見出し画像

本気で遊ぶ父は、信用されるらしい 第6話

本気じゃないって、バレてた。


3兄妹と遊ぶようになって、
私は少しずつ
その家に馴染んできていた。

最初は居場所が分からなかったリビングも、
気づけば普通に座れる場所になっていた。

子どもたちも、
最初の頃のような距離はなくなっていた。

家に入ると、

「あ、来た」

そんな感じで
自然に存在を受け入れられている。

そして決まって言われる。

「遊ぼ」

その言葉に、
私はだんだん慣れてきていた。

鬼ごっこ。
かくれんぼ。
ブロック遊び。

何でもいい。

私は、
一緒に遊ぶ大人になっていた。

でも今振り返ると、
この頃の私は
まだ少し勘違いしていたと思う。

子どもたちと遊びながら、
どこかでこう思っていた。

「相手してあげてる」

子どもたちの遊びに、
付き合ってあげている。

そんな感覚だった。

もちろん、
本気で嫌だったわけじゃない。

むしろ楽しい。

でもどこかで、
大人の余裕みたいなものを
持っていた気がする。

鬼ごっこをしても、
本気で走るわけじゃない。

捕まえようと思えば、
すぐ捕まえられる。

でも、
それじゃつまらないだろうから
少し手加減する。

そんなふうに
自分ではうまく
やっているつもりだった。

でも、
子どもって不思議だ。

そういう空気を、
すぐに見抜く。

ある日、
いつものように
鬼ごっこをしていた。

私は軽く走りながら、
子どもたちを追いかける。

すると突然、
一番上の女の子が
振り返って言った。

「ちゃんと走ってよ」

その言い方は、
怒っているわけでもなく、
ただ少し不満そうだった。

私は一瞬、
意味が分からなかった。

「え?」

そう言うと、
彼女は当たり前みたいに言った。

「だって今、
 本気じゃないじゃん」

図星だった。

私は思わず、
少し笑ってしまった。

子どもは、
ちゃんと見ている。

大人がどれくらい
本気なのか。

本当に一緒に遊んでいるのか。

それとも、
遊んであげているのか。

その違いを、
意外なほど
敏感に感じ取る。

そしてその日、
私は初めて
少しだけ本気で走った。

すると、
子どもたちの目の色が
少し変わった。

笑い方も、
声も、
さっきまでとは
少し違っていた。

その瞬間、
私はなんとなく思った。

子どもと遊ぶって、  
思っていたより真剣なことなのかもしれない。

いや、違う。

遊びだからこそ、  
本気じゃないと伝わるんだと思った。



次回予告(第7話)

「手を抜いた瞬間、見抜かれた」

子どもは、
大人の本気を見ている。

そして、
手を抜いた瞬間も
ちゃんと見抜く。

私はそのことを、
次の遊びで
はっきり思い知ることになる。

いいなと思ったら応援しよう!

fujisoba あなたの1つのチップが、次の1話を書く力になります。いつも読んでくれてありがとう✨