少し前に加えると、色と歯触りを残しやすくなります。

魚の切り身や薄切り肉は比較的短時間で火が通りますが、重なった部分は遅くなります。肉を広げ、魚の厚い部分が一か所へ集まらないようにします。

鶏肉の厚い部分、肉だね、かたまり肉などは、表面の色だけでは中心までの加熱を判断しにくい食材です。家庭での加熱の目安として、中心部を75℃で1分以上加熱できているかを確認し、不安がある場合は調理用温度計を使います。

時間だけを覚えるより、切った厚さ、並べた量、使った蒸し器を一緒に記録すると、自宅の環境に合う目安が育っていきます。

ふたの水滴と上手に付き合う

金属製のふたでは、内側に付いた蒸気が水滴となり、料理へ落ちることがあります。野菜や肉では大きな問題にならなくても、茶碗蒸し、プリン、蒸しパンなどでは表面が水っぽくなる原因になります。

水滴を避けたい料理は、器へ耐熱性のあるふたをするか、直火の蒸し器で使える素材をレシピに従ってかぶせます。電子レンジでは使用できる素材が異なるため、同じ方法をそのまま使わないようにします。

ふたへ布巾を巻く方法を見かけることもありますが、布の端が火や高温部へ近づくと危険です。行う場合は製品やレシピの安全な方法を確認し、直火へ垂れ下がる使い方は避けます。

ふたを開けるときは、自分の顔や手の反対側から持ち上げます。蒸気だけでなく、ふたの内側から落ちる熱い水滴にも注意します。

たれは、塩味・酸味・油・香りで組み立てる

蒸し料理のたれは、家庭にある調味料を組み合わせるだけでも作れます。最初から多くの専用調味料をそろえず、四つの要素から考えます。

塩味 しょうゆ、みそ、塩、めんつゆなど

酸味 酢、レモン、ゆず、ほかのかんきつ類など

 ごま油、オリーブ油、香味油など

香り しょうが、にんにく、ねぎ、ごま、こしょう、からし、香草など

しょうゆ、酢、ごま油を合わせれば、肉や野菜へ使いやすいたれになります。みそを少量の水でのばし、すりごまを加えれば、根菜や豆腐に合う濃さが生まれます。

白身魚や鶏肉には、塩、レモン、オリーブ油の軽いたれも合います。蒸したさつまいもやかぼちゃなら、塩を少し添えるだけで、甘さを感じやすくなります。

たれを濃くしすぎると、どの食材も同じ味になってしまいます。一口目は何も付けず、次に塩、最後にたれという順番で食べると、蒸したことで変わった香りや食感を確かめられます。

野菜以外にも広がる蒸し料理

肉や魚を主役にする

薄切りの豚肉と白菜、鶏肉ときのこ、白身魚とねぎなど、肉や魚を野菜と一緒に蒸すと、主菜を一度に作れます。

食材から出た汁を受け止める皿へ置けば、そのままたれやスープの一部として使えます。しょうが、ねぎ、酒などを下へ敷くと、蒸している間に香りが移ります。

卵や豆腐をなめらかに仕上げる

茶碗蒸し、卵豆腐、豆腐を使った蒸し物は、強い沸騰を避け、穏やかな蒸気で加熱することが大切です。

蒸気が強すぎると卵液の中に大きな穴ができやすくなります。最初は信頼できるレシピの火加減を守り、器の大きさや蒸し器の違いを記録します。

点心や生地をふっくらさせる

シュウマイ、肉まん、包子、蒸し餃子などは、せいろの湯気が似合う料理です。市販品を温め直すところから始め、慣れたら餡や生地を自分で作る方法へ進めます。

蒸しパンや一部の菓子も、オーブンとは異なるしっとりした食感になります。生地を入れた容器を詰め込みすぎず、膨らむ余地と蒸気の通り道を残します。

ごはんや冷えた料理を温め直す

冷えたごはん、パン、肉まんなどを蒸すと、電子レンジとは違う水分の戻り方を楽しめます。

ただし、保存状態の悪い料理を蒸せば安全になるとは限りません。適切に冷蔵・冷凍したものを使い、中心まで十分に温めます。

一度に一食を組み立てる方法

蒸し器を使う日は、すべての料理を蒸し物にする必要はありません。

主菜を肉と野菜の蒸し物にし、ごはんと汁物を添える。蒸し野菜を副菜にし、主菜は焼き魚にする。朝食なら、冷凍しておいたパンを温めながら、卵料理を別の器で蒸すこともできます。

一段目へ主菜、二段目へ副菜を入れる場合は、それぞれの加熱時間を確認します。完成が早い段は途中で取り出し、残りだけを蒸し続けます。

食卓へ出す時間から逆算し、最も時間のかかる料理を先に入れます。たれ、薬味、盛りつける皿は、蒸している間に準備します。

蒸し器を火へかけてから慌てて野菜を切るより、すべてを並べ終えてから湯を沸かすほうが落ち着いて進められます。蒸し始めたあとは短い時間で仕上がる食材も多いため、最初の準備が大切です。

よくある仕上がりと、次に変えること

中心がまだ硬い

食材が厚すぎた、重なっていた、蒸気が十分に上がっていなかった可能性があります。次回は少し薄く切り、食材の間隔を広げます。

加熱途中で水が減り、蒸気が弱くなっていた場合もあります。蒸す時間が長い料理では、開始前に十分な水があるかを確認します。

全体が水っぽい

食材自体から多く水分が出た、ふたの水滴が落ちた、蒸し上がったあと長く置いた可能性があります。

水分の多い野菜は、蒸し上がったら早めに取り出します。たれをかけてから長く置くとさらに水が出るため、食べる直前に味を付けます。

野菜がやわらかくなりすぎた

葉物やブロッコリーを、根菜や肉と同時に入れた場合に起こりやすくなります。次回は後から加えるか、別の段へ分けます。

やわらかくなった野菜も、つぶしてスープやソースへ使えることがあります。食感が予定と違っても、すぐに捨てず、別の一皿へつなげます。

食材が敷き物へ張り付いた

肉まん、シュウマイ、魚などは、加熱中に表面がやわらかくなり、敷き物へ付くことがあります。

専用シートへ穴を開ける、葉物を敷く、食材の底へごく薄く油を塗るなど、料理に合う方法を使います。蒸し上がったあと長く置かず、少し落ち着いたところで丁寧に外します。

鍋の水がなくなりそうになる

蒸気が強すぎる、鍋が浅い、予定より長く加熱していると、水が早く減ります。

空だきは鍋やせいろを傷め、事故の原因になります。水が足りなくなりそうな場合は、いったん火を止め、構造に合った安全な方法で熱湯を補います。冷たい水を勢いよく入れると温度が大きく下がるため、少量ずつ扱います。

最初に必要な道具

最初に必要なもの

ふた付きの鍋または深型フライパン、サイズの合う蒸し台、包丁、まな板、トングまたは菜箸、耐熱皿があれば始められます。

蒸し台と鍋が安定していること、ふたが大きく浮かずに閉まることを確認します。食材を入れる前に空の状態で組み合わせ、傾きやぐらつきがないかを見ます。

続けるなら用意したいもの

せいろ、せいろ用の受け台、穴あきシート、調理用温度計、タイマー、乾いた鍋つかみ、浅い保存容器などが候補です。

蒸し上がりを食卓へそのまま出したいなら、せいろが便利です。肉料理をよく作るなら温度計、複数の料理を一度に作りたいなら二段目というように、自分の使い方へ合わせて増やします。

最初は買わなくてよいもの

大きな業務用蒸し器、高価な多段せいろ、電気蒸し器、専用の点心道具、何種類もの蒸し布は、最初の数回には必要ありません。

手持ちの鍋で蒸し野菜や肉料理を試し、蒸す調理を続けたいと感じてから専用道具を選びます。使いたい料理が分かっていれば、必要な深さや段数も決めやすくなります。

せいろは、乾かすところまでが一回の調理

竹や木のせいろは、調理が終わったあとに水分を残さないことが大切です。

洗い方は製品ごとの説明に従い、食材の汚れを落としたら、風通しのよい日陰で十分に乾かします。表面だけ乾いたように見えても、重ねた内側に湿気が残ることがあります。

完全に乾く前にふたと本体を重ねたり、密閉された棚へ入れたりすると、においや傷みの原因になります。ふたと本体を分け、空気が通るように置きます。

強いにおいの料理を蒸したあとは、次の料理へ香りが移ることがあります。洗浄と乾燥を丁寧に行い、必要に応じて肉や魚用と菓子用を分ける方法もあります。

天然素材の道具には、製品ごとに洗剤、つけ置き、食器洗い乾燥機への対応が異なります。一般的な方法だけで判断せず、購入したせいろの説明を優先します。

蒸気と熱湯を安全に扱うために

蒸し料理で最も注意したいのは、目に見えにくい高温の蒸気と、ふたにたまった熱い水滴です。

ふたを開けるときは、顔を近づけず、身体から遠い側を先に持ち上げます。ふたの内側を自分へ向けると水滴が手元へ落ちるため、傾ける方向にも注意します。

鍋、蒸し台、せいろ、耐熱皿は、調理中と終了直後に高温になります。乾いた鍋つかみや耐熱手袋を使い、濡れた布巾で持たないようにします。

加熱中は鍋の近くを離れず、外出や就寝はしません。長く蒸す料理ではタイマーを使い、水が十分に残っているかを確認します。

生の肉や魚を扱った手、包丁、まな板、皿は、加熱後の料理やたれへ触れないようにします。食材は中心まで十分に加熱し、食べるまで室温へ長く置かないようにします。

残った料理は清潔な容器へ移し、早めに冷蔵または冷凍します。再び食べるときは中心までしっかり温め、保存状態が分からないものや、違和感のあるものは無理に口へ入れません。

小さな子どもやペットがいる家庭では、鍋やせいろへ手が届かない位置で調理します。湯気に興味を持って近づくこともあるため、調理中だけでなく、火を止めたあとの熱にも気を配ります。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 一つの食材を蒸して変化を知る

最初は、かぼちゃ、ブロッコリー、さつまいもなど、一種類の野菜から始めます。切る厚さをそろえ、時間を少しずつ変えながら、自分が好きなやわらかさを探します。

塩だけで一口食べ、焼いたときやゆでたときとの違いを確かめます。蒸し料理の特徴を、複雑なたれで隠さずに受け取る段階です。

第2段階 切り方と入れる順番を整える

根菜、葉物、肉、きのこなど、必要な時間が異なる食材を一緒に蒸します。

早く入れるもの、途中で加えるもの、最後に短く温めるものを分けると、一つの蒸し器の中へ複数の食感を残せます。自宅の鍋と火力に合う時間も分かってきます。

第3段階 たれと香りを自分で組み立てる

蒸し上がった料理へ、塩味、酸味、油、香りを組み合わせます。

同じ蒸し鶏を、しょうがとねぎ、みそとごま、レモンとオリーブ油で食べ比べる。蒸す工程は同じでも、仕上げによって食卓の雰囲気が変わります。

この頃になると、食材を見ながら「今日はどのたれで食べたいか」から献立を考えられるようになります。

第4段階 せいろ一段から、一食全体へ広げる

主菜、副菜、点心、卵料理などを組み合わせ、一つの熱源から一食を作ります。

中国の点心、魚の酒蒸し、茶碗蒸し、蒸しパンなど、地域や料理の種類も広がります。単に道具を重ねるのではなく、香りの移り方、汁が落ちる位置、完成時間を考えて段を使い分けます。

第5段階 季節の蒸し料理を、自分の定番へ育てる

春には新しい葉物や豆、夏にはなすやとうもろこし、秋にはきのこやさつまいも、冬には白菜と肉を蒸す。季節が変わるたび、同じせいろの中身も変わります。

家族が好きなたれ、朝食に便利な組み合わせ、寒い日に作りたい一段が分かると、蒸し料理が特別な休日料理から暮らしの定番へ変わります。

誰かと食べる日には、蒸し上がったせいろを食卓へ置き、ふたを開ける瞬間を一緒に楽しめます。湯気の中から現れる一皿を囲むことも、蒸し料理を続けた先にある豊かな時間です。

あわせて楽しみたい関連する趣味

野菜料理

野菜料理では、切り方、焼き方、煮方、和え方を変えながら、一つの野菜が持つ味と食感を引き出します。蒸した野菜と焼いた野菜を食べ比べると、同じ材料でも加熱方法によって水分や香りが変わることを、よりはっきり感じられます。

中華料理

中華料理には、シュウマイ、包子、蒸し餃子、魚の蒸し物など、蒸気を生かした料理が数多くあります。せいろの扱いに慣れたあと、餡、生地、香味だれへ進みたいときに自然につながる楽しみ方です。


魚料理

魚料理では、魚の種類、切り身の厚さ、下味による仕上がりの違いを楽しめます。焼く、煮る方法とは別に蒸す方法を覚えると、白身魚のふっくらした食感や、魚から出る汁を生かした一皿へ広げられます。


ふたを開ける瞬間まで、料理は湯気の中で進んでいる

鍋の中は、ふたを閉めると見えなくなります。

けれど、その間にも蒸気は食材の隙間を通り、硬かった根菜へ熱を届け、肉や魚をゆっくりと食べ頃へ近づけています。

火を強くすれば早く仕上がるとは限らず、長く蒸せばやわらかさが増すとも限りません。切る厚さ、並べる間隔、入れる時間を少しずつ整えることで、自分が好きな一皿へ近づいていきます。

次の休日には、特別なせいろを買う前に、手持ちの鍋へ合う蒸し台がないかを確かめてみてください。かぼちゃを数切れ、きのこを一つかみ、薄切り肉を少し並べるだけでも、最初の一段は作れます。

ふたを開けたときに立ち上る湯気と、食材の色が少し鮮やかになった様子を楽しめたなら、蒸している時間はもう、完成をただ待つ時間ではありません。


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