鳳鶏ノ助カットにしてくれ
床屋「今日はどんな感じのカットにしましょう?」
客「ああ、鳳鶏ノ助カットで」
床屋「おおとり……にわとりのすけ?」
客「『忍ばざること早朝のニワトリの如し』で知られる、鳳鶏ノ助ですよ」
床屋「……はあ」
客「ちょっと。あの、忍者なのに城へ忍び込むたび『コケコッコー!』と大声で入城した鳳鶏ノ助を知らないわけじゃないよね?」
床屋「すみません。忍者には疎いもので……」
客「ほら、忍者なのに先端恐怖症だったから、自分でまいたマキビシを怖がって帰れなくなった『マキビシ袋小路事件』の鳳鶏ノ助だよ?」
床屋「存じ上げませんねえ……」
客「じゃあ、忍者のくせに高所恐怖症で、木の上から降りられなくなって、三日三晩救助を待ち続けた『樹上孤立の変』の鳳鶏ノ助は?」
床屋「それも知りませんねえ……」
客「まさか、忍者のくせにカナヅチで、水遁の術の最中に溺れ死んだことから、『水遁死のニワトリ』の異名を持つ鳳鶏ノ助を知らないなんて嘘でしょう?」
床屋「すいとんなら食べたことありますが……」
客「オレも好き!」
客「あのね、陸も海も空もみんなダメ。忍者適性ゼロ。それが鳳鶏ノ助だからねっ!」
床屋「それでよく、忍者に……」
客「そこが鳳鶏ノ助のすごいとこよっ!」
床屋「勉強になりました……」
客「……じゃあ、ツーブロックで」
床屋「かしこまりました」
……
床屋「いかがでしょう?」
客「おお、鳳鶏ノ助だっ!」
床屋「千九百円になります」
客「また来るよ」
(終)
