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ローマとバチカン市国【ヨーロッパの旅2000年】

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 キリスト教にも片足の先くらいは、
 突っ込みかけてきたので。

(文字数:約3100文字)



ミストラル大道具さん

  南仏からローマへと向かう飛行機は、

  局地風ミストラルで揺れる揺れる揺れる。

  マ「だだだ大丈夫。
    きっと今大道具さんががが、
    セットを取り替えてるのさ」
  私「そそそそうだねねね。
    大忙しだだだよな。
    お仕事お疲れ様でっす」

  飛行機に慣れていなくて本音では怖いので、
  全力で現実逃避する。


パン無情

  そしてイタリアに着いて最初の食事の、
  パンを食べた瞬間にハッとなった。

  おいしくない。

  いや。
  それはイタリアに失礼だ。
  日本に比べれば充分に美味い。

  フランスのパンが美味し過ぎただけだ。

  致し方ない。
  パンは言うなれば発酵食品。
  イースト菌の繊細な管理が可能な、
  寒冷地でこそ風味豊かな味わいになり、
  バリエーションも豊富になる。

  その分イタリアはパスタが美味い。
  温暖な地中海性気候に、
  火山性の地質で取れる作物も豊富だ。

  ドイツに比べれば……!

  そもそも私がドイツ語専攻だったのは、
  ドイツ語とドイツ文化の方に、
  よりシンパシーを感じていたからだ。

  フランスが新潟県に庄内平野だとしたら、
  我が故郷は国内において珍しいほど米が実らず、
  蔑まれながらも豚を育てるしかない土地なんだよ!

  額に汗して耕せば実りが得られるのは、
  耕しただけで実ってくれる、
  肥沃な土地に住めているからなんだよ!

  ドイツを全面擁護はしないが、
  古代からフランスの土地が欲しくて欲しくて、
  何度も国境を切り崩そうとしてきた切望感は、
  大変に良く分かる。

  ようやく得た小麦で作れた黒パンも、
  隣国から訪ねて来た連中に、
  一口かじって「まずい」とか言われんだぜ?
  普通に屈辱感で泣くぜ?

  事実として私は今このイタリアの、
  日本に比べたら充分美味しいだろうパンを、
  「(フランスに比べて)おいしくない」
  と感じてしまったからな。

  日常食における差分と、
  日々育まれる感覚は冷酷だ。

  世界各国の全歴史において、
  持てる者たちは持たざる者たちに対して、
  あまりにも冷淡に過ぎはしなかっただろうか。


同じ大学生とは言え

  ところで研修旅行全体は、
  20〜30人規模の団体なんだが、

  自由行動の日に時間帯を、
  私とマリー嬢はほぼ二人だけで行動している。

  なぜなら同じ大学生とは言え、
  社会階層に生活水準が異なるからだ。

  持っている物に着ている服に、
  スーツケースのオシャレ度合いも違えば、
  目的地に日々の行動様式も異なり、

  自由行動の日はホテル内や近隣の店舗で、
  ショッピングやエステなどを楽しんでいたり、
  そこはまぁ御自由になさって構わないとして、

  観光地へもホテルから、
  タクシーを呼んでもらって乗り付けて、
  そのタクシーも目的地で待たせておいて、
  また次の目的地に向かうのだと。

  「タクシーになんか乗れるかぁっ!!!」
  「歩け!!!
   学生は歩くか公共交通機関に乗れ!!!」

  もちろん貧乏人の妬みもあるんだが、
  こうしたところの価値観が合わなければ、
  旅先で行動を共になど出来ない。  


真実の口

  とは言えローマの地下鉄はちょっと不便で、
  我々は歩き慣れているからいいものの、

  「真実の口」が飾られた、
  サンタ・マリア・イン・コスメディン教会までの道は、
  そこそこしっかり距離がある、
  しかも裏通りだったよね。

  そしてローマの街は、
  表通りこそにこやか華やかで楽しげだけども、

  一本裏通りに入れば、
  暗い顔でうつむき加減の人たちが、
  立てた襟に頬を埋めながら歩いていたり、

  建物の門前でたむろしてヒソヒソ話し合ってたり、
  その建物ドア付近には、
  しっかり銃を持った警官か軍人かが、
  立っていたりもしてるよね。

  マ「さっきからずっと警報は鳴っているんだが」
  私「要警戒レベルなうちは比較的大丈夫だろう」
  マ「そうだな。用心しながら進もう」
  私「どこの都会だって裏通りはこんなもんさ」
  マ「ってかお前、
    パリじゃもっととんでもない所に、
    潜り込もうとしてたぞ。きっと」
  私「そうだな。今思うと申し訳ない」

  結果ホンマに教会の壁に、
  ローマ時代の排水溝の蓋が飾られてるだけだったけど、
  なんか満足度が高かった気がするし、
  雰囲気とかが楽しかったんだと思う。


天国の門

  そして貴方バチカン市国の、
  サン・ピエトロ大聖堂では、

  1000年に一度だけ開ける事になっている、
  中央の大正門、
  通称「天国の門」が、

  ちょうど2000年なもので今まさに開いていて、
  そこを通った人はこれまでの罪が清められる、 
  
とか嘘か真か知らんけど言ってくれてるじゃないか。

  それは通らなくては。

  キリスト教徒でもカトリックでもない我々は、
  そもそも天国へ行く資格を有せず、
  地獄行き確定ではあるんだが、

  罪は清めてもらいたい。

  だいぶ長い列に並んだけど無事に通れた。

  私「清められたぞ。私にひれ伏せ」
  マ「私も同様に清められてんだよ。
    今のでお前私よりは濁ったぞ」
  小学生男子のような戯言を言い合いつつ、

  さすがにサン・ピエトロ大聖堂は、
  パリのノートルダムと比較しても、
  観光地然としているので、

  仏教徒の皮をかぶった神道徒でも、
  気後れすることはなかったし、

  何より併設された美術館も含めて、
  世界中の技巧を凝らした芸術品に宝物が、
  収められ展示公開されているからな。

  一生に一度でも、
  行けて現物を観られて大変に嬉しかった。


本気のエスプレッソ

  ホテルに戻り併設されていたバーに入ると、

  「寝る前にエスプレッソいかがですかー」
  (もちろんイタリア語なので推測)、
  と勧められた。

  「寝る、前に?」
  「コーヒー?」

  ちょうど添乗員さんも居合わせていて、
  旅行中に割と仲良くもなっていたので、
  通訳してもらえたのだが、

  エスプレッソはコーヒー成分のみを抽出し、
  カフェインがほとんど含まれていないので、
  イタリアではナイトキャップ(就寝を促す飲み物)
  として扱われるとのこと。

  「では飲もう」
  「ならば飲もう」

  今でこそ、
  本格的なイタリアンレストランでなら、
  わりと当たり前に飲む事ができるけども、

  喫茶店くらいでは、
  「エスプレッソ」と銘打っていても、
  単に深煎りなだけだったりするけども、

  ぐい呑みくらいの大きさの、
  本当に小さなカップと、
  でっかい砂糖壺を渡された。

  「砂糖はたっくさん入れるのよ」
  と添乗員さんからも言われていたのだが、

  「我々は初めて飲むもので」
  「まずはそのままの味を確かめたい」

  気取って失敗するタイプ、というわけではない。
  これは単純な好奇心だ。

  ぐい、と舌先に少量乗せて、

  かはぁ、と二人とも口が開いた。

  苦い、とかの味覚を通り越した、
  頭を殴られる衝撃!

  「入れな入れな」
  「砂糖たっぷり」
  「入れたら旨い」
  「甘ければ旨い」

  事実として豆の旨みたっぷりで、
  腹が満たされたかのような満足感。

  我々二人の様子を見て、
  カウンターからもバリスタが笑ってくれていた。

以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。 

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岡埜 由木古(偏光) 何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!