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マフラーを何度も結びなおした2日間②

※このnoteは、過去の自殺未遂体験を記録したものです。今同じように苦しんでいる人がいたら、少しでも孤独がやわらぐことを願って書きました。

取っ手にマフラーを掛けたままのクローゼットの前で寝転びながら、兄にLINEを送った。兄には、僕が精神疾患で休職中であることは1ヶ月ほど前に伝えてあった。3週間前には、わざわざ自宅まで様子も見に来てくれた。そんな兄に、今抱えている苦しみも、昨日今日と自殺しようとしたことも、全部打ち明けてしまおうかとずっと迷っていた。でも、できなかった。兄にこれ以上心配をかけたくない。そんなものは建前だと思う。メンタルを病んでろくに仕事もできないこと、休職中で明日の生活費にも困っていること、それらを知られるのが恥ずかしい。それに、怒られるかもしれない、責められるかもしれない、もしかしたら殴られるかもしれない。そして、一番怖かったのが、兄に話したことをきっかけに、一連の事情が両親に露見してしまうことだ。だから、相談できなかった。けれど、何度試してもどうやら僕は自分の力では死ねない。とはいえ、自力で生きていくこともできない。だから、意を決して兄にLINEを送った。

しばらくして、兄から「今日の午後、そちらに行きます」という返信があった。
兄の来訪を待つ間、数時間ほどだっただろうか、一度は兄にすべてを打ち明けると決めたのに、またマフラーに首を掛けた。これが最後の一回。もう少しで、意識が飛ぶところまでいった。酒のせいか、薬のせいか。でも、やはり急に苦しくなって、結局マフラーから首を外した。涙も鼻水もそのままに、床に横になった。数十分後、インターホンが鳴った。

僕は兄に、洗いざらい話した。満足に仕事すらできない自らへの情けなさ、今はここで詳らかにすることはできないが自らの愚行によって背負ってしまった枷、それらに絶望して自殺しようしたことなどをすべて話した。手書きの遺書も見せた。泣きながら話した。Tシャツで涙と鼻水を拭いながら、話した。兄への申し訳無さで、土下座した。

兄は、ただ黙って話を聞いてくれた。一通り話を聞いた後、兄はゆっくりと言葉を掛けてくれた。悩みの種が仕事だけではないのではないかと薄々感じていたこと、傷病手当金を受給できるまでの当面の生活費を工面してくれるということなどを語りかけるように話してくれた。それで、僕は泣いた。情けなくて、悔しくて、申し訳なくて。兄、僕を責めるような言葉は一言も言わなかった。

その後、しばらく兄と他愛ない話をした。兄の仕事の話や、最近の両親の様子などを。兄と2人きりでこれほど話し込んだのは、いつ依頼だろうか。あぁそうだ、おそらく離婚の相談をした時以来だ。本当に僕は、いつも兄に迷惑ばかりかけている。

帰り際、兄は「これはもう見るな」とノートに書いた遺書を破って自分のリュックにしまった。そして、僕の荒れた部屋を見て「洗濯でもしていってやろうか」と言ってくれた。さすがに丁重に断った。

「それと、部屋は明るくした方が良いよ。部屋が暗いと気分が沈むから」

兄に言われるまで、部屋の明かりをつけていないことにも気づかなかった。玄関先で、兄を見送った。

死にたいという気持ちが消えたわけじゃない。けれど、今日ばかりは死なないで良かったと思った。

手首に傷が残っている。そういえば、マフラーに首を掛けることを繰り返している途中で、包丁で手首を切ってみようと思ったんだ。けれど、結局怖くてまったく深く切れなかった。血が滲んだ浅手の傷が2-3本、僕は本当に中途半端だ、死ぬこともできないなんて。

正直不安ばかりだ。また死にたいと思う日が来るかもしれない。けれど、その時はとりあえず今日という日を思い出そうと思う。そして、兄のためにも生きようと思う。僕が自ら死を選べば、一番責任を感じてしまうのは間違いなく兄だ。もし、これまで相談していたことを僕の死後に両親が知れば、きっと兄は責められるだろう。なんで親に相談しなかったんだと。死んだ後にまで、兄にそんな迷惑をかけるわけにはいかない。だから僕は、生きないといけない。また死にたくなっても、生きないといけない。

そうは言っても、また新たな不安に頭が占領されている。けれど仕方がない。一つ一つ解決していくしかない。それに、死のうとして、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら全部を兄に打ち明けられたのだから、もうこれ以上怖いことなんてない。とりあえず今は、そう思い込もう。それに、いざとなったら兄に助けを求めれば良いと思おう。無責任だけど、そう思おう。兄は味方だって、そう信じよう。

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堀内 経羅流渡 読んでくださりありがとうございます。 もし、私の言葉のどこかに「居場所」を感じていただけたなら、チップを通して応援していただけると大きな励みになります。 頂いたチップは、創作の励みとして大切に使わせていただきます。