石けん作りの楽しみ方
半透明の石けん素地を、小さな角切りにする。
耐熱容器へ入れてゆっくり溶かすと、固かったかけらが透明な液体へ変わっていきます。そこへ淡い色を少しだけ加え、型へ流して待つ。時間がたって型から外すと、手のひらに収まる石けんが一つ現れます。
石けん作りと聞くと、油や薬品を量り、本格的な設備で作る姿を思い浮かべるかもしれません。
「苛性ソーダを使わなければ作れないのだろうか」
「自宅の台所で作っても大丈夫なのかな」
「香りや色を自由に加えてもよいのだろうか」
手作り石けんには、油脂と苛性ソーダから作る方法のほか、すでに石けんとして作られた素地を溶かし、型へ流して固める方法があります。後者はMelt and Pourの頭文字からMPソープとも呼ばれ、初めてなら、こちらの方法から制作の流れを試しやすいでしょう。
溶かした素地へ色を加える。
透明と白を層にする。
型を変え、丸や四角、小さな宝石のような形にする。
一つの素材が、色と形の選び方によって違う表情へ変わるところに、石けん作りならではの楽しさがあります。
今回は、自宅で月2回ほど、自分で使う小さな石けんを作る場合を中心に、費用、最初の材料、作業の流れ、安全面、続けるほど広がる楽しみ方を紹介します。
石けん作りの基本情報
一回の標準実施時間 約110分
短く楽しむ場合 約35分
準備と片付けを含む総所要時間 約130分
想定頻度 月2回程度
主な場所 自宅の作業机、換気しやすい個人作業環境
一人での実施 取り組みやすい
複数人での実施 同じ素地から色や型の違う作品を作れる
施設への依存 小さいが、本格的な製法は教室から始めたい
天候の影響 ほとんど受けない
一回110分ほどの日は、材料を切り分け、少量ずつ溶かし、色を付け、型へ流し、片付けまで進められます。固まる時間は製品や作品の大きさによって異なるため、型から外す工程を次の時間へ残すこともあります。
35分だけの日は、素地を切る、配色を考える、前回作った石けんを型から外すというように、一つの工程へ絞ります。制作中に急いで加熱や型外しを進めるより、待つ時間も含めて予定を組む方が落ち着いて作れます。
石けん作りにかかる費用
手持ち品を活用する初期費用 0円〜数千円程度
標準的な初期費用 約10,000円
道具や材料を広くそろえる場合 最大約60,000円
一回の費用 0円〜約2,500円
標準的な一回の費用 約400円
年間費用 約13,000円
標準的な初期費用には、石けん素地、耐熱容器、シリコーン型、はかり、混ぜる道具、作業面を守るシート、手袋などを含めています。すでに使える道具があっても、食品調理と兼用せず、石けん制作専用として分ける物を用意すると管理しやすくなります。
一回約400円は、使用する素地、少量の色材、保護紙などを年間でならした目安です。実際には、まとめて材料を購入する月と、残っている材料だけで作れる月があります。
年間約13,000円は、月2回、年間24回ほど、小さな石けんを自分用に作る想定です。色材、香料、型を一度に増やしたり、有料教室へ参加したりすると費用は大きくなります。
節約するなら、最初は一種類の素地、一つの型、一色の色材へ絞ります。材料を増やす前に、溶かし方と型から外すまでの流れを一度最後まで経験する方が、使わない材料を残しにくくなります。
3つのおすすめ
1.透明だった素地に、色の層が生まれる
透明な石けん素地へ、ごく少量の色を加える。
混ぜる前は一点に集まっていた色が、ゆっくり広がり、容器の中で淡い一色へ変わっていきます。少しだけ混ぜ残せば、雲や水面のような模様になることもあります。
一色目を型へ半分ほど流し、固まり具合を待つ。
その上へ別の色を重ねる。
型から外すまで全体は見えませんが、断面には二つの色が残ります。
同じ青でも、透明な素地に加えた場合と白い素地に加えた場合では、光の通り方や見え方が変わります。色を濃くするだけでなく、透明な部分をどこへ残すか考えられることが、石けん作りの最初の面白さです。
2.型から外すまで、完成した形が隠れている
液体の素地を型へ流した直後は、表面しか見えません。
角まできれいに入っているのか、色の境目はどのようになっているのか。完全に固まるまで触れずに待ち、型を少しずつ開いていくと、内側に隠れていた形が現れます。
表面に小さな気泡が残る。
色の境目が少し斜めになる。
想像より淡い色に仕上がる。
その違いも、次に注ぐ速さや色の量を考える手がかりになります。
型へ流した段階ですべてを整えられなくても、角を少し丸く切り整えたり、形の違う石けんを組み合わせたりできます。完成を急がず、固まるまで待つ時間が制作の一部になることも、この趣味らしいところです。
3.使う場面から、色と形を考えられる
洗面台へ置く、小さな四角い石けん。
夜の入浴時に使う、落ち着いた色の一個。
無香料で作り、色と形だけを楽しむ一個。
石けん作りでは、見た目だけでなく、完成後にどこでどのように使うかまで考えられます。
最初から複雑な模様を作らなくても、手に持ちやすい大きさ、置いたときに転がりにくい形、石けん皿へ収まる厚みを選ぶことで、自分の暮らしに合う作品になります。
制作日、使用した素地、色材、型を記録しておけば、気に入った一個をもう一度作ることもできます。使い切るまでの時間も含めて見届けられるため、作った数を増やすだけではない楽しさがあります。
最初の作業場所では、食品と制作物を分ける
石けん素地を溶かす方法では熱を使うため、安定した机や作業台を用意します。食事中の台所で同時に作業せず、食品、飲み物、調理器具を片付けてから始めます。
作業面 耐熱容器と型を安定して置けるか
加熱場所 熱くなった容器を安全に移動できるか
換気 香料や色材を使う場合に空気を入れ替えられるか
道具の区別 食品用と制作専用を分けられるか
周囲 子どもやペットが熱い容器へ近づかないか
保管場所 材料名と購入日が分かる状態で置けるか
作業台には保護シートを敷き、型へ流す場所と、使い終わった道具を置く場所を分けます。材料の容器や説明書は途中で捨てず、制作が終わるまで手元に残します。
加熱した容器は、見た目より熱くなっていることがあります。ふきんや紙の上へ無理に置かず、熱へ対応する安定した場所を先に決めておきます。
最初の石けんは、香りより素地の扱いやすさで選ぶ
初回は、手作り石けん用として販売され、溶かして型へ流す用途が明記された石けん素地を選びます。一般の固形石けんを自己流で溶かせば、同じように作れるとは限りません。
透明な素地は、光を通す色や層を楽しみやすく、白い素地は淡い色を見分けやすい特徴があります。最初はどちらか一種類だけを選び、製品に書かれた加熱方法と使用量に従います。
香りや色は、石けんへの使用が明示された材料を使います。食品用の色素、飾り用のラメ、身近な花や食材を、見た目だけで加えないようにします。
精油や香料も、最初から入れる必要はありません。無香料の一個を作れば、素地の溶け方や固まり方へ集中できます。香りを加える場合は、自然由来かどうかだけで判断せず、用途と製品の使用量を確認します。
油脂と苛性ソーダから作るコールドプロセス製法は、同じ石けん作りでも安全管理が大きく異なります。水酸化ナトリウムには、重い皮膚の薬傷や目の損傷を起こす危険があり、適切な保護具と取扱設備が必要です。初心者が自宅で説明だけを頼りに試すのではなく、専門知識のある講師から、購入、計量、保管、処分まで含めて学ぶ方法を選びます。
初めての一日は、無香料の一色石けんから
初回の目標は、たくさんの材料を組み合わせることではありません。手作り石けん用の素地を使い、小さな無香料の石けんを一つ完成させます。
1.説明書を最後まで確認する
加熱方法、使用できる容器、分量、型から外せる時期を確認します。異なる製品の作り方を混ぜず、購入した素地の説明を優先します。
2.道具と作業場所を整える
型、耐熱容器、はかり、混ぜる道具、保護シートを並べます。完成まで使わない食品や調理器具は、作業場所から離します。
3.素地を少量に分ける
一度に多く作らず、小さな型一個分から始めます。素地を切る場合は、安定したまな板を使い、刃を自分へ向けません。
4.指定された方法でゆっくり溶かす
加熱中はその場を離れず、短い単位で状態を確認します。沸騰させることを目標にせず、溶けた時点で加熱を止めます。
5.色を少量だけ加える
石けん用の色材を少しずつ混ぜます。液体の段階では濃く見えることもあるため、一度で多く加えず、淡い色から試します。
6.型へ静かに流す
型が傾いていないことを確認し、こぼれない量だけ流します。型を動かさず、製品で示された時間まで待ちます。
7.完全に固まってから外す
表面だけで判断せず、十分に固まったことを確認します。強く引っ張らず、型を少しずつ開いて取り出します。
完成したら、使用した材料と制作日を記録します。最初の一個は自分用とし、肌に刺激や違和感が出た場合は使用を中止します。
最初に必要なもの
最低限必要なもの
手作り石けん用の素地、耐熱容器、シリコーン型、はかり、混ぜる道具、作業面を守るシートを用意します。切り分けが必要な製品では、安定したまな板と刃物も使います。
あると便利なもの
使い捨て手袋、保護眼鏡、小さな計量容器、制作記録用のノート、完成品を包む紙があると便利です。色材を使う場合は、少量ずつ取り分けられる道具も役立ちます。
続けるなら用意したいもの
透明と白の二種類の素地、形の違う型、石けん用の色材、材料を分ける収納箱を検討します。気に入った作品を再現できるよう、分量と順番を記録します。
後回しにできるもの
多数の香料、大型の型、細かな装飾材、専用のカッター、高価な講座一式は、基本の一個を作ってからで構いません。油脂と苛性ソーダを使うための道具も、独学で先に買いそろえないようにします。
安全に楽しむために
石けん素地を使う方法でも、加熱した材料と容器によるやけどに注意します。加熱中はその場を離れず、容器を顔へ近づけず、型へ注いだ直後には触れません。
材料は製品表示どおりに使い、飲食や肌へ塗る用途のない色材や香料を加えないようにします。「天然」「食品由来」という言葉だけで、石けんへの使用に適しているとは判断できません。
苛性ソーダを使う製法では、水酸化ナトリウムが劇物に該当し、皮膚や目への深刻な損傷、吸入による影響などが示されています。家庭で扱う場合にも、子どもやペットから隔離した保管、適合する保護具、事故時の対応を含む専門的な管理が必要です。
また、手洗いや身体洗浄を目的とする石けんは、薬機法などの規制を受けます。必要な許可、届出、表示を行わず、手作りした身体用石けんを販売したり、プレゼントや無償提供をしたりすることはできません。最初は自分で使う範囲にとどめ、誰かへ渡すことを作品の目標にしないようにします。
作業後は道具を洗い、材料の付いた手で目や口へ触れないようにします。完成した石けんを使用して赤み、かゆみ、痛みなどが出た場合は使用をやめ、症状が続く場合は医療機関へ相談してください。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
1.無香料の一個を完成させる
最初は素地を溶かし、型へ流し、固める工程を一通り経験します。小さな気泡や色むらがあっても、型から一個取り出せれば、制作の流れが見えてきます。
2.同じ形と色をもう一度作る
素地と色材の量を記録し、前回に近い一個を作ります。偶然だった色を再現できると、材料を量る意味が少しずつ分かります。
3.透明、白、層を選ぶ
透明な素地と白い素地を使い分け、二色の層や小さな模様を作ります。加える物を増やすより、光の通り方と余白を考えて仕上げます。
4.使う場面に合う形を考える
洗面台、浴室、旅行用など、置く場所から大きさと形を選びます。同じ型でも配色を変え、季節ごとの小さな記録として残せます。
5.作り方と使い心地を記録する
制作日、材料、形、使い切るまでの期間を残し、自分に合う一個を探します。さらに学びたい場合は、教室で製法や安全管理を学びますが、販売や贈答をゴールにせず、自分の暮らしの中で使い切ることも深い楽しみ方です。
五つの楽しみ方は、上達の順位ではありません。一色へ戻る、無香料だけを続ける、しばらく市販品を使うなど、安全と生活に合う形で往復できます。
あわせて楽しみたい関連する趣味
アロマキャンドル作り
アロマキャンドル作りでは、固形のワックスを溶かし、容器へ注いで固まる変化を楽しみます。石けん作りで、液体だった材料が少しずつ形へ戻る時間に惹かれた人なら、灯りと香りを組み立てる手仕事にもつながります。
精油ブレンド
精油ブレンドは、植物から得られた香りを試香紙で比べ、二、三種類の組み合わせを考える趣味です。石けんへ香りを加える前に、まず香りだけを観察し、強さや好みを言葉にしてみたい人に向いています。
シーリングスタンプ
シーリングスタンプは、専用ワックスを溶かし、スタンプを押して小さな模様を作る手仕事です。型から作品を外す瞬間や、色の重なりを楽しむ感覚には、石けん作りと似たところがあります。
型から外した一個を、手のひらへ置く
初めての石けんは、色の境目が少し斜めになったり、表面へ小さな気泡が残ったりするかもしれません。
けれど、型を少しずつ開くと、容器の中では見えなかった側面や底の形が現れます。角を指で確かめ、光へ透かしてみると、溶かす前の素地とは違う一個になっていることが分かります。
最初の一歩は、手作り用の石けん素地と、小さな型を一つ選ぶことです。
香りや飾りは加えず、淡い一色だけを流す。
固まるまで動かさずに待つ。
翌日、型から外した石けんを手のひらへ置いたとき、その小さな重さが、次の色を考えるきっかけになります。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
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