本気で遊ぶ父は、信用されるらしい 第11話 子ども目線にしゃがむと、世界が変わる
あの日、
ふとしたきっかけで、しゃがんだ。
理由はたいしたことじゃない。
一番下の子が、
地面に何かを見つけたらしく、
「これ見て!」
と呼ばれたからだった。
私はいつも通り、
立ったまま覗き込もうとした。
でも、
「ちゃんと見てよー!」と笑われて、
仕方なく、その場にしゃがんだ。
その瞬間、
少しだけ違和感があった。
さっきまで見えていた景色と、
なにかが違う。
目線が低い。
それだけのことなのに、
世界の広さが、
まるで変わった気がした。
子どもたちの背中が、
思っていたよりずっと近くて、
遊んでいる地面が、
やけに広く感じる。
小さな石や、
落ちている葉っぱ、
今まで気にもしていなかったものが、
やけに目に入る。
「これね、宝物なんだよ」
そう言って見せてくれたのは、
ただの小さな石だった。
でも、
しゃがんで見たその石は、
なぜか少しだけ、
特別なものに見えた。
立ったままだったら、
きっと分からなかった。
ただの石として、
通り過ぎていたと思う。
子どもたちは、
この高さで世界を見ている。
この距離感で、
この広さで、
毎日を過ごしている。
そう思ったとき、
少しだけ恥ずかしくなった。
自分は、
ちゃんと向き合っているつもりで、
どこか上から見ていたのかもしれない。
遊びも、会話も、時間も。
「ねぇ、これも見て」
別の子がまた呼ぶ。
私はそのまま、しゃがんだまま近づいた。
すると、
さっきよりも自然に会話が続いた。
距離が近い。
声の高さも、
目線も、
同じ場所にある。
ただそれだけで、
こんなにも関係は変わるんだと思った。
子ども目線にしゃがむと、
世界が変わるんじゃない。
自分の見方が、変わる。
そしてきっと、
相手からの見え方も、変わる。
あの日から、
少し意識するようになった。
話すときは、
しゃがむ。
聞くときも、
目線を合わせる。
それだけで、
前よりも少しだけ、
距離が近くなった気がする。
帰り際、
「今日はいっぱい見てくれたね」
そう言われた。
その一言で、
全部が報われた気がした。
本気で遊ぶって、
走ることでも、
大声を出すことでもなくて、
ちゃんと同じ目線に立つことなのかもしれない。
そんなことを、
また一つ教えてもらった。
次回予告(第12話)
高い声で笑う理由が分かった
子どもたちの笑い声は、
どうしてあんなに響くのか。
ただ楽しいだけじゃない、
その奥にあるものに気づいた日。
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