あの留学は、未来への種まきだった:一円も稼いでないけど、英語を学んでよかった話
小さい頃、両親に連れられて通った英会話スクール。
まさか、その体験が25年後に、孫との絆を生むとは思わなかった。
母の期待と私の意思、そして見えた“英語の価値”
高校受験のとき、「もっと英語を勉強したい」と思い、語学留学カリキュラムのある高校へ進学した。
親の期待は背負っていたけれど、それはあくまで「私の意思」で決めたことだった。
そして、高校2年生の時、イギリスへ10ヶ月間の語学留学を経験。
現地のカレッジに通い、ホストファミリーと過ごす日々。
同じ高校から留学している日本人同士でつるむのが嫌で、本当の家族のように慕ってくれたホストマザーの買い物に付き添う週末もあった。
本当に特別な時間だった。
でも、その後の私はというと……英語が活かせる仕事には一度も就かなかった。
思い出せるのは、飲食店でバイトしていた頃、海外から来たお客さんを少しだけアテンドしたことくらい。
私が転職を繰り返すたび、母は「次は英語が活かせる仕事を探してみたら?」と聞いてくる。
面と向かって言うことはないけど、娘の英語力が活かせていないことを、内心残念に思っているのだろう。
「そりゃ、そうだよね。結構お金もかけてくれたし。」
だけど、今ならはっきり言える。
「あの経験は、全然無駄じゃなかった」って。
英語は私のキャリアにはならなかったけれど、
大事な“家族とのご縁”をつないでくれたのだから。
私の心の故郷は、イギリスのあの家
ホストマザー:ナタリー
そのお母さん:シルビア
留学中、ナタリーとシルビアの二人とはとてもウマが合った。
私も二人のことが大好きだったし、二人も私のことをすごく気に入ってくれた。
留学を終えてからも、毎年クリスマスにはグリーティングカードを送り合った。
大学生になってからコロナ禍までの約10年間は、ほぼ毎年、彼女たちに会いに行っていた。
訪ねる時はいつも突然。
「ハロー!元気?8月○日〜○日までの10日間、そっちに行きたいんだけど、泊めてくれる?」と連絡を入れる。
二つ返事で快く「OK!」と言ってくれる気持ちよさ。
ナタリーの家にはまだ子どもたちがいるため、私はシルビアの家に泊まることが多い。
滞在中はナタリーの家にも何度も足を運び(徒歩10分ほど)、子どもたちと遊んだり、ディナーをご馳走になったりする。
本当にあたたかい人たちだ。
日本のシチューが大好きで、行くたびに私が作るのを楽しみにしてくれている。
私は内心、「なんで真夏の暑い時にシチュー?」と思うけど、年に一度しか食べられないシルビアたちのために、丹精込めて作る。
…もちろん、シチューの“素”持参ですけどね、何か?(笑)
コロナ禍で訪問できない間も、連絡は欠かさず取り合い、定期的にお互いが元気でいることを確認していた。
その間に私は結婚し、出産も経験した。
そしてコロナが明けてしばらく経った今年のお正月、4歳の息子を連れてホストファミリーを訪ねた。
「やっと、”もう一つの家族”に息子を会わせられる。」
信じられない気持ちと嬉しさに包まれ、あっという間の1週間だった。
英語と日本語で通じ合っていたーー心が震えた瞬間
いつものように、シルビアのお家に泊めてもらう。
息子はもちろん、英語が分からない。
最初はイギリス人の真顔ジョークに、
「怒られている」と感じ、ベッドに潜り込んだりしていた。
3日目くらいから、息子も次第に慣れてきた。
シルビアの旦那さんが見ているテレビのチャンネルを、自分が観たいアニメに変える――そんなずうずうしさまで発揮していた。
滞在中は、私が通訳を担当。
常に英語と日本語で「なんて言ってるの?」って聞かれて忙しない。
でも、ある朝、完全にシルビアと息子だけで意思疎通が成立している瞬間を目の当たりにした。
朝のキッチンで、ふと目に入ったやり取り。
そこに通訳(私)は、いなかった。
シルビアが、やさしい声で息子に聞いた。
「Would you like to have some milk?」
(牛乳、飲む?)
息子は、首を横に振りながら答える。
「ううんー、ぼく、にゅうにゅういらないの〜」
(牛乳って、まだちゃんと言えない)
「No? OK!」と、シルビアが笑った。
ほんの一瞬のやり取り。
でも、そこにはちゃんと“通じ合う何か”があった。
「ミユ」としか聞こえない発音を、息子はちゃんと“牛乳”だと理解していた。
…4歳児の耳って、ほんとうにすごい。
キャリアではなく、ご縁が回収してくれたあの経験
高校時代、同級生60人が私と同じように留学を経験した。
あれから、15年ーー。
一体、その内の何人が今もホストファミリーと連絡を取り続けているだろうか。
答えは、一人(私のみ)。
年に2〜3度やり取りがあるかないか。
それくらいの頻度だけど、今も確実につながっている。
息子は”シルビア”という名前はすぐに忘れてしまう。
でも、「英語が上手なおばあちゃん」として記憶に残っている。
”Orange”(オレンジ)や”Banana”(バナナ)など、イギリスで食べたフルーツの発音が、妙にネイティブっぽいのはーー
シルビアの発音をそのままコピーしているからだろうか。
習得した英語で、一円も稼いでいないけど。
それでも私は、思う。
あの時「留学して本当によかった」って。
来年は、イギリスのベストシーズン(夏)にまた、息子を連れて”あの家”に帰ろう。第二の故郷、もう一つの家族の元へ。
もし今、子どもを留学に送り出すかどうかで迷っている人がいたら。
そっと、その背中を押してあげてほしい。
それは、未来の孫の背中を押すことにつながるかもしれないから。
最後まで、お読みいただきありがとうございます☺️
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