経営と運営の境界線:なぜ「人に任せる」のか
会社経営をすることとは、人に動いてもらうことなんだと思う。
私自身がプレイヤーとして動くことも非常に立派で大切なことだが、次に進むため、そして組織を盤石にするためには、私以外の誰かが、私以上に現場を動かせる状態を作ることが不可欠だと考えている。
私がいなければ回らない組織は「経営」ではなく、ただの「事業所運営」に過ぎない。
これでは管理者の立場と何ら変わらないのだ。
ただ、現実には「私以上に優秀な人」は、私の会社には居続けない。
彼らはもっと評価される場所へ行くか、あるいは自分で自分の城を築くだろう。
だからこそ、私はその人たちとは違った立場で「経営者として優秀」である必要がある。
理想との乖離、そのもどかしさと役割
人に任せるというのは、本当に難しい。
そして正直なところ、本当はしたくない。
それは、自分にとっての「理想の支援」ができなくなる瞬間でもあるからだ。
人に考えてもらい、行動してもらうことは、自分が思う方向に必ずしも向かってはくれない。
療育に正解はない。
だから、他の人が考え行動した内容が100%間違っていないのであれば、それもまた正解になり得る。
だが、自分ではない誰かが行うことに対して、どうしても理想との乖離を感じるもどかしさはある。
「自分ならこうするのに」「これができたらもっと変わるのに」
そう思いながら進言はするが、実際に実行するのは他者だ。
だからこそ、会社に核となる職員を作り、意思疎通をしっかりと図り、間違えたときには正し、失敗したときにはフォローする。
それが私の役割だ。
離職率50%からの逆転と、「嬉しい悩み」
設立当初、私は自分の能力を過信し、すべてを抱え込んでいた。
3年目のあの頃、私は慢心していた。
いろいろと苦悩した結果、設立5年目、虐待の対応に追われ管理者が去っていったとき、離職率は50%に達した。
組織が崩壊し、暗闇の中にいたあの頃。
あれから10年。15年目の今はどうか。
ありがたいことに離職率はほぼゼロとなり、みんなある程度楽しそうに働いている。
そして今、私には「嬉しい悩み」がある。職員がほとんど辞めないからこそ直面する、組織の高齢化だ。
新しい風を入れたくても、苦楽を共にした大切な職員たちが年を重ねていく。
時折、他のデイサービスで働く若いスタッフの姿を見ると、正直に言えば「いいなぁ」とうらやましくなることもある。
新しいエネルギーや、組織の代謝。今の自分にはないものがそこにはあるからだ。
経営者としての戦いは、まだ終わらない
辞めていく者を必死で食い止めていたあの頃と、長く働いてくれる者と共にどう未来を描くか悩む今。
かつて「人が辞めていくこと」に怯えていた5年前の私に、今のこの景色を見せたら、彼はなんと声をかけるだろうか。
離職率50%という組織崩壊から15年。
ようやく辿り着いた今のこの景色も、また一つの通過点に過ぎないのかもしれない。
この積み上げてきた絆を大切にしながら、どう新しい風を取り入れていくか。
虐待の対応から、管理者の辞任、そして現在の安定と高齢化まで。
私が歩んできたこの15年の苦労を、これから順番に紐解いていこうと思う。
【あとがき:この物語を綴る理由】
この連載は、経営の成功談ではありません。
失敗し、悩み、もがき続けた一人の経営者の「記録」です。
私の綴る言葉が、今まさに現場の「人」の問題で悩んでいるあなたのヒントになれば幸いです。
過去の苦労を一つずつ紐解いていくこの記録は、これからもnoteで綴っていきます。
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