ビオトープ作りの楽しみ方
朝、窓を開けて水面を見る。
昨日まで閉じていた葉が少し開き、水のふちには小さな虫が止まっている。
風が吹くと、鉢の中の細い茎が揺れます。
何か大きな出来事が起きたわけではありません。
けれど、数日前とは確かに違う。
ビオトープ作りには、そんな小さな変化を見つける時間があります。
ビオトープと聞くと、学校や公園にある池のような、広い場所を思い浮かべるかもしれません。
庭を掘らなければ作れないのか。
魚をたくさん飼うものなのか。
水が濁ったら、毎回きれいに洗うのか。
ベランダに置いて、蚊が増えないか。
生きものを迎えたあと、世話を続けられるのか。
調べてみると、自宅で楽しむビオトープは、最初から立派な池を完成させる趣味ではありませんでした。
水を張った容器に土と植物を入れ、浅い場所と少し深い場所をつくる。
あとは、すぐに手を加えすぎず、光や雨、植物の育ち方を見ながら待つ。
環境省は、ビオトープを「生きものが生息する場所」と説明し、庭がなくても睡蓮鉢やコンテナを使ってベランダで作れると紹介しています。水辺と陸の間にゆるやかな境目をつくることで、さまざまな生きものが利用しやすい場所になります。
今回は、自宅の庭やベランダで小さなビオトープをつくり、週に2回ほど観察と手入れを続ける場合について、必要な時間と費用、置き場所、作り方、道具、安全面、そして季節とともに変わっていく楽しみ方をまとめました。
この記事では、まず植物を中心に環境を整え、必要に応じて生きものを迎える小型の容器ビオトープを主に想定しています。
※費用や手入れの頻度は、容器の大きさ、植物、生きものの有無、庭かベランダかによって変わります。賃貸住宅や集合住宅では、管理規約と避難経路も確認してください。
まず知っておきたい基本情報
一回の標準実施時間
約30分です。
水位を見る。
枯れた葉を少し取り除く。
植物が増えすぎていないか確かめる。
水面や土の様子を眺め、気になった変化を記録する。
普段の手入れは、このくらいの内容で終えられます。
毎回、容器を洗ったり、水をすべて替えたりする必要はありません。むしろ、小さな環境を落ち着かせるには、必要以上に触らずに見守る時間も大切です。
短く観察する場合の時間
約10分です。
忙しい日は、水が減りすぎていないか、植物が倒れていないか、生きものに異変がないかを見るだけでも構いません。
朝に窓を開けたついでに水面を見る。
帰宅後、まだ明るいうちに葉の様子を確かめる。
短い観察を重ねることで、前回との違いに気づきやすくなります。
準備や片付けを含む総所要時間
約45分です。
じょうろやバケツを用意し、必要な手入れをして、道具を洗って戻すところまで含めた目安です。
初回の立ち上げは普段の手入れより時間がかかるため、休日の中に少し余裕を取っておくと慌ただしくなりません。
想定する頻度
週に2回前後、年間では100回ほどです。
ただし、毎回30分の作業が必要という意味ではありません。
春は新芽を見る。
夏は水の減り方を確かめる。
秋は落ち葉を取り除く。
冬は凍結や枯れた部分を見ながら、手を入れすぎずに待つ。
季節によって、観察の回数と内容が変わります。
主な実施場所
自宅の庭、玄関まわり、テラス、ベランダなどです。
水を入れた容器を安定して置けて、日々の様子を見やすい場所が向いています。
専用施設へ通う必要がないため、暮らしの近くで続けやすい趣味です。
予約
自宅で作るだけなら、予約は必要ありません。
植物店や園芸店で相談する、ビオトープ作りの講座へ参加する、庭へ大きな池を施工してもらう場合は、事前の問い合わせや予約が必要になることがあります。
運動強度の目安
平均約3.5METsです。
しゃがんで植物を整える、水を運ぶ、土を扱うといった軽い園芸作業を含めた目安です。
体重60kgの人が一時間作業した場合、単純計算では約221kcal。30分なら約110kcalになります。
ただし、10分ほど水面を見るだけの日と、土や容器を動かす日では負担がまったく違います。
消費カロリーを目的にするより、短い作業と観察を暮らしへ入れる趣味として考える方が自然です。
始めやすさ
始めやすさは、比較的高めです。
水が漏れない容器、土、植物があれば、小さく始められます。
魚やエビを最初から入れる必要はありません。
まずは植物だけで環境を整え、日当たりや水の減り方を知ってから、次の段階を考えられます。
施設と天候の影響
施設への依存は低めです。
自宅で続けられる一方、日当たり、風、真夏の高温、冬の凍結、大雨の影響は受けます。
天候の影響は中くらいです。
雨の日も観察できますが、台風前には容器が倒れないか、増水した水がどこへ流れるかを確認します。
楽しさの中心
植物が根づくこと。
水面の色が少しずつ落ち着くこと。
自分で入れていない小さな生きものが訪れること。
季節によって葉や光の見え方が変わること。
すぐに答えを出さず、環境の変化を待つこと。
ビオトープ作りの楽しさは、完成品を眺めるだけではなく、小さな水辺が時間の中で変わっていく過程にあります。
ビオトープ作りは、小さな環境の変化を待つ趣味
鉢植えでは、花が咲くことや葉が増えることが、分かりやすい変化になります。
ビオトープでは、植物だけではなく、水、土、光、虫、微生物、落ち葉などが関わります。
水面へ日が当たる時間が変わる。
植物の影が増える。
雨のあとだけ、水の高さが少し上がる。
枯れた葉の近くに、小さな生きものが集まる。
どれか一つだけを育てるというより、いくつものものが影響し合う場所を見守ります。
そのため、最初から見た目を完成させすぎない方が、変化を受け取りやすくなります。
植物が思った方向へ伸びないこともあります。
水が少し濁る日もあります。
何も来ないように見える時期もあります。
すぐに失敗と決めず、前回との違いを確かめる。
必要なときだけ少し手を入れ、また待つ。
この「整えること」と「任せること」の間に、ビオトープ作りならではの面白さがあります。
最初に選ぶなら、三つの形から考える
植物を中心にした小さな容器
初めてなら、水生植物を中心にした容器が始めやすそうです。
水が漏れない鉢やコンテナへ土を入れ、高さの違う場所をつくり、植物を植えます。
魚を入れなくても構いません。
水面へ来る虫や、葉の裏に隠れる小さな生きものを待つことで、環境そのものを観察できます。
管理する生きものが少ないぶん、旅行や忙しい時期の負担も抑えやすくなります。
生きものを迎える容器
植物と水の状態が落ち着いてから、メダカなどの生きものを迎える方法もあります。
ただし、生きものが入ると、趣味は「水辺を眺めること」だけではなく、命を最後まで管理することへ広がります。
数を増やしすぎない。
種類に合う水深や日陰を用意する。
体調や水の状態を見る。
不要になっても、川や池へ放さない。
環境省の紹介では、生きものを入れる場合は、水を張ってから1か月ほど待つ方法が示されています。最初の日にすべてを入れるより、植物が根づき、水の変化を見てから考える方が落ち着いて始められます。
庭につくる少し大きな水辺
庭がある場合は、地面へ容器を埋めたり、複数の深さを持つ池をつくったりできます。
浅い湿地のような場所と、少し深い水場をつなげると、利用できる生きものの幅も広がります。
その一方で、掘削、排水、転落防止、落ち葉、泥の管理が必要です。
最初の一回から大きく作るより、小型容器で一年の変化を見てから広げる方が、自分に必要な手入れが分かります。
置き場所を決めるときに確認したいこと
光が強すぎないか
植物には光が必要ですが、真夏に一日中強い日差しが当たる場所では、水温が上がりやすく、水も減りやすくなります。
午前中に日が当たり、午後は少し影になる場所など、季節ごとの変化を見られる位置が扱いやすくなります。
同じベランダでも、壁際、室外機の近く、手すり側では、風と熱の受け方が違います。
最初から重い容器を満水にせず、空の状態で一日置き、光と風を見てから決めます。
容器の重さを支えられるか
水は1リットルでおよそ1kgあります。
40リットルの容器なら、水だけで約40kgです。そこへ容器、土、石、植物の重さが加わります。
ベランダでは、床の耐荷重や管理規約を確認し、安定した場所へ置きます。
キャスター付きの台は便利に見えますが、水を入れた後に動かすと転倒や床の傷につながることがあります。
雨であふれた水がどこへ流れるか
大雨のとき、容器からあふれた水が排水口へ流れるのか、隣の住戸や道路へ流れるのかを確認します。
買ってきた植物や改良品種、生きものが、あふれた水と一緒に外へ出ない構造も必要です。
環境省は、ビオトープからあふれた水が川などへつながる場合、遠方から採ったものや購入した動植物を入れないよう注意を促しています。
避難経路をふさがないか
集合住宅のベランダは、くつろぐ場所であると同時に、非常時の避難経路になることがあります。
避難ハッチ、隔板、通路の前には容器を置かず、管理規約を確認します。東京都の防災案内でも、蹴破り戸の前へ物を置かず、避難経路を確保するよう示されています。
手入れしやすい位置か
見栄えのよい奥へ置いても、水を足すたびに家具を動かすようでは続きにくくなります。
じょうろを運びやすいか。
枯れ葉を取るときに身体を無理にひねらないか。
水面を上から確認できるか。
毎週の手入れを想像して、少し余白のある場所を選びます。
最初のビオトープを作る流れ
1.容器と置き場所を決める
まず、水が漏れない容器を選びます。
睡蓮鉢、丈夫な園芸用コンテナ、トロ舟など、屋外で水を入れて使えるものが候補になります。
初めてなら、一人で空の容器を持ち運べる大きさが安心です。
置き場所を決めたら、がたつきがないか、雨水がたまる場所ではないか、避難や通行の邪魔にならないかを確認します。
2.浅い場所と深い場所をつくる
容器の中をすべて同じ深さにせず、植木鉢や台を使って高さを変えます。
土が水面ぎりぎりまで続く場所。
植物の根が水につかる浅い場所。
水が残る少し深い場所。
このように陸と水がゆるやかにつながる部分は「エコトーン」と呼ばれます。環境省も、小さな容器でビオトープを作る際に、エコトーンを設けることを大切な点として紹介しています。
3.土と植物を入れる
土を入れ、植物を植えます。
園芸店で相談するときは、屋外の水辺で育てたいこと、容器の大きさ、日当たり、冬の気温を伝えます。
地域の自然に配慮するなら、遠方の野山から自分で採ってくるより、由来が確認できる植物を選ぶ方が安心です。
植えた直後から見栄えを埋め尽くそうとせず、植物が広がる余白を残します。
4.水を入れ、すぐに完成させない
土が大きく舞い上がらないよう、容器の内側や皿へ水を当てながら静かに入れます。
最初は少し濁っても、慌ててすべて替えません。
土が沈み、植物が落ち着くまで待ちます。
生きものを迎える予定があっても、立ち上げた日に入れず、まず水と植物の変化を見ます。
5.週に2回ほど、水面と植物を見る
普段の手入れは、足し水と観察が中心です。
水が減りすぎていないか。
枯れた葉が大量に沈んでいないか。
一種類の植物だけが増えすぎていないか。
容器の外へ根や茎が伸びていないか。
環境省の案内でも、基本的な手入れは水位を保つことが中心で、定期的な全換水は基本的に不要とされています。植物や堆積物が増えすぎたときに、部分的に取り除いて環境へ変化をつくります。
6.季節ごとに、少しだけ整える
春は、新しい芽と水のにおいを見る。
夏は、水温と蒸発、強い日差しを確かめる。
秋は、落ち葉や枯れた茎を取り除く。
冬は、凍結する地域なら容器や植物に合う越冬方法を確認する。
毎週同じ作業を繰り返すのではなく、その季節に起きていることへ合わせます。
写真を一枚撮るだけでも、数か月後には変化が分かります。
ビオトープ作りならではの楽しさ
何もいなかった水辺に、訪れるものがある
最初は、土と植物と水だけです。
それでも、しばらくすると、水面へ虫が止まり、葉の陰に小さな動きが見えることがあります。
自分で選んで入れたものではなく、その場所を見つけて訪れたものがいる。
その事実だけで、容器が飾りではなく、小さな環境になったように感じられます。
水面が、空と季節を映す
晴れた日は空が映り、雨の日は小さな輪が広がります。
朝と夕方では、同じ葉の色も違って見えます。
花が咲かない時期でも、水面には光と風の変化があります。
室内の観葉植物とは少し違う、屋外の時間をそのまま受け取れる場所です。
手を入れないことも、世話になる
植物が少し傾いていると、すぐに直したくなります。
水が濁ると、全部入れ替えたくなります。
けれど、ビオトープでは、変化の途中を待つことがあります。
数日後に土が沈む。
新しい葉が水面へ出る。
増えた植物の影で、水温が落ち着く。
何もしなかったからこそ見えた変化があります。
世話をすることと、任せることの境目を考えられるのが面白いところです。
同じ容器の中に、一年の流れが残る
春に伸びた葉が、夏に水面を覆う。
秋には色が変わり、冬には水辺が静かになります。
新しい場所へ出かけなくても、同じ容器を見続けることで、季節の違いが細かく分かります。
一年前の写真と比べると、植物の位置や水面の広さまで変わっています。
小さな異変に、早く気づけるようになる
最初は、どの変化が自然で、どれが手入れの合図なのか分かりません。
続けるうちに、
今日は水の減り方が早い。
この葉だけ色が違う。
いつもいる場所に生きものがいない。
雨のあとに土が流れている。
といった小さな違いへ目が向くようになります。
観察が、そのまま世話の上達につながります。
健康面と身体への負担
平均的な運動強度は約3.5METsです。
体重60kgなら、一時間で約221kcal、30分で約110kcalが目安になります。
ただし、ビオトープ作りで気をつけたいのは、運動量より姿勢と水の重さです。
低い容器をのぞき込み、前かがみのまま葉を取る。
片手で水の入ったバケツを運ぶ。
暑い日に長く作業する。
このような場面では、腰、膝、手首へ負担がかかります。
容器の前に小さな椅子を置く。
バケツを満杯にせず、数回に分ける。
重い石や満水の容器を一人で動かさない。
夏は日差しの弱い時間に作業し、喉が渇く前に休む。
痛み、めまい、強い息切れがあるときは、手入れを続けません。
観察だけの日と、土を動かす日を分けることで、無理なく続けやすくなります。
一回にかかる費用
ビオトープ作りの費用は、容器の大きさと、生きものを入れるかで大きく変わります。
最初から庭へ池をつくる金額と、小さな鉢を一つ置く金額を同じに考えない方が分かりやすくなります。
最初の小さな一鉢にかかる費用
最小で約6,000円からが目安です。
手持ちの丈夫な容器を使い、土と植物を少量だけ購入するなら、このくらいから始められます。
容器、土、植物、エコトーンをつくるための台、小さな網や手袋まで新しくそろえる場合は、1万円前後を見ておくと選びやすくなります。
初期費用
標準は約4万円です。
少し大きめの睡蓮鉢やコンテナを選び、複数の植物、土、鉢、作業用品、日よけや簡単な安全対策までそろえる場合の目安です。
庭へ大きな池をつくる、石や循環ポンプへこだわる、複数の容器を並べる場合は、30万円ほどまで広がることがあります。
最初の一回に必要な金額ではありません。
普段の手入れにかかる費用
一回あたり100円から500円ほどが目安です。
ただし、観察と足し水だけの日は、ほとんど支出がありません。
土や植物を少し足す。
網や手袋を交換する。
生きものを飼っている場合に餌を補充する。
このような購入がある日だけ費用がかかります。
植物の植え替えや容器の交換が重なると、一度に3,000円ほど必要になることもあります。
年間費用
容器や植物をしっかりそろえ、買い足しや道具の交換、生きものを迎える場合の用品まで広く含めた年は、約7万8,000円を見ておくと余裕があります。
ただし、毎回500円を使うわけではありません。
植物中心の小さな容器を一つ維持し、手持ちの道具を使うなら、翌年以降は数千円から数万円ほどに収まることもあります。
反対に、植物を季節ごとに買い足す、容器を増やす、ポンプを使う、大きな庭池を整える場合は、電気代や修理費も増えます。
費用を抑えて始める方法
最初は容器を一つにする。
生きものを入れず、植物中心で始める。
家にあるバケツ、じょうろ、園芸用手袋を使う。
飾り石や高価な照明は後回しにする。
植物は容器の大きさに合う量だけ購入する。
一度夏と冬を経験してから、次の容器を増やす。
見た目を早く完成させるより、今ある水辺を一年見続ける方が、この趣味の面白さを確かめやすくなります。
初めて用意するもの
最低限必要なもの
水が漏れない屋外用の容器。
水辺で使える土。
容器と環境に合う植物。
浅い場所をつくるための植木鉢や台。
水を運ぶじょうろや小さなバケツ。
枯れ葉を取るための小さな網やトング。
汚れてもよい手袋。
まずは、このくらいで始められます。
魚やエビ、餌、ろ過装置は、植物だけのビオトープには必須ではありません。
続けるなら用意したいもの
水温を確認する温度計。
植物を分けるための小さな鉢。
日差しを調整する簡易的な日よけ。
写真や変化を残す記録帳。
生きものを飼う場合は、その種類に合う網、餌、越冬用品。
庭で作業するなら、滑りにくい靴や膝を支えるマットも役立ちます。
道具は、困ったことが分かってから足す方が無駄になりません。
最初は買わなくてよいもの
高価な循環ポンプ。
大きなろ過装置。
装飾用の照明。
大量の石や流木。
複数種類の生きもの。
水質検査用品の一式。
大きな収納棚。
ビオトープは、機械を増やすほど自然に近づくとは限りません。
自分が観察したいものと、管理できる範囲が分かってから選びます。
ビオトープ作りで気をつけたいこと
生きものや植物を野外へ放さない
ビオトープへ入れた生きものや植物は、不要になっても川、池、水路へ放しません。
外来種だけではなく、改良品種や、別の地域から来た在来種も、地域の生態系や遺伝的な特徴へ影響する可能性があります。
環境省は、外来種への基本として「入れない・捨てない・拡げない」を掲げています。飼育・栽培しているものを逃がさず、野外へ放さず、別の地域へ広げないことが大切です。
迎える前に、最後まで管理できるかを考えます。
増えすぎた植物や生きものの扱いが分からない場合は、購入店や自治体へ相談します。
野外から無断で持ち帰らない
近所の池や水路にある植物が、ビオトープへ合いそうに見えることがあります。
けれど、自分の判断だけで持ち帰ることは避けます。
保護されている種類や、私有地に生えているものかもしれません。
病気や外来生物を一緒に持ち込む可能性もあります。
初めてなら、出どころが分かる植物を園芸店などで選び、地域に合うかを確認します。
蚊の様子を放置しない
水のある容器では、蚊が気になるところです。
環境省の容器ビオトープの案内では、ヤゴなどが暮らす健全なエコトーンではボウフラが大発生しにくいと説明されています。一方、厚生労働省の蚊対策では、住宅周辺の放置された人工容器などの水たまりを発生源として減らすことが重要とされています。
ビオトープ以外の受け皿、空き鉢、シートのくぼみに不要な水をためない。
容器の中も定期的に観察する。
ボウフラが目立つ場合は、原因を確認し、必要なら一度見直す。
「自然に任せているから大丈夫」と放置しないことが大切です。
小さな子どもとペットの安全を考える
小さな容器でも、水がたまっていれば事故の可能性があります。
消費者庁は、少量の水でも子どもが溺れることがあり、バケツなどへ水をためたままにしないよう注意を促しています。
子どもだけで近づけない場所へ置く。
手を伸ばして容器へ体重をかけられないようにする。
必要に応じて柵やふたを検討する。
ペットが水を飲んだり、容器を倒したりしない配置にする。
観察するときも、大人がそばにいます。
満水の容器を動かさない
水と土が入った容器は、見た目以上に重くなります。
位置を変えたいときは、水や中身を減らし、複数人で持つか、小分けにします。
無理に引きずると、腰を痛めたり、容器が割れたり、床の防水層を傷つけたりすることがあります。
薬剤を安易に入れない
水が濁った、虫が出たという理由だけで、用途の分からない殺虫剤や薬剤を入れません。
植物や水生生物へ影響する可能性があります。
原因が分からないときは、植物店や専門家へ相談し、製品表示に従います。
大雨と台風の前に確認する
容器が倒れないか。
飛びやすい道具が周囲にないか。
増水した水が安全に流れるか。
植物や生きものが外へ出ないか。
台風前に慌てて満水の容器を動かすのではなく、普段から安全な位置へ置いておきます。
続けると変わる楽しみ方
ここで紹介する五段階は、上手さの順位ではありません。
同じ段階を繰り返したり、植物だけの小さな容器へ戻ったりして構いません。
1.小さな水辺を一つ整える
最初は、容器へ土と植物を入れ、水を張ります。
浅い場所と深い場所をつくり、数日間の変化を見る。
水面へ光が映り、植物が少し起き上がったら、最初の小さな到達点です。
2.日常の管理を安定させる
週に2回ほど水位と葉を見る。
増えすぎたものだけを少し整える。
暑い日、雨の日、寒い日の違いを知る。
何をすればよいかだけでなく、何もしなくてよい日も分かってきます。
3.記録し、自分の環境へ合わせる
写真、気温、水位、植物の変化を残します。
午前中だけ日が当たる場所の方が安定した。
この植物は夏に広がりすぎた。
雨のあとに土が動きやすい。
記録と観察がつながると、一般的な方法をそのまま使うだけではなく、自宅の環境へ合わせて調整できるようになります。
4.一年の循環と種類の違いを深める
一つの容器で一年を過ごしたら、植物の組み合わせや水深を変えてみます。
春に芽が出るもの。
夏に水面へ影をつくるもの。
冬に地上部が静かになるもの。
季節ごとの役割が見えると、見た目だけではなく、長い時間の流れで水辺を考えられます。
5.記録や経験を、共有と保全へつなげる
長く続けると、容器の作り方だけではなく、生きものを移動させない理由や、地域の水辺を守ることにも関心が広がります。
写真と記録をまとめる。
初めての人へ、小さく始める方法を伝える。
地域の自然観察会や保全活動を調べる。
植物や生きものを分けるときは、相手が最後まで管理できるかを確認する。
自宅の小さな水辺で得た経験が、外の自然を丁寧に見るきっかけになります。
ビオトープ作りが合いやすいのは、こんな日
遠出せず、自宅で季節を感じたい日。
少しだけ土や水に触れたい日。
完成を急ぐより、変化を待つ趣味を持ちたい日。
朝や夕方の10分を、スマートフォン以外のものへ向けたい日。
植物だけではなく、虫や水辺の動きも観察したい日。
毎週少しずつ世話をし、数か月後の変化を楽しみたい日。
一方で、旅行や出張が多く、真夏の水切れを見られない時期には、容器を増やしすぎない方が安心です。
強い日差しの中で長く作業する日や、腰へ痛みがある日に、無理に大きな手入れをする必要もありません。
その日は、水面を一度見るだけで終えられます。
初めてなら、植物だけの一鉢から
初めてなら、水が漏れない小さめの容器を一つ選びます。
避難経路をふさがず、毎日少し見やすい場所へ置く。
土と植物を少量入れ、浅い場所と深い場所をつくる。
静かに水を張る。
生きものは、まだ入れない。
最初の目標は、きれいな景色をその日に完成させることではありません。
一週間後に水面を見たとき、植物が少し落ち着き、前とは違う影ができていること。
その変化を一つ見つけられたら、最初のビオトープ作りとして十分です。
調べる前より、自然を置くより変化を待つ趣味に感じました
調べる前は、ビオトープ作りには、鉢へ水草とメダカを入れ、きれいに飾る印象がありました。
水が濁らないように掃除し、見た目を整え続けるもののようにも感じます。
けれど、作り方と手入れを見ていくと、中心にあるのは、完成した景色を保つことだけではありませんでした。
浅い場所と深い場所をつくる。
植物が根づくまで待つ。
水が減ったら少し足す。
増えすぎた葉だけを整える。
何も来ない日にも、水面を一度見る。
やがて、自分で入れた覚えのない小さな動きに気づく。
ビオトープ作りの最初の目標は、たくさんの生きものを集めることでも、大きな池をつくることでもありません。
暮らしの近くへ小さな水辺を一つ置き、その場所が昨日と少し違うことを見つけること。
朝の光の中で、前にはなかった葉の影が水面へ落ちていたら。
その容器は、飾りとして完成したのではなく、これから変わり続ける場所として始まっているのだと思います。
アクアリウム飼育はこちら
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて楽しみたいものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
