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気候学の楽しみ方

はじめに

窓の外では、昨日までの暑さが少しやわらぎ、細かな雨が降っている。

天気予報を開けば、今日の気温と降水確率はすぐに分かります。けれど、机の上で過去数十年の気温をグラフにしてみると、目の前の一日とは違う、長い時間の流れが現れます。

「天気と気候は、どこから違うのだろう」

「気候変動のニュースを読むだけでも、気候学になるのかな」

「数式や専門的な解析ができなくても楽しめるだろうか」

気候学は、気温、降水量、風、雪、日照などの状態を長い期間にわたって調べ、地域ごとの特徴や変化、その仕組みを考える学問です。一日ごとに移り変わる大気の状態を見る気象に対し、気候では、長期間にわたる平均、ばらつき、季節性、極端な現象の現れ方などへ目を向けます。

気象庁では、その場所の気候を表し、現在の天候を比べる基準として、直近の連続する30年間から平年値を作成しています。現在使われている2020年平年値は、1991年から2020年までの観測値をもとにしています。

気候学の入口は、遠い国の大規模な変化だけではありません。

住んでいる町では、何月に雨が多いのか。海辺と内陸では、朝晩の気温差がどのように違うのか。以前より夏が長く感じられるのは、記憶の印象なのか、観測値にも表れているのか。

身近な疑問を長い時間と広い場所の中へ置き直すところから、気候を学ぶ休日が始まります。


気候学の基本情報

一回の標準実施時間 約90分

短く楽しむ場合 約30分

準備を含む総所要時間 約100分

想定頻度 週2〜3回程度

主な場所 自宅の机や、資料と画面を落ち着いて見られる場所

初心者の始めやすさ 入門書と無料の公開データから始めやすい

施設への依存 低く、図書館や自宅のインターネット環境を利用できる

天候の影響 自宅学習はほとんど受けない

90分あれば、入門書を一節読み、気象庁のデータで一つの地域を調べ、気づいたことをノートへ残せます。一章を読み切るより、「なぜ日本海側では冬の降水が多いのか」「都市と郊外の気温にはどのような違いがあるのか」と、一つの問いへ時間を使うほうが内容をつなげやすくなります。

30分ほどの日は、グラフを一枚見る、二つの都市の平年値を比べる、前回の用語を一つ調べ直すといった短い学習に向いています。

気候学の費用

初期費用 0円〜約15,000円

標準的な初期費用 約2,500円

一回の費用 0円〜約1,500円

標準的な一回の費用 約200円

年間費用 約25,000円

初期費用の中心は、気候学や地球科学の入門書です。図書館の本、手持ちのノート、無料で公開されている資料を利用すれば、0円から始められます。

一回約200円は、学習するたびに支払う金額ではありません。書籍、電子書籍、資料の印刷、公開講座、有料データサービスなどへ使う年間費用を、年間120回の学習へ割り振った目安です。

気象庁では、地点、期間、気温、降水量、日照時間などを選び、過去の観測値を画面表示したりCSV形式で保存したりできる仕組みを無料で公開しています。最初から専門ソフトを購入しなくても、表計算ソフトと公的データがあれば、自分で比較やグラフ作りを始められます。

費用を抑えるなら、最初の数か月は一冊の入門書と気象庁の資料だけに絞ります。気候変動、気候区分、海洋、都市気候など、興味のある方向が見えてから専門書を追加すると、読まない本を増やしにくくなります。

3つのおすすめ

1.今日の天気を、長い時間の中へ置き直せる

暑い一日があったからといって、その一日だけで地域の気候が変わったとは言えません。反対に、涼しい日が一度あったことだけで、長期的な変化が止まったとも判断できません。

気候学では、一日の値を切り取るのではなく、平年値との差、年ごとの揺れ、数十年の傾向を見ます。

今年の7月は平年よりどのくらい暑かったのか。暑い年が続いているのか。最高気温だけでなく、最低気温や猛暑日の数にも変化があるのか。

期間と基準をそろえてグラフを眺めると、「今年は暑かった」という感覚が、比較できる情報へ変わっていきます。

気象庁の気候変動監視資料でも、各年の値だけでなく、基準期間からの偏差、移動平均、長期的な変化傾向を組み合わせて示しています。

2.地図と数字から、土地ごとの季節が見えてくる

同じ日本の中でも、冬に雪が多い場所、夏の昼夜の気温差が大きい場所、雨の多い季節が異なる場所があります。

その違いには、緯度、標高、海からの距離、山地の位置、季節風、海流など、さまざまな条件が関わっています。二つの地域の月平均気温と降水量を並べるだけでも、暮らしている場所の季節がどのように作られているのかを考えられます。

気象庁のメッシュ平年値図では、1991年から2020年までの平年値をもとに、日本の気温や降水量などの分布を1キロメートル単位の色の違いで確認できます。市町村の境界ではなく、山や海岸線に沿って値が変わっている様子を見ると、気候と地形のつながりが分かりやすくなります。

旅行先を選ぶときにも、単に「暖かい地域」「雨の少ない地域」と覚えるだけではなく、どの季節に、どのような理由で違いが現れるのかへ興味が広がります。

3.空、海、氷、土地、生き物が一つの仕組みとしてつながる

気候は、大気だけで決まるものではありません。

世界気象機関は、気候システムを、大気、海や川などの水圏、雪や氷からなる雪氷圏、地表、そして生物圏が相互に関わる仕組みとして説明しています。熱、水、二酸化炭素などがこれらの間を移動することで、気候のパターンや変動が生まれます。

海面水温の変化が大気へ影響する。積雪が太陽光の反射へ関わる。植物が水や炭素の循環へ関係する。都市の地面や建物が周囲の気温へ影響する。

一つの現象を調べているつもりでも、次第に海洋学、地理学、生態学、物理学、歴史、農業、都市計画などへつながっていきます。

気候学は、知識を一つの箱へ収める学問というより、地球の異なる部分がどのようにつながっているかを見渡す学びです。

最初の学習場所では、資料を三つに分けて置く

机の上には、入門書、ノート、パソコンやタブレットを置きます。

ノートは、次の三つへ分けると整理しやすくなります。

資料から分かったこと

用語の定義、データの期間、図表から読み取れる変化を書きます。

自分が気づいたこと

「冬より夏の最低気温の変化が大きく見える」など、図を見て感じたことを残します。

次に確かめたいこと

「観測地点の移転はなかったか」「別の都市でも同じか」など、まだ答えのない問いを書きます。

資料に書かれている事実と、自分の解釈を分けておくと、あとから考えを修正しやすくなります。気候学では、一度出した結論を守ることより、より長いデータや別の説明に出会ったときに見直すことが大切です。

最初の一冊は、気候変動だけでなく全体像で選ぶ

気候学の本には、地球温暖化へ焦点を当てたもの、世界の気候区分を説明するもの、日本の地域差を扱うもの、数値モデルや統計を詳しく解説するものがあります。

最初の一冊には、次の内容が広く入っている入門書が向いています。

天気と気候の違い

大気と海洋の基本

気温・降水量・風の分布

季節風や海流

世界と日本の気候区分

気候変動と自然変動

観測とデータの読み方

一つの現象を刺激的に説明する本より、用語、図、参考文献、データの出典が確認できる本を選びます。数式が出てきても、最初からすべて理解する必要はありません。図表の見方と、どのような量を比べているのかが分かれば、次の資料へ進めます。

初めての一日は、二つの町の一年を比べる

最初のテーマには、自分の住む地域と、気候が違いそうな地域を一つ選びます。

海辺と内陸。

北日本と南西諸島。

太平洋側と日本海側。

低地と標高の高い町。

気象庁の過去の気象データ検索で、二地点の月ごとの平年値を開きます。現在の平年値は1991年から2020年の30年間をもとに作られています。

最初は、次の三つだけを見ます。

最も気温が高い月と低い月

降水量が多い月

二地点の差が大きい季節

数字をすべて写す必要はありません。

「海辺の町は冬の最低気温が高い」

「片方は夏、もう片方は冬に降水量が増える」

「年平均は近いのに、季節ごとの差が違う」

このような気づきを三つ書きます。

最後に、その理由として考えられるものを一つ挙げます。緯度、標高、海、山地、季節風など、まだ確定できなくても構いません。

一つの答えを覚えるより、同じ数字から次の問いが生まれれば、最初の気候学ノートは十分に始まっています。

最初に必要なもの

最低限必要なもの

気候学または地球科学の入門書、ノート、筆記具があれば始められます。公的な観測データを見るために、パソコンやスマートフォンも使います。

あると便利なもの

表計算ソフト、地図帳、電卓、付箋、グラフを保存するフォルダーがあると、地域や年代を比べやすくなります。無料の表計算ソフトでも、折れ線グラフや棒グラフを作れます。

続けるなら用意したいもの

気象学、海洋学、地理学、統計学などの入門書を追加すると、気候を作る仕組みやデータの読み方を深められます。関心のある地域や現象が決まったら、専門書や原著論文へ進みます。

後回しにできるもの

有料の解析ソフト、高性能なパソコン、専門的なGIS、家庭用の気象観測機器は、最初の学習には必要ありません。

自宅で数週間測った気温も面白い記録になりますが、それだけで地域の長期的な気候を表すことはできません。自分の観測は日々の気象記録として楽しみ、公的な長期データと役割を分けます。

安全に楽しむために

長時間、本や画面へ向かうと、首、肩、腰、目へ負担がかかります。90分学ぶ場合は途中で立ち上がり、遠くを見たり姿勢を変えたりします。痛みや違和感が続く場合は学習を中断し、必要に応じて専門家へ相談してください。

気候の学習結果を、当日の防災判断へそのまま使わないことも大切です。

地域の長期的な降水傾向を知っていても、今日の大雨、雷、台風、熱中症の危険を判断するには、最新の警報、注意報、天気予報などを確認する必要があります。気候は長い期間の特徴を扱い、当日の行動判断は最新の気象情報を基準にします。

データを見るときは、地点、期間、単位、基準値を確認します。異なる30年間の平均をそのまま比べたり、特に暑かった年だけを切り取ったりすると、全体とは異なる印象になることがあります。

観測データは、機器の不具合や精査によって、過去にさかのぼって修正される場合もあります。気象庁も、利用時には最新の掲載データを確認するよう案内しています。

気候変動について調べるときは、一つのニュース、一枚のグラフ、一人の解説だけで結論を決めません。気象庁の監視資料、IPCCの評価報告書、原著論文など、調べ方や根拠が示された資料を複数確認します。IPCCの統合報告書も、観測された変化、影響、将来リスクについて、多数の研究を評価した知見をまとめています。

自分で作ったグラフを公開する場合は、観測地点、期間、単位、基準期間、データの出典を書き添えます。グラフの一部だけを切り取り、資料が示していない原因まで断定しないようにします。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

1.天気と気候の違いを知る

平年値や季節変化を見て、一日の天気と長期的な特徴を分けます。まずは自分の町の一年を知るところから始めます。

2.地図と平年値を読めるようになる

気温、降水量、日照、雪などの分布を見比べます。色の違いが、地形や海との位置関係へつながって見えるようになります。

3.地域や年代を自分で比較する

二つの都市、異なる季節、複数の年代を選び、同じ条件で比べます。自分の問いに合わせて、見るデータを選べるようになります。

4.公開データからグラフを作る

気象庁のデータを保存し、年平均気温、降水量、猛暑日などの変化を簡単なグラフへします。数字の並びが、時間の流れとして見える瞬間があります。

5.一つの地域や現象を長く追う

都市の暑さ、雪、梅雨、海面水温、農業と気候など、自分のテーマを決めます。読書記録を書く、家族へグラフを説明する、地域の資料を調べるなど、学びを人へ渡せる形にもできます。

五つは、難しい解析へ進むための順位ではありません。

毎月の平年値を眺める。旅行先の気候を調べる。気になったニュースの元資料だけ確認する。そのような小さな学びを繰り返すことも、気候学を長く楽しむ一つの形です。

あわせて楽しみたい関連する趣味

雲観察

雲観察は、その日の空に現れる形や動きを自分の目で確かめる趣味です。長期間の傾向を扱う気候学と、今起きている大気の変化を観察する時間を組み合わせると、気象と気候の違いがより身近になります。


専門書

専門書を読むと、入門書で短く紹介されていた大気と海洋の相互作用、気候モデル、過去の気候復元などを詳しくたどれます。数ページずつ読み、用語や図表を調べながら一つの問いを深めたい人に向いています。


ニュース記事

気温、大雨、干ばつ、海面水温など、気候に関する話題はニュースでも多く扱われます。記事の見出しだけで結論を決めず、観測期間、比較基準、一次情報まで確認する習慣を作りたいときにつながります。


一日の数字から、何十年もの季節を眺める

窓の外では、朝から降っていた雨が止み、雲の切れ間が少し明るくなっている。

今日の空は、明日には別の姿へ変わります。けれど、一日ずつ積み重ねられた観測値を並べると、その土地に繰り返し訪れる季節や、長い時間の中で変わってきたものが見えてきます。

最初の一歩は、世界中の気候変動を一度に理解することではありません。

気象庁の過去の気象データから、自分の住む町の月別平年値を一つ開く。最も暑い月、雨の多い月、思っていた印象と違う数字を一つ見つける。

今日の天気の向こう側に、何十年分もの季節が重なっていることへ気づいたとき、気候学は遠い地球の話ではなく、暮らしている場所を長い時間で見直す趣味になります。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

ほかの趣味やレジャーも探してみたい方は、こちらの一覧から気になるものを覗いてみてください。

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