ショートショート 幸福な大仏【半導体大仏】
「ツバメよ、あの可哀想なエンジニアに、わたしの螺髪を持っていっておくれ」
厳かな声で大仏は言いました。「わかりました」とツバメは答え、大仏の頭についたコンデンサをひとつ抜き取りました。この大仏の体は廃盤になった半導体部品でできていました。天から舞い降りたコンデンサにエンジニアが飛びつき「愛用のガラパゴス携帯の寿命が伸びた!」と咽び泣きました。
次の日は衣のICチップを、その次の日は肌のシリコンを、大仏の命じるままツバメは街中に分けてまわりました。金属片でキラキラしていた大仏の輝きが失われていくのを惜しみながら。
そして最後の半導体が大仏の体から剥がされた日、配達を終えたツバメは大仏の前で力尽きました。すると大仏の身体が光り輝き、次には美しい青年がひとり、哀れなツバメを抱き抱えて立っていました。大仏の生まれ変わり。街の人は確信しました。素っ裸だったからです。皆口々に言いました。
「まあ。なんてワイルドなのかしら」
ショートショートNo.798
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「半導体大仏」です。
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