【対人援助技術part2:質問力編】「いい質問」はテクニックじゃなく“設計”で決まる
はじめに
前回のpart1では「傾聴」について書きました。
結局のところ、支援のスタートは“話をちゃんと聞くこと”じゃなくて、「この人なら話してもいい」と思ってもらえる状態を作ることでした。
ただ、現場にいるとこういう壁にもぶつかります。
話は聞けているのに、必要な情報が出てこない
相談者の状況が整理できない
どこから深掘りすればいいかわからない
気づいたら雑談で終わっている
ここで重要になるのが「質問する力」です。
ただし、ここでいう質問力は“うまい聞き方”のことじゃありません。
本質はもっとシンプルで、
「何を聞けば、この人の状況が分かるのかを設計できているか」
ここに尽きます。
第1章
「質問が上手い人」じゃなく「設計できる人」が強い
質問って、テクニックに寄りがちです。
オープンクエスチョンがいい
クローズドクエスチョンを使い分ける
具体化して聞く
もちろん全部正しいです。
ただ現場で詰まるのはそこじゃなくて、
「そもそも何を聞けばいいのか分からない」
ここなんですよね。
例えば相談で、
「最近どうですか?」
と聞くと、だいたい曖昧な返答になります。
一方で、
「今の生活で一番しんどいのって、体のことですか?お金のことですか?人間関係ですか?」
と聞くと、話は一気に動きます。
違いはスキルではなく、“設計の有無”です。
第2章
質問のゴールは「会話」じゃなく「状況把握」
質問ってつい会話を続けるためにやりがちです。
でも支援の現場ではゴールが違います。
ゴールはこれです。
その人がどんな状態にあるのかを把握する
どこに困りごとがあるのかを整理する
介入ポイントを見つける
つまり、雑談じゃなくて「情報収集と構造化」です。
ここがズレると、
なんとなくいい雰囲気で終わる
でも支援につながらない
という状態になります。
第3章
相談者の“5つの領域”を押さえると迷わなくなる
質問が苦手な人ほど「何を聞けばいいか分からない」と言います。
その解決策はシンプルで、枠を持つことです。
相談者の状況は基本的にこの5つで整理できます。
① 身体・精神の状態
体調はどうか
睡眠は取れているか
気分の波はあるか
診断や治療の有無
ここは支援の前提条件になります。
② 家族・人間関係
誰と暮らしているか
頼れる人はいるか
トラブルはあるか
孤立していないか
人間関係は問題の“増幅装置”にもなります。
③ 生活環境
住居の状況
お金の状況
日常生活の自立度
食事や衛生面
ここが崩れていると、他の支援も機能しません。
④ 社会的背景
仕事・学校の状況
制度利用の有無
地域とのつながり
支援機関との関係
「どこと繋がっているか」を見る領域です。
⑤ 価値観・希望
どう生きたいか
何を大事にしているか
今一番優先したいことは何か
ここを聞けると支援の質が一段上がります。
そして、ポイントはこれです。
全部を一気に埋めようとしない
ただし、どこが抜けているか常に意識する
第4章
オープンとクローズドは「順番」で使うもの
よくある理解として、
オープンクエスチョン=自由に話してもらう
クローズドクエスチョン=はい、いいえで答えられる
という整理があります。
でも実際はこうです。
① まずオープンで全体像を出す
例:
「最近の生活で困っていることってどんなところですか?」
② 次にクローズドで絞る
例:
「それってお金の問題は関係していますか?」
③ さらにオープンで深掘る
例:
「そのお金の問題って、具体的には何が一番大変ですか?」
この流れができると、会話ではなく“情報が整理される面接”になります。
第5章
「聞きすぎる人」と「聞けない人」は同じミスをしている
現場では両方います。
聞きすぎる人
情報を全部取ろうとする
初回で詰め込みすぎる
相手が疲れる
聞けない人
遠慮して踏み込めない
表面的な会話で終わる
重要情報を取りこぼす
実はこれ、原因は同じです。
「優先順位がないまま質問している」
だから大事なのは、
今この面接で何を知るべきか
今日はどこまで聞くのか
を決めることです。
第6章
質問でやってはいけない3つのクセ
現場でよくある落とし穴を整理します。
① 詰問型になる
「なんでそれやらなかったんですか?」
→ 防御反応が出るだけで情報は減ります。
② 誘導する
「こういうことですよね?」
→ 本音が消えます。
③ 連続質問で埋める
沈黙が怖くて質問を投げ続けるパターン。
→ 相手の思考が止まります。
質問は“投げる量”じゃなくて“質や間”が重要です。
第7章
明日から使える「面接の型」
迷わないためのシンプルな型です。
① 現状確認
「今の生活で一番困っていることは何ですか?」
↓
② 領域分解
「それは体調・お金・人間関係のどれが一番大きいですか?」
↓
③ 深掘り
「それっていつから続いていますか?」
↓
④ 支援資源確認
「今つながっている支援ってありますか?」
↓
⑤ 本人の希望
「本当はどうなっていたら一番いいですか?」
これだけで面接の構造はかなり安定します。
おわりに
質問する力って、派手なスキルじゃありません。
でも実は、
支援の方向性
情報の質
信頼関係の深さ
全部に影響します。
そして一番大事なのはテクニックではなく、
「この人の事をちゃんと理解したいと思えているか」
ここがないと、どんな質問技法も機能しません。
次回は「説明する力」や「要約する力」についてまとめていく予定です。
