サックスの楽しみ方
マウスピースへリードを重ね、リガチャーで留める。
唇へ当てて息を入れてみると、思っていたような艶のある音ではなく、「ピー」という細い音が鳴ったり、息だけが抜けたりします。
リードの位置を少し直し、肩の力を抜く。今度は楽器を口へ押し付けすぎないようにして、まっすぐ息を送ってみます。
次の瞬間、部屋の中へ少し太い音が響く。
まだ揺れていて、長くは続きません。それでも、リードの振動が真ちゅうの管を通り、自分の息からサックスの音が生まれたことが分かります。
サックスと聞くと、ジャズの中で自由に音を動かす姿や、吹奏楽で華やかな旋律を担当する姿を思い浮かべるかもしれません。
初めてでも音を出せるのか。
たくさんあるキイを、すべて覚えられるのか。
アルト、テナー、ソプラノは、何が違うのか。
集合住宅でも練習できるのか。
楽器は、最初から購入しなければならないのか。
リードやマウスピースは、どれを選べばよいのか。
調べてみると、サックスは、たくさんのキイを速く動かし、格好よく曲を吹くところから始める楽器ではありませんでした。
まずは、リードを正しい位置へ取り付ける。ストラップの長さを合わせ、無理のない姿勢で楽器を支える。マウスピースを軽くくわえ、息を一定に送り、一つの音をまっすぐ伸ばしてみる。
サックスは金属でできていますが、リードを振動させて音を生み出すため、木管楽器に分類されます。発明者のアドルフ・サックスが、木管楽器と金管楽器の特徴を合わせることを目指して1840年代に考案した楽器です。
指づかいは比較的整理されており、キイを順番に開閉することで音階をつくれます。一方、同じ指づかいでも、息、舌、口の形、リードの状態によって音色や音程が変わります。
昨日はかすれていた音が、今日は少し柔らかく鳴る。
一音だけだった練習が、短い旋律へつながる。
サックスは、派手な演奏を一度で完成させる趣味ではなく、自分の息を少しずつ音楽らしい音へ育てていく趣味です。
今回は、自宅で週に2〜3回ほどサックスへ取り組む場合について、必要な時間と費用、最初の楽器の選び方、自宅での音量対策、練習の流れ、お手入れ、安全面、そして続けることで変わっていく楽しみ方をまとめました。
この記事では、初めての人が選びやすいアルトサックスを中心に考えています。
※楽器、レンタル、レッスン、消音用品の価格や条件は変わることがあります。購入・契約前に、メーカー、専門店、教室の最新情報を確認してください。
まず知っておきたい基本情報
一回の標準実施時間
練習、休憩、楽譜の確認、お手入れまで含めて、約100分です。
ただし、初心者が100分間ずっと吹き続ける必要はありません。口の周りや首、肩は、慣れないうちは短い時間でも疲れます。
音を出す練習を15〜20分ほど行い、少し休む。指づかいや楽譜を確認し、もう一度短く吹く。最後にリード、マウスピース、ネック、本体の水分を取り、ケースへ戻します。
長く吹くことより、音が崩れる前に休み、毎回きちんと片付ける方が続けやすくなります。
短く練習する場合の時間
約35分です。
楽器を組み立てる。
一つの音を伸ばす。
前回覚えた三つか四つの音を吹く。
短いフレーズを一度だけ通す。
演奏後に水分を取り、片付ける。
忙しい日は、このくらいでも構いません。週末に一度だけ長く練習するより、短い時間でも定期的に触れる方が、リードをくわえる位置や指の感覚を思い出しやすくなります。
準備や片付けを含む総所要時間
約120分です。
ケースを開く場所を整え、リードを湿らせ、楽器を組み立てる。途中で休憩し、録音を聞き、最後にスワブを通して片付けるところまで含めた目安です。
自宅では、音を出せる時間を選ぶことも準備に含まれます。練習したい時間と、実際に音を出してよい時間が合わない場合は、指づかいや譜読みの日へ変えます。
想定する頻度
週に2〜3回、年間では約120回です。
毎日吹かなければ楽しめないわけではありません。
休日は少し長く音を出す。
平日は、指づかいと楽譜だけを見る。
唇や口の周りが疲れている日は、好きな演奏を聞く。
音を出す練習と、音を出さない練習を組み合わせることで、生活の中へ入れやすくなります。
主な実施場所
自宅、音楽スタジオ、公共施設の音楽室、カラオケルーム、音楽教室などです。
自宅では、消音用品を使った基礎練習や短い練習を行い、通常の響きを確かめたい日は練習室を利用する方法があります。
自宅だけで完結させようとせず、練習内容によって場所を分けると、周囲への音と自分の吹きやすさの両方を考えられます。
予約
自宅練習には必要ありません。
スタジオ、公共施設の音楽室、レッスンを利用する場合は、予約が必要になることがあります。楽器を持っていない場合は、教室の貸し出しや楽器レンタルを確認します。
ヤマハのアルトサックスYAS-280には、長期レンタルで月額7,590円、最短7か月から利用できる例があります。中古品の長期レンタルは月額5,500円で、いずれも別途お手入れセットが必要なプランが案内されています。
運動強度の目安
平均約1.8METsです。
体重60kgの人が一時間取り組んだ場合、単純計算では約113kcalになります。
激しい運動ではありませんが、首へストラップを掛け、楽器を支えながら、呼吸、舌、口の周り、両手の指を使います。特にテナーやバリトンのような大きな楽器では、重さによる負担も増えます。
消費カロリーより、無理のない姿勢と休憩を意識したい趣味です。
始めやすさ
始めやすさは、比較的高めです。
リードが振動すれば、初心者でも最初の日に音が出ることがあります。基本的な運指はサックスの種類が変わっても共通しているため、アルトからテナーへ持ち替えた場合も、同じ形で音階を演奏できます。
一方で、楽器本体の価格と、自宅で音を出せる環境が必要です。何となく安い楽器を購入するより、体験、レンタル、専門店での試奏から始める方が安心です。
施設と天候の影響
施設への依存は低めです。
自宅で練習できれば、毎回教室やスタジオへ通う必要はありません。ただし、生のサックスは音量が大きいため、建物や生活時間によっては、自宅練習が難しい場合があります。
天候の影響は小さく、雨や暑さに左右されず続けられます。屋内で一人でも取り組めるため、外へ出たくない休日にも入れやすい趣味です。
楽しさの中心
リードが初めて振動し、音が出ること。
同じ音を前回よりきれいに伸ばせること。
指の動きと息がそろい、音階になること。
息の強さや口の形で、音の表情が変わること。
短い旋律が、少しずつ曲として聞こえること。
ジャズ、吹奏楽、ポップス、クラシックなど、興味のある音楽へ広げられること。
サックスの楽しさは、速い指づかいだけではなく、自分の息が音色として現れるところにあります。
サックスは、リードの振動を息で育てる楽器
サックスの音は、マウスピースへ取り付けた一枚のリードから始まります。
息を入れるとリードが細かく振動し、その振動がネックから管体へ伝わります。キイを押すと、管体に開いた音孔が閉じたり開いたりして、空気が振動する長さが変わります。
リードをマウスピースから大きくずらすと、音が出にくくなります。リガチャーを締めすぎても、リードの振動を妨げることがあります。
最初は、リードの先端とマウスピースの先端がそろうように置き、講師や専門店で位置を確認してもらうと安心です。
口の形も、強くかみすぎればよいわけではありません。
下唇を軽く歯へかぶせ、上の歯をマウスピースへ置く。口の両側から空気が漏れないようにしながら、喉を締めずに息を送ります。
かすれた音が出る。
高い音へひっくり返る。
音が途中で途切れる。
そのたびに強く吹くのではなく、リードの位置、口の力、息の方向を一つずつ見直します。
リードには厚さを示す番号があり、一般には数字が小さいほど薄く、鳴らしやすくなります。ヤマハの案内では、薄めの2や2.5は初心者にも適した選択肢として紹介されています。リードとマウスピースの相性によっても吹きやすさが変わるため、最初は教室や専門店で相談します。
最初に選ぶなら、三つの始め方から考える
体験レッスンで、音が出る感覚を確かめる
楽器を持っていないなら、体験レッスンや楽器店の体験コーナーから始められます。
持ち方、ストラップの長さ、リードの取り付け方、口の形を見てもらえるため、音が出ない理由を一人で考え続けずに済みます。
ヤマハの一部店舗には、ガイド映像を見ながら楽器の持ち方から音の出し方までを体験できるコーナーがあります。
一度の体験で曲を演奏する必要はありません。
楽器の重さが負担にならないか。
リードをくわえた感触が合うか。
音が出たときに、もう一度吹いてみたいと思えるか。
購入前に、自分の感覚を確かめられます。
楽器をレンタルして始める
続けられるか分からない場合は、レンタルが選択肢になります。
現在案内されているYAS-280の長期レンタルには、マウスピース、ケース、ストラップ、リードなどが付属し、お手入れセットを追加して始められるプランがあります。
契約前には、次の点を確認します。
最低利用期間。
月額料金。
新品か中古か。
お手入れ用品の費用。
破損時の負担。
返却方法。
購入へ切り替えられるか。
数か月続け、自宅で練習する時間や場所を確保できると分かってから、自分の楽器を購入する方法もあります。
専門店で相談して購入する
長く続けたい気持ちがあるなら、管楽器を扱う専門店で試奏します。
初心者向けのアルトサックスとして設計されたヤマハYAS-280の希望小売価格は176,000円です。音の出しやすさ、音程、キイの配置を重視した入門モデルとして案内されています。
3万円前後で見つかる楽器もありますが、価格だけでは、音の出しやすさや調整状態を判断できません。
キイが正しく閉じるか。
タンポから空気が漏れていないか。
ネックが曲がっていないか。
修理や調整を頼めるか。
専門店で確認します。
中古品を選ぶ場合も、点検・調整済みで、購入後の修理に対応してもらえるものが安心です。
自宅で練習する前に、音の問題を考える
サックスは、自宅練習で最初に考えたいことが、音量です。
窓を閉めても、壁、床、廊下、換気口を通して音が伝わることがあります。木造住宅と鉄筋住宅でも響き方が違い、同じ建物でも部屋の位置によって変わります。
まずは、管理規約と生活時間を確認します。
早朝と夜間を避ける。
窓と扉を閉める。
家族へ練習時間を伝える。
一回の演奏時間を短くする。
壁へ近づきすぎず、音が反射しすぎない位置を探す。
室内へ吸音材を置いても、建物の外へ伝わる音を完全に止められるとは限りません。部屋の響きを抑えることと、防音は分けて考えます。
サックス用の消音器を使う
サックス本体を覆う箱型の消音器があります。
ベストブラスのe-Saxは、外へ漏れる音を約25dB低減し、普段の会話程度まで抑える製品として案内されています。ただし、音が完全に消えるわけではなく、周囲へ配慮して使用する必要があります。
アルト用は6万円前後、テナー用はそれ以上となるため、最初から必須の道具ではありません。重量と大きさもあるため、店頭で構えやすさを確認します。
消音器を使うと、自分へ聞こえる音と外へ出る音のバランスが変わります。強く吹きすぎないよう、ヘッドホンなどで音を確認する方法が推奨されています。
練習室を使う
通常の音色と吹奏感を確かめたいなら、音楽スタジオや公共施設の練習室を利用します。
自宅では消音器を使った基礎練習。
スタジオでは音量、響き、曲の通し練習。
教室では姿勢や音色の確認。
場所ごとに役割を分けると、自宅の環境だけで無理をしなくて済みます。
デジタル楽器を併用する
音量を細かく調整し、ヘッドホンで練習できるデジタルサックスもあります。
アコースティックサックスと同じ構造や吹奏感ではありませんが、夜間の指づかい、楽譜、伴奏に合わせる練習へ使えます。ヤマハのデジタルサックスには、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの音色を搭載した機種があります。
生のサックスを吹く練習と、完全に同じものではありません。自宅の事情に合わせた補助的な方法として考えます。
自宅練習で過ごす100分
1.楽器を安全に組み立てる
ケースを床や安定した台へ置きます。
最初にストラップを首へ掛け、ネックを本体へ差し込みます。マウスピースは、ネックコルクを傷めないよう、必要に応じて少量のコルクグリスを使いながら取り付けます。
リードは少し湿らせ、マウスピースへまっすぐ置きます。リガチャーを締め、リードが左右へずれていないかを確認します。
サックスは細かなキイが多いため、管体のキイ部分を強く握って持ち上げません。ベルや持つことを想定された部分を支えます。
2.ストラップの長さと姿勢を整える
楽器を口へ運んだとき、首を大きく前へ出したり、肩を持ち上げたりしない長さへ合わせます。
マウスピースを口の位置まで持ってくる。
自分の顔を楽器へ近づけすぎない。
右手で楽器の重さを支え続けない。
立って吹く場合も、座って吹く場合も、足の裏を安定させます。
楽器が左右へ揺れる場合や、首へ負担を感じる場合は、ストラップの幅や形を見直します。
3.マウスピースとネックだけで音を出す
最初は、楽器全体を使わず、マウスピースとネックだけで音を出す練習もできます。
下唇を軽く歯へかぶせ、上の歯をマウスピースへ置きます。口の横から息が漏れないようにし、舌で「トゥ」と音を始めます。
音が細い、途中で止まる、高くひっくり返る場合は、強くかみすぎていないかを確認します。
数回音を出したら、休みます。
4.一つの音をまっすぐ伸ばす
本体を組み立てたら、出しやすい音を一つ選びます。
大きな音にするより、音の始まりと終わりを整えます。四秒伸ばし、休む。次は五秒というように、無理のない範囲で繰り返します。
息が減るにつれて音程が下がる。
音の途中で揺れる。
最初だけ強い音になる。
すべてを一度に直そうとせず、今日は音の始まりだけ、というように確認することを絞ります。
5.ゆっくり指を動かす
サックスには多くのキイがありますが、最初からすべて覚える必要はありません。
左手の三本。
右手の三本。
少ない音から順番に覚えます。
楽器を吹かずに、指だけを動かす。
音を出しながら、二つの音を交互に吹く。
三つの音を上がり、また戻る。
指を高く上げすぎず、キイの近くへ置いておくと、動きを小さくできます。
6.タンギングで音を区切る
サックスでは、舌をリードへ軽く触れさせ、音の始まりを整えます。
息を止めて音を区切るのではなく、息を流したまま、舌でリードの振動を一瞬止めます。
同じ音を四回。
二つの音を交互に四回。
最初は舌の動きが強くなり、音が硬くなることがあります。ゆっくりしたテンポで、音の間隔をそろえます。
7.短い曲へつなげる
使える音が増えたら、短い童謡や練習曲へつなげます。
一曲を最初から最後まで吹こうとせず、二小節や四小節へ分けます。
指づかいを確認する日。
リズムを整える日。
音の長さをそろえる日。
一度に一つだけ変えていきます。
一音ずつ練習していたものが旋律として聞こえた瞬間に、練習が音楽へ変わります。
8.録音して一つだけ聞き直す
スマートフォンを少し離して置き、短いフレーズを録音します。
吹いている間は、指と息へ意識が向いているため、音程やリズムを客観的に聞きにくいことがあります。
録音を聞くときは、全部を悪いところとして探しません。
最初の音が前より自然だった。
一か所だけ息が足りなかった。
指の切り替えで音が途切れた。
次に直したいことを一つ決めます。
9.毎回、水分を取って片付ける
演奏後は、リードを外し、マウスピースとネックの水分を取ります。本体には楽器の種類に合ったクリーニングスワブを通し、内部の水分を取り除きます。ヤマハは、アルトやテナー用のスワブをベル側から通し、ネックの接続部分から引き出す方法を案内しています。
タンポが湿っている場合は、クリーニングペーパーを挟み、キイを軽く押して水分を取ります。ペーパーを挟んだまま引き抜くとタンポを傷めることがあるため、説明書に従います。
リードは水分を拭き、リードケースへ入れて乾かします。付けたままケースへしまいません。
サックスから広がる4つの音色
サックスには、音域や大きさの異なる仲間があります。
一般的によく使われるのは、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類です。ヤマハの教室案内では、最初に選びやすく、吹きやすい種類としてアルトサックスが紹介されています。
どれが一番優れているというものではありません。
聞きたい音、演奏したいジャンル、身体への負担、練習場所によって選び方が変わります。
後から個別記事を追加するときは、以下の見出しから自然にリンクをつなげられます。
ソプラノサックスの楽しみ方
ソプラノサックスは、4種類の中で高い音域を担当し、明るく透明感のある音が特徴です。
本体がまっすぐな形のものも多く、一見するとアルトより扱いやすそうに見えます。しかし、口の形や息の方向による音程の変化が出やすく、4種類の中では音のコントロールが難しいと案内されています。
好きな奏者の音色や、ソプラノで演奏したい曲がはっきりしているなら、最初の一本として選ぶ方法もあります。一般には、アルトで基礎を覚えてから持ち替える人も多い楽器です。
アルトサックスの楽しみ方
アルトサックスは、大きさ、重さ、息の入り方のバランスが取りやすく、初心者が最初に選びやすい種類です。
クラシック、吹奏楽、ジャズ、ポップスまで、幅広い曲を演奏できます。明るく力強い音から、柔らかな音まで表情を変えやすく、ソロ用の楽譜や教材も見つけやすいところが魅力です。
特に音色の好みが決まっていない場合は、アルトを体験し、サックスの基本を知ってからほかの種類を比べる方法があります。
テナーサックスの楽しみ方
テナーサックスは、アルトより低く、厚みのある音を持っています。
ジャズで聞く少し渋い音色や、歌うようなソロに憧れて選ぶ人もいます。アルトより楽器が大きく、必要な息と重量も増えますが、落ち着いた低音と力強い中音域には、テナーならではの存在感があります。
自宅練習では、アルト用より大きな消音器や保管場所が必要になることがあります。持ったときの重さと、自宅へ持ち帰る方法まで確認します。
バリトンサックスの楽しみ方
バリトンサックスは、4種類の中で低い音域を担当する大きな楽器です。
サックス四重奏や吹奏楽では、音楽全体を下から支えます。低音だけでなく、荒々しい音、温かな音、伸びのある中高音まで、幅広い表情を持つ楽器です。
本体が大きく重いため、初めから個人で購入して自宅練習するより、学校、楽団、教室の楽器で体験する方が現実的な場合があります。保管、運搬、価格、身体への負担を確認して選びます。
サックスならではの楽しさ
リードが鳴った瞬間に、音の手応えがある
最初は、息だけが抜けたり、細い音になったりします。
リードの位置、口の力、息の方向が合うと、急に太い音が出ます。
自分の身体の使い方が楽器へ伝わったことを、音としてすぐに聞けます。
指づかいを覚えると、旋律までが早い
基本的な音階は、キイを順番に開閉する形が多く、少ない音でも短い曲へつなげられます。
一つの音を出すところで長く苦労することはあっても、音が安定すると、指づかいから旋律へ進む楽しさがあります。
同じ運指を別の種類のサックスにも使えるため、将来の持ち替えへつながります。
一つの音へ、いろいろな表情を入れられる
サックスは、息の速さ、口の形、舌の使い方で、同じ音の印象が変わります。
明るく短く鳴らす。
柔らかく始める。
少し息の音を混ぜる。
音を揺らしてビブラートを付ける。
楽譜に書かれた音程が同じでも、自分の音色を育てる余地があります。
音楽のジャンルを越えやすい
サックスは、吹奏楽、クラシック、ジャズ、ポップス、ロックなど、さまざまな音楽で使われています。
最初は童謡や基礎練習から始めても、好きな映画音楽、歌謡曲、ジャズのスタンダードへ広げられます。
一つのジャンルだけに決めず、演奏したい曲から次の練習を選べることも魅力です。
一人の練習が、合奏で別の役割へ変わる
自宅では、一人で音階と旋律を練習します。
合奏へ入ると、同じサックスでも役割が変わります。
アルトが旋律を歌う。
テナーが内声を支える。
バリトンが低音のリズムをつくる。
サックス四重奏では、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンが異なる音域を担当し、一つのまとまりになります。
一人で育てた音が、ほかの人の音と重なった瞬間に、新しい面白さが生まれます。
健康面と身体への負担
サックスの運動強度は約1.8METsが目安です。
激しい運動ではありませんが、楽器の重さを支え、同じ姿勢で息と指を使います。特に首、肩、背中、親指、口の周りへ負担が集まりやすくなります。
首だけで楽器を支えない
アルトサックスでも、本体の重さを長時間首だけで受けると、首と肩が疲れます。
ストラップの長さを合わせ、楽器が自然に口の位置へ来るようにします。首への負担が気になる場合は、肩や背中へ重さを分散するハーネスタイプも検討できます。
痛みやしびれがある場合は、練習を続けません。
右手の親指へ力を入れすぎない
右手の指掛けは、楽器全体を持ち上げるためのものではありません。
親指だけで支えようとすると、手首や親指の付け根が疲れます。ストラップへ重さを預け、指はキイを動かしやすい位置へ置きます。
マウスピースを強くかまない
高い音や安定した音を出そうとして、下唇やマウスピースを強くかみすぎないようにします。
唇の内側が痛い。
歯型が深く残る。
あごが疲れる。
音が細く、詰まったようになる。
その場合は、口の力とリードの硬さを見直します。
息苦しさやめまいがあれば休む
長い音を出そうとして、息を吸いすぎたり、強く吐き続けたりすると、めまいを感じることがあります。
一つのフレーズごとに自然に呼吸し、苦しくなる前に休みます。胸の痛み、強い息切れ、めまいが続く場合は練習を中止し、必要に応じて医療機関へ相談します。
耳にも静かな時間をつくる
サックスを含む楽器演奏では、大きな音への長時間の曝露によって、聴力低下や耳鳴りなどのリスクがあります。NIOSHは、音楽による聴覚への影響は時間をかけて進み、耳鳴り、音のこもり、音への過敏さなどが現れる場合があるとしています。
狭い部屋で長時間吹き続けない。
休憩は静かな場所で取る。
合奏では、スピーカーや大きな音を出す楽器との距離を見る。
練習後も耳鳴りや聞こえ方の違和感が残る場合は、練習を控えて専門家へ相談します。
一回にかかる費用
サックスの費用は、楽器を購入するか、レンタルするかで大きく変わります。
毎回多くの消耗品を使う趣味ではありませんが、リードは定期的に交換が必要です。楽器内部へ水分がたまるため、お手入れ用品と定期的な調整も必要になります。
体験だけなら0円から
無料体験レッスンや店舗の体験コーナーを利用すれば、購入前に音を出せます。
教室で貸出楽器を使える場合もあります。マウスピースやリードを共用するか、自分で用意するかは、教室の衛生方針を確認します。
レンタルで始める場合
アルトサックスYAS-280の公式レンタル例では、新品の長期利用が月額7,590円、中古の長期利用が月額5,500円です。お手入れセット付きプランでは、初回に6,050円のお手入れ用品代が加わります。
一年近く続ける場合は、支払総額と購入価格を比べます。
数か月だけ試すための短期レンタルは、月額が高くなる場合があります。最低利用期間を含めて確認します。
新品を購入する場合
初心者向けの国内メーカー製アルトサックスは、15万円以上が一つの現実的な目安になります。
ヤマハYAS-280は176,000円、YAS-380は231,000円、YAS-480は297,000円です。
そのため、楽器本体の初期費用を3万円と考えるのは、現在の一般的な新品入門モデルには当てはまりません。
中古品や低価格帯の製品を選ぶ方法はありますが、修理や調整に追加費用がかかる可能性があります。購入後に点検を依頼できる専門店を選びます。
リードにかかる費用
天然素材のリードは消耗品です。
割れる。
先端が欠ける。
反応が悪くなる。
音が安定しなくなる。
その場合は交換します。
複数枚を交代で使うと、一枚だけを使い続けるより状態を保ちやすくなります。
樹脂製のシンセティックリードもあり、ヤマハのアルトサックス用は一枚1,980円です。天然リードとは吹奏感が異なりますが、管理しやすく、長く使いやすい選択肢として案内されています。
お手入れ用品
本体用とネック用のスワブ。
クリーニングペーパー。
コルクグリス。
クロス。
マウスピースクリーナー。
これらを最初にそろえます。
ヤマハのレンタル用お手入れセットは6,050円で、スワブ、クロス、クリーニングペーパー、コルクグリスなどが含まれます。
アルト・テナー用の本体スワブ単品の希望小売価格は2,695円です。
毎回すべてを買い替えるものではないため、一回ごとに300円の消耗品費が必ず発生するわけではありません。
音量対策
自宅用の箱型消音器は、アルト用で6万円前後、テナー用ではそれ以上になります。
スタジオや音楽室を利用する場合は、地域ごとの利用料と交通費がかかります。
防音室を購入・レンタルする方法もありますが、最初から必要ではありません。まずは、自宅で許容される時間、消音器、外部練習室の組み合わせを試します。
年間費用
楽器を購入する最初の年は、入門用アルトサックス、お手入れ用品、リード、譜面台などを含めて、18万〜25万円ほどから考える方が現実的です。
消音器を加える場合は、さらに6万円前後が必要です。レッスンへ通う場合は、受講料と施設費も加わります。
レンタルなら、一度に大きな費用を払わず始められますが、長く利用すれば総額は増えます。
翌年以降、楽器の購入がなく、大きな修理もなければ、リード、お手入れ用品、楽譜、練習室などの数千円から数万円ほどが中心になります。
費用を抑えて始める方法
体験レッスンで音を出してから考える。
教室の貸出楽器を利用する。
数か月レンタルし、練習時間を確保できるか確かめる。
中古品は専門店で点検済みのものを選ぶ。
チューナーとメトロノームは、最初はスマートフォンアプリを使う。
高価なマウスピースやリガチャーは後回しにする。
自宅用消音器を買う前に、練習室の利用料と比較する。
安い楽器を急いで購入するより、調整された楽器を借りる方が、音が出ない原因を自分のせいだと思い込まずに済みます。
初めて用意するもの
最低限必要なもの
サックス本体。
マウスピース。
リガチャー。
リード。
ネックストラップ。
ケース。
本体用とネック用のスワブ。
クリーニングペーパー。
コルクグリス。
柔らかいクロス。
初心者向けの楽譜や教材。
チューナーまたはアプリ。
新品やレンタルには、マウスピース、リガチャー、ケース、ストラップなどが付属する場合があります。どこまで含まれているかを確認します。
続けるなら用意したいもの
譜面台。
メトロノーム。
複数枚のリードとリードケース。
マウスピースパッチ。
肩へ重さを分散するストラップ。
楽器スタンド。
録音用のスマートフォンスタンド。
消音器。
音を出せる練習室。
困ったことが分かってから、一つずつ足します。
最初は買わなくてよいもの
高価な上級モデル。
複数のマウスピース。
高価なリガチャー。
何種類ものリード。
大型の楽器スタンド。
専門的な録音機材。
大きな防音室。
音が出にくいときに、すぐ部品を交換するのではなく、楽器の調整、リードの位置、口の形を講師や専門店へ見てもらいます。
サックスで気をつけたいこと
リードを無理に硬くしない
厚いリードほど上級者向けで、よい音が出るとは限りません。
吹きにくいリードを使うと、強くかみ、息を無理に入れやすくなります。マウスピースとの組み合わせもあるため、自分に合う硬さを相談します。
楽器をキイ部分から持ち上げない
サックスのキイは細かな連結部品でできています。
キイを強く握る。
椅子やベッドへ置く。
ベルを下にして不安定に立てる。
このような扱いは避けます。
使わないときはスタンドかケースへ戻します。
マウスピースとリードを清潔にする
マウスピースとリードは、直接口へ触れます。
使用後はリードを外し、水分を取り、ケースで乾燥させます。マウスピースも専用ブラシやクリーナーを使い、製品の説明に従って手入れします。
人とリードやマウスピースをそのまま共用しません。
水分を残したままケースへ入れない
演奏後のサックス内部には水分が残ります。
毎回スワブを通し、タンポの水分も確認します。ヤマハの公式お手入れ案内でも、演奏後のスワブ、タンポの水分除去、ネックとリードの手入れが紹介されています。
湿ったまま長く保管すると、タンポのべたつき、におい、金属部分への影響につながります。
自分でキイを曲げない
音が出にくい、特定の音だけかすれる場合は、キイやタンポが正しく閉じていない可能性があります。
自分でキイを押し曲げたり、ねじを回したりせず、修理技術者へ相談します。サックスは見た目以上に調整の影響を受けやすい楽器です。
音を出せる時間を守る
消音器を使っても、完全な無音にはなりません。
早朝や深夜に練習しない。
管理規約を確認する。
家族や近隣へ長時間の音を続けない。
必要ならスタジオを利用する。
自分が集中できることと、周囲が静かに過ごせることの両方を考えます。
耳や身体の違和感を放置しない
耳鳴り、聞こえのこもり、首や肩の痛み、親指のしびれ、唇の痛みが出たら休みます。
NIOSHは、耳鳴りや24時間以上続く聞こえの変化がある場合、早めに聴力を確認することを勧めています。
長時間練習したことより、次回も無理なく音を出せる状態を残すことが大切です。
続けると変わる楽しみ方
ここで紹介する五段階は、上手さの順位ではありません。
ロングトーンだけを丁寧に行う日へ戻っても構いません。一人で好きな曲を吹くだけでも、十分な楽しみ方です。
1.リードを振動させ、一つの音を鳴らす
最初は、リードを正しく取り付け、楽器を無理なく構えます。
息を送り、一つの音を出す。短くても、かすれていても、自分の息からサックスの音が生まれたら最初の到達点です。
2.基礎の音を安定して再現する
次は、同じ音を何度か鳴らします。
音の始まりをそろえる。
少し長く伸ばす。
簡単な指づかいを覚える。
三つか四つの音で短い旋律を吹く。
偶然鳴った音が、自分で再現できる音へ変わります。
3.音色と曲の表情を育てる
使える音が増えると、音量、長さ、息継ぎを考えられます。
柔らかく始める。
少し力強く吹く。
歌のようにフレーズをつなぐ。
同じ曲でも、自分が心地よいと思う音色を選ぶ自由が生まれます。
4.一曲と合奏を仕上げる
さらに続けると、一曲全体の流れを考えます。
難しい部分を分けて練習する。
伴奏音源と合わせる。
吹奏楽団やアンサンブルへ参加する。
ほかの人と音程、音の長さ、息の位置を合わせます。
自宅で一人ずつ練習した音が、合奏では一つの響きへ変わります。
5.演奏を伝え、記録し、次の人へつなげる
長く続けると、演奏会へ出る、録音を残す、別の種類のサックスへ持ち替える、初心者へ音の出し方を伝えるといった方向へ広がります。
演奏動画、イベント出演、レッスンなど、収益へつながる可能性もあります。ただし、人へ指導するには、演奏力だけでなく、楽器の安全な扱い、著作権、会場、契約などの知識が必要です。
まずは自分の音を育て、その先にある選択肢として考えます。
サックスが合いやすいのは、こんな日
自宅で集中できる音楽の趣味を持ちたい日。
一つの音を少しずつ整える変化を楽しみたい日。
吹奏楽やジャズで聞いた音色へ、自分でも近づいてみたい日。
指と息を同時に使い、身体で音楽をつくりたい日。
一人で練習する時間と、いつか誰かと合奏する目標の両方がほしい日。
同じ旋律を、自分らしい音色で吹いてみたい日。
一方で、夜遅くしか音を出せない日、唇や口の中に痛みがある日、首や肩の状態がよくない日、耳鳴りがある日には、演奏を控えます。
その日は楽譜を読む。
指づかいを見る。
好きな演奏を聞く。
リードを整理する。
楽器のお手入れをする。
音を出さない時間も、次の演奏へつながります。
初めてなら、アルトサックスで一音だけ鳴らしてみる
初めての一回は、楽器を購入する前に、体験レッスンや専門店でアルトサックスへ触れてみます。
ストラップの長さを合わせる。
リードを取り付けてもらう。
マウスピースを軽くくわえる。
肩と首の力を抜く。
舌で「トゥ」と音を始めるようにして、まっすぐ息を入れる。
最初の目標は、格好よいジャズのフレーズを吹くことでも、きれいな音階を演奏することでもありません。
リードが一度振動し、自分の息がサックスの音へ変わること。
その音が細くても、短くても構いません。
楽器をケースへ戻したあとに、次はもう少し長く鳴らせるかもしれないと思えたら。
それだけで、最初のサックス体験として十分です。
調べる前より、格好よく吹くより一音の息づかいを育てる趣味に感じました
調べる前は、サックスには、ジャズの中で自由に音を動かし、華やかなソロを演奏する印象がありました。
指を速く動かせる人。
楽譜を読める人。
強く豊かな息を出せる人。
そのような人でなければ、楽しみにくい楽器のようにも感じます。
けれど、音が出る仕組みと練習の流れを見ていくと、最初に必要なのは、難しい曲でも特別な技術でもありませんでした。
リードをまっすぐ取り付ける。
ストラップの長さを合わせる。
マウスピースを強くかまない。
息を一定に送る。
一つの音を鳴らす。
水分を取り、丁寧に片付ける。
サックスの最初の目標は、人へ聞かせられる演奏を完成させることではありません。
自分の息がリードを震わせ、一つの音になる感覚を知ること。
前回より音の始まりが柔らかくなったことへ、自分で気づくこと。
同じ指づかいの一音でも、毎回まったく同じにはなりません。
少しかすれる日がある。
よく響く日がある。
息が楽に続く日がある。
サックスは、格好よい音を一度で鳴らす趣味というより、自分の息と身体を確かめながら、一音ずつ音色を育てていく趣味なのだと思います。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて楽しみたいものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
