ショートショート ほんわか台風
「家出ねえ。まあ、お入んなさい」
ばあちゃんが玄関で困った顔をした。傘もささずに家から飛び出した私は雨でずぶ濡れだった。
「お風呂入るかね」
ばあちゃんがタオルを渡してくる。家出の原因は聞いてこないし、私も話す気はない。
「相変わらず、台風みたいな子だね」
ばあちゃんが笑う。私はムッとした。
「『暴れん坊』ってこと?」
「違うよ」ばあちゃんはにこにこしている。「そうだね……ほんわかしてるってことかな」
「『ほんわか』?」
大きな声が出た。絶対に嫌味だと思った。私が中学生だからってばかにしてる。「夜に台風来る前に帰んな」ってばあちゃんが言うのも無視した。居間で勝手にふて寝した。
「朝だよ」
おでこを叩かれて目が覚める。昨日のことをすっかり忘れていて、びっくりした。
「ほんと、台風みたいな子だ」ばあちゃんが笑う。「どんなに腹たてても、一晩で終わって、ほら、この顔だ」締切の雨戸が開いた。雲一つない空が見えて、嬉しくなって笑った。
ショートショート No.773
田原にかさん(note大賞2025ご入選おめでとうございます!)の毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「ほんわか台風」です。
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