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音楽室とトイレ掃除

 今日は仕事が遅番で、空いた朝の時間にトイレ掃除をしていました。柄のついたブラシでオフホワイトの陶器をガシガシとこすりながら、少し少年時代を思い出していました。いまでは人を招くときくらいしかまともに掃除をしていませんが、昔は「掃除に真面目に取り組む」とよく通知表に書かれていた記憶があります。

 学校の掃除の時間においても、しばしばトイレを担当していました。トイレというと勤勉な児童生徒が回される場所で、手前味噌でありますが私は勤勉な子どもであったため、学期ごとの再編成で階や東西をローテーションしながらどこぞのトイレを掃除していました。こうして文字に起こしてみると、なんだか割を食っていたようにも見えますが、少なくとも当時の私は、別段不満を抱くこともなく、淡々と手を動かしていたような気がします。

 そんな学校掃除の時間において、ことさら印象に残っているのが、小学校時代の音楽室かもしれません。私の小学校は、屋内でいうと教室は基本的にフローリング(といっても古くて汚いものですが)、廊下はコンクリートのようなもので、いずれも床掃除というと、箒をかけて、その後雑巾がけをするという手順でした。

 一方で音楽室はというと、おそらくは音響のために床にはカーペットが敷き詰められており、特別に掃除機を使って床掃除をしていました。3階の中央トイレを掃除していると、校内放送のクラシックにのせて、東の音楽室から、ブイーンというけたたましい音が聞こえてくるのでした。

 そんな私にも、6年間で一度だけ音楽室清掃を担当する機会が訪れました。そのときはおそらく最高学年だったのだと思います。200 人以上の児童がいる学校の中で、唯一掃除機を使っている教室に入りこみ、しかもその中でも1人しかいない掃除機役を、私が担ったのでした。

 教室じゅう一面モスグリーンのカーペットを、ほこりをせん滅するように、南北にかけ、東西にかけ、上から一段一段、ゆっくりと下りていきます。最下段まで下りて、グランドピアノを回り、出入り口まで到達したところで、ちょうど終了のチャイムが鳴ると、私は大いに満足して、片付けをするのでした。音楽の授業も先生も大嫌いでしたが、掃除の時間だけは、音楽室は憩いの空間でありました。

 あれからずいぶんと時が経ちました。朝日差す狭い個室の中で、陶器の白がほんの少し明るくなったような気がします。もう通知表に講評を書かれることはありませんが、私は両手を挙げて大きく伸びをして、扉を静かに閉めるのでした。

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