ストリングアートの楽しみ方
はじめに
板に並んだ釘へ糸を一度掛け、向かい側の釘へ渡す。次の釘、また次の釘へと進むうちに、一本ずつはまっすぐだった糸が重なり、なめらかな曲線のような形を描き始めます。
糸を掛ける順番はとても単純でも、数十本が交差すると、最初には見えなかった模様が中央へ浮かびます。白い糸なら静かな陰影に、色を重ねれば光が広がるような表情になり、同じ図案でも選ぶ糸によって印象は大きく変わります。
ストリングアートというと、板へ何十本もの釘を正確に打ち、複雑な計算をしながら糸を掛ける難しい作品を思い浮かべるかもしれません。けれど、最初から板の加工や細かな幾何学模様に挑戦する必要はありません。
釘やピンがあらかじめ打たれた制作キットなら、好きな色の糸を選び、番号や手順に沿って掛けるところから始められます。ハートや星、花、円形の模様など、輪郭が分かりやすい小さな図案を選べば、自宅の机でも一作品を完成させられます。
ストリングアートとは
ストリングアートは、板やフレームに並べた釘やピンへ糸を掛け、線の重なりによって模様や絵を作る手仕事です。英語の「string」は糸やひもを表し、日本では糸かけアートと呼ばれることもあります。
代表的な作品には、円や多角形をもとにした幾何学模様、文字、動物、植物、建物のシルエットなどがあります。釘で作った輪郭の内側を自由に糸で埋める方法もあれば、決まった番号順に糸を掛け、規則的な模様を作る方法もあります。
紙へ線を描く場合、線は表面に直接残ります。ストリングアートでは、釘と釘の間へ糸を渡すため、線が板から少し浮き、重なった部分には厚みと影が生まれます。
糸の数が少なければ輪郭や余白が目立ち、何度も重ねれば密度の高い面になります。釘の位置を変えなくても、糸を掛ける順番、色、回数によって違う作品へ変えられることが、この手仕事の特徴です。
ストリングアートの基本情報
主な楽しみ方 板に並べた釘やピンへ糸を掛け、幾何学模様やモチーフを作る
おすすめの頻度 月2回前後
1回の制作時間 約110分
準備と片づけを含む時間 約130分
短時間で楽しむ場合 約35分から
主な制作場所 明るく、板を安定して置ける自宅の机や作業台
最初の作品 釘打ち済みの小さなボードで作る、円形やハートの一色作品
110分ほどあれば、糸の色を決め、掛け始めから仕上げまで進められる小作品があります。図案が複雑な場合は、外側の輪郭、中央の模様、色の追加というように、数回へ分けて制作しても構いません。
35分ほどの日は、一色分だけ掛ける、次に進む釘へ番号を付ける、糸の組み合わせを試すといった一工程に向いています。途中の糸をほどけないよう仮留めし、次に始める位置を写真へ残しておくと、間が空いても戻りやすくなります。
釘打ち済みのボードを使えば、大きな音を出さずに自宅で続けられます。自分で釘を打つ場合は、作業台の保護、騒音、釘の飛び出しに注意し、落ち着いて作業できる時間を選びます。
ストリングアートにかかる費用
ストリングアートは、材料がそろった小さなキットなら、数千円から試せます。自分で板を用意する場合も、最初から多くの糸や工具を集めず、一作品に必要な物だけへ絞れば大きな費用はかかりません。
初心者向け制作キット 約2,000円〜4,000円
板、釘、糸を個別にそろえる費用 約1,500円〜4,000円
基本工具を含む初期費用 約3,000円〜8,000円
一作品の材料費 約500円〜2,500円
月2回続ける年間費用 約10,000円〜30,000円
キットには、釘打ち済みの板、複数色の糸、図案、説明書などが含まれています。商品によっては、はさみ、接着剤、板を飾るための金具などを自宅で用意する必要があるため、購入前に内容を確認します。
自分で一から作る場合は、板、釘、糸のほか、金づち、定規、鉛筆、はさみ、作業面を守る板やマットが必要です。金づちや定規をすでに持っていれば、新しく購入する費用を抑えられます。
糸は一作品で一巻すべてを使うとは限りません。同じ色を次の作品へ使えるため、最初は白、生成り、青、緑など、使いたい二、三色だけを選ぶと無駄がありません。
費用が増えやすいのは、厚みのある木製ボード、特別な色の釘、数多くの刺繍糸、額や壁掛け金具を一度にそろえるときです。制作を始める前に収納用品や装飾材料まで買わず、最初の一枚を完成させてから必要な物を増やします。
ストリングアートをおすすめする3つの理由
1.まっすぐな糸の重なりから曲線が生まれる
釘と釘の間を通る糸は、一本ずつ見ればすべて直線です。ところが、糸を少しずつ位置をずらして重ねると、直線の端が連なり、丸みのある線や波のような模様が見えてきます。
円形に並べた釘へ一定の間隔で糸を掛ければ、中央へ花のような形が現れます。四角い配置でも、対角線の渡し方によって扇や渦のような動きを作れます。
絵の具で曲線を描くのではなく、線と線の間に生まれる境界を曲線として見るところに、ストリングアートならではの不思議さがあります。糸を数本増やすだけで模様の輪郭が急にはっきりする瞬間も、制作中の楽しみです。
2.糸の色と密度を自分で調整できる
同じ図案でも、一色だけで作れば線の構造が分かりやすく、複数色を使えば奥行きや動きが生まれます。淡い色を重ねると柔らかな印象になり、濃い色と白を組み合わせれば輪郭が引き締まります。
釘へ糸を一周だけ掛けるか、何度も重ねるかでも見え方は変わります。板が透ける程度に余白を残すことも、糸を密に掛けて面のように見せることもできます。
図案どおりに進めながら、途中で色を替えたり、外側だけ糸を増やしたりできるため、決められた工程の中にも選択があります。完成前に糸をほどいてやり直せることも、色や掛け方を試しやすい理由です。
3.完成した作品をそのまま壁や棚へ飾れる
ストリングアートは、板そのものが作品の土台になります。完成後に別の布へ仕立てたり、額装のために大きく加工したりしなくても、棚へ立て掛けたり、金具を付けて壁へ飾ったりできます。
糸が板の表面から浮いているため、見る角度や照明によって影が変わります。昼は糸の色がはっきり見え、夜に横から光が当たると、釘と糸の影まで模様の一部になります。
季節ごとに色を替え、同じ大きさの作品を並べる楽しみ方もあります。小さな一枚から始め、部屋の雰囲気に合わせて少しずつ増やせます。
最初は釘打ち済みのキットから始める
ストリングアートには、板へ釘を打つ工程と、釘へ糸を掛ける工程があります。初めての一作では、この二つを同時に覚えず、釘やピンがあらかじめ並んだキットを選ぶと、糸の扱いへ集中できます。
キットを選ぶときは、完成寸法、釘の本数、糸の色数、図案の種類を確認します。20センチ角ほどの板なら机で扱いやすく、完成後の置き場所も決めやすいでしょう。
釘の本数が多いほど精密な模様を作れますが、掛ける順番も増えます。最初は輪郭が単純で、釘が十数本から数十本ほどに整理された図案が取り組みやすくなります。
説明書には、糸を掛ける番号や方向が示されていることがあります。始める前に全体を読み、色を替える場所、結び目を作る場所、必要な糸の長さを確認します。
糸を掛け終えたあとに釘の高さや位置を変えるのは難しいため、キットでも釘が大きく傾いていないかを最初に見ます。わずかな傾きなら糸を掛けながら整えられる場合もありますが、強く曲げると板や釘を傷めるため無理に動かしません。
図案は三つの種類から選べる
ストリングアートの作品は、糸の掛け方によって大きく三つに分けられます。最初の一枚では、自分が何を楽しみたいかに合わせて選ぶと、途中で迷いにくくなります。
輪郭の中を自由に埋める
ハート、星、動物、植物、文字などの輪郭へ釘を並べ、内側へ糸を自由に渡す方法です。釘から離れた別の釘へ糸を掛け、空いている部分を少しずつ埋めていきます。
厳密な順番を覚えなくても作りやすく、同じ場所へ糸が重なっても作品の表情になります。図案どおりの形を残しながら、自分の感覚で線を増やしたい人に向いています。
決まった順序で幾何学模様を作る
円や多角形に並べた釘へ、一定の間隔を空けながら糸を掛けます。一番から五番、二番から六番というように規則を繰り返すと、中央へ花や星に似た形が現れます。
掛け間違いを減らすため、釘の横へ小さな番号を付けます。規則的な作業を静かに繰り返し、少しずつ模様が整う過程を楽しみたい人に向いています。
外側と内側をつないで形を見せる
外周の釘と、文字や動物などの輪郭に沿った内側の釘を糸で結ぶ方法です。背景へ糸を密に掛け、図案の部分を空白として残すと、糸のない場所から形が浮かびます。
輪郭の内側へ糸を入れる作品とは、主役と余白の関係が反対になります。少ない色でも印象的な作品になりますが、内側の釘へ掛かる力が偏らないよう、順番を分散させる必要があります。
板、釘、糸の選び方
自分で材料をそろえる段階では、見た目だけでなく、釘が安定し、糸を無理なく掛けられる組み合わせを選びます。
板は釘を支えられる厚さを選ぶ
ストリングアートの土台には、木板やMDFボードなどが使われます。薄すぎる板では釘が裏へ突き抜けたり、糸を引いたときに釘が傾いたりすることがあります。
釘を打つ前に、板の厚みと釘の長さを比べます。裏面へ先端が出ないことを確認し、必要なら同じ材料の端で試し打ちをします。
硬い木材は釘を固定しやすい一方、打ち込みに力が必要なことがあります。柔らかすぎる板では穴が広がりやすいため、最初はストリングアート用として販売されている板やキットを使うと安心です。
板へ色を塗る場合は、釘を打つ前に塗装と乾燥を済ませます。糸を掛けたあとでは塗りにくく、塗料が糸へ付着することもあります。
釘は頭に糸を掛けやすい物を使う
釘の頭が小さすぎると、掛けた糸が外れやすくなります。丸い頭の釘や、糸かけ用として用意されたピンなら、糸を数回巻いて固定しやすくなります。
釘の色は、板や糸との組み合わせで選べます。金色や銀色は装飾として目立ち、黒や暗い色は糸の模様を引き立てます。
同じ作品では、できるだけ長さと頭の形がそろった釘を使います。高さが大きく違うと、糸の重なりに段差ができ、低い釘から糸が外れやすくなります。
糸は毛羽立ちと伸びを確かめる
刺繍糸、レース糸、細い手芸糸などを使えます。最初は太すぎず、釘へ数回巻いても収まり、強く引いたときに伸びすぎない糸が扱いやすいでしょう。
毛羽立ちの多い糸は、重ねるほど柔らかな面になります。一方、滑らかな糸は一本ずつの線と光沢が見えやすく、幾何学模様をすっきり見せられます。
途中で糸が足りなくならないよう、同じ色を十分な長さだけ用意します。何色も買う前に、一色または二色で作品を作り、自分が扱いやすい太さと質感を確かめます。
最初にそろえたい道具
釘打ち済みのキットを使うなら、必要な道具は多くありません。自分で板から作る場合だけ、釘打ち用の道具を追加します。
キットから始める場合
制作キット、よく切れるはさみ、糸端を固定するための接着剤やテープを用意します。釘の間へ糸を通しにくい場合は、先の丸いピンセットも役立ちます。
作業中の糸が転がらないよう、小さな容器へ入れておくと絡みにくくなります。色を複数使う場合は、使う順番に並べておきます。
自分で釘を打つ場合
板、釘、金づち、定規、鉛筆、下絵、作業台を保護する厚い板やマットを用意します。釘を垂直に保ちやすくするため、先の細いペンチや、穴を開けた厚紙を補助に使う方法もあります。
下穴を開ける場合は、釘より細いきりやピンバイスを使います。深く開けすぎると釘が緩くなるため、必要な範囲だけにします。
最初は後回しにできるもの
電動ドリル、大型の木工工具、何十色もの糸、特別な装飾釘は、一作目には必要ありません。板を切る設備がない場合は、希望する大きさへ加工済みの木板を選びます。
壁掛け金具や額も、完成してから必要な形を確認して選べます。最初は棚へ立て掛け、作品の重さや板の厚みを見てから飾り方を決めます。
初めての作品を作る流れ
1.図案と糸の色を決める
最初は、円形やハートなど輪郭の分かりやすい図案を選びます。色は一色でも十分ですが、二色使う場合は、どこで切り替えるかを先に決めます。
糸を板の上へ置き、釘や背景との見え方を確認します。糸巻きの状態と、細い一本を板へ渡した状態では色の濃さが違うため、短く試し掛けをしても構いません。
2.釘と番号を確認する
釘打ち済みのキットでは、釘の本数と説明書の番号が合っているかを見ます。自分で作った板では、下絵の位置と釘の間隔を確認し、大きく傾いた釘がないかを確かめます。
幾何学模様では、板へ直接大きな番号を書かず、釘の近くへ小さなシールや取り外せる目印を付けると、完成後に跡を残しにくくなります。
3.糸端を最初の釘へ固定する
最初の釘へ糸を二、三回巻き、小さく結びます。結び目は板に近い位置へ置き、上へ大きく出ないよう整えます。
結びにくい糸は、仮にテープで留めてから作業を始める方法もあります。最後に結び直す場合は、外れないよう十分な長さを残します。
4.強く引きすぎず糸を渡す
糸を次の釘へ掛け、頭の下を一周させてから別の釘へ進みます。糸がたるまない程度に張りますが、釘が内側へ傾くほど強く引きません。
一度に長い距離を進めず、数本ごとに全体を見ます。板を机へ置いたまま作業すると、両手を使いやすく、糸の強さも一定に保ちやすくなります。
5.掛け間違いは早めに戻す
幾何学模様で順番を間違えた場合は、そのまま先へ進まず、間違えた場所までゆっくりほどきます。何本も重ねた後では、下の糸を取り出しにくくなります。
自由に内側を埋める作品なら、予定と違う線も模様として残せる場合があります。図案の輪郭が崩れていないかを少し離れて見て、ほどくか生かすかを決めます。
6.色を替える
色を替える位置まで来たら、目立ちにくい釘へ糸を結び、余分な端を切ります。新しい糸も同じ釘から始めると、色の境界をまとめやすくなります。
糸端へ接着剤を使う場合は、つまようじの先ほどの量を結び目へ付けます。広く塗ると糸の色や光沢が変わることがあるため、必要な部分だけにします。
7.全体を見て密度を整える
糸を掛け終えたら、近くで結び目と外れを確認し、少し離れて模様全体を見ます。左右で密度が違う場合は、空いている場所へ数本だけ追加します。
糸を増やしすぎると、最初に見えていた線の流れが埋もれることがあります。すべての隙間をなくそうとせず、糸と板の両方が見えるところで完成としても構いません。
自分で板へ釘を打つときの進め方
キットを一作品完成させ、釘の位置によって模様が変わることが分かってきたら、自分で土台を作れます。最初は15〜20センチほどの板と、釘の本数が少ない図案を選びます。
板へ下絵を置き、釘を打つ位置へ等間隔で印を付けます。曲線では、急に向きが変わる場所や細かな部分だけ間隔を少し狭めると、輪郭を表しやすくなります。
印の位置へ浅い下穴を開け、釘を一本ずつ打ちます。最初から深く打ち込まず、すべての釘を仮の高さまで入れたあと、定規や横からの視線で高さをそろえます。
金づちを使うときは、板を膝の上や不安定な机へ置きません。厚い作業板や防音マットの上へ置き、周囲に壊れやすい物がないことを確かめます。
釘が短くなるまで指で持ち続けると、金づちが手へ近づきます。ペンチや厚紙の補助具で釘を支え、安定してから少しずつ打ちます。
すべての釘を打ったら、裏側へ先端が出ていないかを手で触れる前に目で確認します。釘が突き抜けた板はそのまま飾らず、釘の長さや板を見直します。
糸の掛け方で表情を変える
輪郭をはっきり見せる
図案の外周に沿って、隣り合う釘同士へ糸を一周させます。そのあとで内側へ糸を渡すと、外周の線が残り、モチーフの形を見分けやすくなります。
輪郭だけ色を変える方法もあります。内側を淡い糸、外側を濃い糸にすると、小さな作品でも形が引き締まります。
中央へ視線を集める
外周の釘から中央付近の釘へ糸を集めると、中心の密度が高くなります。花や星、光の広がりを表したい図案に向いています。
同じ中央の釘へ糸を集中させすぎると、釘へ大きな力がかかります。数本の釘へ分け、全体の傾きを見ながら掛けます。
グラデーションを作る
似た色を明るい順または暗い順に使うと、糸の層にゆるやかな変化が生まれます。最初の色を全体へ掛け、その上から二色目を一部へ重ねると、境界が急に分かれません。
色を増やしすぎると線の構造が見えにくくなるため、初めは三色ほどへ絞ります。同系色に白や生成りを加えるだけでも、十分に奥行きを作れます。
余白を形として残す
糸を掛ける場所だけでなく、掛けない場所も図案の一部です。文字や動物の輪郭を空白として残し、周囲を糸で埋めると、板の色から主役が浮かびます。
余白をきれいに見せるには、輪郭の釘へ糸を掛ける角度を少しずつ変えます。同じ方向ばかりから引くと、一部へ隙間が集まるため、左右を行き来しながら埋めます。
安全に制作するために
釘打ち済みの板でも、釘の先端や頭へ指を強く押し付けるとけがにつながります。糸を釘の間へ押し込むときは、指ではなく先の丸いピンセットなどを使います。
自分で釘を打つ場合は、板を安定した作業面へ置き、必要に応じて目を守る道具を使います。釘や木片が飛ぶ方向へ顔を近づけず、周囲に人がいないことを確かめます。
金づちを使う前に、柄の緩みや頭部の破損がないかを確認します。打ち損じても急いで続けず、板と釘を置き直してから再開します。
釘は小さく、床へ落ちると見つけにくい材料です。作業前後に本数を確認し、余った釘はふた付きの容器へ戻します。子どもやペットのいる家庭では、制作途中の板も手の届かない場所へ保管します。
糸を強く引きすぎると、指へ食い込んだり、切れた糸が跳ねたりすることがあります。手へ何重にも巻き付けて引かず、必要な長さを少しずつ送り出します。
接着剤や板用の塗料を使う場合は、製品の表示に従って換気します。完全に乾く前の板へ糸を掛けると、糸へ色やにおいが移ることがあるため、指定された乾燥時間を取ります。
細かな模様を見続けると、首、肩、目、指が疲れます。30分から40分ほどで一度糸を置き、作品を離れた位置から見る時間を休憩にすると、模様の偏りにも気づけます。
制作途中と完成後の保管
途中の作品は、糸端がほどけないよう釘へ数回巻き、クリップやテープで仮留めします。次に始める釘の番号をメモし、作品全体の写真を残しておくと再開しやすくなります。
板の上へ別の物を重ねると、釘が傾いたり、糸が外れたりします。制作途中でも平らな箱や棚へ単独で置き、布や衣服が釘へ引っ掛からないようにします。
完成作品を壁へ飾る場合は、板の重さに合う金具を使います。糸や釘へ直接ひもを掛けず、板の裏面へ取り付けられる金具を選びます。
表面のほこりは、柔らかな筆や弱い風で取り除きます。布で拭くと糸や釘へ引っ掛かりやすいため、強くこすりません。
直射日光が長時間当たる場所では、糸や板の色が変わることがあります。湿気の多い場所では板が反る場合もあるため、温度変化の少ない室内へ飾ります。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
第1段階 釘打ち済みのキットを一つ完成させる
最初は、番号や順番が示された小さなキットを選びます。糸端を結び、釘へ一周させ、たるませずに次へ渡すという基本を一作品の中で覚えます。
途中で糸が外れたり、順番を間違えたりしても、数本戻れば直せます。最初の一枚では、均一な模様より、最後まで糸を掛け終えることを大切にします。
第2段階 糸の張りと密度を安定させる
同じ図案や似た配置でもう一枚作り、糸を引く強さをそろえます。釘が傾かず、糸もたるまない程度の力が分かると、線の重なりが整います。
どこへ糸が多く集まるのかを途中で見られるようになり、空いた場所へ数本だけ足す調整もできるようになります。
第3段階 色と掛け方を自分で選ぶ
見本の色を別の組み合わせへ変えたり、輪郭と内側で色を分けたりします。一色の幾何学模様、同系色のグラデーション、反対色を使った強い構成など、糸の選択が作品の印象へ表れます。
図案どおりに掛けるだけでなく、一部へ自由な線を加えることもできます。規則と偶然をどのくらい混ぜるかが、自分の表現になります。
第4段階 板と釘の配置から設計する
自分で下絵を描き、釘を打つ位置と間隔を決めます。作りたい輪郭だけでなく、糸がどの方向へ渡り、どこへ密度が集まるかも考えます。
文字、植物、街並みなど、身近な形を単純な輪郭へ置き換える楽しみも生まれます。小さな試作を作ってから大きな板へ広げると、釘の本数や糸の量を調整しやすくなります。
第5段階 作品をシリーズや空間へ広げる
同じ図案を季節ごとの色で作る、円形の模様を大きさ違いで並べる、複数の板を一つの壁面へ配置するなど、作品同士の関係を考えます。制作記録を残せば、釘の配置と糸の順番を再現できる自分用の図案集になります。
作品を展示したり、少人数で一緒に作ったりする方法もあります。販売や指導へ進む場合は、板の強度、釘の安全な処理、壁掛け金具、梱包、図案の利用条件まで確認します。
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