モルックの楽しみ方
木の棒が放物線を描いて飛び、並んだ木のピンに当たる。
カラン、と乾いた音がして、数本のピンが地面に転がります。うまく狙えたときは思わず声が出るし、まったく違う方向へ転がっても、それはそれでちょっとおかしい。次はどの数字を狙うか、倒れたピンを囲みながら相談する時間も始まります。
モルックは、フィンランド生まれの投げるスポーツです。数字の書かれた木製のピンを、木の棒で倒して点数を重ね、50点ぴったりを目指します。
名前を聞いたことはあっても、実際に遊ぶとなると気になることがあります。
運動が得意でなくても大丈夫なのか。何人集めればよいのか。公園で自由に遊べるのか。道具はいくらくらいするのか。ボウリングのように、強く投げた人が有利なのか。
モルックは、ただたくさんのピンを倒せば勝てるゲームではありません。一本だけ倒すか、まとめて倒すかで得点の数え方が変わり、50点を超えると点数が戻ってしまいます。力よりも狙い方と相談が大事で、たまたまの一投が試合をひっくり返すこともあります。
スポーツウェアに着替えて本格的に運動するほどではないけれど、外へ出て少し身体を動かしたい。そんな休日にも、ちょうどよさそうです。
今回は、初めてモルックを体験する場合を想定し、基本ルール、必要な時間と費用、道具のそろえ方、最初の一日の流れ、安全に遊ぶための注意点までまとめました。
※時間と費用は、一人で体験会へ参加するか、友人や家族と近隣の公園・専用スペースなどで遊ぶ場合の目安です。会場、交通手段、レンタルや購入の有無によって変わります。
モルックをざっくり整理すると
遊ぶ時間 約1時間30分
移動を含めた時間 約3時間
1ゲームの時間 約30〜45分
遊びやすい人数 2〜6人ほど
おすすめの頻度 季節ごとに年4回ほど
1回の費用 約2,500円
年間の費用 約1万円
初期費用 レンタルならほぼ0円
道具を購入する場合 約5,000〜9,000円から
予約の必要性 体験会や施設によって異なる
運動の負担 軽め
主な身体的負担 投げる動作、歩行、ピンを立てる動作
楽しさの中心 狙う面白さ、得点の駆け引き、偶然、チームでの相談
モルックは、一対一でもチーム戦でも遊べます。友人や家族と道具を持ち寄る方法のほか、地域の体験会へ参加したり、道具付きの専用スペースを借りたりする方法もあります。
走り回ったり、相手と身体をぶつけたりする競技ではありません。順番に木の棒を投げ、倒れたピンを立て直す動作が中心なので、普段あまり運動をしていない人も参加しやすいのが特徴です。
とはいえ、木の棒はある程度の重さがあり、投げた先には広さが必要です。どこでも自由に始めるのではなく、モルックの利用が認められている場所や、周囲に十分な余裕がある場所を選びます。
ルールはシンプル。でも、50点が近づくと急に悩ましい
最初に、1から12までの数字が書かれた12本の「スキットル」をまとめて並べます。そこから約3.5メートル離れた場所に投げる位置を作り、「モルック」と呼ばれる木の棒を下手から投げます。
得点の数え方は、二つだけです。
スキットルが一本だけ倒れた場合は、その一本に書かれた数字が得点になります。たとえば「8」のスキットルだけを倒せば8点です。
二本以上倒れた場合は、倒れた本数が得点になります。「8」を含む三本が倒れても、得点は8点ではなく3点です。倒れかかっただけでほかのスキットルに支えられているものは、倒れた本数に含めません。
得点を確認したら、スキットルを倒れた場所に立てます。そのため、ゲームが進むほどスキットル同士の距離が広がり、高い数字を一本だけ狙う場面が増えていきます。
先に50点ぴったりへ到達したチームが勝ちです。もし50点を超えると25点へ戻ります。あと4点だから「4」を一本狙いたいのに、その隣にある別のスキットルまで倒れて2点になる。安全に複数本を倒すか、遠くの数字を一本だけ狙うか。終盤になると、急に計算と相談が増えてきます。
公式ルールでは、三回連続で0点になると、そのセットは失格です。ただ、初めて遊ぶ日は、距離を少し短くしたり、三回失敗の扱いをやさしくしたりしても構いません。遊び始める前に全員で決めておけば、経験の差があっても気持ちよく続けられます。
当たった瞬間が分かりやすく、最初の一投から参加できる
モルックのよいところは、初めてでも何をすればよいかが分かりやすいことです。
木の棒を下から投げて、目の前のスキットルを倒す。最初は細かな戦略が分からなくても、まとまったところへ投げれば得点になります。うまく当たると木同士の気持ちよい音がして、結果がすぐ目に見えます。
ボール競技のように、投げながら走ったり、複雑な動きを覚えたりする必要もありません。自分の順番が来るまでほかの人の投げ方を見られるので、遊びながら少しずつ慣れていけます。
力の強さより「どこへ当てるか」が大事
強く投げれば、たくさん倒せる可能性はあります。けれど、たくさん倒せば必ず高得点になるわけではありません。
高い数字を一本だけ倒したいときは、力を抑えて狙う必要があります。手前のスキットルを別の一本へ当てたり、地面を転がすように投げたり、その日の地面の硬さを見ながら調整することもあります。
大人が本気で狙った一投を外し、初めての人がふわっと投げた一投で欲しかった数字が倒れる。そんなことが普通に起こるので、運動経験だけで勝負が決まりにくく、最後まで結果が読めません。
相談する時間までゲームになる
チーム戦では、投げる前に「何点を狙うか」を一緒に考えます。
今は34点だから、12を狙うと46点になる。相手はあと3点なので、3のスキットルを遠くへ飛ばしておきたい。一本を狙うのが難しそうなら、まず複数本を倒して安全に点を取る。
こうした話をしていると、自然に会話が生まれます。ずっとおしゃべりを続けなくても、投げるたびに小さな相談があるので、初対面の人が混じる体験会でも過ごしやすそうです。
うまく当たれば一緒に喜び、外れたら「次はあっちを狙おう」と切り替える。競技ではありますが、勝ち負けだけでなく、その場のやり取りを楽しみやすいスポーツです。
最初の1回は、道具を買わずに約2,500円
初めてなら、体験会やレンタル施設を利用する想定です。
体験料・道具レンタル 約1,000円
交通費 約800円
飲み物・軽食 約500円
その他 約200円
合計 約2,500円
無料の体験会もあり、道具一式付きのスペースを千円前後で利用できる例もあります。参加人数でレンタル代を分けられる場所なら、一人あたりの負担はさらに小さくなります。
道具を購入する場合、初心者向けのセットは5,000円前後、標準的な公式セットは9,000円前後が目安です。投げる棒と12本のスキットルがそろっていれば遊べるため、最初から得点板や投擲ライン用の器具まで買う必要はありません。
体験会へ一度参加し、「また遊びたい」と思ってから購入する方が無駄がありません。一人で練習することもできますが、対戦してこそ得点の駆け引きが生まれるので、一緒に遊べそうな人や利用場所を先に考えておくと安心です。
季節ごとに年4回、一回約2,500円で遊ぶなら、年間では約1万円です。セットを購入して公園を利用する場合は最初の年だけ道具代がかかりますが、その後は交通費と飲み物代くらいで続けられます。
始めるなら、体験会か道具付きスペースが気楽
最初の一回は、地域のモルック団体が開く体験会や、道具を借りられる公園・レジャー施設を探します。ルールを知っている人がいる体験会なら、スキットルの並べ方や点数計算をその場で教えてもらえます。
友人や家族だけで始める場合は、道具と場所の両方を確認します。公園によっては、物を投げる遊びや団体利用が制限されていることがあります。芝生が広く見えても、混雑する休日やボール遊び禁止の区域では利用できない場合があるため、管理者の案内を先に見ておきます。
地面は、土、砂、短めの芝生などが遊びやすい場所です。硬い舗装面では木が傷みやすく、思わぬ方向へ跳ねることがあります。投げる位置から奥へ10メートルほど、横にも余裕があり、人や車が通らない場所を選びます。
服装は普段着に近くて大丈夫
動きやすい服、滑りにくいスニーカー、飲み物、タオルが基本です。夏は帽子と日焼け止め、肌寒い時期は脱ぎ着しやすい上着を足します。
試合中は、スキットルを立てるために何度もしゃがみます。裾の長い服や動きにくい靴より、少し屈みやすい服装の方が楽です。本格的なスポーツウェアや専用シューズは必要ありません。
得点は紙とペンでも、スマートフォンでも記録できます。初回は点数を一人に任せきりにせず、全員で声に出して確認するとルールを覚えやすく、数え間違いも減ります。
最初の一日は、二ゲームくらいでちょうどいい
現地へ着いたら、まず投げる方向と周囲の安全を確認します。スキットルを並べ、約3.5メートル離れた場所に投げる線を作ります。全員が二、三回ずつ練習し、棒の重さと距離に慣れてからゲームを始めます。
一ゲーム目は、細かな反則よりも得点の数え方を覚えることを優先します。一本なら数字、複数なら本数、50点を超えたら25点。この三つが分かれば、十分にゲームを進められます。
一ゲームは人数や狙い方によって30〜45分ほどです。休憩を挟んでもう一ゲーム行えば、上手な人の投げ方や終盤の考え方も少し見えてきます。初日から何時間も続けるより、「次はもう少し狙えそう」と思うところで終えるくらいが気楽です。
遊び終わったら、道具の本数を確認し、土や水分を拭き取ります。木製なので、ぬれたまま袋や箱へ戻さず、必要なら自宅で陰干しします。
安全の基本は、投げる人の前へ入らないこと
モルックを投げるときは、投げる方向に人がいないことを毎回確認します。一人が投げる間、ほかの人は投擲ラインより後ろで待ちます。投げた棒とスキットルが完全に止まってから得点を数え、全員の確認後に拾いに行きます。
道路、駐車場、窓、遊具、小さな子どもが遊ぶ場所の近くでは行いません。広さがあっても、人の通り道と重なる場所は避けます。隣のグループとの距離も取り、別のコートへ棒やスキットルが飛び込まない向きにします。
遊ぶ前には、木の割れや大きなささくれがないかを確認します。傷んだ道具は使わず、スキットルを立てるときも素手で強くこすらないようにします。投げる動作は軽く見えますが、急に力を入れると肩や腰を痛めることがあるため、最初に腕と背中を軽く動かし、無理のない下手投げから始めます。
屋外では、暑さ、雨、強風、雷にも注意が必要です。特に夏は、ゲームに集中していると水分補給を忘れがちです。日陰で休憩を取り、天候が崩れたら途中でも切り上げます。子どもと遊ぶ場合は、棒を勝手に投げないこと、ピンを立てている人がいる間は待つことを最初に約束します。
細かな大会規則を全部覚えるより、利用場所のルールを守り、投げる前に前方を見る。この二つを毎回そろえて行うことが、安全に続けるための基本です。
続けると変わる、5段階の楽しみ方
第1段階 まずはまとまったスキットルへ当てる
最初は数字を狙いすぎず、木の棒をまっすぐ投げることから始めます。何本か倒れて得点が入れば、それだけで十分に気持ちよく遊べます。
第2段階 一本だけ倒す感覚を覚える
棒の端を当てる、力を少し弱める、手前から転がすなど、自分が狙いやすい投げ方を探します。高い数字を一本だけ倒せたときのうれしさが増えてきます。
第3段階 50点から逆算して考える
今の点数と残りの数字を見て、次に何点取るかを考えます。自分の得点だけでなく、相手が狙いそうなスキットルにも目が向きます。
第4段階 地面と配置を読む
芝生、土、砂では棒の跳ね方や転がり方が変わります。スキットルの距離と角度を見ながら、投げる強さや軌道を選べるようになります。
第5段階 体験会や大会、仲間との定例日に広げる
地域の練習会へ参加したり、チームで大会を目指したりします。勝負を深めるだけでなく、月に一度集まるきっかけとして続ける楽しみ方もあります。
この5段階は、順番に上達しなければならないものではありません。戦略を考えるより、外で話しながら投げる時間が好きな人もいます。自分たちが気持ちよく続けられる距離とルールを見つければ、それで十分です。
モルックが合いやすいのは、こんな人と休日
激しい運動は苦手だけれど、少し身体を動かしたい人。勝負だけでなく、会話も楽しみたい人。年齢や運動経験の違う人と一緒に遊びたい人。キャンプやピクニックに、小さな目的を足したい人には合いやすそうです。
友人や家族と集まったものの、食事だけでは少し時間が余りそうな日にも向いています。二時間ほど外で遊び、そのあとお茶や昼食へ行く流れなら、一日を詰め込みすぎずに過ごせます。
一方で、一人で完結する趣味を探している人や、木の道具を運ぶのが負担な日には選びにくい面があります。最初からセットを購入せず、体験会へ一人で参加して、雰囲気が自分に合うか確かめる方がよさそうです。
少し違う方向が気になるなら、ボールを目標へ近づける「ボッチャ」や「ペタンク」、もっと気軽に投げて遊べる「フリスビー」、屋外で過ごす時間そのものを楽しむ「デイキャンプ」も近い趣味です。
ぴったり50点を取れなくても、また投げたくなる
モルックは、ルールを聞いた直後からゲームに入れるのに、何度か投げると急に奥行きが見えてきます。
たくさん倒して喜んでいたら、欲しかった点数とは違っていた。一本だけ狙ったはずが、思いがけず二本倒れた。あと少しで50点だったのに超えてしまい、25点からやり直しになった。
思いどおりにならない場面が多いからこそ、次の一投を考えたくなります。失敗しても試合は続き、チームの誰かが思いがけない一投で流れを変えてくれることもあります。
初めての一日は、勝つことより、狙った方向へ一度投げられたら十分です。木の乾いた音を聞きながら、外で少し笑って、次はあの数字を倒したいと思えたなら、モルックの入口にはもう立っています。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて育てていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
