ショートショート おとぎ話診療所
「正常ですな」
おとぎ話診療所で診療医が言った。向かいにロバの耳を生やした王様が座っていた。
「いや、しかし……」
肉のついた手で王様が自分の耳を揉む。診療医が神妙な顔で首を降る。
「至って正常です。次の方」
促されて王様が診察室を出ていく。代わりにぴょんぴょんと親指ほどの大きさのお姫様が診療医の膝に飛び乗った。
「素晴らしく健康」
診療医がにっこりと笑った。お姫様はお礼代わりにくるりと回ると、またぴょんぴょんと診察室を出て行った。
「失礼します」
診察室の入り口で、今度は健康そうな男性が会釈した。
「なんてことだ」
診療医が立ち上がった。男性を椅子に座らせた。おでこに手をあて、瞳孔を覗き込み、心臓の音を聞いて、深い深いため息をついて言った。
「手遅れだ」
診察結果をしたため、男性に渡す。
「残念です。お帰りください」
男性が診療所の門を出る。もうおとぎ話にいられないのだ。診察結果にはこう書いてあった。
「めでたしめでたし」
ショートショート No.752
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。今週のお題は「おとぎ話診療所」です。
小粋でポップなヒスイさんに140字小説集のご感想をいただきました。読んでくださってどうもありがとう。心よりお礼申し上げます。
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