ショートショート 踏切オーディション
「OBの映画監督に、是非」と今や母校の先生になった同級生に頼まれて夏休みのワークショップを引き受けたが、今の映画部に昔の面影なんてなかった。スマートフォン片手にバズる動画を撮ろうと血道をあげる高校生たち。地味な映画オタクは消えていた。
成城という学生がいた。野暮ったい男子だった。「魅力ある人物ってどう撮りますか?」と生意気なことを言うので「知らん」と答えた。「考えます!」と成城は頭を下げた。
「どうでしょう?」それから成城は俺の後を追うようになった。声に振り向くとポーズをとっている。「魅力的か?」らしい。「不合格」と俺が言うと成城が崩れ落ちた。毎日続いた。
ワークショップ最後の帰り道もそうだった。鬱陶しくて踏切前で足を早めて振り返る。成城は遮断機の向こう側だ。
「ありがとーございましたー!」
汗まみれの成城が手を振っていた。泣いていた。
「ふごうかーく!」俺は叫んだ。「だからもう一度挑めー! 映画、作れよー!」
ショートショートNo.797
田原にかさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「踏切オーディション」です。
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