「営業所技術者」と「主任技術者」は別物。建設業許可を守るために知るべき2つの技術者
「現場に出る前に知っておきたかった話」〜誰も教えてくれなかった元請の実務知識〜Vol.20

建設業許可を持つ会社には、営業所に「専任技術者(営業所技術者)」を置く義務があります。現場の「主任技術者」とは別の制度で、どちらかが欠けても許可を維持できなくなります。
「なんとなく同じものだと思っていた」「どちらがどの役割かわからない」——現場担当者がこの2つを混同したまま働いているケースは少なくありません。今回は営業所技術者・令3条の使用人・主任技術者・監理技術者の違いを整理します。
◆ 混乱しやすい営業所技術者・主任技術者・監理技術者を整理する
建設業には「技術者」と名のつく役職が複数あり、それぞれ配置場所・役割・資格要件が異なります。まず全体像を把握しましょう。

📋 注記 営業所技術者(専任技術者)は、令和5年(2023年)の建設業法改正により、実務上の呼称として「営業所技術者」が推奨されるようになりました。法令上の正式名称は引き続き「専任技術者」ですが、本書では最新の実務慣行に合わせ「営業所技術者」と表記します。
📌 ちなみに この3つはVol.1(現場3大役職)やVol.12(主任・監理技術者)で学んだ内容と連動しています。「誰がどこに・何のために配置されているか」という視点で整理すると覚えやすくなります。営業所技術者は「許可を守るための技術者」、主任技術者は「工事を管理するための技術者」と割り切るのが実務上の感覚に近いです。
◆ 営業所技術者(専任技術者)の3つの要件
営業所技術者として認められるためには、以下の3つをすべて満たす必要があります。

・① 営業所に常勤していること(健康保険被保険者証などで確認されます) ・② その営業所に専任していること(他の営業所の技術者や、他社の技術者と兼務できません) ・③ 業種ごとに定められた一定の資格、または実務経験を有していること
▼ 営業所技術者が欠けるとどうなるか
退職や転勤などでポストが空いた場合、速やかに後任を配置しなければ建設業許可を維持できなくなります。実際に営業所技術者の退職に伴い補充が間に合わず、一部業種を廃業した企業の事例があります。
⚠️ 注意 営業所技術者の不在は「知らなかった」では済まされません。自社の営業所に現在誰が営業所技術者として登録されているかを、定期的に確認する仕組みを整えておきましょう。担当者が退職・異動する際には、許可への影響を必ず確認してください。
📌 ちなみに 「後任候補の育成」が企業としての重要な管理義務です。営業所技術者には、常に後任候補を準備しておく必要があります。資格取得の計画(誰がいつ何の試験を受けるか)を人事計画と連動させておくことが、許可の維持リスクを下げる最も現実的な方法です。
◆ 令3条の使用人(建設業法施行令第3条)
「令3条の使用人」とは、会社の代表者から見積り・入札参加・請負契約の締結と履行について、一定の権限を委任された人のことです。具体的には支店長や営業所長がこれにあたります(個人事業主の場合は登記された支配人)。
▼ 令3条の使用人に必要な3要件
・① 一つの営業所に常駐していること
・② 建設工事の請負契約の締結・履行についての権限を代表者から委任されていること
・③ 誠実性を有し、欠格事由に該当しないこと(※令3条の使用人が欠格事由に該当すると、会社全体の許可取り消しに直結するため、選任には注意が必要です)
「建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表」を都道府県に提出して登録します。
📌 ちなみに 営業所技術者と令3条の使用人は同一人物が兼務することも可能です。ただしそれぞれ別の目的で設定された制度です。技術面の責任者が「営業所技術者」、契約権限の受任者が「令3条の使用人」です。小規模な会社では同じ人が両方を兼ねているケースが多いですが、それぞれが何の役割を担っているかを明確に把握しておく必要があります。
◆ 「原則として現場に出られない」が意味すること
営業所技術者は原則として工事現場に出ることができません。営業所に常駐して技術面から営業所の業務を支える役割だからです。
では、営業所技術者が現場を訪問することは一切できないのでしょうか。
答えはノーです。短時間の現場視察や技術的確認のための訪問は認められています。ただし「常駐」の実態が失われるような長期間・頻繁な現場への出向は問題になります。
📌 ちなみに 例外的に、一定の要件を満たす場合は営業所技術者が主任技術者を兼務できるケースがあります(令和5年改正で要件が緩和されました)。具体的には①工事現場と営業所が近接していること②所属する建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係があること③営業所と現場の間で常に連絡がとれる体制があること——これらを満たす場合に限られます。ただし監理技術者との兼務は引き続き認められていません。
◆ 建設業許可は「取得」より「維持」が難しい
建設業許可は、取得することより「維持し続けること」の方が管理を要します。
許可取得時に条件を満たしていても、その後の人事異動・退職・資格の失効などによって条件を満たさなくなるケースが実際に起きています。特に営業所技術者の不在は「気づいた時には手遅れ」になりやすい典型的なリスクです。
📌 ちなみに 自社の許可状況を定期的に点検する習慣をつけましょう。確認すべきポイントは「営業所技術者は誰か(退職・異動の予定はないか)」「令3条の使用人の登録情報は最新か」「主任技術者・監理技術者の配置は適切か」の3点です。年に1回、決算期などに合わせて確認する仕組みを作っておくと見落としを防げます。
◆ まとめ
・営業所技術者(専任技術者):営業所に常駐。建設業許可の維持に必須。原則として現場に出ない。 ・主任技術者・監理技術者:工事現場に配置。施工の技術的責任者(Vol.1・Vol.12参照)。 ・令3条の使用人:契約権限の受任者(支店長・営業所長など)。営業所技術者との兼務可。
・営業所技術者が欠けると建設業許可を維持できなくなる。後任候補の育成が企業の義務。
・許可は「取得」より「維持」が難しい。定期的な点検と人事計画との連動が必要
営業所技術者・令3条の使用人・主任技術者の3つの役割を正確に理解し、誰が何の役割を担っているかを常に把握しておくことが、元請企業としての最低限の管理義務です。
次回(Vol.21)は……
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