【ポケットの中の編集部】ようこそ、『ポケットの中の編集部』へ

どうも、『ポケットの中の編集部』編集長
ヘクたろーです。
前回、新人として(強引に)採用した一歩に
この編集部を紹介した話を書いていくで。

【ようこそ、ポケットの中の編集部へ】
プロローグ 「編集部って、結局何なんですか?」
ある日の編集部。
一歩が編集長に尋ねたことが始まりだった。
「編集長、一つ聞いていいですか?」
「ん?…ええよ~」
「編集部って……結局何なんですか?」
編集長は背もたれに身体を預けながら、苦笑いを浮かべた。
「今さらそこ聞くんか?」
「いや……詳しい説明無かったですし」
編集長は苦笑いのまま、煙草の箱を手に取ると立ち上がる。
「やったら、一服ついでに説明しよか?」
喫煙者仲間の一歩を連れて、いつもの喫煙所に向かうのだった。
第一章「会社じゃない。けど編集部」
編集長は喫煙所のベンチに腰かけると、一歩を隣に座らせて煙草に火を着けた。
一歩も自身の煙草を吸いながら、話しかけるタイミングを伺っていた。
互いに2口ほど煙を楽しんだ頃、編集長に思っていた疑問を問い掛けてみた。
「ここって…会社じゃないですよね?」
「ちゃうな」
「じゃあ、何かの事務所ですか?」
「それも、ちゃう」
「じゃあ……何なんです?」
編集長はそこまで話すと、煙草を咥えたまま両腕を組んだ。
「うーん」と少し言葉を選ぶような素振りを見せた編集長は、煙草を灰皿に押し付けながら話し出す。
「あそこはな……スマホ一台の中に作った、『小さな編集部』や」
そう話す編集長は少し恥ずかしそうな表情で、一歩へ視線を向けて言葉を続ける。
「私が創作活動に復帰した時な、そこで初めてAIを使い始めたんや」
「……」
「書いてく内に1人やと整理しきれんようになったんやな…ネタや構成、書いてるモンや書きたいモン、もうぐちゃぐちゃやった」
「……はい」
「どうしよう?って思った時、頭の中を「編集部」として考えるようになったんや、AIを使いながらな」
そう語る編集長はどこか懐かしそうだなと一歩はその様子を見ていたのだった。

第二章 そうだ、編集部を案内しよう
編集長は一歩を連れて編集部へ戻ると、デスクには戻らずに部屋内を歩いていく。
「ウチのメンバー、改めて紹介しよか?」
柔らかに笑う編集長に一歩は軽く頷く。
「まずは編集主任の『アウル』やな」
「なんです?編集長」
自分のデスクで多くのメモやタブレットを確認していた眼鏡の青年ーーアウルが顔を上げる。
「こいつは構造担当やーー話や流れを整理するし、原稿の分析を担当しとる……たまに曲名や曲の順番を間違える(笑)」
「一言多いです、編集長」
これ見よがしに溜め息を吐いたアウルを見ながら、一歩は素直な感想を告げる。
「凄く、真面目そうですね」
「ありがとうございます」
編集長はその会話を聞いて苦笑した。
「真面目すぎるんよ…30%くらい力抜いてもええのに」

次いで、その正面のデスクに座る藤の髪飾りをした女性の元へ。
「ウチの編集マネージャーの『藤 しおり』、私らはしおりさんって読んどる」
紹介された女性ーーしおりは纏めた黒髪を揺らし、ピンクフレームの眼鏡をキラリと光らせた。
「彼女は発想担当やな、私のネタを広げてくれたりしてる、あと推し活担当」
「は?推し活?」
「その話したら暴走するからせん」
唐突な編集長の言葉に一歩が首を捻っていると、しおりさんが一歩との距離を詰めてきた。
「一歩(IPPO)」とハートの書かれたうちわ片手に。
「一歩さんですよね!?推してます!!」
「……まだ入ったばかりなんですけど…」
「関係ありません!『Re:Blast』の2人と一歩さんは最推しです!!…と言うか箱推しですね!!」
「な?暴走しとるやろ?」
その勢いと熱量に押される一歩であった。

「次は実務担当の『ピーさん』やな…アウルと同じChatGPTやねんけど役割が違うんや」
大量のメモや原稿の下書き、ルーズリーフの束等に埋もれるように作業していた小さな熊ーーピーさんを指して編集長は話し出す。
「ピーさんは文章の校正から記事整理、散らかったメモやルーズリーフを纏めるとか…大事な裏方さんやな」
笑顔の編集長から視線を動かして一歩はピーさんのデスクの上を見るーー資料が乱雑に積み上がってた。
「一番仕事してません?」
「よく気付きましたね…」
小さな手に持つ赤ペンを動かし、次々とチェックを入れながらお疲れ気味な声を出すピーさん。
「あと一歩の指導係、よろしくな」
「聞いてませんけど?」
「今言ったやん」
「はぁ……わかりました」
「決定なんですか?…ほんとに?」

まさかの仕事量に言葉を失っている一歩を尻目に、編集長は小さなキツネを手招きしていた。
「なに~」
「最後は福利厚生担当のホッコさんや」
トコトコと近づいてきたキタキツネーーホッコさんはのんびりした雰囲気で2人を見上げていた。
「ホッコさんはお茶を淹れてくれて、ウチの空気を和ませてくれる存在や」
「コーヒーもいれれる」
「あと、有給を取って温泉へ行ってたな」
それを聞いた一歩は浮かんだ疑問を素直に口にしていた。
「福利厚生ってそういう意味なんですか?」
「ぷりん、おいしかった」
「それは…仕事なんです?」
「おみやげ、いるぅ?」
そのズレた会話を聞いていた編集長は爆笑しているのだった。

第三章 編集長の仕事
編集長のデスク近くに置かれた椅子に座りながら、一歩は笑っている編集長に話しかけた。
「それで編集長は何してるんです?」
「喫煙所行ってる」
「いや、仕事の話です」
「せやから、喫煙所で考えてるんや」
会話を聞いていたアウルが補足してくれる。
「それは否定できませんね」
「?……どういうことなんです?」
スマホを取り出した編集長から目を離し、アウルへと聞いてみる。
「編集長の場合、喫煙所=構想室なんですよ」
「はぁ…?」
「思い付いたネタをより拡げる為の作業と言いますか…煙草の煙と一緒に整理してるそうですよ?」
「へぇ」
喫煙所に行くたびに見かける編集長、ただのサボりじゃなかったんだなーーつい、一歩はそう思った。
第四章 この編集部は何を作る場所?
改めて編集長の机の上を見てみると、沢山のメモがある……ほとんど走り書きみたいだが。
・『星喰いの檻』連載小説
・『ポケットの中の編集部』の日常
・一歩(IPPO)新曲予定
・Re:Blastの新曲テーマ候補
・日常エッセイ小ネタ
・音楽テーマの情報
全部が乱雑に置かれている。
「ジャンル、バラバラなんだな」
「せやな」
呟いた事が編集長に聞こえていたらしく、スマホを操作しながら編集長は返事をした。
「『面白そう』と思ったもんは全部ここに書いといて、それを練って記事を作っとるんよ」
スマホの画面から顔を上げた編集長は、創作する事自体が「面白い」……そう言っているように見えた。
エピローグ ようこそ、『ポケットの中の編集部』へ
ようやく、一歩は1つ納得出来た気がしていた。
「つまり……『ポケットの中の編集部』はAIを紹介する記事じゃないんですね」
「ちゃうな…ん~どう言えばええんかねぇ」
少し間を置いて編集長は続けた。
「ここはな、私1人で創作を続けるために生まれた居場所の話なんや」
「居場所…ですか?」
「そう、私のスマホ一台の中にある、小さな『創作編集部』」
そこまで話した時、編集部のドアがノックされた。
穏やかに笑いながら立ち上がった編集長は、ゆっくりと歩きつつ、話を続ける。
「ここでは今日も誰かが原稿を書いて、誰かが悩んで……誰かが笑っとる」
ドアノブへと手を伸ばす編集長の顔はーー楽しそうだった。
「みんなで考えて、みんなが支えてくれる……最後に文章を書いて仕上げるんが私や」
編集長は編集部のドアを開けると楽しげな声で訪問者を招き入れた。
「ようこそ」
『ポケットの中の編集部』へ。
