バレエの楽しみ方
音楽が流れ、片手をバーへ添える。
先生の動きを見ながら、つま先を床の上ですべらせ、ゆっくりと脚を伸ばしていく。動きだけを見れば静かでも、姿勢を保ち、足先まで意識しようとすると、身体のいろいろな場所を使っていることに気づきます。
バレエというと、幼い頃から習っている人や、舞台に立つ人のためのものに見えるかもしれません。
身体がやわらかくなければ難しいのではないか。
レオタードを着なければ参加できないのか。
大人になってから始めても、周囲についていけないのではないか。
初めて教室を探すときには、そんな不安も浮かびやすいものです。
けれど、大人の初心者を対象に、立ち方や足の運びから教えるクラスはあります。最初から高く脚を上げたり、つま先立ちで踊ったりするのではなく、バーにつかまりながら姿勢を整え、音楽に合わせて基本の動きを繰り返します。
バレエは、難しい技を早く覚えることだけが目的ではありません。
いつもより丁寧に立つ。肩や首へ余計な力を入れず、指先まで意識して腕を運ぶ。音楽の始まりを待ち、周囲と呼吸を合わせて動く。
普段の生活では見過ごしやすい身体の使い方を、少しずつ確かめていく時間です。
今回は、月2回ほど教室へ通い、自宅では週1回、短い復習を行いながらバレエを続ける場合を中心に、基本情報、費用、おすすめする理由、教室の選び方、必要なもの、安全な自主練習、続けることで変わる楽しさを紹介します。
バレエの基本情報
主な楽しみ方 初心者向けの教室で基礎を学び、自宅で姿勢や足運びを復習する
教室へ通う頻度 月2回前後
自宅で復習する頻度 週1回、10〜30分ほど
1回のレッスン時間 約90分
短時間の自主練習 約15〜35分
移動や着替えを含む総所要時間 約145分
主な場所 バレエ教室、ダンススタジオ、自宅の安全な練習スペース
最初に必要なもの 動きやすい服、バレエシューズ、飲み物、タオル
始めやすさ 初心者クラスなら経験がなくても参加できるが、自己流ではなく指導を受けたほうがよい
天候の影響 屋内のため小さいが、教室までの移動には影響する
難しく感じやすいところ 姿勢、脚の向き、腕の位置などを同時に意識すること
バレエのレッスンでは、バーにつかまって基本動作を行う「バーレッスン」と、バーから離れて動く「センターレッスン」が中心になります。
最初は、膝を曲げるプリエ、足を床の上へ伸ばすタンデュ、かかとを上げるルルヴェなど、比較的ゆっくりした動きから始まります。同じ動作を左右で繰り返しながら、足の位置、上半身の姿勢、腕の運び方を覚えていきます。
見た目には小さな動きでも、実際に行うと、足裏、ふくらはぎ、内もも、背中、お腹まわりまで使います。激しく動く場面だけでなく、止まった姿勢を崩さず保つことにも力が必要です。
教室へ月2回通うだけでも、基本の動きと注意点を教わえます。ただし、次のレッスンまで間が空くため、習ったことを忘れないよう、自宅で短く復習する時間をつくると続けやすくなります。
自主練習は、教室の内容を超えて難しい技へ進むためではありません。
先生から教わった姿勢や動きを、無理のない範囲でもう一度思い出す時間です。鏡の前で立ち方を確認する、足裏を動かす、音楽に合わせて腕を運ぶといった内容でも十分です。
バレエにかかる費用
バレエを始める費用は、教室の受講方法と、最初にどこまで服装をそろえるかによって変わります。
大人向けの教室では、月謝制、回数制、チケット制、1回ごとのオープンクラスなどがあります。月2回で始める場合は、月6,000〜10,000円前後がひとつの目安です。
体験レッスン 約1,000〜3,000円
入会金 0〜10,000円前後
月2回のレッスン料 約6,000〜10,000円
1回ずつ受講する場合 約2,500〜5,000円
最初の服装とシューズ 約5,000〜22,000円
月2回の教室を1年間続ける場合 約80,000〜130,000円
交通費や用品の交換まで含める場合 約100,000〜160,000円
入力データにある年間約161,000円は、月2回の教室代だけを考えるとやや高めです。ただし、入会金、交通費、レッスン用品、自主練習用のスタジオ、追加レッスンなどを含めれば、その程度になることもあります。
自宅での自主練習を中心にし、教室は月2回に抑えるなら、年間10万円前後から考えるのが現実的です。発表会へ出る場合は、通常のレッスン費とは別にまとまった費用が必要になるため、年間費用へ最初から含めず、任意の行事費として分けて考えます。
最初の服装は、教室の決まりを確認してから
体験レッスンでは、身体の動きが分かるTシャツやトップス、レギンスなどで参加できる教室もあります。バレエシューズも、体験時にはレンタルできることがあります。
そのため、予約前に服装を一式購入する必要はありません。
体験後に続けると決めたら、まずバレエシューズを用意します。初心者向けのバレエシューズは3,000〜5,500円ほどが目安で、足の幅や形によって合う種類が異なります。
レオタードは、身体の線を先生が確認しやすい服装ですが、大人の趣味クラスでは必須でないこともあります。レギンスと身体に沿うトップスから始め、教室の雰囲気を見てから購入しても遅くありません。
バレエシューズ 約3,000〜5,500円
タイツ 約2,000〜4,000円
レオタード 約5,000〜18,000円
巻きスカートやショートパンツ 約3,000〜8,000円
レッグウォーマーや羽織りもの 約2,000〜8,000円
すべてを一度にそろえると2万円を超えますが、最初から必要なのはシューズと動きやすい服装です。バッグやレッスン用の上着、複数枚のレオタードは、通う習慣ができてから買い足せます。
発表会は通常の費用と分けて考える
大人向けの教室でも、希望者が参加できる発表会を行うことがあります。
出演料だけでなく、追加リハーサル、衣装、メイク、写真や映像、交通費などがかかります。教室の規模や作品数によっては、数万円から10万円以上になる場合もあります。
発表会は、バレエを続けるために必ず参加しなければならないものではありません。
普段のレッスンだけを楽しむ人もいれば、数年に一度、目標として舞台へ挑戦する人もいます。入会前に、発表会への参加が任意か、費用はどの時点で分かるのかを確認しておくと安心です。
費用を抑えるなら、月2回から始める
初めから週2回、週3回と通うと上達の機会は増えますが、月謝と移動時間の負担も大きくなります。
まずは月2回の初心者クラスへ通い、自宅で短く復習する。生活に無理なく入れられることが分かってから、回数を増やす方法が続けやすいでしょう。
入会金無料の期間や、体験当日の入会特典がある教室もあります。ただし、割引だけで決めず、通常の月謝、休会や退会の期限、未消化分の扱いまで確認することが大切です。
バレエをおすすめする3つの理由
1.何気ない立ち方や歩き方まで丁寧になる
バレエでは、踊り始める前の立ち姿から意識します。
足だけを決められた形にするのではなく、頭の位置、首の長さ、肩、胸、骨盤、膝、足先までを一つにつなげて立ちます。背中を反らせたり、胸を無理に張ったりするのではなく、身体の中心を保ちながら、上へ伸びる感覚を探します。
最初は、先生からいくつもの注意を受けても、すべてを同時には直せません。
肩を下げようとすると膝が緩み、足先を意識すると腕が止まる。鏡を見ることに集中すると、音楽に遅れてしまうこともあります。
それでも、毎回ひとつずつ意識していると、自分が普段どこへ力を入れやすいのかが分かってきます。片側へ体重をかけやすい、肩が上がりやすい、立っているときに膝を固めやすいといった癖にも気づきます。
レッスンで覚えた感覚は、教室の外でも思い出せます。
信号を待っているときに両足へ体重を乗せる。仕事中に肩の力を抜く。歩くときに足裏を雑に置かない。
踊るための姿勢を練習していたはずが、日常の身体の扱い方にも少しずつつながっていきます。
ただし、姿勢がよく見える形を無理につくるものではありません。
自分の骨格や可動域の中で、余計な力を減らし、動きやすい位置を探すことが大切です。見本とまったく同じ形を目指すのではなく、自分の身体を丁寧に扱う習慣が生まれることが、バレエの大きな魅力です。
2.音楽と動きが合った瞬間に、踊る楽しさが生まれる
バレエのレッスンでは、先生の指示どおりに身体を動かすだけではなく、音楽の拍や流れを聞きながら踊ります。
同じプリエでも、ゆったりした音楽では深く呼吸するように動き、軽い音楽では次の動作へなめらかにつなげます。動きの順番が同じでも、音楽によって身体の使い方や印象が変わります。
初めのうちは、足の順番を覚えるだけで精いっぱいかもしれません。
右足を出すのか、左足を閉じるのかを考えているうちに、音楽が先へ進んでしまう。周囲が動き始めてから、少し遅れてついていくこともあります。
ところが、同じ動きを何度か繰り返していると、考える前に足が出る瞬間が訪れます。
音の始まりと一緒に腕が開き、最後の音で足が閉じる。動きと音楽がきれいに重なったときには、難しい技を成功させたときとは違う、静かな気持ちよさがあります。
バレエ作品を知ると、レッスンの動きにも意味が見えてきます。
舞台で使われる腕の形や足運びが、日々の基礎練習から作られていることに気づきます。公演を観たあとにレッスンを受けると、以前はただ繰り返していた動きが、表現のための準備に感じられることもあります。
身体を動かす趣味でありながら、音楽や舞台芸術にも興味を広げられる。
それが、バレエならではの楽しさです。
3.小さな変化を長く見つけていける
バレエでは、数回通っただけで難しい回転や大きなジャンプができるようになるわけではありません。
けれど、上達がないわけでもありません。
片足で立ったときに、前より少しぐらつかなくなる。足を伸ばしたときに、膝とつま先を一緒に意識できる。先生の説明を聞きながら、次の動きを想像できる。
こうした小さな変化が、レッスンの中にいくつもあります。
最初は、バーから手を離すだけで不安だった動きも、少しずつ自分の力で保てるようになります。動きの名前が分かると、先生の指示を聞いてすぐ準備できるようになり、周囲を見る余裕も生まれます。
自分の身体は日によって同じではありません。
よく動ける日もあれば、疲れて脚が重く感じる日もあります。前回できたことが、今日はうまくいかないこともあります。
その変化を失敗だけで終わらせず、今日はどこが動きにくいのか、どこへ力が入りすぎているのかを確かめる。
バレエは、短期間で結果を求めるより、長く身体と付き合いながら変化を見つける趣味です。大人になってから始めても、今の自分に合った目標を持ち、少しずつできることを増やしていけます。
初めての教室では、ここを確認する
バレエ教室には、子どもの育成を中心にした教室、大人の趣味クラスが充実した教室、自由に一回ずつ参加できるオープンスタジオなどがあります。
大人の初心者が始めるなら、「初級」だけでなく、「未経験」「入門」「はじめてのバレエ」と明記されたクラスを探します。教室によっては、初級でも基本用語を理解していることを前提に進む場合があるためです。
体験前には、次の内容を確認しておきましょう。
対象レベル バレエ経験がまったくなくても参加できるか
参加者の年代 大人だけのクラスか、学生と一緒になるか
服装 レオタードが必要か、運動着でもよいか
シューズ レンタルできるか、靴下で参加できるか
レッスン時間 着替えを含めて通いやすい時間か
振替制度 欠席した場合に別の日へ変更できるか
休会・退会条件 手続きの期限と費用
発表会 参加は任意か、どの程度の費用がかかるか
自主練習 教室のスタジオを個人利用できるか
体験レッスンでは、難しい動きができたかどうかだけで判断しないことも大切です。
先生の説明が分かりやすいか、質問しやすいか、初心者を置き去りにせず進めているかを見ます。身体へ触れて姿勢を直す場合、事前に声をかけてくれるかも確認したいところです。
通いやすさも大切です。
評判のよい教室でも、移動に時間がかかりすぎたり、仕事の終了時刻と合わなかったりすると続けにくくなります。月2回であっても、着替えや移動を含めて約2時間半を使うため、無理なく通える曜日と場所を選びましょう。
教室の雰囲気が合うかは、一度で分からないこともあります。
可能であれば、体験レッスンやビジター受講を利用し、いくつかの教室を比べてみます。厳しさの強い指導が合う人もいれば、まず楽しむことを大切にしたクラスのほうが続けやすい人もいます。
最初に用意したいもの
バレエを始めるときに、華やかな衣装は必要ありません。
必要なのは、先生が膝や足首の向きを確認でき、動きを妨げない服装です。身体を隠しすぎる大きなパーカーや、裾の広いパンツは、足の位置が見えにくく、動いたときに引っかかることがあります。
バレエシューズ 足に合うものを試着して選ぶ
レギンスまたはタイツ 膝と足首の動きが見えるもの
身体に沿うトップス 腕を上げても動きにくくならないもの
レオタード 教室の決まりと好みに応じて用意する
タオル 汗を拭ける小さなもの
飲み物 ふたが閉まり、スタジオの規則に合う容器
羽織りもの レッスン前後に身体を冷やさないもの
髪をまとめる用品 顔や首へ髪がかからないようにする
バレエシューズは、普段の靴と同じサイズを選べばよいとは限りません。
大きすぎると中で足が動き、小さすぎると足指を伸ばせません。足幅や指の形にも違いがあるため、できれば専門店や教室で相談し、実際に履いて選びます。
初心者には、足裏のソールが一枚につながったフルソールを勧められることがあります。ただし、教室の先生から指定がある場合は、その指示を優先します。
そして、最初に買うのはバレエシューズです。
トウシューズは、つま先で立つための特別なシューズで、初心者が見た目だけで選んで履くものではありません。足や脚の力、身体の使い方が整い、先生から許可が出てから進みます。
1回のレッスンはどのように進む?
90分ほどの初心者レッスンでは、身体を温め、バーで基本を確認し、最後に少し大きな動きへ進む流れが一般的です。
教室によって内容は異なりますが、次のような構成が目安になります。
着替えと準備 10〜15分
身体を温める運動 10〜15分
バーレッスン 35〜45分
センターレッスン 20〜30分
ジャンプや移動の練習 10〜20分
整理運動とあいさつ 5〜10分
バーレッスンでは、両手または片手をバーへ添え、身体の軸を確認しながら動きます。
プリエで膝を曲げ、タンデュで足先を床へ伸ばし、脚を前・横・後ろへ動かします。バーは身体をぶら下げて支えるものではなく、バランスを確かめるために軽く触れます。
その後、バーから離れてセンターへ移ります。
腕と脚を組み合わせる動きや、方向を変える動き、小さなジャンプなどを行います。初心者クラスでは、先生が短い組み合わせを示し、何度か確認してから音楽に合わせます。
順番を忘れたときは、周囲を慌てて追いかけるより、一度止まって安全を確保します。動きを間違えることより、人とぶつかったり、足をひねったりしないことが大切です。
レッスンの終わりには、レヴェランスと呼ばれるあいさつを行うことがあります。
音楽や先生、周囲の人へ感謝を示しながら、ゆっくり腕や脚を運びます。激しく動いたあとに呼吸を整え、レッスンを静かに終えられる時間です。
自宅では、レッスンの復習だけを行う
自宅練習では、教室で習っていない回転やジャンプ、脚を高く上げる動きを自己流で試さないようにします。
家庭の床は、バレエスタジオの床とは異なります。滑りすぎる床、足へ強い衝撃が返る床、カーペットのように足が引っかかる床では、ジャンプや回転に向きません。
自宅では、場所を取らない基本の確認に絞ります。
立ち方の確認 鏡の前で頭、肩、骨盤、膝、足の位置を見る
呼吸と腕の動き 肩を上げず、音楽に合わせて腕を運ぶ
足裏の動き 座った状態で足指や足首をゆっくり動かす
教わったタンデュ 安全な支えを使い、床を押す感覚を確認する
教わったプリエ 膝とつま先の方向がずれない範囲で行う
レッスンの順番を思い出す 動かずに用語や流れを確認する
一回10〜20分ほどでもかまいません。
毎回すべてを行うより、「今日は肩を上げずに腕を動かす」「今日は足裏を意識する」というように、一つだけテーマを決めるほうが丁寧に練習できます。
椅子の背や家具をバーの代わりに使う場合は、動かないことを確認します。キャスター付きの椅子や、体重をかけると倒れる家具は使いません。
鏡がなくても、スマートフォンで短く撮影して確認できます。ただし、見た目だけで自分の動きを大きく直さず、気になったところを次のレッスンで先生へ相談しましょう。
脚を外へ向ける動きを、足先だけで作らない
バレエでは、脚を付け根から外向きに使う「ターンアウト」が基本になります。
初めて見ると、足先を大きく外へ開くことが正しいように感じるかもしれません。しかし、足先だけを無理に開き、膝や足首が違う方向を向くと、関節へ負担がかかります。
開く角度は、人によって異なります。
見本の形へ無理に合わせず、膝とつま先がおおむね同じ方向を向き、足裏が床から浮かない範囲で立ちます。先生に確認してもらい、自分の身体で安全に使える角度を覚えることが大切です。
脚を高く上げることも、早く回ることも、最初の目標ではありません。
骨盤を大きく傾けずに脚を動かす。足を上げる前に、立っている側の脚を安定させる。小さな範囲でも正しく使うことが、次の動きへつながります。
柔軟は、痛みを我慢して深くしない
バレエには柔軟性が必要という印象がありますが、痛みに耐えて開脚を続ければよいわけではありません。
身体が冷えた状態で急に深く伸ばしたり、誰かに強く押してもらったりすると、筋肉や関節を傷める可能性があります。レッスン前は身体を少しずつ温め、反動をつけず、自分で呼吸できる範囲にとどめます。
柔らかさだけでなく、その範囲を自分の力で支えることも必要です。
脚を高く上げられても、骨盤や上半身が大きく崩れれば、踊りの中で安定して使えません。まずは姿勢を保てる高さを知り、少しずつ動かせる範囲を広げます。
筋肉が伸びている感覚と、関節の鋭い痛みは別です。
足首、膝、股関節、腰などへ刺すような痛みが出た場合は、その動きを中止します。翌日まで強い痛みが残る場合や、同じ場所の違和感を繰り返す場合は、無理にレッスンを続けず、先生や医療の専門家へ相談します。
レッスンを安全に続けるために
バレエは、静かな動きだけで構成されるわけではありません。
片足で立つ、方向を変える、ジャンプから着地するという動作もあります。疲れて姿勢が崩れると、足首や膝へ負担が集まりやすくなります。
レッスン前には、睡眠や体調を確認します。
発熱や強いだるさがある日、めまいがする日、関節へ痛みがある日は参加を控えます。少し疲れている程度でも、先生へ伝え、ジャンプを小さくする、途中で休むといった調整を行います。
スタジオでは、周囲との距離も大切です。
センターレッスンや移動を伴う動きでは、隣の人と同時に同じ方向へ進むとは限りません。始める位置と進む方向を確認し、分からないときは先生の合図を待ちます。
汗や飲み物で床が濡れた場合は、すぐに知らせます。
バレエシューズは屋外で履かず、スタジオの中だけで使います。靴底に砂や汚れが付くと、床を傷めたり、滑り方が変わったりするためです。
レッスン後は、シューズをバッグへ入れたままにせず、風通しのよい場所で乾かします。湿ったウェアやタイツも早めに洗い、次回に気持ちよく使える状態へ戻しましょう。
バレエ作品を観ると、レッスンの景色が変わる
自分で踊り始めると、舞台を見るときの視点も少しずつ変わります。
以前は衣装や物語だけを見ていた作品でも、足音の小ささ、腕の運び、複数のダンサーが同時に動く難しさへ目が向きます。簡単そうに見える立ち姿にも、レッスンで繰り返している基礎が含まれていることが分かります。
最初から作品の歴史や振付を詳しく覚える必要はありません。
気になる場面を一つ見つけ、音楽や登場人物を調べる。レッスンで聞いた言葉が舞台のどこに現れるかを探す。
それだけでも、鑑賞と実技がつながります。
『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』などの全幕作品だけでなく、短い映像や公開リハーサルから見る方法もあります。教室の先生が出演する舞台や、生徒向けに案内された公演へ足を運ぶと、普段の指導とは違う表現に出会えることもあります。
踊る日と観る日を行き来できることも、バレエを長く楽しむ方法です。
バレエの楽しみが深まる5段階
バレエの楽しさは、高く跳べるようになることや、トウシューズを履くことだけではありません。
最初は音楽に合わせて動くことが新鮮で、少しずつ姿勢や足運びが安定すると、表現へ意識を向けられるようになります。その先には、作品を踊ること、舞台へ立つこと、人へ伝えることもあります。
ここで紹介する5段階は、優劣を示すものではありません。
基礎レッスンを長く楽しむ人もいれば、発表会を目標にする人、鑑賞を組み合わせる人もいます。生活や身体の状態に合わせて、同じ段階へ戻ったり、複数の楽しみ方を並行したりできます。
第1段階 基本の姿勢と音楽に触れる
最初は、立ち方、足の位置、腕の形、レッスンで使われる言葉へ慣れます。
先生の動きを見ながら、バーにつかまり、音楽に合わせて身体を動かします。順番を間違えず踊ることより、周囲とぶつからず、無理のない姿勢で終えることを大切にします。
一曲の終わりまで動けた。
前回より先生の説明が分かった。
初めて聞いた動きの名前を一つ覚えた。
そんな小さな出来事が、この段階の喜びになります。
第2段階 基礎の動きを少しずつ安定させる
レッスンへ慣れると、プリエやタンデュなど、繰り返し出てくる動きが分かるようになります。
足の順番を考える時間が減り、姿勢や腕へも意識を向けられます。先生から受けた注意を自宅で思い出し、次のレッスンで試す流れも生まれます。
同じ動きでも、毎回まったく同じにはできません。
それでも、ぐらつきが少し減り、音楽の終わりに間に合う回数が増える。偶然ではなく、意識して再現できることが増えていきます。
第3段階 音楽と動きに自分の表現を加える
基礎へ少し余裕ができると、形を追うだけではなく、どのように動くかを考えられるようになります。
腕をただ決められた位置へ運ぶのではなく、音楽に合わせて広げる。足を出す方向だけでなく、その先へ視線を送る。動きの始まりと終わりを曖昧にせず、一つの流れとしてつなげます。
同じ振付でも、音楽の感じ方や視線によって印象は変わります。
舞台の物語や役柄を知らない短い組み合わせでも、自分なりの明るさ、落ち着き、軽さを込められます。身体の形だけではない、踊る楽しさが大きくなる段階です。
第4段階 作品や発表会へ挑戦する
日々のレッスンを続けた先に、発表会やスタジオパフォーマンスへ参加する道があります。
作品では、自分一人が動きを覚えるだけでは足りません。周囲の人との間隔、同じ方向へ動く時刻、舞台へ出入りする順番まで合わせます。
通常のレッスンとは別に、数か月のリハーサルが必要になることもあります。
振付を覚え、音楽を聞き、衣装を着て、照明のある場所へ立つ。緊張や費用の負担はありますが、一つの作品を仲間と仕上げる過程には、普段のレッスンとは違う達成感があります。
舞台へ出ない場合も、好きな作品の一部分や、ヴァリエーションの基礎へ触れるクラスがあります。自分の生活と目標に合わせて、作品との距離を選べます。
第5段階 踊る、観る、伝えるを自分の形で続ける
経験を重ねると、バレエとの関わり方は一つではなくなります。
レッスンを続けながら公演を観る。初心者の友人を体験クラスへ誘う。練習記録を残し、過去の自分との違いを確かめる。教室の発表会や運営を手伝うこともあります。
さらに専門的な経験と学びを積めば、指導、振付、舞台制作、衣装、撮影などへ関わる道もあります。
ただし、長く習っただけで、すぐ安全に人を指導できるわけではありません。身体の仕組み、教え方、けがへの配慮、音楽や作品への理解など、踊る技術とは別の学びが必要です。
収入につなげることだけを急がず、まずは自分が基礎を大切に続けられるかを確かめる。
その積み重ねの先で、踊る人、観る人、支える人として、自分に合う関わり方が見えてきます。
まっすぐ立つところから、踊る時間が始まる
バレエを始めたからといって、すぐに大きく脚を上げたり、軽やかに回ったりできるわけではありません。
最初は、足の位置を確認するだけで時間がかかります。鏡の中の自分が思っていた姿と違い、少し戸惑うこともあります。
それでも、音楽に合わせて膝を曲げ、足先を伸ばし、腕をゆっくり運ぶ。
一つひとつの動きを丁寧に行うと、普段とは違う身体の感覚が見つかります。
前回より少し安定して立てた。
先生の説明を聞いて、身体のどこを使うのか分かった。
音楽の最後と動きがきれいに合った。
その小さな手応えが、次のレッスンを楽しみにしてくれます。
始めるときは、レオタードや多くの用品をそろえるより、まず初心者向けの体験レッスンを探してみてください。動きやすい服装で参加できるか、シューズを借りられるかを確認し、先生の説明や教室の雰囲気を確かめます。
月2回の教室と、週1回の短い復習でも、バレエは続けられます。
早く上のクラスへ進むことより、無理なく通い、自分の身体と音楽に向き合う時間を積み重ねる。その静かな継続が、少しずつ踊る喜びへ変わっていきます。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、身体や表現と長く向き合えるものまで、さまざまな趣味の楽しみ方を紹介しています。
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