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教育学の楽しみ方

はじめに

黒板には、同じ問題が一つ書かれている。

説明を聞いてすぐに鉛筆が動く人もいれば、隣の人の考え方を聞いたところで、ようやく手が動き始める人もいます。答えは合っていても理由を説明しにくいことがあり、反対に、答えへたどり着かなくても途中の考え方に大切な発見が含まれていることもあります。

同じ教室にいても、学び方は一つではありません。

「教育学は、教師を目指す人だけが学ぶものなのかな」

「よい教え方を覚えるための学問なのだろうか」

「自分に子どもがいなくても、学ぶ意味はあるのかな」

教育学は、授業の方法だけを扱う分野ではありません。人はどのように学ぶのか、教育は何を目指すのか、学校という制度はどのように作られてきたのか、評価や教科書は何を形づくるのか、家庭や地域、社会は学びとどう関わるのかを考えます。

幼児教育、学校教育、高等教育、特別支援教育、社会教育、生涯学習、教師の養成など、教育に関わる領域は幅広くあります。教育学を趣味として学ぶことは、「正しい教え方」を一つ探すより、学びが生まれる条件をさまざまな角度から見直す時間に近いものです。

最初は、難しい理論や教育制度の全体像から入らなくても構いません。自分が覚えている授業や、最近何かを学んだ場面を一つ選び、「なぜ、あのときは分かったのだろう」と考えるところから始められます。


教育学の基本情報

1回の標準実施時間 約90分

短く楽しむ場合 約30分

準備を含む総所要時間 約100分

想定頻度 週2〜3回程度

年間の想定回数 約120回

主な場所 自宅、図書館、公開講座、教育関連の展示施設

1人での実施 関心のある問いから本や資料を読み進められる

複数人での実施 読書会や対話を通じて、異なる教育経験を比べられる

初心者の始めやすさ 身近な学習経験を入口にでき、専門機材も必要ない

施設への依存 入門書と公開資料があれば、自宅だけでも続けられる

天候の影響 自宅学習ではほとんど受けない

90分あれば、入門書を一節読み、そこで紹介された考え方を自分の経験や別の事例と比べ、短いメモを残せます。30分の日は、「分かりやすい説明とは何か」「テストは何を測っているのか」など、問いを一つだけ選びます。

読む量より、事例と考え方を行き来する時間が大切です。数ページで立ち止まり、自分が当然だと思っていた前提へ気づければ、その日の学びはきちんと残ります。

教育学の費用

初期費用 0円〜約15,000円

標準的な初期費用 約2,500円

1回の費用 0円〜約1,500円

標準的な1回の費用 約200円

年間費用 約25,000円

図書館で入門書を借り、手持ちのノートやスマートフォンを使えば、費用をかけずに始められます。標準的な初期費用の約2,500円は、教育学の領域を広く見渡せる入門書を1冊購入し、ほかは手持ち品で整える想定です。

1回約200円は、学ぶたびに支払う料金ではありません。無料の公的資料を読む日と、書籍、資料の印刷、公開講座、展示などへ費用を使う日を、1年間にならした目安です。

年間約25,000円なら、入門書のほかに、教育史、教育心理、教育社会学、学校制度など、興味が向いた分野の本を少しずつ加えられます。最初から専門辞典や全集をそろえず、何度も戻りたい本だけを購入すると、本棚も費用も大きくなりすぎません。

3つのおすすめ

1.「分からない」を、能力だけの問題にしなくなる

何かを理解できなかったとき、「自分には向いていない」「努力が足りない」と考えてしまうことがあります。教育学では、その人の能力や意欲だけでなく、課題の出し方、説明の順番、使われた言葉、前提となる知識、周囲との関係、時間や場所にも目を向けます。

同じ内容でも、図を見たら分かる人がいる。具体例が加わると理解できる人がいる。一人で考えるより、誰かへ説明したときに考えがまとまる人もいます。

どの方法が常に優れているかを決めるのではなく、「この人が、この場面で学ぶには、何が助けになったのか」と条件を分けて考えます。すると、結果だけを見て本人を評価する前に、学びを支えたり妨げたりしたものを探せるようになります。

これは、学校の授業だけに限りません。仕事を覚えるとき、料理の手順を学ぶとき、楽器やスポーツを練習するときにも、「できる人とできない人」という分け方とは違う見方を加えられます。

2.当たり前だった学校の仕組みに、理由と歴史が見えてくる

時間割、教科書、学年、通知表、入学と卒業。学校生活では当たり前に見えるものも、自然に生まれたわけではありません。どの内容を、どの年齢で、どのような順番で学ぶかには、時代ごとの社会や教育への考え方が表れています。

現在の日本では、学習指導要領が全国の学校における教育課程の基準となり、教科書や時間割もそれをもとに作られています。おおよそ10年に一度改訂されるため、同じ教科名でも、世代によって学んだ内容や重視された力が異なることがあります。

自分の学校経験を思い出したときも、「昔はこうだった」で終わらせず、なぜその仕組みが採用され、何を目指していたのかを調べられます。以前の教科書と現在の教科書を比べるだけでも、扱われる題材、問いの作り方、写真や図の使われ方に違いが見つかります。

制度を知ることは、学校を肯定したり否定したりするためだけではありません。変えにくいものと思っていた仕組みにも、作られた経緯と、見直されてきた時間があると分かります。

3.教育の話題を、一つの立場だけで見なくなる

教育については、「もっと自由に学ばせるべきだ」「基礎を先に身につけるべきだ」「評価を減らした方がよい」「評価がなければ成長が分からない」など、異なる意見が出てきます。

それぞれの意見には、守ろうとしているものがあります。学ぶ人の自由、知識の確実な習得、公平な機会、教師の負担、家庭の安心、社会で必要とされる力。どれか一つだけを選べば、すべての問題が解決するとは限りません。

教育学を学ぶと、意見の結論だけでなく、「誰の立場から見ているのか」「どの年齢や地域を対象にしているのか」「何をよい教育と考えているのか」を確かめるようになります。議論へ急いで参加する前に、言葉の定義や根拠となる調査を探す習慣も生まれます。

自分の経験は大切な入口ですが、それだけで学校や子ども全体を説明することはできません。経験、制度、統計、研究、当事者の声を分けて読むことで、教育の話題を少し落ち着いて考えられるようになります。

最初の学習環境では、経験と解釈と根拠を分けて置く

教育について考えるとき、自分が通った学校や出会った教師の記憶は、身近で強い資料になります。ただし、一つの経験をそのまま「学校とはこういうものだ」「この方法は全員に合う」と広げないことが大切です。

ノートを「起きたこと」「そのとき感じたこと」「現在の解釈」「別の見方」「確かめたい資料」に分けます。

たとえば、「発表を求められたが手を挙げられなかった」という経験があったとします。そこから、「性格が消極的だった」とだけ書かず、問いを考える時間はあったか、正解が一つに決まっていたか、間違えたときの教室の雰囲気はどうだったかまで振り返ります。

資料を探すときは、文部科学省の制度資料だけでなく、国立教育政策研究所の研究報告、教育データ、国際調査、教育図書館のデジタルアーカイブなども入口になります。教育図書館では、近代教科書や戦後教育資料を含むデジタル資料も公開されています。

さらに深めたいときは、日本教育学会の機関誌『教育学研究』をJ-STAGEで検索できます。最初から論文をすべて読み切ろうとせず、気になる題名の要旨や書評から入る方法もあります。

最初の1冊は、教え方の答えより教育の広さで選ぶ

教育学の本には、授業方法、子どもの発達、学校制度、教育史、教育哲学、教育社会学、生涯学習など、異なる入口があります。最初の1冊は、一つの方法を正解として勧める本より、教育を複数の視点から見せてくれる入門書が使いやすくなります。

目次を開き、「学ぶとは何か」「学校はなぜあるのか」「評価は何のためか」といった問いが置かれているかを確認します。実際の教室や生活の事例があり、その事例を理論や制度へつなげて説明している本なら、抽象的な言葉も追いやすくなります。

教員向けの実践書は、具体的な方法を知るときに役立ちます。ただし、趣味として教育学の全体を見たい場合は、方法だけでなく、その方法が生まれた背景や、別の立場からの批判も扱う本を一緒に読むと理解が偏りにくくなります。

購入前に図書館で2冊ほど見比べ、同じ「学力」「主体性」「公平」といった言葉が、どのように説明されているかを読んでみてください。続きを考えたくなる問いが一つ残る本は、最初の1冊になりやすいでしょう。

初めての1日は、覚えている授業を一場面だけ読み直す

初回の目標は、よい教育の条件を決めることではありません。自分の記憶に残っている授業を一つ選び、何が学びを動かしていたのかを整理することです。

「不思議と内容を覚えている授業」でも、「よく分からないまま終わった授業」でも構いません。まず、教科、課題、教師がしていたこと、自分がしていたこと、周囲の人との関わりを、覚えている範囲で書きます。

次に、「説明が分かりやすかった」といった感想を、少し具体的にします。例が身近だったのか、図があったのか、自分で試す時間があったのか、質問してもよい雰囲気だったのかを分けてみます。

最後に、「この方法は別の人にも合っただろうか」「教師以外に学びを支えたものは何だったか」という問いを一つ残します。記憶だけでは分からない部分を空欄にできれば、次に読む資料の方向が見えてきます。

最初に必要なもの

最低限必要なもの

教育学の入門書または図書館で借りた参考書、ノート、筆記具があれば始められます。ノートには、本の要約だけでなく、事例、疑問、著者の立場、自分の考えを分けて残します。

あると便利なもの

PCやタブレット、付箋、ブックスタンド、国語辞典があると、制度資料や論文を読み比べやすくなります。年代や制度の変化を追う場合は、簡単な年表も役立ちます。

続けるなら用意したいもの

教育史、教育心理、教育社会学、教育哲学など、関心のある領域の概説書が候補です。同じテーマを扱う本を2冊並べると、前提や重視する価値の違いが見えやすくなります。

後回しにできるもの

高額な専門辞典、全集、有料の分析ソフト、学習管理ツール、大量の研究書は、入口では必要ありません。自分の問いが定まってから、その問いを調べるために不足する資料だけを加えます。

安全に楽しむために

読書や画面検索が続く日は、同じ姿勢を長く保たないようにします。45〜60分ほどで本や画面から一度離れ、目を遠くへ向け、首、肩、腰を動かします。厚い本は机へ置いたままのぞき込まず、ブックスタンドなどで高さを調整します。

教育学では、不登校、いじめ、差別、障害、貧困、家庭環境、虐待など、重い経験を含む資料を読むことがあります。つらさを感じたときは無理に読み進めず、別の章へ移る、本を閉じるなど、扱う範囲を調整します。

本で得た知識だけをもとに、実在する子どもや大人を診断したり、「この人は意欲がない」「この家庭の教育が悪い」と決めつけたりしません。具体的な支援や安全に関わる問題では、学校、自治体の相談窓口、資格を持つ専門家など、適切な支援先を優先します。

自分や知人の学校経験を文章へまとめる場合も、本人の許可なく実名、学校名、学年、地域、具体的な出来事を組み合わせて公開しないようにします。授業動画や会話の録音を研究のように扱いたい場合は、撮影・録音の目的、保存、共有の範囲を説明し、関係者と施設の了承を得ます。

書籍、論文、教科書、教材の画像を利用するときは、自分の説明と引用部分を分け、必要な範囲に絞って出典を残します。公開されている教育資料も、自由に複製や再配布ができるとは限らないため、掲載元の利用条件を確認します。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

1.学びの一場面を言葉にする

覚えている授業や、最近何かを覚えた場面を一つ選びます。何を学んだかだけでなく、どのような説明、道具、人との関わりがあったかを書きます。

2.教育学の基本的な見方を知る

教育の目的、発達、評価、カリキュラム、制度、社会との関係などの言葉へ触れます。経験だけで考えていた場面を、別の角度から説明できるようになります。

3.二つの考え方を比べる

同じ問いについて、異なる本や研究を並べます。どちらが正しいかを急いで決めず、対象となる人、目指すもの、使っている根拠の違いを探します。

4.制度・歴史・データへ範囲を広げる

教科書の変化、学校制度の歴史、調査結果、国や地域による違いを確かめます。一つの教室で起きていることが、社会の仕組みともつながっていると見えてきます。

5.自分の教育の問いを育てる

読書記録、問いの地図、教科書の比較、学校経験の短い文章など、自分が見返しやすい形へまとめます。読書会で意見を聞いても、自宅で静かに問いを書き直し続けても構いません。

この五つは、上へ進むための順位ではありません。一つの授業を何度も考えても、制度の歴史だけを追っても、入門書へ戻り続けても自然な楽しみ方です。読む、思い出す、比べる、問い直すを、その時の関心に合わせて行き来できます。

あわせて楽しみたい関連する趣味

哲学

哲学では、自由、公平、幸福、責任など、教育でも大切にされる言葉の意味を丁寧に考えます。「教育は何のためにあるのか」「本人の自由と社会の期待をどう考えるか」といった、方法だけでは決められない問いを深めたい人に向いています。

専門書

専門書読書では、用語、主張、根拠、参考文献を分けながら、数ページずつ理解を積み重ねます。教育学の入門書から研究書や論文へ進むとき、読み切った量ではなく、分かったことと疑問を残す読み方が役立ちます。


読書会

読書会では、同じ教育の本を読んでも、学校経験や立場によって気になる箇所が異なることへ気づけます。自分の考えを勝ち負けで決めず、別の見方や問いを受け取りながら深めたい人におすすめです。


一つの学びが動いた理由を、もう一度考える

教育学を学んでも、すべての人に合う授業方法や、迷いのない教育の答えが見つかるとは限りません。大切にしたいもの同士がぶつかり、同じ方法でも、場所や人が変われば結果が異なることがあります。

それでも、誰かができなかった場面を見たとき、本人の能力だけを理由にせず、課題、説明、時間、関係、制度まで少し広く考えられるようになります。

次の休日は、自分が「分かった」と感じた学びを一つだけ思い出してみてください。教えた人の言葉、隣にいた人、使った道具、その前に知っていたことの中から、変化のきっかけを一つ探します。

答えへたどり着いた瞬間ではなく、その少し手前で何が動いたのか。

そこへ小さな問いを置いたとき、昔の教室や最近の学びが、もう一度考えられる場所へ変わり始めます。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

ほかの趣味やレジャーも探してみたい方は、こちらの一覧から気になるものを覗いてみてください。

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