ブランデーの楽しみ方
はじめに
小さなグラスへ琥珀色のブランデーを少しだけ注ぎ、すぐには口をつけずに香りを確かめる。
ぶどう、干しあんず、オレンジの皮、はちみつ、バニラ、木、香辛料。グラスを置いて数分待つと、最初はアルコールの奥に隠れていた果実の香りが、少しずつ見え始めます。
ブランデーというと、重厚なボトルに入った高価なお酒や、食後に大きなグラスで飲むものという印象があるかもしれません。
「コニャックとブランデーは何が違うのか」
「VSOPやXOは、味の良さを表しているのか」
「アルコールが強く、初心者には飲みにくいのではないか」
初めは、そのような疑問も浮かびます。
けれども、ブランデーを趣味として楽しむために、高価なボトルや難しい知識は必要ありません。手頃な1本を選び、15〜20mlほどを計り、そのまま、少量加水、ソーダ割りの三つで比べるだけでも、果実と樽が生み出す香りを確かめられます。
ブランデーは、果実を発酵させた酒などを蒸留して造るお酒です。ぶどうを原料にしたものがよく知られていますが、りんご、洋梨、さくらんぼなどから造られるものもあります。
この記事では、市販のブランデーを自宅で少量ずつ味わいながら、原料、産地、熟成、ラベル、料理との組み合わせを学んでいく楽しみ方を紹介します。
※ブランデーは酒類です。日本では20歳未満の飲酒が法律で禁止されています。
※この記事では、購入したブランデーを味わう趣味を扱います。自宅で果実を発酵・蒸留して酒類を造る方法は扱いません。
ブランデーの基本情報
主な楽しみ方 市販のブランデーを少量ずつ味わい、果実、香り、熟成、産地、飲み方の違いを比べる
おすすめの頻度 月1回前後
1回の時間 約55分
短時間で楽しむ場合 約20分から
買い物や準備を含む総所要時間 約75分
主な場所 自宅の食卓や静かな部屋
最初に必要なもの ブランデー1本、小さなグラス、計量用品、水、軽い食事
始めやすさ 手頃な国産品や小瓶もあり、手持ちのグラスを使って始められる
天候の影響 ほとんどなく、そのまま、ソーダ割り、お湯割りなどを季節に合わせて楽しめる
難しく感じやすいところ コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、VSOP、XOなどの言葉を、一度に理解しようとしてしまうこと
楽しさの中心 果実から生まれた蒸留酒へ、樽と時間がどのような香りを加えるのかを確かめること
ブランデーの多くは、ぶどうから造ったワインを蒸留し、木製の樽で熟成させて造られます。蒸留直後の酒は透明ですが、樽の中で過ごす間に色と香りを受け取り、淡い金色から深い琥珀色へ変わっていきます。
果実を原料にしていても、完成したブランデーが果汁のように甘いとは限りません。香りには熟したぶどうや干し果実、はちみつを感じても、口に含むと辛口で、木の渋みや香辛料のような余韻を持つものがあります。
ぶどう以外の果実から造るブランデーもあります。りんごや洋梨、さくらんぼ、すももなど、原料となる果実が変わると、香りの方向も大きく変わります。
ブランデーにかかる費用
ブランデーを自宅で味わうために、特別な調理器具や安全装備を新しく用意する必要はありません。手持ちのグラスと小さな計量カップがあれば、費用の中心はブランデーそのものになります。
初めにかかる費用
小瓶や手頃な国産品から始める場合 約800〜2,500円
小容量の商品や日常向けの国産ブランデーを購入し、自宅にあるグラスを使う形です。初めての味が好みに合うか分からない場合にも試しやすくなります。
標準的な構成 約3,000〜7,000円
手頃な輸入ブランデーやコニャックを1本、小ぶりなグラス、15〜30mlを量れる計量用品、炭酸水などを用意する場合の目安です。
熟成品やグラスにもこだわる場合 約10,000〜30,000円以上
VSOPやXO、産地に特徴のある商品、香りを集めやすいグラスなどを選ぶと、費用は大きく上がります。ただし、高価な酒ほど初心者にも分かりやすいとは限りません。
最初は、香りやおすすめの飲み方が分かりやすく、気に入ったときにもう一度購入できる商品が向いています。
ボトル1本の費用
日常向けの国産ブランデーや手頃な輸入品には、700ml前後で1,000〜2,500円ほどから選べる商品があります。カクテル、ソーダ割り、料理や菓子への使用まで、幅広く使いやすい価格帯です。
コニャックのVSや一般的なフレンチブランデーでは、3,000〜5,000円前後が一つの目安です。VSOPでは5,000〜10,000円ほど、XOや長期熟成品では15,000円を超える商品も多くなります。
カルヴァドスやアルマニャック、各国のクラフトブランデーにも、3,000円前後の入門品から1万円を超える熟成品まであります。
販売価格は、輸入状況、為替、容量、販売店によって変わります。初回は限定品や古いボトルを追うより、正規の販売店で状態のよい定番品を選びます。
1回にかかる費用
700mlのボトルから20mlずつ使うと、約35回に分けられます。
ブランデー15〜20ml分 約40〜600円
水や炭酸水 約0〜150円
氷 家庭で作ればほぼ0円、市販品なら約100〜300円
軽食 普段の食事なら追加費用なし
チョコレートやドライフルーツ 用意する場合は約100〜500円
1回に飲む量を少なくすれば、一本のボトルを数か月かけて味わえます。高価な商品でも、毎回フルボトルを購入する趣味ではありません。
年間費用の目安
月1回、同じボトルを数か月かけて味わい、年に2〜3本ほど購入する場合は、年間8,000〜20,000円ほどが一つの目安です。
国産品、コニャック、りんごのブランデーなど、異なる種類を年に4〜6本比べる場合は、年間20,000〜50,000円ほどになることがあります。XOや長期熟成品、限定品を購入すると、1本だけで年間予算を超える場合もあります。
専門店での試飲、バー、講座、産地訪問、グラスの収集などは、普段のボトル代とは別の任意費用として考えます。
費用を抑える方法
最初からコニャック、アルマニャック、カルヴァドスを1本ずつ買う必要はありません。まず1本を、そのまま、少量加水、ソーダ割りで比べます。
違う種類を試したい場合は、小瓶、ミニチュアボトル、正規の飲み比べセット、専門店での少量提供を利用できます。フルボトルを買う前に好みを確かめれば、飲み切れない酒が増えにくくなります。
専用グラスも後回しにできます。小ぶりなワイングラスや、口が少しすぼまった手持ちのグラスから始めれば十分です。
ブランデーをおすすめする3つの理由
1.果実の香りが、蒸留と熟成によって変わっていく
ぶどうから造られたブランデーには、熟したぶどうだけでなく、りんご、桃、あんず、オレンジ、干しぶどうなどを思わせる香りが現れることがあります。
りんごのブランデーでは、生のりんご、焼きりんご、シナモン、はちみつなどを感じることがあります。洋梨やさくらんぼを使ったものでは、また違う果実の輪郭が見えてきます。
同じ果実でも、生で食べるとき、発酵させたとき、蒸留したとき、樽で熟成させたときでは香りが変わります。
「果物から、なぜ木や香辛料の香りが生まれるのだろう」
その疑問が、発酵、蒸留、熟成を学ぶ入口になります。
2.樽と時間の違いを、一杯の中で感じられる
ブランデーは、木製の樽で熟成することで色と香りを深めます。樽からは、バニラ、木、カラメル、ナッツ、香辛料などを思わせる香りが加わることがあります。
若いブランデーでは、明るい果実香や軽快な刺激を感じやすくなります。熟成が長くなると、干し果実、木、革、カカオなどを思わせる深い香りが重なることがあります。
ただし、長く熟成したものが必ず自分の好みに合うとは限りません。果実の新鮮さが残る若い酒を好む人もいれば、樽の丸みや長い余韻を好む人もいます。
熟成年数を順位として見るのではなく、時間が香りをどう変えたかを比べられるところが魅力です。
3.一杯から、ぶどう畑や果樹園の土地へ広がる
コニャックやアルマニャックという名前は、単なるブランド名ではありません。フランスの定められた地域で、原料や製造方法などの条件を守って造られたブランデーに使われる名称です。
りんごや洋梨から造られるカルヴァドスも、フランス北西部のノルマンディーと結びついた名称です。すべてのりんごブランデーをカルヴァドスと呼べるわけではありません。
ラベルの産地を一つ調べると、ぶどう品種、果樹園、気候、蒸留所、地域の料理へ関心が広がります。
自宅の小さなグラスから、遠くの畑や果樹園をたどれることも、ブランデーを学ぶ楽しさです。
ブランデー、コニャック、アルマニャックの違い
ブランデーは、果実を原料にした蒸留酒を広く表す言葉です。コニャックやアルマニャックは、その中に含まれる特定の地域のブランデーです。
すべてのコニャックはブランデーですが、すべてのブランデーがコニャックではありません。
コニャック
コニャックは、フランス西部の定められた地域で造られる、ぶどうのブランデーです。使用できるぶどう、蒸留方法、熟成、表示などに細かな条件があります。
一般に、ワインを銅製の蒸留器で2回蒸留し、オークの容器で熟成させます。果実、花、バニラ、木、香辛料など、若い酒から長期熟成品まで幅広い香りがあります。
アルマニャック
アルマニャックは、フランス南西部のガスコーニュ地方で造られる、ぶどうのブランデーです。
コニャックとは地域も製法も異なります。伝統的には連続式の蒸留器を使うことが多く、果実、香辛料、土、熟成香などを感じる個性的な商品があります。
コニャックと同じ熟成表記が使われることもありますが、細かな基準は地域ごとに異なります。VSOPやXOという文字だけを見て、異なる産地の商品を単純に同じ年数だと決めないようにします。
カルヴァドス
カルヴァドスは、フランスのノルマンディー地方で造られる、りんごや洋梨を原料としたブランデーです。
果汁を発酵させてシードルなどを造り、それを蒸留し、木製の樽で熟成させます。生のりんご、焼きりんご、洋梨、はちみつ、香辛料、木などを思わせる香りを楽しめます。
ぶどうのブランデーとの違いが分かりやすいため、2本目や3本目の比較にも向いています。
その他の果実ブランデー
ぶどうの搾りかすから造られるグラッパやマール、さくらんぼを使うキルシュ、すももや洋梨を使う蒸留酒など、世界各地に果実由来の酒があります。
透明で樽熟成をほとんど行わないものもあり、すべてのブランデーが琥珀色をしているわけではありません。
VS、VSOP、XOの見方
コニャックのラベルには、VS、VSOP、XOなどの表示が見られます。これらは、ブレンドに使われた最も若い原酒の熟成年数を示す区分です。
VS
VSは「Very Special」の略で、最も若い原酒が少なくとも2年間熟成されたコニャックです。
若々しい果実香や軽快さを持つ商品も多く、ソーダ割りやカクテルにも使いやすい区分です。
VSOP
VSOPは「Very Superior Old Pale」の略で、最も若い原酒が少なくとも4年間熟成されています。
果実の香りと樽の香りの両方を感じやすく、そのまま、加水、ソーダ割りまで幅広く試しやすい区分です。
XO
XOは「Extra Old」の略で、最も若い原酒が少なくとも10年間熟成されたコニャックです。
干し果実、木、香辛料、カカオ、革などを思わせる複雑な香りを持つ商品があります。価格も高くなりやすいため、最初からフルボトルを買わず、少量提供で試す方法もあります。
これらの区分は、味の優劣を決めるものではありません。若いVSの明るい香りを好む人もいれば、XOの深い余韻を好む人もいます。
また、コニャック以外の商品に似た文字が使われていても、必ずしも同じ規則とは限りません。産地や商品の公式説明を確認します。
最初の1本は、何を見て選ぶか
売り場に並ぶボトルを前にしたら、すべての情報を読む必要はありません。初回は、次の5点を確認すると選びやすくなります。
1.原料となる果実
一般的なブランデーやコニャックは、ぶどうが原料です。りんごの香りを楽しみたいなら、アップルブランデーやカルヴァドスを探します。
果実の違いを初めから比べる必要はありません。最初はぶどう、次はりんごというように、1本ずつ進めます。
2.産地と名称
「ブランデー」は広い呼び名ですが、「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」は産地と製法に結びついた名称です。
初めてなら、商品説明を確認しやすく、輸入者や販売者が明確なものを選びます。古いボトルや個人間取引では、保管状態を判断しにくい場合があります。
3.アルコール分
ブランデーには、アルコール分37〜40%前後の商品が多くあります。コニャックは40%以上で販売されるものが一般的です。
果実の甘い香りがしても、度数の高い蒸留酒であることに変わりはありません。購入時と飲む前に、必ず表示を確認します。
4.熟成区分
初めてのコニャックなら、VSまたはVSOPが選びやすいでしょう。
ソーダ割りやカクテルを中心にするならVS、そのまま香りを見る時間も作りたいならVSOPが一つの目安です。ただし、商品ごとの個性があるため、区分だけで味を決めつけません。
5.価格と再購入しやすさ
初回は、高価なXOや限定品より、もう一度購入できる価格の商品が向いています。
同じブランデーを別の日に味わい、前回の印象を確かめることで、自分の基準ができます。珍しさより、繰り返し比べられることを大切にします。
初めてブランデーを味わう一日の流れ
1.予定と体調を確認する
飲む前に、その後の運転、入浴、運動、外出の予定がないことを確認します。空腹を避け、水と軽い食事を用意します。
体調が悪い日、服薬中、医師から飲酒を控えるよう言われている場合は、別の日にします。
2.15〜20mlだけ量る
ボトルから目分量で注がず、小型の計量カップやジガーを使います。
アルコール分40%のブランデーを15ml飲む場合、純アルコール量は約4.8gです。20mlでは約6.4gになります。
水や炭酸水を加えて全体の量が増えても、最初に入れた純アルコール量は変わりません。
3.5mlをグラスへ注ぐ
最初は5mlほどを、小ぶりなグラスへ注ぎます。大きなグラスへ少量だけ注ぐより、口が少しすぼまった小さなグラスのほうが香りを確かめやすくなります。
色の濃さ、透明感、グラスの内側を液体が流れる様子を見ます。色が濃いから熟成年数が長いと、見た目だけで決めないようにします。
4.少し離れて香りを見る
グラスへ鼻を深く入れず、少し離れた位置から短く香りを確かめます。アルコールの刺激が強い場合は、無理に吸い込みません。
ぶどう。
あんず。
オレンジ。
干しぶどう。
はちみつ。
バニラ。
木。
香辛料。
最初は、一つか二つの言葉が見つかれば十分です。専門的な正解を当てるのではなく、自分が何を思い浮かべたかを残します。
5.ごく少量をそのまま味わう
一気に飲み込まず、唇や舌へ少量を触れさせるようにします。
甘さ、酸味、苦味、渋み、アルコールの刺激、飲み終えたあとの香りを確かめます。刺激が強ければ、そのまま飲み続ける必要はありません。
6.水を数滴加える
グラスへ水を数滴加え、もう一度香りを見ます。アルコールの刺激が和らぎ、果実や木の香りを感じやすくなる場合があります。
変化が小さければ、さらに数滴加えます。一度に多く加えるのではなく、段階を分けることで違いを追えます。
7.別の10mlをソーダ割りにする
氷を入れたグラスへブランデー10mlを注ぎ、冷たい炭酸水を50〜80mlほど加えます。
家庭で少量を比べるための小さな一杯です。炭酸を加えたあとは、底から一度だけ静かに混ぜます。
果実香が軽やかに広がり、そのままでは強く感じた酒が食事へ合わせやすくなることがあります。
8.3行だけ記録する
そのまま 干しぶどうと木の香り。後味に少し渋みがある
加水後 アルコールの刺激が和らぎ、オレンジのような香りが見えた
ソーダ割り 果実の香りが軽くなり、食事と合わせやすかった
商品名、種類、度数、価格、開栓日も写真と一緒に残しておくと、次の1本を選びやすくなります。
飲み方で変わるブランデーの表情
ストレート
水や氷を加えず、そのまま味わう方法です。果実、樽、熟成から生まれる香りを確認しやすい一方、アルコールの刺激も強く感じます。
初めは5mlほどから始め、数回に分けて味わいます。ストレートで飲み切ることを目標にしません。
少量加水
水を数滴から少量加える方法です。刺激を和らげ、隠れていた果実や樽の香りを探しやすくします。
加水前と加水後を同じグラスで比べるだけでも、香りの開き方を楽しめます。
ロック
氷を入れたグラスへ、計量したブランデーを注ぎます。冷たさと氷が溶ける変化を、時間をかけて追えます。
注いだ直後には香りが引き締まり、少し時間がたつと果実や甘い香りが戻ってくる場合があります。
ソーダ割り
ブランデーと無糖の炭酸水を合わせます。甘さを加えず、果実の香りを軽やかに楽しめる飲み方です。
若いブランデーやVSのコニャックにも向いています。好みで柑橘の皮を小さく添えると、香りの違いを確かめられます。
お湯割り
耐熱グラスへ少量のブランデーを入れ、少し冷ましたお湯で割ります。果実、はちみつ、香辛料などの香りが広がりやすく、寒い季節に向いています。
熱湯を使うと香りとアルコールの刺激が強く出ることがあります。やけどに注意し、火気から離れて作ります。
グラスは、大きければよいわけではない
ブランデーグラスというと、丸く大きなボウルを手のひらで包む姿がよく知られています。けれども、手で強く温めれば香りが豊かになるとは限りません。
温度が上がりすぎると、アルコールの刺激が先に立ち、果実の香りを感じにくくなることがあります。
初めは、小ぶりなワイングラスや、口が少しすぼまったテイスティンググラスが使いやすいでしょう。脚のない小さなグラスでも、安定して置けて、香りが逃げすぎない形なら始められます。
グラスを変えて比べたい場合は、同じブランデーを同じ量ずつ注ぎます。大きな丸いグラス、小さなすぼまったグラス、普段のタンブラーで、どの香りが前へ出るかを確かめます。
高価なグラスを買う前に、手持ちの器で違いを見ておくと、自分に必要な形を選びやすくなります。
香りを比べる6つの軸
生の果実
ぶどう、りんご、洋梨、桃、あんず、柑橘などを思わせる、明るい香りです。若いブランデーや果実の個性が残る商品で見つけやすい場合があります。
乾燥した果実
干しぶどう、プルーン、いちじく、オレンジピールなどを思わせる香りです。熟成したコニャックやアルマニャックで感じることがあります。
花とはちみつ
白い花、乾いた花、はちみつなどを連想する香りです。香りが華やかな商品では、グラスへ注いで少し待つと見つけやすくなる場合があります。
樽と甘い香り
バニラ、カラメル、木、ココナッツ、ナッツなどを思わせる香りです。木製の樽で過ごした時間と関係します。
香辛料と焙煎
シナモン、クローブ、こしょう、コーヒー、カカオなどを思わせる香りです。長く熟成した商品や樽の個性が強い商品で現れることがあります。
余韻
飲み込んだあと、どの香りがどのくらい残るかを確かめます。
果実が軽く消えるもの、木や香辛料が長く残るもの、時間がたってからオレンジやナッツの香りが戻るものがあります。余韻が長ければ優れているということではなく、自分がどの終わり方を心地よく感じるかを見ます。
料理や菓子との組み合わせを楽しむ
チョコレート
熟成したブランデーは、ビターチョコレートと合わせやすいことがあります。カカオの苦味によって、干し果実、バニラ、樽の甘い香りが見えやすくなります。
最初は一片だけ用意し、食べる前と後でブランデーの香りがどう変わるかを比べます。
ドライフルーツ
レーズン、あんず、いちじく、プルーンなどは、ブランデーの果実香とつながりやすい食べ物です。
甘い果物を食べたあとには、ブランデーが辛く感じられることもあります。相性を決めるより、どの香りが強くなったかを記録します。
ナッツ
アーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツなどの香ばしさは、樽熟成したブランデーと合わせやすくなります。
塩味の少ないものを選ぶと、木やバニラ、焙煎を思わせる香りを追いやすくなります。
チーズ
果実香のある若いブランデーには、穏やかな白かびチーズやクリーム系のチーズを試せます。熟成香の強いものには、塩味や香りのあるチーズが釣り合う場合があります。
チーズを何種類も並べず、最初は一つだけと合わせます。
りんごや焼き菓子
カルヴァドスなど、りんごを原料としたブランデーには、焼きりんご、アップルパイ、バターを使った菓子がつながります。
ぶどうのブランデーでも、レーズン、オレンジ、ナッツを使った焼き菓子と合わせると、果実と樽の香りを見つけやすくなります。
最初に必要なもの
ブランデー1本
初回は、小瓶、手頃な国産品、VSまたはVSOPのコニャックなどから、予算に合う1本を選びます。
そのままとソーダ割りの両方を試したいなら、果実香と樽香の説明が分かりやすい商品が向いています。
小さなグラス
小ぶりなワイングラス、テイスティンググラス、安定した小さなタンブラーを使えます。
洗剤、収納棚、布巾などのにおいが残っていない、清潔なグラスを選びます。
計量用品
15ml、20ml、30mlを量れる小型計量カップやジガーを使います。
味を再現するためだけでなく、飲んだ量を把握するためにも必要です。
水と炭酸水
香りを見るための常温の水、ソーダ割り用の冷たい炭酸水、口直しとして飲む水を用意します。
一人で一杯だけ作る場合は、小容量の炭酸水が便利です。
食事または軽食
空腹のまま始めず、普段の食事、ナッツ、チーズ、チョコレートなどを少量用意します。
続けるなら用意したいもの
同じ形の小さなグラスが2脚あると、加水前後や異なる2種類を同じ条件で比べられます。
ロックを楽しむなら、大きめの氷を作れる製氷器も役立ちます。市販の氷でも代用できるため、最初から購入する必要はありません。
開栓日、果実、産地、熟成区分、香り、好みの飲み方を残す記録帳も便利です。ボトルの写真と3行の感想があれば、銘柄が増えても振り返りやすくなります。
最初は買わなくてよいもの
高価なブランデーグラスのセット、大型の酒棚、専用冷蔵庫、何種類もの製氷器は、初回には必要ありません。
XOや長期熟成品、限定ボトルを何本もまとめて購入することも後回しにできます。まずは1本を、そのまま、加水、ソーダ割りで味わいます。
果実、酵母、発酵容器、家庭用蒸留器なども、この趣味の道具には含めません。市販のブランデーを味わうことと、自宅で酒類を製造することは別の活動です。
保存と取り扱い
ブランデーは、直射日光、高温、強いにおいのある場所を避け、瓶を立てて保管します。ワインのように横へ寝かせる必要はありません。
未開栓で保存状態がよければ比較的安定していますが、瓶の中で樽熟成が進み、置くほど必ずおいしくなるわけではありません。
開栓後は、空気に触れることで香りが少しずつ変化します。栓をしっかり閉め、開栓日を残し、状態のよいうちに楽しみます。
残りが少なくなると、瓶の中の空気の割合が増えます。保存のために急いで飲む必要はありませんが、何年も放置せず、ときどき香りや栓の状態を確認します。
子どもやペットが触れない、安定した場所へ保管します。重いボトルを高い棚の端へ並べないことも大切です。
安全に楽しむために
20歳未満は飲まない
日本では20歳未満の飲酒が法律で禁止されています。成年年齢が18歳へ変わったあとも、飲酒できる年齢は20歳以上のままです。
料理や菓子へ使うブランデーも酒類です。清涼飲料や調味料と間違えない場所へ保管します。
飲む量を先に決める
ブランデーには、アルコール分40%前後の商品が多くあります。果実の甘い香りや、ソーダで割った飲みやすさによって、アルコール量が少なくなるわけではありません。
ボトルから目分量で注がず、その日に使う15〜20mlを先に計ります。飲み終える前に次の一杯を作らないことも大切です。
純アルコール量を把握する
純アルコール量は、次の式でおおよそ計算できます。
飲んだ量(ml)×アルコール分÷100×0.8
アルコール分40%のブランデーを15ml飲む場合は約4.8g、20mlでは約6.4gです。水や炭酸水で割っても、純アルコール量は変わりません。
この数字は、誰にとっても安全な飲酒量を示すものではありません。体質、年齢、健康状態、服薬などによって影響は異なります。
一気に飲まない
小さなグラスへ入れても、一気に飲む必要はありません。
香り、加水、温度の変化を見ながら、食事と水を取り、ゆっくり味わいます。飲む速さや量を競ったり、人へ飲酒を強要したりしません。
運転する日は飲まない
飲酒後は、自動車、オートバイ、自転車などを運転しません。少量だから、時間を置いたからと自己判断しないようにします。
蒸留所、バー、試飲会へ出かける場合は、公共交通機関やタクシーなど、帰りの方法を先に決めます。
飲酒を避ける状態を知る
妊娠中や授乳期、治療中、服薬中、体調が悪いときは飲酒を避けます。薬との関係が分からない場合は、医師や薬剤師へ確認します。
少量でも顔が強く赤くなる、動悸、吐き気、強い眠気などが出た場合は、その日の飲酒を中止します。
飲酒後の入浴や運動を避ける
飲酒後すぐの熱い風呂、サウナ、激しい運動は避けます。判断力や身体の動きが普段と変わり、転倒や体調不良につながることがあります。
味わい終えたら水を飲み、片付けを済ませて静かに過ごします。
火気から離す
アルコール度数の高いブランデーは、コンロ、ろうそく、たばこ、暖房器具などの火気から離します。
ブランデーへ火をつける演出や、家庭でのフランベは、この趣味には必要ありません。料理に使う場合も、レシピと火気の扱いを確認します。
自宅で酒類を製造・蒸留しない
日本では、アルコール分1度以上の飲料を製造する場合、原則として酒類製造免許が必要です。自分で飲むためであっても、果実を自由に発酵・蒸留できるわけではありません。
蒸留には、火気、可燃性の蒸気、設備管理などの危険もあります。製造工程を学びたい場合は、公的な資料や、適法に運営されている蒸留所の見学を利用します。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
第1段階 1本を三つの飲み方で味わう
最初は、手頃な小瓶や定番のブランデーを1本選びます。
そのまま、少量加水、ソーダ割りで比べ、香りと印象を3行だけ記録します。銘柄を増やすより、同じブランデーがどう変わるかを知る段階です。
第2段階 気に入った味を再現する
前回と同じ量、グラス、飲み方で味わいます。
ソーダ割りなら、ブランデー10ml、炭酸水60mlというように量を残します。前回に近い味になれば、自分に合う一杯の基準ができます。
第3段階 果実と熟成を一つずつ比べる
若いぶどうのブランデーの次に熟成したもの、ぶどうの次にりんごというように、条件を一つだけ変えます。
果実、花、干し果実、樽、香辛料、余韻の中から、自分が重視する項目を三つほど選びます。
「VSOPが好き」だけではなく、「干し果実の香りがあり、木の渋みは穏やかで、加水すると香りが開くものが好き」と、理由を持って選べるようになります。
第4段階 産地、蒸留、樽、土地をつなげる
コニャックとアルマニャック、カルヴァドス、各国のブランデーなどへ比較を広げます。
ぶどうや果実の品種、蒸留器、蒸留回数、樽、熟成する気候が香りにどうつながるかを調べると、一杯の背景が見えてきます。
同じ地域の異なる造り手や、同じ造り手のVSとVSOPを比べる方法もあります。
第5段階 少量の発見を人と共有する
20歳以上の家族や友人と、2種類を5〜10mlずつ比べる小さな会を開くこともできます。水、食事、計量用品を用意し、飲まない人の選択も尊重します。
知識を競うのではなく、「水を数滴加えると果実の香りが見えた」「チョコレートのあとにオレンジの香りが強くなった」と、相手の発見につながる言葉を添えます。
さらに興味が深まれば、ワイナリーや蒸留所を訪ね、果実が酒へ変わる工程を実際の土地で学ぶ楽しみへ広がります。
あわせて楽しみたい関連する趣味
ワイン
ワインは、ぶどうを発酵させて造る醸造酒です。ぶどうの品種、産地、収穫年、香りを学ぶと、それを蒸留して造られるブランデーの入口を理解しやすくなります。
同じぶどうから、発酵だけで仕上げる酒と、蒸留・熟成を重ねる酒がどのように分かれていくのかを比べられます。
酒蔵・ワイナリー見学
酒蔵やワイナリーの見学では、果実の選別、発酵、貯蔵など、ブランデーになる前の酒造りへ触れられます。蒸留設備のある施設では、透明な原酒が生まれ、樽で熟成していく流れまで見られることがあります。
試飲をする場合は、公共交通機関や送迎を利用し、予約条件と帰りの交通手段を先に確認します。
チョコレート作り
チョコレート作りでは、カカオの濃さ、甘さ、ナッツ、ドライフルーツなどを自分で組み合わせられます。完成した一片をブランデーと少量合わせると、干し果実、バニラ、木、カカオの香りがどのように変わるかを確かめられます。
ブランデーを生地やガナッシュへ加える場合は、20歳未満の人やアルコールを避ける人が食べないよう、材料を明確に分けます。
果実の一滴から、樽の中の時間をたどる
ブランデーを楽しむために、大きな丸いグラスや、高価なXOを最初からそろえる必要はありません。
小さなグラスへ5mlほど注ぎ、少し離れた場所から香りを確かめる。水を数滴加え、ぶどう、干しあんず、オレンジ、はちみつ、木、香辛料の中から、気づいた言葉を一つだけ残す。
その短い時間を重ねるうちに、若い酒と熟成した酒、ぶどうとりんご、コニャックとほかのブランデーの違いが、少しずつ自分の言葉になっていきます。
次の休日には、再購入しやすい小瓶や定番品を1本選び、計量できる器と水を食卓へ置いてみてください。琥珀色の向こうには、果実が実る畑、発酵する酒、蒸留器から立つ蒸気、静かな樽の中で過ぎた時間が重なっています。
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